アカデミーでの成績は平凡そのもの。目立たず控えめの態度で今の所問題児扱いされてはいない。イタチの妹として周りの視線もあるから気が抜けないけど。ああ、そういえばアカデミーの帰りに九尾の子に出会った。ツンツンとした金色の髪と碧眼の目を持つ元気な少年は、同郷の子供たちに虐められていた。あろうことか言葉の暴力だけじゃなく手も出ている。うーん、通り過ぎようかと思ったけど可愛いサスケと同い年と考えると無性に腹立たしいので踵を返して少年を虐める子供らをしばき倒した。(脅したともいう)
「次やったら(自主規制)するわよ」
「ヒッ!」「ヒェッ!!」
ボコボコにしつつ拳握りしめて脅せば脱兎のごとく逃げて行った。
私はすぐに地面に腰ぬかして呆けている少年に近づき無理やり立たせて彼の土で汚れた服をパンパンと叩き落とす。
「ほら、ちゃんとしなさい。怪我はない?痛いところは?」
せっかくの綺麗な金髪なのにそこも汚れていたから軽くわしゃわしゃして汚れを飛ばす。
九尾の子は戸惑いながらなんとか声を絞り出す。
「え、ね、ねーちゃん……なんで助けてくれるんだってばよ」
「そんなの私が助けたいからに決まってるじゃない」
何を疑問に感じるのか分からないが、何かが彼の心の琴線に触れたらしい。
「!」
九尾の子はみるみる内に表情を崩してボロボロと大粒の涙を零していく。私はやっぱりどこか痛いところがあったのだと慌てて彼を慰める。
「やっぱり痛いのね!?どこ!ここ!?」
「うわぁぁあああああああ――——!!」
泣いてばかりでまともに返事を返してくれない九尾の子に途方に暮れて私は彼の手を引いて近くの公園のベンチで移動した。人目がある場所で注目を浴びるのは不本意だからだ。
中々泣き止まない九尾の子にハンカチを押し付けて涙を拭う。
「ほら、泣き止みなさい。痛いところがあるなら手当してあげるから」
「………」
だが少年は口を開かない。だがその代わり私の手を離そうとしない。まるで逃すまいとするように。
「君、名前は?」
「うずまき、ナルト」
ズビッと鼻水をすするのでティッシュを取り出して鼻をかませる。
「私はうちはヒカリ。お腹空いた?チョコしかないけど食べれる?」
甲斐甲斐しく世話をすればおずおずとナルトは口を開いてくれた。聞けばいつも虐めてくる連中がナルトの両親の事を馬鹿にしたらしい。それで犯行したらアイツラも付け上がってさらに虐めてきたとか。ホント胸糞悪い話だ。
「なぁ、ヒカリねーちゃんは俺の事なんとも思わないのかよ」
「思うも何も今日初めて会ったでしょ。君とは」
「う、そ、そうだけど」
図星を指されて言い淀むナルトはパクッとチョコを口に放り込む。そしてチョコの甘さに目をキラキラさせて「うめー!」と喜んだ。フッ、子供ね。
「九尾の事?世界が滅んだわけでもないのに関係ないじゃない」
「へ?」
「下らない事に構ってる暇あったら自分に力をつける方がまだマシだわ」
「だって!」
ナルトは反論しようとしたが、私の鋭い瞳に萎縮してビクリと固まる。
「だって?仕方ない?そんなの言い訳よ。じゃあナルト。聞くけど貴方はなぜ生きているの?ただ生かされているから生きているの?違うでしょう、貴方が生きたいと願っているから生きているのよ。だったら地べた這いずってでものし上がりなさい。使えるものは何でも使いなさい。所詮生き残った者勝ちなのよ、この世の中は」
「ヒカリねーちゃん」
「腐った里の連中に理解を求めても無駄だわ。人と少し違うだけで偏見の目で見る。罵る。中傷して村八分にする。やることが中途半端なのよ。殺しに来るくらいの度胸で虐めてこいっつーの」
「いや、それはイヤだってばよ!」
青い顔でブンブン首を振って否定するナルトは何とか調子を取り戻してきたようだ。
私はどうせこれも何かの縁と納得したようにポンと手を叩いた。
「丁度いいわ。ナルト、これから家に来なさい。サスケの遊び相手にピッタリだわ」
「え、ちょっ!」
どうせ虐められているのだから遊び相手もいないだろう。私はナルトの返事を待たずにサスケが待つ家に強引に連れて帰った。母さんはナルトを一目見て驚いたけどすぐに笑顔で出迎えてくれた。
「お帰り、ヒカリ。その子は……」
「ただいま~、虐められてから連れてきた」
サスケの遊び相手に丁度いいから連れてきたと説明して玄関を上がる。ナルトは戸惑いながら母さんに頭を下げて一緒に上がった。
「お邪魔、します」
「いらっしゃい、ゆっくりしていって」
「は、はい」
「ナルト~、こっちこっち」
手招きしてナルトを呼び寄せる。二階の自分の部屋を目指して階段を上がる。ナルトも遅れて続いてくる。突き当りの日当たりの良い部屋。そこが私の部屋だ。いつもなら私が帰ってくるとサスケが飛び出てくるんだけど、その気配がない。でも私の部屋からサスケの気配が感じられる。奇襲でも掛けようとの魂胆か。
私はまずナルトにジェスチャーでドアを開けろと促す。ナルトは戸惑いながらも言われた通りにドアノブに手を掛ける。ゆっくりと開かれるドアから鋭い殺気が走る。
瞬間!風が突き抜けた。
「おわ!」
ソレがナルトに当たる寸前、背中の服を掴んで自分の方に引き寄せる。クナイ二本はぎりぎりの所で壁に突き刺さった。
「なんだってばよ!?」
仰け反るナルトを支えながら私は先ほどの襲撃者の名を呼ぶ。
「サスケなりの歓迎の仕方よ、ねぇ、サスケ?」
「姉ちゃん、なんだソイツ!?」
顔を真っ赤にさせて怒りを露わにしたサスケは今にも突撃してきそうな勢いでナルトを指さす。もう荒っぽい歓迎の仕方なんだから。でも可愛いから許す。
ナルトの背を押し上げて立たせると軽く説明をした。
「こっちはうずまきナルト君。サスケ、貴方私の相手ばかりじゃ飽きるだろうから友達にと思って」
「誰がそんな奴と友達になんか!姉ちゃんから離れろっ」
「うわ!」
私の説明不足の所為か、サスケは怒れる感情のままナルトに攻撃を仕掛けようとする。クナイが危ないったらない。ナルトを後ろに庇って私がクナイで応戦する。
「サスケ、室内で刃物は禁止って言ったでしょう?」
「なんでそんな奴庇うんだよ!?姉ちゃんっ!」
「ゴメンね、いっつもは素直ないい子なんだけど今日は虫の居所が悪いみたい。今日は私と遊ぼうか」
「姉ちゃん!!」
「はいはい、サスケは刃物をしまおうね。じゃないと許さないよ」
簡単に利き手をねじりこんで苦痛に歪むサスケからクナイを奪ってナルトに渡す。
「なんだよ、姉ちゃんの馬鹿!」
捨て台詞吐いて悔し気にサスケは窓から逃げて行った。このやり取りはドアを開けてから数十秒の出来事。まるで嵐が去ったようだ。ナルトはこの流れに付いて行けずぽかんとしている。
「よしナルト。お姉ちゃんと追いかけっこしよっか」
「え、……なんかヒカリねーちゃん滅茶苦茶笑顔で怖いってばよ」
こらこらなぜ逃げる。退き腰のナルトの肩を逃がさず捕まえた。
「山行くぞー!」
「なんか怖いー!!」
ナルトの悲鳴を背に私は意気揚々と山へ移動した。そこで全力で追いかけっこを慣した。
ナルトがギャン泣きして許しを請うまで執拗に追いかけまくった。影分身で。仕事帰りのイタチには加減してやれと怒られるし、可愛いサスケには二、三日口無視されてストレスMAX!と爆発しかけたけど先にサスケの方から擦り寄ってきてむぎゅっと抱きしめ合って仲直り。もう私の弟最高!里の連中に自慢してやりたかった。
ナルトはあの遊びから私目当てに遊びに来ることが多くなった。そこでサスケと衝突することもしばしばあったけど良きライバルとしてこれから共に成長していくことだろうと私は思った。
(姉ちゃんに近寄るなドベ!)
(サスケだってヒカリねーちゃん離れしろ!)
(はぁ~、今日もいい天気だな~)