サスケが浮気した!
違った。浮気はしてない。
いつも私の事を気遣ってくれる大事な弟。
正確には私が作る夕食よりもラーメンを選んだ。
だから浮気!しかもナルトのラーメン好きに影響を受けて二人で寄り道ラーメンし始めた。
え、なんで知ってるかって?
フフフ、だってサスケのお姉ちゃんだもん。(後をつけた)
長年培ってきた料理魂に火がついた。
私だってサスケの血肉作ってきたもん!母さんの代わりに夕食に朝食にお弁当だって作ってるもん!それも食べ盛りのサスケとナルトの分だよ。
売られた喧嘩は買わなきゃならない。
私もそのラーメン親父のお店に潜入してサスケが虜になったという秘伝のラーメンのレシピを盗んでやることにした。
そしてサスケはもう私の作るラーメンにメロメロになって寄り道もしなくなるだろう!これでまた私の夕食を抜くなどと愚かな行為はしなくなるはず。次やったらもう作ってあげないんだから。
それにしてもサスケとナルトはなんだかんだ言って仲良しだ。
私が焼きもちやいちゃうくらいに。きっと、サスケの為にナルトの存在は欠かせないはず。二人とも守らなきゃといつもより肩に力が入った。
さて、ラーメン屋に潜入すると言っても、腐っても下忍である私にラーメン屋でバイトしている時間はハッキリ言ってない。というかカカシ先生ったら嫌味なのかランクの低い仕事ばっかり受けてサスケとの接触時間を短くしてやろうと画策しているらしい。腹立たしいことこの上ない。
私達の麗しい姉弟愛を引き裂こうって魂胆ね。
そうは問屋が卸さないわ。
なので!ここは影分身で対応しようと思う。
いつもは単純に数を増やすだけだけど、ここは量より質ということで、二手に別れてみよう。しかも今の年齢じゃ駄目だから分身の術、プラス変化の術で年齢操作。
見た目も変えちゃおうかな、この際だし。………理想の胸にしよう。中々ない機会だ。そして実体験をもとに目標サイズまで努力!
思い立ったが吉日。
私は鬼の様な依頼を鬼の形相で全てクリアし、カカシ先生にビビられながら別れの挨拶をして颯爽とその場から移動を開始。人気のいないジメジメした路地裏で分身の術!
ボフンと現れるもう一人の私。嘗め回すようにチェックする。
「うん。問題ないね」
「オッケー!」
もう一人の私が親指を立てた。では、次は私の番。
「変化の術!」
シュパッ!と素早く印を組んで理想の自分を思い描きつつ術を発動。見事あっという間に20代の清楚なお姉さん(バストD)に変化することができた。
「おお!この胸のサイズ!このたわわんとした揺れ!重さ!うぅ……これが夢にまで見たDカップ!」
自分の両胸を鷲掴みしながら感動の涙を流す私に、釣られて分身の私ももらい泣き。
「良かったね、良かった!」
「うわーん!」
「うわーん!」
私達は感動を分かち合い、お互いぎゅっと抱きしめ合って幸せを喜びを共有した。
通りすがりの野良猫がフシャーと威嚇してきたが、そんなの関係ない!
「ヒカリはカカシ先生との依頼クリアね。私は、ラーメン親父のレシピを華麗に盗んでくる」
「「Missionstart!」」
私達は行動を開始した。
◇◇◇
ラーメン一楽は今日も混んでいる。白い湯気と食欲をそそるラーメンの香り。餃子の焼けるパチパチとした音。
「ユウコちゃん、あっちのカウンター片づけてくれる?」
「はーい!」
白い割烹着に三角巾を着て私は明るく返事をしてキビキビと働いている。そうなのだ。無事にアルバイト潜入成功。
訳あり女の子もうすぐ二十歳という設定で泣き落としに近い殴り込み……じゃない乗り込みで採用してもらった。
ああ、いいわ。こう動くたびに胸が揺れる感覚。
まな板同然で今まで過ごしてきた私にとって癖になるものだ。
動作だってわざと谷間を強調してみるものだから、常連客の視線が私の谷間にロックイン。
―——世の男共がいかにして巨乳を愛しているのかが、よぉ~く分かった。鼻の下伸ばして魅了されている奴は仕方がないが、私にちょっかい掛けてこようとした奴は後に路地裏に誘い込んで粛清した。
次の日の朝、パンツ一丁らで電柱に縛り付けられている男がいたとしたら犯人は、———私である。
サスケも巨乳好きなのかしら?
不安だわ。その辺後で探りを入れてみよう。
ちなみに、変掃時の私の名前はユウコ。親友の名を拝借した。さすがにヒカリと名乗れないものね。
ここの常連客は皆一楽のラーメンを愛し、大将を愛している。だからスープは最後まで飲み干す。大抵器は空っぽの事が多い。片付けが楽で助かる。
さて、食器を片づけてテーブルを拭いてここはオッケーと。
お盆に片した食器類を乗せて水場へ持って行こうとする。するといつものあの人がやってきた。私の姿を見ると声をどもらせながらも笑みを浮かべて手を上げた。
「あ、ゆ、ユウコちゃん」
「いらっしゃい、イルカ先生」
アカデミーでサスケとナルトの担任をしているイルカ先生だった。私はスマイル0円で温かく迎え空いたばかりのカウンター席を案内する。
「ここどうぞ」
「あ、ああ。ありがとう」
「いいえ」
わざわざお礼なんかいいのに。本当律儀な人。
私は今度こそお盆を水場へと運ぶ。その時妙に背中に視線を感じるのはなぜかしら?
イルカ先生は「大将、いつもの」と毎度おなじみ一楽ラーメンを注文した。イルカ先生独身らしいけど、最近ラーメンばっかり食べすぎじゃないかしら。忍者たるもの基本野菜を取らないと。私は大将にこそっと「冷蔵庫の野菜使ってもいいですか?お金後で払うんで」と頼んだ。大将は金なんか気にするなと快くオッケーくださった。
私は大将がイルカ先生のラーメンを作っている横で冷蔵庫から色とりどりの野菜を取り出す。野菜炒めを作るためだ。
自分で食べるためじゃないよ。イルカ先生への差し入れにするため。先生にはお世話になっているし、もっと健康に気を遣って欲しいから。私は鼻歌交じりに作業を開始。その間も視線を感じる感じる。じとーって感じじゃなくてこう、ピンク系の視線?やばい、電波ちゃんだわ。
下らない事考えている間にも私の手は勝手に動いていく。
あっという間に野菜炒めの完成。それと同時にラーメンも一丁あがり!
「お待たせ」
「待ってました」
イルカ先生が割りばしをパキンと割ってラーメンを食べようとするとき、私もカウンターから野菜炒めをイルカ先生の前に置く。するとイルカ先生はきょとんとして、私と野菜炒めを交互に二度見する。
「え、俺、頼んだっけ?」
「私からの奢りです」
「え」
「先生、ちゃんと野菜取らないと駄目ですよ?いくらラーメンが死ぬほど好きだからって。可愛い生徒たちが毎日イルカ先生の授業を待ってるんだから。ね?」
そう言ってイルカ先生にウインク一つ送る。
「…………」
まるで熱にでも当てられたのか、イルカ先生は私の顔を見つめたままぼうっと固まってしまった。私は心配になって先生の目の前で手を振ってみる。
「先生?大丈夫ですか?」
「っ!うわっ、アチィィイィイ!!」
「キャッ!?先生大丈夫ですかっ!?」
イルカ先生は突然慌てふためいて弾みでラーメンをひっくり返してしまう。スープが先生の太ももにかかってしまい私はつい濡れタオルで先生の傍まで回って走り寄った。
転がるラーメンの器はそのままに椅子から反動で立ち上がった先生の太ももの前でしゃがみ込み濡れタオルで拭く。
「全部かかったわけじゃないみたいですね。ああ、吃驚した?大丈夫ですか?熱くないですか?」
そう声を掛けながら、先生の太ももとをトントンと当てていく。
「あご、ゴメ………うっ!」
この作業、胸がポヨンポヨンと当たってちょっと邪魔でしょうがない。それに店内の中って熱気で暑いからTシャツで過ごしてるんだけどこれ胸元がガッツリ開いてるタイプなんだよね。上から谷間が見えてないといいんだけど……。
「うぅ」
急に頭上からうめき声がして不審に思った私は顔を上げてみるとイルカ先生が鼻元を手で抑えているではないか。しかもその隙間から血が滴り落ちてくる。
私は「キャー!」と悲鳴を上げて大将に向かって「タオルタオル!」叫んだ。大将はどこか面白そうに笑いながらタオルと手渡してくれる。
「なんだ。のぼせたか!」
「……すいません……」
イルカ先生は申し訳なさそうに謝罪をした。大将は「気持ちは分かるよ。男ならそうなるよな」とイルカ先生の心境が分かるように何度も頷いた。
どこか病気なのかしら?それともラーメンの食べ過ぎ?
お代はいいからさっさと家帰って落ち着けと大将はイルカ先生を帰した。
帰り際、イルカ先生はもらったタオルで鼻を抑えながら、私に向かって「また、来るよ」と失敗した笑みを浮かべてお店を出ていった。私は少し寂しそうな背中を見送って首を傾げた。
「鼻血出すほどラーメンが好きなのかしら?」
「それは違うぜ、ユウコちゃん」
とにかく、色々と吃驚なアルバイトだった。