君の為に変革す   作:サボテンダーイオウ

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誰もが予想しなかった展開が始まろうとしているーー。


4

ついにこの試合の目玉ともいうべき二人の戦いが始まった。

 

サスケVS我愛羅である。

観客からもどよめきが広がる。あのうちはの一族が出るとなるとやはりインパクトは違うらしい。

だが目下注目を集める少年はため息の嵐だった。試合前、ナルトと肩を並べて憂える姿は美少年ならではの色気が醸し出てサクラは気絶してしまいそうだった。

イノが呆れたように見つめているのも知らずに内心キャーキャー!乱舞であった。

 

さてそんな美少年、サスケを憂えさせる理由は一つしかない。

 

「やっぱり姉ちゃん来てない」

 

「だよな」

 

「「はぁ~」」

 

二人の大きなため息に反対側の観客席から観察していた我愛羅も不審そうに首を傾げた。

 

(何をしているんだ?)

 

我愛羅の隣に立つカンクロウが弟の僅かな変化に目を疑った。先ほどまでキレ気味だった我愛羅がふと素に戻ったというか、普通の反応をしていることに驚いているのだ。

 

(……戻ってる……、どういうことだ?)

 

アレだけ粘着にサスケに執着してみせた我愛羅がナルトとサスケのやり取りを観察して自我を取り戻している。この作戦で我愛羅が重要ポジションに位置しており、カンクロウ、テマリがそのサポート役を担っている。普段から腫れ物を扱うように弟と接しているが、その機微は共に行動することで何となく読めている。だからそれだけ驚きを隠せないのだ。

 

カンクロウだって実の弟が憎いわけじゃない。血が繋がっている分、恐ろしいのだ。一尾を宿す存在はそれだけ疎まれる。強い代わりに孤独を強制させられ、里の道具とされる。憐れで不憫な弟。

 

そんな弟、我愛羅に僅かな変化が最近見られた。

 

ナルトとサスケに絡んでからだ。

あの二人はいつも行動を共にし、お互いの足りない部分を自然に補い合っている。それが当たり前で、普通のことと奴らは言いのけるだろう。自分達がどれだけ特殊な存在か知らずに。だからこそ、我愛羅は惹かれてやまないのだ。

 

自分にない関係を求めている。自分を受け入れてくれるであろう者たちに憧れを抱き、それが一尾によって殺意へとすり替えられているのだ。

 

愛から殺意へ。

 

我愛羅の歪んだ愛情がアイツラによって変化の兆しを見せてくれるのをつい期待せずにはいられない。お互い敵同士となるであろう、この後の事を考えるとその気持ちは不謹慎であると咎められることを承知で願わずにはいられないカンクロウだった。

 

 

存分に落ち込んだ二人はさっさと試合始めろ~とのヤジ飛ばしにゆっくりと腰を上げた。

 

「なんだようるせぇな」

 

つい観客席を睨み付けるサスケにナルトがドードーと落ち着かせた。

 

「まぁまぁそれだけサスケに期待してるってことだろ」

 

「フン、姉ちゃん以外に期待されてもやる気にもならねぇよ」

 

腕を組んで気に入らなそうに鼻を鳴らすサスケ。

普段からシスコンをこじらせているがこの公の場でもシスコンぶりを隠すことなく発揮している。

 

「多分遅いだけだろ。家帰ったらいたりしてオレ達の為に肉じゃが作って待っててくれたりしてるかもよ」

 

「……かもな……」(もしかしたら今日くらいは家に一時帰宅できるか)

 

ナルトの予想に思案顔になって頷いたサスケはコキコキと体をほぐし始めた。ある程度ほぐれた所で審判からの試合開始の準備を告げられる。

 

「じゃ、頑張れよ」

 

「おう」

 

お互いに手を合わせて叩き合い、ナルトは観客席へサスケは舞台へ向かった。

 

 

誰もが注目を集める二人が審判の前に対峙する。

 

「うちは、サスケ……お前は、なぜ試合を前にしてため息をついていた。しかもうずまきナルトと共に」

 

砂の下忍、我愛羅。

 

「は?別にお前に関係ないだろ」

 

木の葉の下忍、うちはサスケ。

 

誰もが二人の一挙一動に被り付くように見守る中、試合開始の合図が叫ばれる。

 

「始め!」

 

その声と同時にサスケはずさぁーと砂を巻き上げて後ろへ大きく後退した。すぐに距離を取ったのは正解だった。

我愛羅が背負う壺から砂が現れ始めたからだ。全力投球なナルトとは違い、相手の出方を読みつつ攻撃を仕掛けるのがサスケの戦闘スタイルだ。カカシとの修行も特別仕様で過酷なものだったが、ヒカリを守れる絶対的な力に固執しているサスケにとっては苦でもなんでもなかった。むしろ、これくらいで手に入れられるなら安いものだと余裕さえ感じてさえいた。

 

「行くぞ」

 

太ももの黒のホルスターから手裏剣を素早く投げつける。それは小手調べということだろう。サスケの読み通り、砂の壁が手裏剣を飲み込んだかと思えばそれが砂の分身へと変化していく。ぐぐっと砂の分身はサスケの手裏剣を握りしめ空高く跳躍したサスケへと投げ返す。その行動を予測していたサスケも同じく手裏剣を投げ相殺させる。悠然と高みの見物と洒落こんでいる我愛羅を睨み付けながらまずは砂の分身を消すことを選んだ。今まで以上に素早い動きで砂の分身の懐へ滑り込み体術を打ち込む。

 

砂の分身はサスケに一手によって形を崩したが、新たに砂の防御が出来上がるまで数秒の間があった。そこをサスケは逃さず、正面から突破させると見せかけて高速で我愛羅の背を取った。

 

「!」

 

ニィとサスケは口角を上げて驚いて後ろを振り返る我愛羅の頬の重たい拳を一発叩き込んだ。吹っ飛ばされる我愛羅をなお高速で追いかけて地に背を付ける瞬間、背後へ回り込み強烈な回し蹴りを炸裂させる。

 

「がっ!」

 

「フッ」

 

また違う方向へぶっ飛ぶ我愛羅の体。砂の防御が間に合っていない証拠だ。その隙をサスケが逃すはずはなかった。執拗に我愛羅を狙い、ヒカリとの修行で学んだ体術とカカシから叩き込まれたリーの素早さを意識した攻撃を繰り出していく。何度も相手をふっ飛ばしては先に回り込み強烈な回し蹴りや叩き込みを繰り返す。我愛羅はその度に一撃必殺を受けているようなもので次第にその口から血反吐を吐いていくようになる。

 

サスケの優勢かと思いきや、我愛羅の精神は既に来るところまで来ていた。本当なら教官の合図を待って始めるところ、サスケの執拗な攻撃と先ほどの質問に答えてもらえなかったことに苛立ちを抑えきれず、合図を待たぬままついあの術の印を唱えた。

 

「……殺す!」

 

観客席にいるテマリがいち早く気づき、息を呑んだ。

 

「我愛羅!まさかっ」

 

「おいおい!計画どころの話じゃねーぞ!?」

 

テマリの隣で固唾をのんで見守っていたカンクロウが身の危険を感じ思わず後ずさりをした。

我愛羅の念が篭っているような印をとなる言葉と共に我愛羅を包むように毬情に砂が集約していく。サスケは驚きつつも、これは好都合と喉を鳴らして笑った。

 

「そう来るならオレもこれを使わせてもらうぜ」

 

そう余裕そうにつぶやくなり、後ろへ二、三度バク転をして後退しそのまま、足元にチャクラを集中させて体を斜めにさせてバリケードへ張り付いた。

 

しゃがみ込み体勢を低くして左手を抑え込むように右手で支えチャクラを集中させる。これこそ、カカシとの修行の成果の証である、カカシ直伝オリジナル技。その名は千鳥。

 

「デカいのぶち込んでやるよ、引きこもりがァ!」

 

瞳に写輪眼を発動させサスケは自分の左手に集まりつつあるチャクラを制御しつつ常人では把握できないほどのスピードでそのまま砂の繭に向かって突っ込んでいく。

 

暗殺用に特化した技でその腕で雷をも切ったという話から別名雷切とも言われているこの技はスピードとチャクラを集約させた突き手を生かした直線的な攻撃になる。勢いが強いだけに相手の真正面から仕掛けることがベストとされるが、カウンター攻撃を喰らうことも承知の上で突っ込まなければならない。

だがサスケには写輪眼がある。

その組み合わせで相手の読みを完全に抑え込んだうえでの現状最強の一手と言えるだろう。

 

徒労に終わる一手は出さない。もし千鳥ではなく普通の一手をあの砂繭にくりだしていたなら恐らくサスケの手は負傷していたはず。先を読んで迅速に無駄のない行動を取る。

忍に求められる先読みを自然と行えているのはヒカリとの修行の賜物だろう。幼い頃より叩き込まれた精神が生かされた瞬間でもある。

 

ガッ!

 

「捕らえた」

 

勝機は掴んだ。そう確信したサスケの左手は確実に砂繭の中で何かに当たり手ごたえを感じた。ずぶりと入り込んだ左腕に違和感が走る。それと同時に中から我愛羅のうめき声が上がった。

 

「ぁぁぁああああああ――――!!」

 

「!?」

 

会場全体に動揺が走った。

 

サスケの腕に急激な痛みが走り思わず繭に右手をついて左腕を抜きだそうとする。だが何かが絡みついてサスケの腕を離すまいと捉えている。

 

「クソがっ!」

 

汚い言葉遣いでサスケは千鳥をなお中で発動させてその隙を逃さず左腕を一気に引き抜いた。

 

ずぼっ。

 

サスケの左腕は多少負傷しているが、無事に抜き出された。砂繭にはぽっかりと怪しげな黒い穴が開いた。

 

異様な雰囲気が周囲に漂い始める。

 

サスケは地面に膝つきながらその黒い穴から何かが此方を見定めているような感覚を感じた。まるで人ではない者を相手にしているようで背筋がぞくっとした。先ほどまでの余裕綽綽な態度はどこかえ消え失せてしまい、本能が叫ぶ逃げるという選択肢が頭の片隅で浮かび上がるものの体を動かすことができなかった。

 

それは試合を見守っていた審判も同様だった。周囲に発生するピリピリとした殺気に満ちた空気が肌に突き刺さり、試合どころじゃないなと額に汗を浮かばせる。

 

これ以上の試合続行は危険だと審判はサスケの前に移動し庇う体制に入った。

 

「……あんた……」

 

「悪いが試合終了だ」

 

これを皮切りとして会場全体を包むように白い羽根が空から舞い落ちる。大規模な幻術だった。

 

「これは!?」

 

「幻術だと!」

 

カカシとガイがすぐに幻術返しをし、少し離れた場所にいたサクラやナルトも遅れて幻術返しをした。それ以外の者は幻術に掛かってしまい、眠りに着いた。

 

「一体何がどうなってるのよ?」

 

「知らないってばよ!?」

 

「っていうかアンタなんで幻術返しなんて器用な真似できたの!?」

 

「まずそこツッコむのかよサクラちゃん!?」

 

動揺して即興コントを披露している二人を横目にカカシとガイは視線を探らせる。他にも数名幻術返しに成功した同僚はいるようだ。

 

だが事態は思わしくないようだ。

木の葉に裏切り者が潜んでいた事。そして火影が人質に取られたこと。

 

そう、火影ヒルゼンは風影に成り代わっていた大蛇丸によって拘束されてしまった。暗部達が火影救出に乗り込む。席から屋根を突き破って屋根の上へ移動した偽風影と火影へと攻撃を仕掛けるものの、それを嘲笑うかのように大蛇丸の配下の忍は四方に配置つくなり四紫炎陣を唱え発動させる。

 

「火影様!」

 

暗部の忍がその結界に突っ込むな否や全身を炎に包まれてしまう。どうやら単身突っ込めるほど敵も甘くはないようだ。

この作戦で活躍するはずだった我愛羅は思いのほか封印が緩みだしたことでテマリ、カンクロウと共に戦線離脱を上官より指示されバリケードを乗り越えて森の方へ向かった。審判である忍は逃してはマズいとサスケへ指示を出す。

 

「おい、お前は我愛羅を追いかけろ」

 

「は、一体何がどうなって」

 

戸惑うサスケに声を荒げた。

 

「どうせ中忍試験は終了だ!いいから行け」

 

「……っチ!」

 

サスケは納得しがたい状況だったが、上忍の命には逆らえず渋々我愛羅を追う為バリケードを軽々と乗り越えて出ていった。その姿をナルトは見逃さなかった。

 

「サスケ!?どこ行くんだっ」

 

と驚きながらも反射的に体が動いていてサスケを追いかける為観客席から飛び降りていた。カカシが呼び止める間もなく素早い動きで居なくなるナルト。

 

「サスケにナルトまで!ったくっ」

 

「先生!ナルトが!」

 

サクラが取り乱してカカシへ駆け寄ってくる。カカシはそんなサクラを受け止めつつ、砂の忍が攻撃を仕掛けてくるのを見定めサクラを庇って一撃で仕留めていく。ガイも負けじと己が拳で強制的に沈めて行く。

 

「分かってる!とりあえず頭低くしてなさい」

 

「先生」

 

怯えて涙を浮かべるサクラを励ますように、

 

「大丈夫だから」

 

ニッコリと笑ってカカシはクナイを手に取った。

少なくともサクラはいつも通りのカカシの笑みにこれで大丈夫だと安堵することはできた。後ろでガイのキラリとした笑みをスルーして。

 

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