君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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火影死亡後のとある出来事。


月光ハヤテ

月光ハヤテはいつもよりも青白い顔で恋人、卯月夕顔と共に多くの参列者が集いあう場所に並び薄暗い空からの雨にうたれる中、三代目火影の葬式に参列した。

 

「……火影様……」

 

「………ハヤテ……」

 

「私に、もっと力があれば……」

 

悔し気に唇を噛んで顔を俯かせる恋人を心配そうに見つめ、夕顔は雨ですっかり冷たくなったハヤテの手を取って握りしめた。

 

「……夕顔……」

 

「貴方の所為じゃないわ。それにその言葉はここにいる皆が強く感じているはずよ……。自分を責めないで」

 

「………」

 

恋人の慰めに多少気持ちが軽くなった気はしたが、やはりそうこのもどかしい気持ちを払拭するには難しかった。

 

※※※

 

彼は本来であれば死んでいる身だった。

 

戦力差は僅かに劣ることは対峙したことで分かった。

 

大蛇丸の部下であるカブトと砂隠れのバキとの密会の現場に遭遇してしまい、あわや命の危機と迫りくる中相手をしようとしたバキを押しのけるようにカブトが前へ出たのだ。

 

「オレが相手をしますよ。極力消すことは控えろと大蛇丸様から言われていますので」

 

「手を出すなということか?だが知られてしまった以上殺すしかない。それとも監禁でもしようと」

 

水を差されたと勘違いをしたバキは批難の視線をカブトへ向ける。だがカブトは気にした様子もなくさらりと言い返した。

 

「そんな無駄な時間はありませんよ」

 

カブトは眼鏡をくぃっと指で押し上げてレンズ越しに瞳を怪しく光らせた。ハヤテは刀を構えて警戒する。

 

「不運と思ってください。オレだって本当はこんなこと仕事したくはなかったんですが命令ならば仕方ない、……仕方ない」

 

最後の言葉は自分に言い聞かせるように呟いた。

 

「……いきますよ」

 

カブトはハヤテが見た事がない印を組みだした。そして叫ぶ。

 

「お色気の術!」

 

「「はぁ!?」」

 

つい敵味方であることを忘れて声をハモらせて驚くハヤテとバキ。

 

ボフンっ!と煙に巻かれるカブトの姿は想像以上に男にダメージを与える姿となって目の前に現れた。

 

こんがりと焼けた肌に屈強に鍛え抜かれた体。黒のブーメランパンツがもっこりしていて胸筋がスゴイ。そして爽やかに光る口から覗かせる白い歯。

 

ハヤテとキバはそれを見てしまった瞬間、全身の血が凍りつくような寒さを感じた。あれはヤバイ。あれは絶対やばい。

そう本能が叫ぶのだ。

 

逃げろ、逃げなければ捕まる。

 

というか色々な意味で殺される。

 

ハヤテだけではない、バキまでもがそう恐れたのだ。

 

だがカブトはそんな敵味方関係なくその姿でカブトはあろうことか禁断のポーズを取ったのだ。

 

演じる本人も必死なのだ。本当なら全力で逃げたい所、我慢に我慢を重ねているものだからきっとこの後胃痛が走るかもしれないので胃薬はちゃんと用意している。

それくらいの覚悟を持ってやるのだ。

しかと目に焼き付けろと別の気合が入る。

 

野太いオッサンの声で悩殺ポーズをかます。顔の近くで猫の手にゃんにゃんをつくり、やや躊躇いをみせた青ついに観念したようにお決まりの台詞を決めた。

 

「貴方のハァ~トににゃんにゃん☆」

 

「「グハっ!!」」

 

ハヤテとバキ両名は血反吐を吐き、白目になって気絶してしまうという結果になった。

 

このギャグのような技は実はヒカリからの提案でどうしても木の葉からなるべく死者を出したくない故の案でありそこに大蛇丸が実験にはちょうどいいわねと面白がった流れでカブトへ仕込まれたのだ。

気絶した相手に意表を与える技、というかその出来事に関わった記憶にトラウマを仕込んで本人の頭の中からその部分を強制的に削除させてしまおうというえげつない技である。

 

これの効果は既に保証されている。

ナルトやサスケ、それにカカシというヒカリの馴染み深い人物にもヒカリのお色気の術=トラウマと考え拒絶反応が出るくらいに恐れている。他の忍でも実験され、同様の症状が見れた。その姿(ボディービルダー)を見た前後の記憶がすっかり頭から抜け出ているのだ。皆同じ結果になっている。

 

それでも念のためにと大蛇丸がカブトに授けた飲み薬を飲ませれば確実に記憶を消せる為、早々に術を解除し元の姿に戻ったカブトは的確にハヤテに薬を飲み込ませた。薬と言っても液体なので気絶していても飲ませるくらいはできる。

 

「はぁ」

 

ため息をつきながら仰向けに気絶しているハヤテを起こして口元を引っ張って無理やり薬瓶を突っ込む。一滴でも飲ませれば効果は現れるがなんか乱雑になっている。というかもうこの場から立ち去りたい気持ちが強かったカブト。

 

「これは、……ここでいいか」

 

ハヤテはどうせ誰かが見つけるだろうとその場に転がすことにして同じく気絶しているバキを「よいしょっと」と呟きながら苦でもない顔で担いで痕跡がないことを確認しその場から立ち去った。

 

というわけでハヤテは同僚に見つかって無事に回収されこのは病院へ入院することになりまるまる三日間は眠っていたという。夕顔が看病に励む中、ついにハヤテが目を覚ました時は歓喜の涙を流した夕顔に寝ぼけ眼のハヤテはここ数日の記憶がないことを告げた。

 

「ハヤテ?なんだか目が虚ろだわ。肌の血色もいつもより悪いし」

 

「そうか?……なんだか頭が痛い……」

 

「大変!」

 

夕顔は急いで先生の所へ走りことの詳細を伝えた。

 

「先生!実は……」

 

「……精密検査をしてみましょう」

 

綿密な検査をした結果、ある種の記憶障害が起こっていることを告げられる。何か心理的外傷がハヤテの中で刻み込まれ、その出来事を忘れたいが為に一部の記憶を欠如させたようだと。夕顔はショックで固まってしまったが、すぐに立ち直りハヤテの為に熱心な看病を行った。すぐに任務に出ても問題はないくらいに回復したハヤテは以前のように青白い顔で任務をこなせるようになった。

 

だが記憶が欠落していることを不安に感じたままあの木の葉襲撃事件と火影暗殺の現場に大勢の中の目撃者の一人として出くわすことになるとはハヤテ本人も考えていなかった。

 

あれほど衝撃を受けたことはない。

自分よりも年下であるうちはの少女が、たとえ年老いたとは言え現役火影を殺すなど。

 

しかも大蛇丸との繋がりは里にとって衝撃的であり疑心暗鬼に陥ってもおかしくはなかった。

 

火影の遺体が見つからぬまま、空の棺で葬式を終えた参列者

達がそれぞれその場を離れていく中、二人寄り添うように共に住んでいる家に帰る途中のことだった。

 

会話という会話はないまま、相合傘でお互いの温もりを感じるように肩を寄せ合って歩く二人の前方から傘をさして歩いてくる人物がいた。

 

二人はあまり気にする様子もなく少し道の横にそって歩く。

 

少しずつ距離が近づいていくると少年と不思議なことに腕の中に猫が一匹抱かれていた。よほどペットとして大事にしているのか少年の表情はとても柔らかく猫が濡れないようにしっかりと抱き抱えていた。少年は不思議なことに猫と会話をしている様だった。なんせ一人で喋っているのだから。

 

「猫爺様、勝手に抜け出しちゃ駄目ですよ。今日は雨も降ってるのに風邪引いちゃいます」

 

「にゃ~」

 

「……別にいいですけど。心配しますから」

 

「………」

 

「火影様の葬式でしたからね……、気持ちはわかりますけど、でも行先くらいは教えてほしいです……」

 

「にゃん」

 

「次勝手にいなくなったらご飯抜きです」

 

「にゃ!?」

 

少年の言葉に猫はしっかりと反応を返していて二人は即席のコントを見ているようで口元を緩ませながら少年の脇をすれ違った。

 

家に無事に到着し、普段着に着替えた二人はとりあえず落ち着こうと温かい飲み物で冷え切った体を温めあった。そこで話題になったのがあの少年と猫だった。

 

「なんだか不思議だったわね」

 

「ああ………、不謹慎だとは思うが葬式の後のアレを見せられたら気持ちがほっこりしたような気がする」

 

「……私もよ……」

 

ソファに並んで座っていた夕顔はぽてっとハヤテの肩に頭を寄りかからせる。

この温かさが愛しい。そう気持ちが溢れてくるのだ。

当たり前に生きるというのがこの忍の世界ではとても大変なことなのだと受け止めているものの、いざ近しい人が先に逝ってしまったら果たして残された自分は正気でいられるかどうか。

 

だからなおの事、夕顔はこの幸せを壊したくない、失いたくないと願った。それはハヤテとて同じだった。

 

「夕顔、私達は……ちゃんと生きような。火影様の分まで」

 

「……うん……」

 

当たり前の平和。

 

いつか木の葉に訪れさせることを互いに約束して今は幸せの夢の中へ互いの手を絡ませて、瞼を瞑り暫くの静かな時間を共に過ごした。

 

【ある恋人たちの一日】

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