ナルトside
ヒカリねーちゃんにスッゲェ言いたいことがある。っていうか伝えてぇ。
うずうずして今にも喋っちゃいそうだけどよ、肝心のヒカリねーちゃんが長期任務ってどういうことだよ。仕事忙しすぎでいつか過労死しないか心配だってばよ。
―——ヒカリねーちゃんの髪はいつも綺麗でサラサラしてて太陽の光を浴びると輝いてた。
でも里の女子みたいに髪いじったり、ヘアスタイルを変えたりしなかったから勿体ないとずっと考えてた。だからオレの給料でヒカリねーちゃんの髪を飾れるものが欲しいと思ってた。でもいざどんなのが良いかって考えるとあれもこれもって迷って結局買えず仕舞い。思い切って女子の意見としてサクラちゃんに相談するつもりだったけど、サスケ大好きなサクラちゃんに軽くあしらわれちまった。邪魔よ、ナルト!ってな。
はぁ、ホントサスケ一筋だよな。
そんなこんなでいまだに買えず仕舞いのオレは今日もエロ仙人の元でチャクラ解放に向けてひたすら修行中。
河原で男二人顔を付き合わせるとかどんな罰ゲームだよ。
その内容はオレの中に眠る二つの内の一つ、九尾のチャクラを引き出す方法だ。エロ仙人がその話を持ち出してきた時につい思い出したようにぽろっと口に出した。
「ああ、それってオレの中に眠る九尾の奴のこと?」
「……何処でそれを知った」
途端にエロ仙人が雰囲気がガラリと変わった。まるで空気が鋭くなって息苦しさを覚えたけどまぁオレの気のせいだと思って適当に流して教えた。
「え、ヒカリねーちゃんだってばよ。前に教えてくれたんだ。オレの父ちゃんと母ちゃんのこと。オレの父ちゃん火影の四代目だったんだな!じっちゃんってば全然教えてくれぇんだからケチだよなー」
「……意外に落ち着いておるのぅ。小僧」
エロ仙人は目を細めて腕を組んだ。なんだよ、餓鬼みたいに取り乱したりするってか。
「落ち着いてるっていうか、オレの事大事にしてくれてた両親だって教えてもらったから、あーオレって愛されてたんだなって気持ちはあるけど。なんで?」
「……いや、そのヒカリというのは、うちはヒカリのことか」
「そうだけど……、なんだよ。ヒカリねーちゃんに手ぇ出そうってわけじゃねぇよな!?」
絶対ヒカリねーちゃんはやらん!
フンッ!と鼻息荒くしてエロ仙人に威嚇してやった。けどどうやらオレの見当違いらしい。
エロ仙人にしては食いつきが違った。冷静っていったところか。
「フン、小娘に興味はないわ。……だが容姿はどんなんだ」
「なんだよ、やっぱ気になるんじゃんか!へへっ、いいぜ見せてやるよ。七班の皆とカカシ先生と一緒の時に撮ったんだ」
懐からお気にいりの写真を取り出す。いつも胸ポケットにしまってるこの写真はオレのお宝だ。これがあるからヒカリねーちゃんと離れててもそんなに不安にならないってばよ。
「じゃーん!どうだ!綺麗だろ」
見せつけるように掲げてエロ仙人に見せた。
カカシ先生と並んで立つヒカリねーちゃんをバックにしてオレとサスケとサクラちゃんが座って写りこんでいるとっておきの写真だ。元々ヒカリねーちゃんは写真が好きじゃないみたいでほとんど自分から写ろうとはしてない。けどオレやサスケのは記念だからって一杯撮ろうとしてるし、アルバムも一冊じゃおさまりきれなくて数冊分あるくらいだ。
そんなヒカリねーちゃんがカカシ先生に記念だから一緒に撮ろうと誘われて渋々了承してくれた貴重な一枚。
「……なるほど……」(これがうちはヒカリ、か)
エロ仙人は食い入るように写真を見つめた。主にヒカリねーちゃんの方へ。
やっぱ美人だよな。見惚れるのも無理はないぜ。
「なぁなぁ!年上のねーちゃんが喜ぶプレゼントって知ってるか?」
「なんだ?一丁前に惚れた女がいるってか。カァー、生意気な餓鬼だぜ」
「餓鬼っていうな!大体エロ仙人に関係ないってばよ!」
写真を胸ポケットに大事にしまってつーんとそっぽを向く。恋愛に年齢なんか関係ないだろ。他人にとやかく言われる筋合いはない。
「いやいや大いにある。なんだ、その女は将来有望か?」
「当ったり前だって。なんていったってヒカリねーちゃんは将来火影の嫁だからな」
「火影の、嫁?なんだ、それは」
エロ仙人はいぶかしんで首を傾げた。そうだろそうだろ。すぐに理解できないのも無理はない。オレは胸を張って自信満々に声高らかに宣言した。
「オレ、つまりうずまきナルトの嫁だってばよ!」
「なんじゃ、小僧一丁前にこの娘っ子に惚れてんのか。いややめとけ、こういう純情そうなのに限って男を尻に敷くタイプだ。いや、そうに違いない!」
「なんだよそれ!適当な事抜かしてんじゃねぇぞエロ仙人!」
的外れなことばっかり言ってるエロ仙人に腹が立ってつい怒鳴り返す。
確かにヒカリねーちゃんに有無を言わさず従ってることもあるけどよ、でもそれはヒカリねーちゃんからの頼み事があって仕方がなくであって決して尻に敷いてるわけじゃない。うん、ぜったいそうだ。
「ワシを舐めるなよ。今まで星の数ほどの女を盗み見てきたのだ。間違いはない!それに、だ。よく見ろ!小僧。この娘、見栄を張りたいが故に偽乳仕込んでやがる。普段貧乳だろうそうだろう!?」
ビシィー!としまった写真に向かって指を指された。
「うっ、確かに写真撮るって言ったら普段の倍以上の胸に盛ってて違和感超ありまくりだってばよ。でも!これでヒカリねーちゃんが喜ぶんだったらオレは偽乳でも構わないぜ。それにただエロいだけの変態じゃんか!お前っ」
「変態ではない!ありのままの自分を受け入れぬことこそが己の胸に対して裏切りなのだっ」
ズガーン!!
ヒカリねーちゃんのアイデンティティが崩れるようなことをエロ仙人は堂々と宣言した。
こいつ、絶対ヒカリねーちゃんに会わせちゃ駄目だ。
ってオレがショック受けてどうすんだよと自分を無理やり正気に戻す。貧乳の話題はこれ以上続けるのは命の危険もあるので早々に話題をすり替えた。
「それよりもさっさと教えてくれってばよ!贈り物のこと」
「お、ああ。そうだったな。この貧乳娘が何を欲しがるかだが……」
「……その貧乳娘ってのやめろよ。ヒカリねーちゃん地獄耳だから絶対何処かで訊いてるってばよ」
「ガハハハハ!そんなわけあるか!『パコーン』グハッ!」
エロ仙人は馬鹿にして腹抱えて笑い飛ばした。けど何処からか木のお鍋の蓋が高速で跳んできてエロ仙人の頭にモロ直撃した。エロ仙人は後頭部を抱えて悶絶して痛みと戦っている。オレはごくりと唾を飲み込んだ。聞き耳立てられている。
エロ仙人はしゃがみ込んだままの体勢に青白い顔で、小声で「マジなのか」とオレに質問してくる。オレもしゃがみ込んで額に汗が浮かばせつつ、静かに頷き返した。
貧乳というワードはオレ達の間で禁句となった。気を取り直してさっそく贈り物の相談をする。その間もしっかりと修行は続けている。
「髪飾りとかどうだ」
「髪飾り…か」
「この娘、ひん、んん!ではあるが、中々美しい髪をしているだろう。そこで髪飾りなわけだ。これをプレゼントしてオレの為に白無垢を着てくれ、なんてプロポーズも言ってみたりしてな」
今禁止ワード言おうとしたな。でも上手く誤魔化してるからきっとヒカリねーちゃんも気づいてないはず。それにしてもプロポーズとか、まだまだ先の話だけど胸がドキドキする。
「おお!なんかリアリティあるある!」
「フッ、そうだろそうだろもっと褒めろ!」
頭に乗るエロ仙人だけどおだててもっと案を出させる。
「それでそれで!どんなのがいい?」
「そうじゃな、『下がり藤の簪』なんてのはどうだ?黒髪にも映えるだろ。これに着物でも合わせれば完璧だ」
「ヒカリねーちゃんの白無垢かぁ…」
滅茶苦茶綺麗だろうな。顔がにやけてぽわわんとオレの頭の中で妄想が広がる。
白無垢に身を包んだヒカリねーちゃんの髪にはオレが選んだ簪があって、そっと華奢な左手を取るとオレと夫婦の証になる対になる指輪が小さくもハッキリと主張されている。
『ナルト』
『ヒカリ、綺麗だってばよ』
触れたら弾けて消えてしまうんじゃないかっていうくらい綺麗でオレは躊躇いがちにヒカリねーちゃんの頬を手の甲でなぞる。ヒカリねーちゃんはくすぐったそうに目を細めて頬を赤く染める。良かった。消えない。
『ありがとう。ナルトも、恰好良いよ』
幸せってこんなにも胸が溢れそうなんだな。
昔はヒカリねーちゃんを見上げてたのに、今じゃ見下ろす側になっている。時の流れを感じつつ、少し屈んでヒカリねーちゃんの額に自分の額をくっ付けて、黒真珠の瞳と見つめ合う。
ああ、これがやっとオレの物になる。
『へへっ。……絶対幸せにするから』
『うん。一緒に幸せになろうね』
二人一緒に微笑みあって、ずっと手を繋いでいればきっと――――。
「おーい。小僧~」
「うわっ!ってぇ~」
いきなりエロ仙人のドアップが目の前にあった。つい仰け反ってゴツゴツしてる石の上に尻餅ついて顔を歪めた。
「どこまで妄想してるんだ、お前は。顔がにやけてたぞ」
「ち、違う!エロいことは考えてないってばよ!」
すぐに立ち上がり必死に言い訳をする。まさか大人になった自分の結婚式想像してたなんて口が裂けても言えない。
「ほぅ、エロいことじゃないならなんだっていうんだ」
「か、関係ないだろエロ仙人には!おら、修行始めるぜ」
「そりゃワシの台詞だってぇの」
呆れた様子で呟かれるがそんなの無視だ。今は修行に集中して、モノにしないと。
オレは、自分の中に眠る九尾とちゃんと話す機会を得た。前は、自覚はあったけど檻越しにまともに会話も通じないほどアイツは荒ぶってたからな。でもこれでちゃんと話し合える。相手を知るにはまずしっかりと向き合って話すのが一番ってヒカリねーちゃんが言ってたからな。
エロ仙人に崖から突き落とされて自力で助かるには口寄せの術を成功させるしかない。つまりここで九尾から力を借りられなければオレに待つのは死だ。何がなんでもチャクラの力を引き出さなきゃと焦る一方、九尾を憐れだと思った。コイツはずっと一匹でオレの中で過ごしてた。オレはヒカリねーちゃんやサスケがいてくれたから寂しくはなかったけど、コイツは違う。忌み嫌われて檻の中に封印されて、誰からも愛されない。不憫で可哀想だと思った。
大きなオレンジ色の獣は誰からも必要とされない獣だった。
檻の中で九尾はオレを喰らおうとしたけどまず腹を割って話し合おうとオレがドカッと胡坐をかいて九尾の前に座った。奴の爪が届くところにワザと腰を下ろして。
これは殺されても構わないと思われても仕方ない。だが九尾は頭が可笑しい小僧だとせせら笑ったけどオレはそれでも構わなかった。
『小僧、貴様、頭が沸いておるのぅ』
「へんっ!なんとでも言えよ。まずはオレはうずまきナルト!んでもって火影になってヒカリねーちゃんを火影の嫁にする男だってばよ」
『………しかも性格も可笑しいときた。あの忌々しい四代目とは似ても似つかぬ』
「父ちゃん知ってるんだよな!?教えてくれよ、お前のこと、父ちゃんの事」
『不思議な餓鬼だ。今お前は死にそうになっておるというのに』
「そりゃそうなんだけどよ、今お前と話さないと後悔するってばよ」
『―――良かろう。貴様に力を貸してやる。今は無事に生き抜け』
なんか九尾に気に入られるポイントがあったかは分からないけど九尾からチャクラをもらって口寄せの術を見事クリアしたオレは、大きな蛙を呼び出しちまった。
「ウォーでけぇ!」
『なんじゃ、小僧。自来也はどこにおる』
それが態度がデカいのなんのって。図体だけじゃねぇしオレは子分扱いにされちまった。
けど気分悪くなることはなく、しっかりと里へ送ってもらえた。エロ仙人とはその場で別れちまったけど始終あのおっさん感心してたもんな。よくあれだけのチャクラを引き出して気絶しないよなって。これもヒカリねーちゃんのお陰だってばよ。あれだけの全力鬼ごっこやればチャクラ引き出したくらいでくたばらないって。
里に戻ったら速攻、ハクのところに顔を出して簪を買うのに付き合ってもらった。久しぶりに友達の顔を見てまず驚いたのは髪形がバッサリ変わっていた事。女と間違われることが多いから切ったってハクはケロッとした顔で教えてくれた。まぁ、前も一緒に買い物なんか行った時も女と間違われてナンパされてたもんな。青筋浮かべて笑顔のままハクに腕ねじり上げられて君の大切な部分もねじってあげましょうかって囁いてた時はオレも股間がきゅっとしまったってばよ。
「誰かにプレゼントの予定でも?」
二人肩を並べて久しぶりの里の中を歩く。いつもと変わらない里の匂い、みたいなのに少し落ち着いた。ヒカリねーちゃん、今何してるのかな。
「もちろん!ヒカリねーちゃんだってばよ。洒落っ気がないヒカリねーちゃんが喜んでくれるのを買いたいんだ」
グッと拳を握ってやる気十分なオレに対してハクはどこか思案顔になった。
「ふ―ん、ヒカリさんに……。そっか、きっと喜ぶと思うよ。でも渡すなら早い方がいいと思うな」
「え、なんで?だってまだ長期任務だろ?」
つい歩みを止めてハクの顔をマジマジと見つめた。まさかもう里に帰ってきてるとか?
「いや、ヒカリさんの話だと三次試験には帰ってこれそうらしいから。その時に渡せばいいんじゃないかな」(離れ離れになる前に間に合えばいいんだけど)
「マジで!?よっしゃ!絶対良いの選んでやる」
尚更やる気が沸いた。
その後、女子が好きそうなお店でしっかりと予想通りの簪を買うことができた。しっかりと女性の店員さんに包装してもらって「彼女にプレゼント?頑張ってね」と応援され、顔がにやけてしまった。
三次試験もしっかりと勝ち星上げて中忍になってやる。
んでもってヒカリねーちゃんにこれを渡すんだ!
そしていつか、いつか伝えたい。
『オレの為に飾ってくれ』ってな。
【でもこの言葉を伝えることはできないと知るのはずっと後になる】