君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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背負うからには命を賭ける。ヒカリという少女の内面が伺いしれるお話しではないかと思います。


2

腕を掴まれて逃げられないような状況の中、火影の部屋へ入室する。いつもなら事務仕事で慣れている部屋の出入りも妙な緊張感に包まれていた。護衛の忍びがまず目に入る。

私の顔を見てやや強張った顔付きで睨まれたので澄ました顔で営業用の微笑みで返した。

偉そうに両膝を机につき、出迎えた木の葉のトップ火影、ヒルゼンは

 

「来たか、ヒカリ。まずはお帰りと言っておこうかの」

 

と皮肉たっぷりの挨拶をしてくれた。私は一度も木の葉を故郷だと感じた事は一度たりとてない。これははっきりと私に対する嫌味そのもの。だったら私も遠慮なく言い返してやれる。

 

「ありがとうございます。火影。さぞ貴方の寿命を縮めさせられたかと思うと清々しい気分です」

 

とにっこり微笑んで答えた。それに火影付きの護衛忍びが怒気を露わにする。

 

「おい、言葉が過ぎるぞ!」

 

「構わん。それを解いてやれ」

 

だがこれぐらい挨拶の内であると火影は気にした様子もなく私の手錠を外せと命を出した。それに意見する護衛忍び。

 

「しかし!無礼にもほどがあります」

 

「儂がいいというておるのだ」

 

よし、言質は取った。

 

「火影の許可が降りたようなので自力で外しますから大丈夫です」

 

外す手間を省けようとさせているのにぎょっとする護衛ら。

 

「なっ!自分で外すなど無茶なことを」

 

けど私の後ろに控えている先輩が頼んでもいないフォローに回ってくれた。

 

「あーコイツ大丈夫ですよ。勝手にやりますから」

 

「相変わらず規格外な奴じゃの」

 

火影から呆れた視線を向けられる。私は無視して器用に手錠を外す為、チャクラを封じているはずの倍以上のチャクラを出して手錠自体に負荷を掛ける。抑え込む力よりもそれを上回るチャクラの量に手錠はキャパオーバーとなりあっさりと壊れて床に落ちた。

 

 

「脆いですね。もっと強化した方がいいですよ」

 

皮肉を込めてアドバイスを送ると先輩から頭を軽く小突かれた。

 

「いた!」

 

「お前あっさり壊すな!いくらかかると思ってんだ」

 

「知らないもん。だったら私に使わなきゃいい話だし」

 

叱られてつーんとそっぽを向く。

 

「お前ねぇ」

 

余裕綽々な私の態度に火影は苦笑しながら

 

「構わん、ヒカリと二人にさせろ」

 

と命知らずな命を出す。流石にそれは危ないと護衛忍びらが猛反対した。

 

「三代目、それは危険すぎます!」

 

「それだけは承知いたしかねます。いつ貴方に牙を向けるか、この……うちはの裏切り者は。イタチ同様信用に欠けます」

 

その中傷する言葉にピクンと反応してしまった。

ついその忍びの男を睨み返す。

 

うちはを裏切らせたのは一体何処のだれか、分かっての発言をしたのか、この男は。そもそもお前がイタチの名前を軽々しく口にするんじゃない。

 

「黙れ、屑が」

 

にじみ出る殺気と共に低い声で相手を威圧する。ビクリと男は警戒態勢を取った。だがそれを制したのは火影だった。

 

「やめよ、無駄な争いだ。ヒカリ、すまない。今のは儂が代わりに詫びよう。大丈夫だ。口は出すが手は出さん。じゃろ?」

 

今、この場で争えばサスケにも影響が出るぞと視線で諭され、仕方なくこちらも敵意を消した。

 

「………それは勿論。貴方は火影で誰よりも木の葉で尊ばれるのですから」

 

「俺残ってますから大丈夫っすよ」

 

暢気に手を振って護衛忍びらを追い出しにかかる先輩、ナイスです。私も少々頭に血が上ってしまった。

 

穏便に対話が望めるのならそれに越したことはない。

 

「ということだ。お前達は下がれ」

 

「「……御意」」

 

渋りながらも護衛忍び二人は部屋から出ていった。私に疑心の目を最後まで向けながら。

 

二人が出ていった後に舌を出してあっかんべーしてやった。

 

三人だけとなった部屋で重苦しい空気を最初に壊したのは火影の謝罪からだった。

 

「すまんな、イタチの件は口に出すべきではなかった。儂の指導不足じゃ」

 

「重々承知しています。自分の立場は木の葉の者に受け入れられることはないと。それよりも本題へ」

 

どの口がそれを言う。

建前の謝罪など不要だ。私は切り捨てるように話の先を促した。

それに同意見だと火影も浅く頷いた。

 

「さてヒカリ。今回の霧の抜け忍を木の葉に招いた理由を訊かせてもらおう」

 

まずそこからか。

 

「生きたいと願ったからです」

 

「ほぅ。それで連れてきたと」

 

火影の目がすぅっと細められる。気に入らないから、納得に欠けるか。

だが本音だから仕方がない。

 

「はい。今回の件でご迷惑をおかけしたこと謝罪いたします。それを踏まえた上でお願いがあります。あの二人を木の葉に迎えることをお許しください」

 

火影に頭を下げた。このジジイに頭を下げるなど屈辱の極みだが二人の為だ。我慢しろと己を宥める。暫し頭を深く下げ様子を伺う。

しばらくして脅すような声にゆっくりと顔を上げる。

 

「お前が代わりに責任を取るというのか」

 

そこには火影たるヒルゼンの顔があった。木の葉を背負う火影という役職に縛られる男の顔だ。同族を保護し、他者を切り捨てる鬼だ。だが今はこの鬼に逆らうのは賢明ではない。

この男が望むことを躊躇いなく口にして答える。

 

「取ります。この命いかようにもお使いください」

 

「おい!」

 

先輩が咎めるように声を挟んだ。だが私は口を挟むなと手で制した。

 

あくまでこれは私個人と火影とのやり取り。

 

「………」

 

だがここで素直に命は差し出せない。私にはその確固たる理由がある。

 

「ですが、私はまだ死ねません。サスケの為に死ぬことはできません。ですから貴方が提示する条件を飲みます。この身役立つことでしたらなんなりと」

 

「………では儂が選んだ任務を全てこなしてもらおうか」

 

「構いません」

 

「期限は一か月じゃ。それを過ぎたら相応の覚悟をしてもらおう」

 

「分かりました」

 

「任務は単独とする。手助けは一切やらん。それでもよいのか?」

 

「やります」

 

全て躊躇することなくキッパリと受けごたえする私に火影は逆に戸惑ったようだ。

 

「………そこまでして他者を懐に入れる理由はなんだ。何がお主を駆り立てるのだ」

 

駆り立てる?そんな難しい話になっているのだろうか。

私には理解できない。というか火影そのものが信用ならないのだ。言動全てが。

 

「波の国で声を掛けた私に彼らは信頼して木の葉まで付いてきてくれました。その信頼に応えたい。生きたいと願う二人を無下にできません。ただそれだけです」

 

木の葉はうちはを見捨てた。斬り捨てた。

その結果が今の木の葉を作り上げた。他者を決して受け入れないのは木の葉の方だ。

 

「お前にとってあ奴らは赤の他人じゃ。だが逆にお前が木の葉の里の者に心開けばもしかしたらお前を受け入れるやもしれぬぞ。それでもあ奴らを庇護下に置くのか」

 

今更可能性の話を持ち掛けるのか。

今まで抑え込んでいた怒りがふつふつと沸き上がる。

言葉として出さなかった想いが、溢れかえりそうになる。

声を震わせ、ギッと火影を睨む。

 

「……木の葉は決してうちはを受け入れない。そう証明したのは貴方方のはずです。だからうちはは私とサスケを除いて全滅した。苦悩するイタチを貴方はどうしましたか?無常に切り捨てたようなものではありませんか。その口で今更木の葉を受け入れろと?私が木の葉を愛することなど、ない。断じて」

 

これで私は敵対しても構わないと宣言したようなものだ。

だが火影は私を罰そうとはしないだろう。

 

私は奴にとって生きる罪の塊のようなものだから。

 

私とサスケがいる限り、火影はうちはの事を忘れない。

忘れさせやしない。絶対に。

 

視線を交わす私達だが先に逃げたのは火影だ。

 

「……下がれ。話は終わりだ」

 

「はい。それでは一か月後に」

 

軽く会釈して先輩の脇を通り過ぎ部屋を退出した。

後ろから先輩の呼び止める声を無視して私は任務出立の為準備をするべく家に戻った。そこから怒涛の日々を駆け巡ることになった。多重影分身の術で同時に任務をこなしつつ、波の国から無事に帰還したナルトとサスケの世話をこなしつつの、体力勝負の毎日。怪我を負うこともあった。だが致命傷に至る傷ではないと自分で手当てをし、また任務へ走った。

そのお陰で再不斬とハクは偽名で私の監視とその他もろもろの条件付きで木の葉で暮らすことの許可が下りた。

 

万華鏡写輪眼の乱用で酷く症状が出てしまった際、イオウが私の身を案じてカカシ先生に事情を打ち明けてしまった事は想定外だった。でも深く事情を突っ込むことはなく、その後も体調を気遣ってくれるカカシ先生には感謝している。

でも少しだけ以前よりも雰囲気が変わったような気がする。

優しい、のは前からか。

雰囲気が柔らかいというか、いつも視線を感じてこそばゆいみたいな。何か心境の変化でもあったのだろうか。

機会があれば聞いてみようと思う。

 

もうすぐ、他の里と合同で行われる中忍試験が開催される。

きっと第七班は参加するはずだ。

 

そうなったら、もう戻れない。―———ついに決断する時が来た。

 

【もう後戻りするつもりはない】

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