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今、私は牢屋にぶち込まれている。
しかも逃げられないように特別な地下室の方へわざわざ連れてこられた。地面はぬるっとじめっとしていて気持ち悪い。鼠と友達になれと強要されているし、ここ二、三日お風呂にも入っていないし両腕にはチャクラ封じの呪が施された手錠をされ、おまけに部屋自体にもその類の呪いが掛けられている。
だが出ようと思えば出られる。けど今のところ出ていく理由
がない。人質も取られているし、まず火影と面会する必要があるからだ。
イオウとは木の葉に入る前に別れたので彼の存在がバレることは避けられた。
っていうか先輩にはしっかり見られてるんだけどね。そもそもその先輩が見逃してくれたお陰なんだけど。
「…はぁ…」
運ばれてくる食事にも手を付ける気にもなれず、私は話しかける対象になりつつある鼠君たちに全部食べてもらう作業を繰り返している。しっかりと目元を布で覆われているので視覚というものが奪われているかと思いきや人間の五感というものは案外鋭く、どこか一部が欠落すると他の感覚で補おうとする。見かけだが簡易的にチャクラを封じ込められている私には、目で見えずとも脳内で映像を映し出している状態だ。だから問題はない。けれど普通の感覚を持っている人なら一日と絶たずして気が狂いそうになるだろうなぁと他人事のように考えた。
どうせ時間もある。少しばかり此処へぶち込まれることになった要因を思い出そう。
一つ。
勝手に再不斬とハクを連れて帰った。
二つ。
大蛇丸と繋がりを持っている。
三つ。
火影の仕事を放置しすぎたから用済みになった。
三番は勝手に予想しただけし、二番目は……今の所バレていない、はず。だとするならやっぱり一番が有力かな。
予想通り、サスケ達を残して一足早く波の国を発った私達だけど木の葉の里手前の森の中で待ち伏せされていた。しかも暗部の先輩自らお出迎え。これには私も吃驚してしまった。
だって堂々と森の中で突っ立ってるんだもん。戦意も削がれるよ。しかも人の顔を見た途端、大きいため息つくし。
真昼間から怪しい人出現だよ。
「……ハァ……」
「やめてくださいよ、先輩。人の顔見てため息つくの。失礼ですよ」
そう抗議すると先輩は腰に手を当ててやれやれと頭を振った。
「お前、俺の顔になんて書いてあるか分かる?」
「え~、……ヒカリってナイスバディだなって」
お面付けたままで分かるわけがないじゃない。
適当に答えると一言で斬り捨てられてしまう。
「違う。もう変人の領域を超えてるってこと。馬鹿通り越して尊いわ。お前の存在が。次にしでかすことすっげぇ興味ある。吐け」
と脅しながら私にズカズカ近づいてきておでこを指先でビシバシ突いてくる。
「やだぁ~、そんなにいっぱい褒めないでくださいよぉって痛い痛い!」
「お仕置きだアホ。ほれ、いいからさっさと歩け。一応拘束するからな。縄で。無駄だろうけど」
と言いつつ縄を取り出す先輩。私も抵抗する意思はなくお願いしますと両腕を差し出す。
「抵抗しませんよ。だから後ろの二人には危害加えないでくださいね。もう十分怪我してますから」
少しだけ後ろを振り返り変装しているがきっとバレバレの再不斬とハクの身の安全を先輩に願った。先輩はめんどくさそうに髪をガシガシと乱暴に掻いた。
「わぁーってるよ。お前さんらも災難だったな、コイツに目付けられて」
「いえ、ヒカリさんのお陰でボク達は生き延びられたものですから。感謝こそすれど恨むことなんてありえません」
「………さっさと連れてけ」
ニッコリと微笑むハクとまったくブレない再不斬は敵地と言えど大物と言える雰囲気を出していった。
「うわっ。高圧的。萎えるわ。あー、一応牢屋に入ってもらうけどそんな悪いようにしないから。コイツ覗いてな」
うわ、それって死亡フラグ?
けど火影がそう簡単に私を始末させるとは思えない。
先ほどまでの茶化す空気を壊し、私は真剣な表情へ切り替える。
「………火影はなんと」
「直接言うってさ。お前は俺と来い。とりあえず暫くは動けねぇと思え」
「分かりました」
とりあえずすぐに首が無くなることはなさそうだ。
他の忍びが二人を連れていくのを見届けて、先輩が「おら行くぞ」と私の後ろに回った。それに頷き歩き出す。だが先輩が私だけに聞こえるように耳打ちをした。
『それとソイツ逃がしとけ』
しっかりと懐に潜んでいるイオウに気が付いている。さすが見た目と違って優秀な先輩だ。私は真正面を向きながら
「………感謝します」
と礼を言った。誰に対してかは周りも分からないだろう。
「面倒ごとは勘弁だぜ」
ほんと素直じゃない人。
イオウには機会を伺って会うチャンスを作ることを約束し、その場で密かに抜け出てもらった。たぶん、一旦向こうに帰るだろう。それから二人とは別々の場所へ連れていかれ、拷問されるなんてことはなく先輩の言う通り特殊な牢屋へ連れてこられた。
誰もいない、真っ暗な音のない世界。
そういえば、以前も似たような場所に来たことがあるのを思い出した。イタチを救い出す為に無茶して乗り込んだあの場所だ。
あの時は、ただイタチを助けなきゃという想いだけで動いていたから周りを見る余裕はなかったし、認識もなかった。
だが今自分がぶち込まれる対象になると、ああそういえばこんなところだったっけ?と不思議な気持ちになる。
少しだけイタチの気持ちが理解できるかなと馬鹿馬鹿しい期待感が生まれるが、そもそもイタチと私の立場が違うのでそれも無理なことかと肩を落とす。
あー、サスケとナルトはどうしてるかな。
まだ帰ってきていないはずだから大丈夫だとは思うけど、これ以上拘束時間が延びるようならこっちも一手考えなくちゃいけないかもしれない。
だがその考えは杞憂に終わった。
ついに火影と面会することができたのだ。檻の向こう側でついに待ち望んだ声がした。
「ヒカリ、三代目の許可が下りた。行くぞ」
「先輩」
先輩は檻の解錠をして中に入ってきた。そして地面に座っている私の後ろに回り込んでしゃがみ、私の目元の布をほどいてくれる。
「お前、メシ食えよ。ここずっと食ってねぇって聞いてるぞ」
「食べる気力ありませんでしたから。大丈夫です。それよりも火影と面会を」
急に開けた視界に眩暈を覚え軽く慣れる為に目を一度ぎゅっと瞑って頭を振る。そしてもう一度開く。うん、大丈夫。
先輩から介助されながら立ち上がる。
「その前になんか食えって。顔色悪いぞ」
「そうですか?私は別になんともないんですけど」
「………お前、マジで大丈夫か」
やだ、先輩がいつになく気遣わしいだなんて。
それほどに私の体調は悪いのか。なら使える。
「いいから行きましょう。先輩の言う通り血色が悪い顔ならなおさら火影との面会で役立てますから」
「打算的だな」
「なんでも利用できるものは利用します」
早く行くぞと先輩を促して先に牢屋を出る。先輩が「先に行くか?」と慌てて後から付いてくきた。
さぁ、ここからが正念場だ。
なんとかしてこちらが有利である条件を提示しなければ。
だが自分が勇み足にならないように気をつけなければと気を引き締めて火影の部屋を目指した。