グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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最近知ったのだが、庶民生まれのイッセーは数十年後には最高最善の王とされるとか

貴族の教育を受け、魔王として数百年単位で行動したサーゼクス達より為政者として評価が高いわけで

彼らの積み上げてきたものやアジュカがしたらしい腐敗貴族の大量処罰が土台になったとしても……四大魔王がアレなのか、イッセーが天才過ぎるなのか、どっちだろう……

一年以内に武術を極め公爵家の婿入り試練を短期間の勉強で突破して芸能活動をしながら学業や悪魔の仕事をしつつ誰よりも努力が出来る効率化の才能など、並の主人公が真っ青の多才っぷりだから……


此奴の何処が才能ないんだ!? 普通に天才中の天才でしょ!? 一誠よりも才能がある主人公って誰が居るだろう?


野良犬と教授

「ふはははははっ! 矢張り我が輩は天才である! 見よ、この究極の卵割り機を。一度に五個も割れる優れ物だぞ!」

 

 本日は領地へ視察として訪れたのですが、妻子に家を追い出された教授が人を集めてガラクタを見せびらかしています。この人、天才的な発明をする反面、頭の捻子が外れていてゴミ同然の物を作るのですよ。今回も義理で集まった人達は説明の途中で帰ってますが教授は気付いていません。

 

 只高笑いをするだけで、物陰から一人娘のベンニーアさんが呆れた風に見詰めた後で此方に寄って来ました。

 

《いやはや、糞親父にも困まるでやんす。メルギスの旦那、今日はお仕事でやんすか? 留学の件、どうなったか聞きたいんでやんすが……》

 

「ベンニーアさん、もう少しお待ち下さい。メルギス様は農園の視察に赴いた後、学園長との会食がありますので」

 

 父親が冥府を追放された身とはいえ半死神である彼女は中々希望する学校の入学が叶わず、現在は通信教育で勉強中。……大体、中級悪魔からじゃないと教職に就けないから学校自体が少ないのですよ。教育だけでなく、農業も畜産も水産も魔力でパパッと解決って訳には行きません。戦闘に評価を置きすぎて各分野でマンパワーが深刻な不足です。

 

《……はっ!? 仕事モードのルーリアの姉御も素敵でやんす》

 

「ふふふふ。有り難う御座います」

 

 ベンニーアさんですが、何故かルーリアに憧れています。仕事モードの彼女は美人で知的な大人の女性ですから騙されて口説こうとする方が多いのですが、本性を知っている身内からすれば失笑物なのですよ。それでも憧れる人は居て、目を輝かせているベンニーアさんの賞賛に口元に手を当てて笑うルーリア。

 

 

 ……この前私の部屋にブラを置きっぱなしにして、それをメイドに発見された時はとても気まずい思いをさせられましたけど、本当に有能なのですよね、彼女。

 

 

「むむむ? ベンニーアではないか。そうかそうか。尊敬する父の大発明を見に来たのであるな!」

 

《……》

 

 後退した生え際に白衣にモノクルといったベタベタな学者姿の教授は笑う。呆れ果てた娘の瞳に気付く事もなく……。あっ、教授はこの後で騒ぎを聞きつけた奥さんにしこたま殴られた後で何処かに連れて行かれました。スコップだの山中だの完全犯罪だの聞こえましたが気のせいです。

 

 

 取り敢えず一言。教授の師匠って絶対に禄でもない存在ですね。

 

 

「留学と言えば……大丈夫でしょうか?」

 

 農園に向かう道中、私は以前より話の上がっていた留学をする事になった桃花の心配をするのでした……。

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、父の血が濃く出ていますけど私も母も日本出身では有りません」

 

 私の身分はグレモリー家のメイド……なのですが、今は駒王学園中等部のクラスで同じクラスになった人達の質問責めにあって居ます。沖田さんのお供で来ただけの筈なのですが、どうしてこうなったかと言うと……。

 

 

「転入ですか? どうしてこの様な時期に……」

 

 メイドの仕事があるからと文武を疎かにしたくない、そんな想いから空いた時間に修練や通信制の学校の課題をこなしている私ですが、旦那様から滞在先のホテルに連絡がありまして急遽留学をする事になりました。

 

「……リアスだが、貴族社会での立場がな」

 

 言葉を濁す様子に私は少し考え込む。伝説の龍を引き込んだとはいえ、大勢を招待した上での婚約破棄までしたのでは流石に評価の下落を立て直すには至らず、更に今度の騒動を報告しなかった事は家臣団からも不満の声があがっているとも聞かされて、監視役だと悟ります。

 

「……異能者も通う学園の管理はシトリー家も関わっている上に、此処で正式に誰かを送れば、実家からも評価されていないのか、リアスがそう判断されて政敵につけ込まれる。……頼めるか?」

 

「はっ! お任せ下さい。あ、あの、私は名目上メルギスさんの部下でもありますし、部下の評価は上司の評価にも繋がりますよね?」

 

 お嬢様の我が儘の後始末でメルギスさんの仕事が増えていますし、此処で彼の評価を上げれば恩返しにもなる。そう考えた私は短期留学生として中等部に入るのでした……がっ。

 

 

 

「む、難しい……」

 

 数学は得意なのですが……国語はちょっと苦戦しそうです。いや、私の頭が悪い訳じゃ無いですよ? お父さんは日本人でしたけど私は冥界育ちですし、仕方ないのですが……。

 

 休校日にはメイドの仕事をする予定ですし、頑張りましょう。だってメルギスさんはもっと頑張って居るのですから。ぶっちゃけ過労死を心配されるレベルで! あの人、ワーカーホリックだからなぁ……。

 

 

 

 

 

「……そう。もう、私の何処が不満なのかしら?」

 

 放課後、昨日頼まれたメドゥさんへの口利きの失敗を伝えるとお嬢様は残念そうに肩を落とします。ギャスパーさんが駄目でも付き合いがもっと長い私が勧めれば……と思ったのでしょう。

 

「……申し訳有りません。色々とアピールしたのですが」

 

 実際は、断りますよね?、からの、当たり前さ、でしたが、表面だけ申し訳無さそうにしておけば誤魔化せます。しかし、ギャスパーさんも最大の理由である、好色な変態と同僚になりたくない、とは言えなかったらしく……。

 

 実際、お嬢様は公爵家の跡取りでお金持ちで他の悪魔に比べれば眷属に優しい……まあ、放任主義ですが自分で立ち直れると信じていると言えなくもないです。メドゥさんは格好良い系の美人で害獣駆除の腕前でも有名ですから眷属にしたいのでしょう。

 

 正直、他の貴族が珍品を集める様に珍しい力の眷属を求めるのに対し、お嬢様は珍獣のペットを欲しがる様に眷属を求める、そう思えますがペットも家族の一員なら……。

 

 

 

「そう言えば貴女も結構強いのよね? どうかしら、私の眷属に……」

 

 ……うげ。思わず声が出そうになるのを堪えて顔に出ないようにする。悪人ではないですが領地の問題と悪魔社会全体の問題の区別が付かない人の眷属になるのは。ですが、相手は主の家のお嬢様。断るにも何か……そうだ!

 

 

「実はメルギスさんから昇進したら眷属になるかと誘われて居まして。長い付き合いですし……好きな方ですから嬉しくて」

 

「あら、それは残念ね。でも、気が変わったら何時でも言って。貴女なら歓迎するわ」

 

 思わず口から出任せを言って難を逃れる。ごめんなさい、メルギスさん。loveじゃなくてlikeで好きなのは間違いないですが、小猫さんやギャスパーさんに訓練をつけた事で噂に上がってるロリコン疑惑が加速したらごめんなさい!

 

 

 旧校舎からの帰り、気絶した一誠さんと祐斗さんの襟首を掴んで引き摺っている小猫さんを見なかった事にして沖田さんの休暇(という建て前の任務)中に拠点としているホテルに向かう最中、空気の流れを感じ咄嗟に屈んだ私の首があった場所を刃が通り過ぎる。髪の毛が数本切られて宙を舞った。

 

 そのまま振り返ると同時に抜刀した切り花で切りかかるも僅かに後ろに下がられ当たらず、切っ先が相手に向いた瞬間に突きに切り替えるも刀の腹によって受け止められる。刃も柄も闇夜を思わせる黒で鍔無し、何より見ているだけで前進に刃が突き刺さったかの様に感じさせる禍々しい呪気。……私は、あの刀を知っている。

 

 

「久し振りだな、桃花」

 

 刀を持った男の顔を、声を知っている。幼い私と母の名を呼び、優しく頭を撫でてくれた男を知っている。二年前、メルギスさんが助けてくれなければ私を殺していた其奴を私は知っている。

 

 

「……ぶな。その……」

 

 ああ、会いたかった! 抑え込もうとしても溢れ出る激情に切り花がカチカチと音を立てて警告するが抑えきれない。

 

 

 

 

 

「その声で、父さんの身体で、私の名を呼ぶな……魔喰いぃいいいいいいいいいいいっ!!」

 

 刃を鞘に納め、腰を落とすと同時に抜刀。剣術の中でも最も自信がある高速の居合い切りは上級悪魔にすら通用する。

 

 

 

 

 

 

 ……だけど。

 

「少しは強くなったが……数年の努力で俺に届くと思ったのか?」

 

 必死に探し求めた仇はそれ以上の居合いで私を切り裂く。先程まで抜いていた刀を何時納刀したのかさえ見切れず、私はその場に崩れ落ちた。体が熱くて痛い。

 

 

「じゃあ、死ね」

 

 歯を食いしばって睨み付けた私の顔めがけて態と遅速に刃を迫らせながら楽しそうに笑う顔に悔しさしか感じない。母の想いの為にも生きると誓いながら何をやっているのだと唇を噛みしめ血が流れ出た時、空にもう一つの太陽が現れた……。

 




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