グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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野良犬と少(幼)女

「臨時の経費として公園の整備費に貯水池の増築に掛かる諸々……ああ、産業物の売上と観光収入でギリギリ黒字か」

 

 分譲された領地の収支報告書を眺めながら政務の難しさを再確認する。基本的に自分の金は眷属としての給金で賄って、領地関連の収益は全額領地に還元しているのですが、こうして細かく分類分けした帳簿を見ていたら頭が痛くなってきた。私、数字は余り得意ではないんですよね。

 

「じゃあ、そろそろ休憩終わりにしましょう」

 

 今は帳簿作成が得意な人に任せていますが、もっと勉強をしないといけません。苦手を苦手のまま放置するのは問題ですからね。私は休憩中に読んでいた書類を仕舞うと一緒に1kmダッシュをしていた二人の方を向く。少女二人は死んだような目をしていた。

 

 

 

 

 

 

「……貴方馬鹿ですか? 馬鹿ですね。……1kmダッシュって、標高約1000Mの急斜面の山をダッシュさせてどうするのよ。アンタと一緒にするなっての、このスパルタ馬鹿」

 

「ほぼ直線ですし、五往復しかさせていませんよ? 悪魔は飛べますから転がり落ちる危険性は低いですし。……それよりもボロが出ています」

 

 昨日の鍛錬に当てる時間、スラム出身で現在は将来の箔付けの為に屋敷に奉公している二人を準備運動に参加させたのですが、濡れたマスクを付けさせ百キロの重りを背負わせて山登りダッシュをさせた事をルーリアは少々怒っている。私が幼い頃は同じ訓練をしていたんですけどね?

 

 ……いや、よくよく考えれば下級悪魔は上級悪魔に比べて魔力以外に身体能力も低い。元々子供以下の魔力の一誠君が数万倍に倍加してもライザー様との決闘でそれ程圧倒的で無かったように。……そもそも数万倍になっているのでしょうか? 私の解釈違いなだけで、例えるなら使い捨てのタンクを取り付けて燃料の総量を増やす事が出来ても一度に注げる量が変わらない、そんな感じなのかも知れません。

 

「実際、ゲームや決闘の映像を見る限りでは一度に身体に留めておける魔力量は変わらない様ですしね……」

 

「アンタ、人の話を聞いているわけ?」

 

 考えが逸れて思わず呟いてしまえばルーリアに頬を引っ張られる。今、彼女は私の膝の上に向かい合わせになって座っていました。その上身体を離すわけでなく、寧ろもたれ掛かるようにしているので顔が近いし胸が当たっている。いえ、彼女の胸が当たっているからどうという訳でもありませんがね。

 

 何故か睨む瞳が更に鋭くなりながら私の頬が両手で挟まれた。

 

「……ねぇ。このままキスでもしてあげようかしら? ふふふふ。昔は何かしたら切り落とすって言ったけど、今の力の差を考えたら成すがままね」

 

「目が獲物を狙う獣の目ですよ。アレですか? サキュバスの本能?」

 

「……否定はしない。私、キスもしたこと無いけど」

 

 この女、見た目は絶世の美女だが中身は中年のオッサンだからな。そもそも此奴がこんな事をしているのは今から来る奴らに見せ付ける為です。自分の発言に恥ずかしそうにしているが羞恥系のアレではなく、公爵家の眷属だからと寄ってくる方を避けるために恋人だと誤認させる為の策です。正式に認めたら大っぴらにアピールしなければならないので噂が広まる程度で済ましますけどね。

 

 

「あっ! 魅了とか使って良いかしら? レジスト禁止ね」

 

「横暴にも程が……来ましたよ」

 

 もう直ぐお昼時、何時もこの時間帯に食事が運ばれてきますので偶に目撃されて噂が流れる様にする。まさかルーリアがこんな案を出すとは思っても見ませんでした。さて、ノックされましたし、開いた瞬間に慌てて離れて下手な言い訳でもすれば……。

 

 

 

 

「メルギスさん、お昼ご飯を持って……」

 

「あの、お邪魔で……すよね? ルーリア姉、ごゆっくり……」

 

 入ってきたのはアホ毛の茶髪ショートと白髪黒目の褐色肌の少女メイド二人。……身内です。スラムで共に育った仲間です。更に言うならば訓練がハードだと注意された二人。名前は桃花・クレイシーとマーシルリア・ナラル(通称マーシー)。

 

 

「これは誤解を解かないと私達がマジで出来てるって仲間に広まっちゃうわね……」

 

「そうですね……」

 

 

 微妙な面して祝福されたり、素直に祝福したりするのが目に浮かぶ。多分否定しても照れるなとか言われそうな気がする。寧ろ、皆は言うでしょう。良くも悪くも自由なのが多いですから。取り敢えず小猫に相談を持ちかけられていますし、お供として連れ出しますか……。

 

 

 

 

 

 

「あ、あの、本当に良いんですか? こんなに沢山」

 

「これがネットで評判の新作スイーツ……」

 

「……いただきます」

 

 私の前にはテーブル一面に置かれたスイーツ、向かい合わせの席には少々幼い姿の少女三人。私、そっち系の人に思われていませんよね? 甘い物で幼女を釣る犯罪者的な……等と表情に出ていたのか桃花の目が鋭くなり、小猫の眉間に皺が寄る。取り敢えず小猫が来る前に誤解は解きましたし、労いも兼ねながら相談を聞きましょう。

 

 

 

 

 

 

「き、木場さんの様子が変? 確か沖田……さんの弟子でお嬢様の騎士ですよね?」

 

 皆さん、初めまして。私は桃花・クレイシー。……本当は暮石ですがスラムの皆さんに保護された頃は舌足らずな上に聞き慣れない日本の名字でしたのでクレイシーと間違われ、今でも偽装のためにクレイシーと名乗っています。偽装が必要なわけは後々敵キャラなどで明かされるとして、今は冥界在住なのに日本の名前でスラムに保護された事で察するかキャラ募集のページを見て下さい。

 

 メタ名発言は此処までとして、どうも彼の様子が妙との事。ギャスパーさんの封印解除もあって今度の球技大会に熱が入っているリアス様ですが、彼は上の空の事が多いらしく……師匠の影響ではないですか? 私、彼の師である沖田総司が嫌いなんです。

 

 

 

『生き残りたいと思うのは生物として当然の事だろ。理想に殉じたい野郎だけが勝手に死んでりゃ良いし、所属を変えたから前の仲間は知らないってのも自由だよ。……関心はしねぇけどな』

 

 メルギスさんはそう言って、今でも羽織を着続けているのは自分が仲間を裏切った事から目を逸らす行為で、其処は気に入らないって言っていましたが、私は仲間の命も名誉も知らないっていう彼が気に入りません。

 

「……すみません、メルギスさん。何かご飯系を頼んで良いですか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

 腹が立ってきたらお腹が減ってきたので大盛りカレー(トッピング全乗せ)を注文する。小猫さんは境遇が似ていますし、胸も同じ位なので仲間です。……手配書で見たお姉さんクラスに成長しない内はですが。

 

「それでお嬢様はどうしろと?」

 

「いえ、部長は真面目にやるように注意する位で、私達に何か心当たりがあるかも聞かなくて、主に……」

 

「ああ、一誠君に夢中な訳ですね。まあ、恋に恋する少女が意中の相手を見つけたのですから仕方がないですが……」

 

「世の中は平等ではないですからね……」

 

 言いよどむ小猫さんの様子や入ってくる情報から察したメルギスさん。私も家を大幅リフォームしたり等々ベタ惚れしているのが分かります。

 

 実の親でさえ兄弟姉妹の誰かを贔屓するのですから、眷属でも注ぐ愛に差が出るのは仕方がないこと。ルーリア姉の胸を思い浮かべながら自分の胸をさする私は世の無情さに嘆きを感じるのでした。

 

 

 

 

「教授に相談して……止めときましょう」

 

 自分の命さえ危険に晒すマッドの事を頼るなど自殺行為ですからね。私がクレイシーなら彼はクレイジーです。スラムの皆は私がメルギスさんの真似をして一時間睡眠に挑戦しようとしたら、彼奴はクレイジーだから真似するなと怒りましたけど。……あれ?

 

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ、『切り花』が何かに反応した気がして……」

 

 一瞬でしたし理由は分かりませんが、私の返事を聞いたメルギスさんは念の為に冥界に帰る事にしました。小猫さんを通してお嬢様に注意を呼びかけましたけど……不安です。

 

 

 

 

 

 

 

 ……所でこの町には有名なワッフルのお店が有るので寄ってみたいのですが。ほら、皆へのお土産に……え? 構わない? やった!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……悪魔か」

 

「ひっ!?」

 

 お店に向かい、注文した品が出来る間にマーシーとトイレに行ったのですが、先に出たらしく女子トイレの前で待っていた彼女を神父服の男性が見下ろして正体を見破っています。髪は白ですから例の機関の所属ではないのでしょうが……。

 

 瞳に明らかな敵意が込められていたからかマーシーは思わず悲鳴をこぼして後退りをする。……止めなくちゃ! こんな事であの子に誰かを傷付けさせれない!

 

 

 

 

 

「ちょっとお話し良いですか? お嬢ちゃん、この人の知り合いかな?」

 

「え、えっと、初対面です……」

 

「そう。ちょっとお話しを……待てっ!?」

 

 私が飛び出そうとした時、剣呑な空気を発した所に通りかかったお巡りさんが来るなり神父は逃げ出しましたけど……本当に嫌な予感がします。

 

 

 

 

 

 

「すみません。その子がどうかしましたか?」

 

「……貴方、この子の保護者ですか? 一応関係を教えて貰ってパスポートか何か見せて貰える? 最近、教会が誰かに破壊されたり殺人事件が起きてて物騒なんですよ」

 

 あっ、これは早く助けに行かなくっちゃ。……この時、私が入ることで余計にややこしくなるとは予想もしていませんでした。具体的に言うとロリコン的な何かの疑いを掛けられました。……ごめんなさい。




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