町中を走りながら腕時計を見れば予定の時間には間に合いそうだ。僕はすれ違う人の視線を浴びる事に少し怯えながら約束の場所に辿り着いた。
「えっと……」
「ひぃっ!?」
「ご、ごめんなさーい!」
最近評判のオープンカフェの一角で悲鳴が上がり、まさかと思って視線を向ければイッセー先輩のお友達の二人が女の人に追い払われて逃げていく。その女の人こそ約束の相手だったので、僕はビクビクしながらも近寄って行った。
紫の髪をボブカットにしたスレンダー系の美人。サングラスをした長い足の長身は女優か何かを思わせるけど、綺麗というよりは格好いいと感じる、女優は女優でも本格派アクション女優みたいな人。それがメドゥさんへの印象だ。
「ったく、人の事を下心丸出しでナンパしやがって。これだから男ってのは……」
「あ、あの、メドゥさん。お、お、お久しぶりです」
「……ん。ヘタレなのは相変わらずっぽいが、元気そうで何よりじゃないか、ギャスパー」
ニカッと笑って顎でシャクり向かいの席に座るように促した時に蛇を思わせる瞳が見える。僕と同じ魔眼系能力者で、制御方法を教えてくれた人だ。……メルギスさん曰く、権力的な意味以外で逆らわない方が良い相手の一人で、僕もそう思います。気っ風が良い人ですが……怖いですから。
「……あぁ?」
ひぃいいいいいいいい!? 心、読まれた!?
「あ、あの、本当に有り難うございました。お、お陰で何とか……」
「別に礼は良いさね。旦那に頼まれた仕事だし……結局はアンタの頑張りあっての事だ。ってか、本当に感謝してんなら堂々としな。それが前向いて歩けるようにしてくれた相手への礼儀ってもんだ」
「それでも、僕はお礼が言いたくて……」
冥界で害獣駆除を行うメドゥさんは色々と忙しい。矢っ張り軍隊じゃなく少数精鋭を主とした今の悪魔社会じゃ広い範囲に手が回らないし……彼女を眷属にしたいって人を避ける為に動き回っているから。今日は偶々この町に来るって連絡を受けたから部長に無理言って抜けさせては貰ったけど、矢っ張り勧誘を頼まれた。
「あ、あの……」
「前にも言ったが誰かの下に付くのは沢山だ。自分の生殺与奪は自分だけが握りたいし……例の変態ドラゴンが居るなら尚更だしね」
話を切り出す前に返事をする辺り、メルギスさんを通じて既に勧誘済み何だろうと察する。男嫌い……特にスケベな男の人が、な人だし、あのイッセー先輩が居るんじゃ絶望的だと僕も思いました。実際、噂を思い出したのか苦虫を噛み潰した顔になっていますし……。
「あーもう! 終わりだ、終わり! この話はお終い! ほら、最近の話をしておくれよ。学校は楽しいかい?」
「は、はい。ちょっとクラスメイトの視線は怖いですけど……」
この人は確かに怖いけど、それでも優しい人だと改めて思う僕でした……。
「まあ、アレだ。人生色々あるし、時に優しさに甘えて自分を守ることしか出来なくなるもんだけど、前向いて歩きゃそれなりに楽しいもんさ」
そう言って去っていくメドゥさんだけど、町には何をしに来たのかな? 一応部長が管理して……管理しているから害獣認定される魔獣や、はぐれ悪魔は……滅多に入って来ない。アニメ版では三ヶ月間に二回も入られたとか僕は知らない。多分、あの人の事だから心配して来てくれたんだろうし、言及しない方が良いのかも、そう思いながら僕は学園へ向かっていました。
今日会う予定の悪魔祓いに少し不安を感じていた、そんな時だった。その人が話し掛けて来たのは。
「ああ、済まない。駒王学園への道を教えて貰えるかな?」
初老の西洋人の男の人。ガッチリとした体格で……只者じゃないって僕の中で警鐘が鳴り響く。思わず後退りをして逃げ出しそうになるけど、多分僕より強いなら逃げられない。停止させられるかどうかも不明だ。ど、ど、ど、どうしよう……。
「……むぅ。別に危害を加える気はない。君はグレモリー家かシトリー家の眷属だろう? 私はヴァスコ・ストラーダ。飛行機のエンジントラブルで到着が遅れたが、今日会う予定だった悪魔祓いの三人目だ。案内して貰えるかな?」
両手をあげて敵意のないことを示すヴァスコさん。僕相手に搦め手を使う必要もない力だろうし……大丈夫かな?
「こ、こっちです……」
それでも怖い物は怖い。ビクビクしながら先導する僕に居心地の悪そうな顔をしながらついて来る彼を案内して辿り着いた時には日が暮れていて、何故か校庭には人払いの結界。不審に思って向かったら、青い髪と栗毛の見知らぬ二人と皆が向かい合っていました。
「……彼女は」
一触即発の空気に眉を顰めたヴァスコさんが驚いた顔でアーシア先輩に視線を移す。聖女だったし顔見知りなのかなと思った時、重低音が響いた。ギョッとして視線を向ければ背後から小猫ちゃんに股間を蹴り上げられるイッセー先輩。見ているだけで股間がヒュッとなった。
「……結局下心が優先ですか。……丁度良い所に、ギャー君。青い髪の方は私が受け持つから、栗毛をお願い。自在に姿を変える聖剣使うから気を付けて」
ええええええええええええっ!? い、いきなり言われても困るよぉおおおおおおおおっ!?
「……」
今回の決闘は青い髪のゼノヴィアさんがアーシア先輩に絡んで、イッセー先輩が食ってかかって、祐斗先輩が本格的に喧嘩を売って行われるらしい。それで何故二人が決闘に参加しないのかって言うと……。
「師匠! 僕にやらせて下さい!」
「今の君に許可を出す気はありません」
祐斗先輩はこんな感じで沖田さんが止めて、イッセー先輩は最初はアーシア先輩の為に怒ってたのに決闘の準備が整う頃には水着みたいな格好に下心が刺激されて鼻の下を伸ばしてたからムカついたって小猫ちゃんが言いました。
……絶対メルギスさんの影響です。冷静なようで少し行動的すぎる所があるから、あの人。
「お、おい、イリナ……」
「しっ! 今は気にしないでおきましょ!」
青ざめた二人が視線を送るのはさっきから黙って腕を組んでいるヴァスコさん。同意の上だし、今のままじゃ禍根が残るから止めなかったけど、明らかに二人を睨んで精神を削っています。
「と、取り敢えず行くわよ!」
開始の合図と共に栗毛のイリナさんが聖剣を刀に変えて来たので僕も無数の蝙蝠に変化して距離を取る。クロスボウやブーメランに変化しても対応できるように高く飛び、有刺鉄線の投網みたいにしても良いようにバラバラに分かれて、速射性と速度を重視した雷の魔力を打ち続けた。盾に変えても大丈夫な様に四方八方を囲んで攻撃を続けて何もさせない。
停止は聖剣のオーラで防がれるかも知れないし、集中のために立ち止まった所に突起物をつけた盾を構えて突進してくるかもと思えば無理。先端が刺されば身体の内部で形を変えて確実に殺されちゃう。……だから、何もさせない。
チラリと横を見れば小猫ちゃんは何時もの巨大な鉄球じゃなくて小振りな西瓜位の大きさの流星錘で戦っていた。縄じゃなくって極太のワイヤーだけど。
「……えい」
投げられた錘をゼノヴィアさんは正面から切り落とそうとするけれど、軌道を変えて刃を避けたかと思うとUターンして振り下ろしている剣の峯に真上からぶつかった。勢いが加算されて前のめりになったゼノヴィアさんの腕にワイヤーが巻きついて……。
「……巨乳死ぬべし、慈悲はない」
そのまま一本釣りみたいにゼノヴィアさんを投げ飛ばす。さっき貧相な身体って挑発されてたから怒ってるんだ。こ、怖いよぉおおおおおおおおっ!!
「ぐぇっ!?」
あっ、電撃が数発直撃してイリナさんが気絶しちゃった。……全部が集中したお尻の布が破れちゃったけど見ないでおこう……。
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