君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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蛇との逢引。


6

体調の悪さは時間の経過と共に酷くなっていく。

 

大蛇丸と会う予定だった約束の時間を大幅に過ぎてしまった。すでに通称、死の森での第二次試験は始まっている。

天の書と地の書を両方を手にする為、サスケとナルトそしてサクラちゃんがが忍として命賭けて他の里の忍としのぎを削り合って知、忍、体そしてチームワークを駆使して戦う最中、私はさきほど戦闘を終えたばかりの大蛇丸本人からサスケに呪印を施したことを報告される。

 

「サスケ君に呪印を施したわ。———いいわね」

 

既に潜入するめぼしはついているのか、音の葉の忍び装束を纏っている大蛇丸は報告というよりは確認として伝えられた。

 

「………うん……」

 

私の心の迷いを責める大蛇丸の視線が怖くて顔を逸らして弱々しく頷き返す。

 

自分でお願いしておいて、いざ面と向かって言われると心苦しいものがある。

せめてあの子の、サスケの呪印の痛みを少しでも取り除いてあげたい。だが私がノコノコ顔を出すわけにはいかない。すでに大蛇丸が里に潜入している事も火影に報告されている可能性が高い。その点を辿れば何れが私と大蛇丸が内通していると悟るだろう。そうなれば、私は手配書レベルSの仲間入りだろう。この顔も他の里の忍びに知れることになる。そうなる前に里を脱出しなければならない。

 

今は、まだ機会を伺わなければ。

 

思考の波に意識を深める中、大蛇丸からとんでもないことをついでのように付け足された。

 

「それとあの九尾の子にもプレゼントしておいたわ」

 

「……プレゼント?一体何の話……」

 

「五行封印」

 

その言葉を聞いた途端、ナルトに施されている封印術にさらに厄介なものを施したと理解した。

 

「なんで!?ナルトは関係ないでしょ!」

 

カッと頭が熱くなり反射的に大蛇丸に駆け寄って肩を掴んで怒鳴り返す。だが簡単に腕を払われる。熱くなるなという意味もあるんだろうがそんなの関係あるか!

 

「サスケ君を助けようと邪魔してきたの。予想以上に強敵だったから施させてもらったわ。それにあの子はもっと伸びる。今の内につめる芽は潰しておかなきゃ」

 

状況が状況だったんだろう。仕方なかったこととはいえ、感情的になり舌打ちをしてしまう。

 

「っチ!……それって解除できる人いるの?」

 

私の問い詰めるような質問に大蛇丸はもったいぶった言い方をした。

 

「今の所、アイツかしら。まぁ会う機会があれば、だけど」

 

「解除は可能なんだね。すぐにナルトの命に関わらないならいい。でももしもの時は私がやる」

 

やり方など知らないが、大蛇丸なら知っているはず。その時は何が何でもやり遂げてみせる。その決意を語ると大蛇丸は呆れたように肩をすくめた。

 

「アンタなら可能な話だから怖いわね」

 

小馬鹿にされた気分だが、これが大蛇丸なりの褒め方だ。付き合いが長い分だけ彼の性格もなんとなく理解ができる。

 

「二人は無事なんだよね。サクラちゃんは?」

 

「殺気飛ばして震えるくらい元気だったわ。サスケ君は、血予想外に血の気が多くて逆に困ったわ。今頃呪印の熱で苦しんでるかもね。ナルト君はどうだか、案外図太い性格だから死なないわよ」

 

なんか適当だな。大体下忍相手に殺気飛ばすなよ。

 

文句を言いかけたが、ここで余計なことを言っている暇はない。慌てて言葉を飲み込んだ。大蛇丸は何か言いたげねと視線を鋭くさせるけど、別にという意味で手を振って否定する。誤魔化すわけじゃないけどふと、大蛇丸の手に傷があることに気づいた。

 

「………大蛇丸は、手、怪我してる?」

 

「ああ、これ?元部下の子にやられたのよ。すぐに治るわ」

 

そんないつでも脱皮できるわけじゃないんだから。

 

いかに本人が平気そうにしていようが私は気になる。

手当なんていらないのにと愚痴をこぼす大蛇丸を無言の圧力で黙らせ腰元から消毒剤と包帯を取り出して手際よく治療する。大蛇丸はまったく痛そうな顔をしないけど見てる方が痛々しいのだ。

 

「みたらしアンコ上忍ね。随分と弟子に厳しめだこと」

 

「そりゃ可愛い子には飴ばかりじゃ伸びないでしょう。鞭も必要」

 

「限度があるでしょうに」

 

Sっ気が強いな、相変わらず。

 

「よし終わった!」

 

あっという間に手当は終わった。日頃からサスケやナルト、はたまた自分の手当と手慣れたものだ。

やはり手際よくこなさねば時間も勿体ないしね。

 

「ありがとう」

 

「……どういたしまして」

 

大蛇丸から素直にお礼を言われて思わず面食らってしまった。普通に言うんだ。

内心感心していると何かに気づいたように大蛇丸が私の手を取った。冷たくてヒヤッとする彼の手は人の温かみを感じられない。何やら当の本人は私の手を観察して力込めてとか、握ってみてとか指示を出してくる。私は言われたままぐーぱーしたり、瞳見せてと言われれば素直に応じる。

 

「なに急に。お医者さんごっこ」

 

「馬鹿違う。―——万華鏡写輪眼の乱用に多重影分身の術による疲労蓄積及びその呪印の不適合による症状。ヒカリ、やっぱりアンタにその呪印は合ってないわ。その証拠に人格汚染が始まっているでしょう」

 

ゲっ、今ので分かるのか。流石全ての忍術を極めたい男だ。

 

誤魔化すように舌を出しておどけてみせた。

 

「……やっぱ、その影響かね。最近食欲が~」

 

「それもそうだけど、分かってそのままにしてたわね」

 

なぜもっと早く連絡しなかったのと怒られて蛇の睨みで石化はしないけど萎縮してしまう。バツが悪く視線を逸らす。

 

「………力はないよりも合った方がいいから」

 

「そのまま所持し続ければ何れ人格を『上書き』されるわよ」

 

脅しとも死刑宣告ともとれる大蛇丸の見解は多分正解のはず。だって当の本人ですらそれもあるかもと頭の隅に考えているから。

 

「……残忍なヒカリさん誕生だ」

 

せめてサスケやナルトなど守りたい人達に危害を加えることがないよう相手を識別できるような性格ならいいんだけど。

 

私の諦めから出た言葉に珍しく大蛇丸が怒りをあらわにした。

 

舌!長い舌が出てきた!

 

「茶化してる場合じゃないでしょう。今のヒカリが消えるかもしれないのよ」

 

心配してくれるのはありがたいが、私は医者じゃないし今更この呪印を消すつもりはない。これがないともっと強く慣れないもの。それに、今のままじゃ仮に消そうとしてもその手段がない。

 

「茶化すしかないじゃない。そんなの他にどうしろって言うのさ。今はここから離れられない私は「木の葉崩し」!?」

 

その言葉に戦慄が走った。

 

「これを使って木の葉を出るわ」

 

「それは、まだ計画段階じゃ!それにサスケを抜け忍にさせることが第一優先のはずじゃ!?」

 

「あの勘のイイ爺が嗅ぎまわりだしたわ。先手を打たれる前にこちらが動かなければ叩かれるだけよ。それに積年の恨みを晴らすにはいい機会じゃない。私じゃなくてヒカリがあの老いぼれに引導を渡してもいいのよ。その舞台も用意してあるわ」

 

ぺろりと私の頬を舌先で舐め上げる大蛇丸はどこか楽しそうに口端を上げる。だが私は強張った笑みを浮かべ彼を皮肉った。

 

「……自分は楽しようってわけ?火影を殺せば確実に大物になるけど後始末が大変じゃない」

 

「いいえ。ヒカリが嫌なら私が殺すわ。弟子である私の役目ね」

 

大蛇丸は本気だ。

本気で火影を殺そうとたくらんでいる。他の里とのパワーバランスを崩して大きな戦争を引き起こそうとしている。

 

私を案じて提案しているのは本当だろうが、他に打算がないわけじゃない。大蛇丸はそういう男だ。

 

だが私に火影を殺せる自信はない。卑怯だから逃げることにした。

 

「…………任せる……」

 

「そう、分かったわ。火影殺害後アンタは私と一緒に脱出する。サスケ君は後から別の護衛隊と共に抜け忍とさせる。異論は」

 

「………」

 

あるわけない。私に時間は残されてない。無言で顔を俯かせる私に反対の意思はないと判断した大蛇丸は最後にしっかりと釘を刺すことを忘れていなかった。

 

「呪印は使わない事、いいわね。その体に馴染んだ私の呪印はもう私の手に負えない。次に何かあっても予想できないわ。感情に支配されないよう己を保ちなさい」

 

「……善処します」

 

使わないとハッキリ口にしない私に彼は深いため息をついた。

 

「……じゃ、またね」

 

大蛇丸は瞬身の術であっという間に消え、一人残された私は急に責任の重大さ、重圧に押しつぶされそうになりその場にしゃがみ込む。

 

早まってしまったのか、私は。

イタチと再会を果たすために、サスケを利用して抜け忍になろうとしている。そうだ。自分の為にあの子を利用している。

 

あの子を抜け忍とさせるべきなのか。私欲の為に?

けど、まだ間に合う。

 

サスケを巻き込まずに私だけ抜け忍になる手もあるんだ。

もしあの子を里に残すなら手を打てる。あの爺だって。

 

誰かの手に任すなら、自分の手で終わらせる。

それでうちはの皆の無念を晴らすことができる。

ただ、あの爺と言えど現役火影。刺し違えも覚悟しなければ。

 

「………殺す、か」

 

あっさりと死ねば楽になれる。……私は、死ねないのに。

羨ましいという感情は不謹慎なんだろうか?

 

さて、このまま悩んでいても解決するものでもない。

 

「………バレる前に消しますか」

 

沈んだ気分を無理やり変えて立ち上がった。

 

なんせまだ仕事中だ。トイレに行くと言ってこっそり抜け出したのだから。

これからまた火影の放棄した書類の山を整理しなければ。

『本体』の方は仕事場に戻ってしっかりと火影自らの元監視されてるはず。また気の休まらないデスクへ戻らなくてはいけないと考えるとため息をつかずにはいられない。

 

「はぁ」

 

憂鬱な思いを吐き出して、私は影分身の術を解いた。

 

【戻ったら居眠りしてたみたいで意地悪い笑みを浮かべる火影に追加の書類渡された。】

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