君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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ナルトVSネジ!
原作よりも明るいナルト君です。


2

火影の宣言の後、一戦目以外の選手は一度観客席に戻ることになっている。

その移動の際、サスケはナルトの傍へ駆け寄った。

ナルトはすぐ始まるからだろうか、サスケが近づいてきていることには気づいておらず、観客席の方へそわそわと視線を向けていた。どこかにヒカリがいるんじゃないかと期待しているのだ。ハクから長期出張から帰ってきているなら必ず見に来てくれているはずと期待は膨らむが沢山いる観客席にヒカリの姿はなく、応援に来てくれているサクラと視線が合うと一応手は振ってくれたのでナルトも笑顔で手を振る。そんな中、サスケは後ろからガッと腕をナルト首の後ろへ回し体を近づけた。

 

「おいナルト」

 

「うわ!ってサスケかよ、吃驚した」

 

突然近くにいる親友に心底驚いた様子のナルトは胸を手で抑えた。少年二人顔を付き合わせる姿は他人から見れば親密な間柄と見えるが当人同士はまるで気にしていない。ある意味二人の世界だ。

 

(またやってるわ)

 

ついついしゃーんなろ!状態になるサクラの隣でイノが呆れたように言った。

 

「ほっんと!仲いいわね、こんな時にまで肩付き合わせてさ……。実は付き合ってますとか?」

 

「ない!それはないわ!」

 

熊でも倒せそうなほどの雰囲気でイノに迫るサクラ。つい、イノは顔を青ざめて、「そ、そうね」と相槌を打つしか逃げ道はなかった。フンッ!とサクラは鼻息荒く視線を戻す。

だが意中の人は相変わらずナルトと仲良さげで乙女の胸中は複雑になる。

 

(だってサスケ君の好きな人は、ヒカリさんのはずだもの。ナルトではないわ!)

 

男が相手でないなら勝ち目は必ずあるとサクラは信じている。

 

さて、そんなサクラの激しい内情など知らず、サスケとナルトは顔を付き合わせて小声で話し合う。

 

「勝算は」

 

「ある!へへっ。全力で試合に挑む」

 

「なんだそれ」

 

試合前なのに緊張感の欠片もない緩み切った笑みにサスケはあきれ顔になるが、ナルトはへへっと笑みを深くさせた。

 

「だってヒカリねーちゃんだって言ってただろ?ちゃんと相手に全力で挑まないと申し訳ないじゃないって。だから昔容赦なかったじゃんヒカリねーちゃん。全力鬼ごっことか」

 

具体的な実体験を例に出すナルト。

 

「……確かに」

 

サスケは昔のトラウマを思い出して顔を歪めた。

 

あれは酷い。なぜならヒカリは遠慮なしに攻めてくるのだ。たとえ喚こうが泣こうが関係ない。私が飽きるまでがタイムリミットだと豪語するのだ。鬼である。そんな話題の定番であるヒカリの姿はまだ見当たらないようで実はサスケも探していた。ナルトには余計な負担になるからと呪印の話はあえて教えてはいない。ヒカリ自身からもサスケにお願いされたのだ。だからあの体で試合観戦は無理ではないかと諦めていたが、ヒカリは必ず行くからとサスケへカカシを通して伝言をしているので誰かに付き添ってもらってくるだろうと予測している。

 

「姉ちゃん来たら知らせてやるよ」

 

「ん、頼むってばよ。というわけで行ってくる」

 

「おう」

 

サスケは腕を外してナルトに向かって手を上げた。

ナルトも阿吽の呼吸でその手を叩いた。

 

パシッ!と小気味よい音が響いてお互いにニッと笑いあってそれぞれの場所へ移動した。

 

◇◇◇

 

ナルトの相手はあの白眼を操る日向ネジである。ヒナタとは従兄妹であり本家と分家という間柄だが、二人の間には目に見える一方的な確執の様なものが昔からあった。

 

ネジは自分よりも自由に振舞うナルトが大嫌いだった。

落ちこぼれともいつも蔑んでいた。だがナルトはネジが思うほど落ちこぼれではない。むしろアカデミー時代でも成績は上位のほうだった。ただ行動が餓鬼というか単調というか。

たまに目を見張るぐらい鋭い一言があったりと驚かされたりもしていたが、基本馬鹿だとネジは考えている。

 

今も試合前で何が楽しいのかと理解できないくらいに笑っている。

 

「………所詮、落ちこぼれか……」

 

小さく吐き捨てるように呟き、「構え!」との合図に緩やかな動きで攻撃態勢をとった。

 

ネジは心底羨ましかった。

 

あの天才一族と言われるうちはと肩を並べて笑いあう姿が憎くてたまらなかった。

 

自分とヒナタはあんなにも距離が近いことはないのに、と。

 

そう、自分の運命は変えられないと決めつけていた。

 

「影分身の術!」

 

ナルトは素早く印を組みお得意の影分身の術を繰り出した。相手の出方をまずは観察する気なのだろう。だが小癪な手だとネジは嘲笑った。目の周りに幾筋もの血管が浮き上がり白眼を発動させる。ネジから見た複数のナルト達の体内のチャクラ量は揃っていると言ってもいいほどあまり乱れはなく、どれが本体であるかすぐには分からない。だがネジにはどれも同じに見えた。なぜなら一体一体潰していけば自ずと本体へたどり着く。

 

そう、点穴さえ突いてしまえばナルトの動きを封じられる。そう読んでいた。クナイを握りしめ次から次へと襲い掛かってくるナルトの分身を避けて後方でジっとネジの動きを観察しているナルトだけを目指して素早く動いた。そしてナルトの点穴を突くべく、指先を尖らせて一気にナルトの懐へ滑り込む。

 

手ごたえがあった!

 

とネジはほくそ笑んだ。だが。

 

「甘いってばよ」

 

との言葉にナルトの体だったものは別のものへと煙を上げて変化した。

 

「なに!?」

 

なんとネジが攻撃を仕掛けたのは変わり身の術となったナルト形の人形だった。影分身の術と唱えると同時に変わり身の術も唱えていたのだ。

隙を逃さず、本体のナルトはネジの視界から完全に除外場所。つまり、すぐ下に体を地面にへばらせて潜んでいた。

 

「ハハァァアアア――――!!」

 

がら空きとなるネジの腹の下から思いっきり拳を突き上げて重い一撃をめり込ませる。その拳には通常のチャクラではない九尾のチャクラを纏わせてオレンジ色の炎のように見えた。

 

「グフッ!」

 

防御が間に合わずネジはまともにパンチを喰らった。しかも九尾のチャクラが練り込まれた拳を、だ。

 

血反吐を口から飛ばして、ネジは信じられないとよろよろと腹を抑えて後ろへ後退する。

 

「なぜ、だ」

 

「そんなの決まってるだろ。お前はオレを舐めてた。オレは全力を出してお前と戦ってる。それだけの違いだってばよ。出し惜しみなんかしないぜ」

 

射抜くような強気な瞳に気圧されてしまうネジ。

だがプライドがそんなもの許さなかった。ぎりりと口端から血を滴らせて歯を鳴らす。

 

「ふざけるな、ふざけるな!落ちこぼれの癖にぃぃぃ」

 

激高するネジに対し、ナルトはいたって冷静だった。

今ので本気となったネジは防御を取るのではなく攻めに走った。

 

「柔拳法・八卦六十四掌!」

 

対してナルトも追撃の手は緩めない。印を作り声高に叫んだ。

 

「ヒカリねーちゃんが見てるかもしれねぇのに負けられないのはオレも同じだ。それにオレは落ちこぼれじゃねぇ!」

 

再度九尾の力を引き出し全身へと巡らせる。ナルトの体を九尾のチャクラが覆っていく。

 

自来也との修行以来、九尾と接触する機会を増やしていった結果、名前を教えてもらえるまでに仲良くなることができた。というか能天気な奴と飽きられているのだろうがそれでもナルトは構わなかった。一匹で寂しい思いをさせたくはなかった。かつての自分のように。

ヒカリに見つけ出してもらったように、自分も九尾を、

 

クラマを助け出したい。その一心で。

 

「行くぜ!」

 

「ウォォォ―――!!」

 

咆哮を上げ、互いの譲れぬ気持ちをぶつけ合う一撃を繰り出す若い忍同士の戦いに会場は呼吸さえも奪われてしまうほど魅入っていた。

 

・・・

・・

 

地上に背を預け大の字となって澄み切った青空を見上げるのは一体誰なのか。それは審判の判定で決まることになる。

 

「勝者!うずまきナルト!」

 

審判担当の忍がナルトの腕を掴み高く掲げる。

 

その瞬間、歓声が四方から上がり拍手の波が起こる。

そう、白眼を持つネジは負けた。

ナルトは観客席の中に光はいないかと視線を彷徨わせるが、やはりそれらしい姿がないことに落胆し一応建前として手を上げて観客席に応えて見せた。そしてすぐに救護班が駆け寄ってきて体の傷を確かめられているネジに近づき声を掛けた。

 

「ネジさぁ、試合楽しんでないだろ」

 

「何を、世迷言を!」

 

救護班の手を借りて痛む体で何とか上体を起こすネジは自分を見下ろす青い瞳を憎々し気に睨み上げた。

だが反対にナルトのネジを見下ろす瞳はまるで青空の様に試合に勝った余韻すらもなく綺麗に澄んでいた。怒りに心乱され、惨めな負け方をしたネジを憐れむわけでもなく馬鹿にするでもなく、ただネジとして受け止めている。

 

ナルトは自分がヒカリから教わって初めて実感できたことをネジに知って欲しかった。しがらみの中で生きるのではなく、まずそこから視点を変えて欲しかった。

 

「オレはヒカリねーちゃんから教わったぜ。全力でその時を楽しめる余裕がなきゃ、勝てる相手にも勝てないってな。意外と心に余裕があると見えてくるものがあるんだ。お前がヒナタに抱いている感情なんか興味ないってばよ」

 

「なんだと!」

 

「だってそうだろ。相手を知ろうとするにはまず話し合うことから始まるんだ。お前は自分で勝手に完結させて相手に話すチャンスを与えないようにしてる。それじゃあ会話もできないし理解しあえることなんかないじゃん。運命、諦めてんだろ、失望してんだろ。どうせ変えられないって」

 

ネジは図星を突かれ、言葉を失った。

ナルトの言葉はまさにネジの気持ちを代弁している様だった。

 

「!赤の他人に、何が分かる。オレの、オレの苦しみが……」

 

顔を俯かせ、悔しさから拳を握りしめた。

 

誰にも打ち明けてこなかったネジの気持ちが吐き出される。

本家と分家の在り方。己の父の死。ヒナタへの感情。強さへの拘り。落ちこぼれと天才。

 

「分かんねぇよ」

 

キッパリと言い切ったナルトの言葉にネジは反射的に顔を上げた。

 

「!」

 

だがナルトの言葉はそれで終わりではなかった。

 

「分かんねぇからこそ、オレはお前の話を聞ける。ちゃんと面と向かって話せる。同じ釜の飯を食った者同士は友達だってヒカリねーちゃんもよく言うんだ。だから今日は一緒に一楽のラーメン食べに行くってばよ!」

 

まさかの友達になろう宣言にネジは唖然とした。

 

自分がナルトに対して吐いた暴言の数々を水に流すというのだ。いやそもそも気にしてすらいなかったようだ。

 

大器晩成という言葉はナルトに当てはまるのか、それとも若干違うのか。というかなぜこの流れで友達に?

 

色々とぐるぐる考えて気持ち悪くなってしまう。

 

反対にナルトはニカッ!と歯を見せて笑った。

笑いかけた。

 

苦しみの中からもがいて救いを求めていたネジに。

その笑みは太陽にようにサンサンと輝いていてネジには目を細めてしまうほどに眩しかった。

 

「………」

 

「お前の気持ち全部受け止めてやる。だから一緒にいこうぜ!ネジ」

 

一緒に行こう。全部受け止めてやる。

 

どれだけ喉から手が出るほど欲しかった言葉か。

 

胸のつっかえがストンと取れた気がしてネジは僅かに微笑んだ。

 

「…………別の意味で落ちこぼれだな…」

 

この言葉をずっと待っていたような気がする。ああ、お前は救いようのない馬鹿だな。

 

ナルトに掬われた人はきっと自分以外ではない。

 

新しい友人が差し出した手を、ネジは離すまいと伸ばし固く握りしめた。

 

【第一試合勝者うずまきナルト】

 

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