君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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はい入院!


8

めでたくはないが、初めて木の葉病院に強制入院することになった。しかもすでに入院に必要なパジャマとか下着とか必要なものは全て揃っていた。わざわざ新品を用意してくれたらしいが、その用意した相手がだれか。カカシ先生らしい。

 

ショック!!

なんで、なんでっ!私のこの豊満なバストサイズ知ってるの!?

いやそれだけじゃない。スリーサイズもだ。全て網羅されている。恐ろしいコピー忍者、はたけカカシ!

 

「お前、馬鹿じゃね」

 

開口一番に体調を気遣うわけじゃなく先輩から冷めた視線を向けられつつディスられた。

 

「馬鹿じゃないですよ。ちょっとおっちょこちょいなだけっていうか~」

 

サスケと隔離された個室に閉じ込められた私はベッドに縛り付けられている、なんて状態にはされていないが、似たようなものだ。大蛇丸からまた襲われるかもしれないと危惧され、サスケ同様に暗部から護衛されている。だが来たのは先輩一人だった。話を聞くと私相手なら先輩一人で足りるという。……別にいいんだけどさ、顔見知りがいた方が退屈も紛れるってものだが、なんか、腹立つ。

 

だが私の軽い説明は先輩お気に召さなかったようだ。にゅっと手が伸びて私の頬を抓みあげる。

 

「ただのおっちょこちょいなら大蛇丸の呪印もらうっていうのかよ?え?」

 

「アダダダ!」

 

容赦ないその痛み。あまりの痛みに涙目になってしまう。痛がる私の様子に満足して先輩は手を離した。ヒリヒリとたぶん赤くなっているであろう頬をさすりながら心の中で先輩に向けて呪詛を送った。

 

バルスっっ!

 

「お前今余計な事考えただろ」

 

「いいえまったく」

 

ぎろりと睨まれたが口笛を吹いて誤魔化した。先輩は酷く疲れたように大きなため息をわざとらしく吐いて、近くにあった椅子を引っ張ってベッド脇近くへ腰かけた。

 

「ヒカリの所為で余計な任務に就く羽目になっちまったじゃねーか」

 

「いいじゃないですか。私とお喋りできる特典ついてますよっていた!」

 

最後まで言わせてもらえずチョップを喰らった。

 

「いらねぇよ。お前一応病人だろうが。大人しくしておけよ、カカシ先輩から睨まれてんだよ俺。大人しくさせてなかったら今度飯奢ってもらえねぇし」

 

「カカシ先生と知り合いだったんですか。っていうか奢られることに何かポイントが?」

 

てっきりカカシ先生に憧れを抱いてるとかそういう青春話かと思いきや先輩は至極真面目に

 

「そりゃお前、暗部の先輩なわけだし。タダ飯っていいじゃん」

 

と答えた。全然青春話じゃない。

 

「そりゃそうですけど」

 

結構ガッポリ稼いでる癖に貧乏くさいなという感想を抱いた。私の内なる感想など知らぬ先輩はコソコソと声を潜めて顔を近づけてきた。

 

「実際のとこ、どうなってんだよ。お前が大人しくあの大蛇丸から術喰らうとかありえん」

 

これは教えないと納得しないやつだ。

やっぱり気になるか。突っ込まれるとは覚悟してたけど無難な答えにしておこうか。まさか自分から受けに行きましたなんて素直に説明できるわけもなし。

 

もったいぶって間をあけ、真剣な表情に切り替えてその出来事をさも真実のように説明した。

 

「……任務の合間に油断しまして……一般人を装った大蛇丸に襲撃を受けた際、呪印をくらいました。相手はいかに私と言えど、あの三忍と称えられるほどの才能を持つ大蛇丸。一矢報いるのが精一杯というもの。ですが日常生活には支障をきたしていなかったので報告にするに値しないかと判断しました」

 

先輩はお面をくいっと上げて滅多に見せない素顔を曝け出した。目が疑心に満ちている。

 

「………お前それ本気で言ったの?カカシ先輩にも、火影様にも?」

 

あ、やっぱりそうだよね。都合よすぎるもんね。あっさり信じるわけがない。だが私は意地でも嘘をつき通す。

顔を俯かせ、声のトーンを少し低くしいかにも落ち込んでいる風を装う。

 

「カカシ先生には。……火影には会っていません。向こうも今は会う必要もないと判断しているので放置しているのでしょう。今は大事な中忍試験の真っ最中です。大蛇丸からも試験を中止しないように釘を刺されているとか。あまりおおごとにしない方がいいはずです……。私は厄介者ですから」

 

最後に微かに口元を緩ませ寂しげな表情を作れば、火影に配慮しつつ自分の立場はしっかり弁えてますからとアピールできるというわけだ。だが先輩にはまったく意味がなかった。

 

「あっそ。なんとなく企んでるのは分かった。それとヒカリは暫く入院だぜ。そのつもりでいとけ」

 

あっさりと私の迫真の演技を流されだけではなく、死刑宣告までしてきた。信じられないと顔を強張らせ私は、先輩に縋りつこうとベッドの上に立ち上がりお見舞いのフルーツ籠を上から先輩目がけて投げてやろうとしたが素早く逃げられた。

 

「困ります!サスケとナルトの世話が!逃げるな卑怯者めっ」

 

「サスケはまだ意識を取り戻してないが経過を見てから退院の予定だ。その後はカカシ先生が面倒を見ることになってる。ナルトについてはあー、アイツらに任すことにしてる。何が卑怯者だ。それ火影様がお前にって差し入れしてくれたもんだぞ」

 

「尚更いらんわっ!アイツラって誰ですか?う、重い……」

 

両手で投げ飛ばそうと持ち上げたはいいが、重たすぎてすぐにふらついて自分の頭の上に乗せる形でベットに顔面から突っ伏した。先輩はすぐにやたら重たいフルーツ籠を持ち上げて救出してくれた。そしてナルトの世話をしてくれるという人物の名を言った。

 

「再不斬とハク」

 

「!」

 

「知り合いだろ。保護者もいるんだ。信頼していい」

 

「先輩、意外です。偏見とか持たないんですか?」

 

まるで鉛でも入っているような重さから解放されヨタヨタしながらベッドの中にもぐる。先輩は平然とまたフルーツ籠を机の上に置いて戻した。

 

「なに偏見って?別にお化けとかじゃあるまいし。偏見もなにもないだろ?同じ人間なんだし」

 

「はぁ~~。なんか初めて先輩を尊敬しました。先輩も人間だったんですね」

 

「人間じゃないならなんだと思ってたんだ」

 

「……あず」「それ言ったら首刎ねる」

 

首元にきらりと光るクナイが押し当てられていた。

ヤバイ、唯一触れてはならない禁句ワードについ、会話の流れで触れてしまった。冷や汗を額に浮かべつつ、強張った笑みを張り付け必死に話題を逸らす。

 

「あ、あ、ああずまんが大王って知ってますか!?あれ超面白いんですよね!」

 

「知ってるし読んだこともある。次言ったら、死ぬぞ」

 

目が、マジだ。次に私の命はない。

ゆっくりと退いていくクナイと先輩のマジの脅しに

 

「お、御許しを~~~~!!」

 

ベッドの上で必死に土下座した。だが先輩は非情だった。

 

「駄目だ」

 

と一言で斬り捨てる。

 

「そ、そんな~」

 

涙目になる私に先輩は椅子に座り直し足を組んで思案する素振りをした。

 

「………そうだな、俺の信頼を取り戻す方法は一つだ」

 

「な、なんですか!?なんでもします」

 

暗部でも仲が良い先輩と距離を置かれるのは精神的にも辛いので許してもらえるのなら何でもすると意気込んだ。先輩がいるからぼっちにならずにいるのに、先輩からも嫌われたら本当のひとりぼっちになってしまう!お弁当一緒に食べる人がいないなんて辛すぎる。

だが先輩から提示された条件はあまりに非情、あまりにひどすぎるものだ。

 

「カカシ先輩にお色気の術使ってなんでもいいから告白してこい。そうだな、『私のバストは普段Dカップって偽ってますけどバリバリのAカップです』とかな」

 

「そ、それは殺生すぎますぅぅう!二度と使わないって誓ったから無理っ!それに今Aじゃないもんっ!ちょっとBだもんっ!」

 

「ヒカリ、お前、今なんでもするって言ったよな?それは嘘だったのか?それとあんまり変んね、それ(胸)」

 

「あうあうあう。……鬼っ!鬼だぁあああ――――!!」

 

堪えきれず大粒の涙を流す私に逆らう術は、ない。

絶望を胸に抱き、私は輝く黄金色のボディービルダーとなって自分の胸筋をぴくぴくさせながらキラリと光る白い歯で嘘八百の告白をしなければならない。二度とこの術を使わないと誓ったカカシ先生へと。これも先輩への服従の意を示すための儀式と思えば、辛くはない、ないはずだ。

 

「……分かりました。先輩の為に、裸一貫となって一世一代の告白をしてまいりますっ!それで、それで許していただけるんですよね!?」

 

ドアの外からでも聞こえるような声を上げる私に先輩はにやりと意地悪そうな笑みを浮かべた。

 

「ああ。水洗トイレのように流してやる」

 

「汚いっ!表現が汚いわっ全てにおいて汚い。うぅ、酷い、やっぱり先輩の鬼畜~~」

 

顔を両手で覆ってさめざめと泣く私は、ひたすら鬼畜鬼畜と大声で連呼した。外に聞こえるように。

 

「なんとでもいえ。俺の禁句に触れた奴に仏心は見せん」

 

先輩は自分の名前が嫌いというか口に出されるのが嫌みたいで、いつも私に先輩と呼ばせている。だから同僚の方がつい先輩の名前を呼んでしまった時には、地の雨が降るとまで恐れられている。

 

先輩の七不思議のひとつだ。

 

命がけやり取りをしている私達の会話を心配して盗み聞きしていた看護師の女性のお陰でカカシ先生を巻き込んでひと騒動に発展したのは言うまでもない。

フッ、甘いな、先輩。ここの病院はな、噂好きの看護師さんがいるんだぜ。リサーチ済みの私が使わない手はないだろう。

 

案の定、次の日、先輩は酷く落ち込んだ様子で病室に入ってきて、

 

「昨日の事はなかったことにしてくれ」

 

と謝って来た。私が優しく

 

「何かあったんですか?」

 

と尋ねると、先輩は憔悴しきった声で

 

「ロリコン変態鬼畜忍って暗部の仲間から言われて変質者扱いされた。里の中でも噂になってる……。カカシ先輩から面貸せやって夜中に奇襲された。一睡もできなかったマジで殺されるかと思った」

 

とプルプル震えだした。ああ、可哀想に。カカシ先生からどんな精神的攻撃を受けたのか知らないが、私はニッコリ微笑んでアドバイスを送った・

 

「人の噂も七十五日、ですよ」

 

「ヒカリ否定してくれよ!?」

 

「めんどい」

 

話は終わったと布団被って逃げた。

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