グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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猫と不死鳥

「小猫ちゃん、木場の為にイリナ達に接触しよう」

 

 ギャー君がお尻丸出しにして倒した悪魔祓いのイリナさん、その相方で無駄乳のゼノヴィアさん、そしてヴァスコさんに交渉を持ちかけてエクスカリバーの破壊許可を貰おうと言い出したイッセー先輩。隣のアーシア先輩も昨日の様子のおかしかった姿が心配だそうで止める気が無いようです。

 

 ……仕方ないですね。このままじゃ絶対に無茶をするに決まって居ますから。身の回りの誰かが居なくなるのはもう嫌です。意を決した私は協力者として生徒会の匙先輩を勧誘しようとするイッセー先輩に待ったを掛けました。

 

 

「あの人が協力してくれたとしても、ソーナ会長の動向が分からない以上は誤魔化せず発覚する恐れがあります。だから、祐斗先輩を呼んで私達だけで行きましょう」

 

 この件は発覚すれば部長達は必ず止めに入るでしょう。だからこそ極秘に接触を図る気らしいのです。

 

「でも、俺達だけで……」

 

「ギャー君も誘います。ギャー君も私もあの二人より強いですし、二人共切り札は使っていませんから大丈夫です」

 

 正確に言えば使えなかったのですが、あの場では。ギャー君は警戒しすぎて神器を使えなかった上に大技は威力が高すぎて、私は近日届く手筈になっているから、ですけど。あの私闘の時に気絶していたイッセー先輩も私達と二人の戦いの様子を聞かされたからか実感が湧かない様子ながらも納得して祐斗先輩を呼び出す。少し待った頃、浮かない様子で現れました。

 

「……話ってなんだい?」

 

「木場! 俺達も協力するからエクスカリバーを破壊しよう! 何とか許可を貰って一本だけでもよ」

 

 長年抱えていた憎悪の対象を前にして戦うことすら許されなかった上に別の誰かに敗れた姿を見たせいか気力が感じられず、そんな姿に意を決した様子のイッセー先輩が説得に掛かります。単純故に真っ直ぐな言葉に心を動かされ始めた姿を見て私も口を開きます。

 

「……私は姉様に捨てられて一度一人になりました。もう、誰も周りから消えるのは嫌です……」

 

 これは本心。だから顔も声も泣きそうになっているのが自分でも分かります。イッセー先輩が彼を心配して部長に極秘で悪魔祓いと接触するのを決めたように、私も祐斗先輩がこのままじゃ居なくなってしまうって感じたから縋り付くように肩に手を置いて……。

 

 

 

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

 そのまま、胸ぐらを掴んで体勢を崩すと顎に一撃を加えて昏倒させる。直ぐ近くにいたイッセー先輩が驚いて言葉を失う中、同じ様に顎に戦車の力を加えた平手打ちを叩き込んで気絶させました。

 

「こ、小猫ちゃん? どうして……?」

 

 口を押さえながら動揺するアーシア先輩。気持ちは分かります。追い詰められた仲間を助けたい。そんな優しい気持ちを応援したい。私だって同じです。でも……。

 

 

「……エクスカリバーを奪って町に潜伏しているコカビエルは本当に危険なんです。聖剣で斬られて浄化されたら二度と会えないんです。覚えて置いてください。優しさは相手の意をくんで応援するだけじゃなく、想いを察して尚、邪魔してでも危険から遠ざける、そんな優しさも有るって事を……」

 

 私にとって二人は大切な仲間です。だからこそ、恨まれてでも守ってみせる。そんな守り方も有るとメルギスさんから教わりました……。

 

「……分かりました。じゃ、じゃあ、二人を休ませる場所に連れて行きましょう」

 

 アーシア先輩も聖女だった頃に危険から遠ざける為と軟禁に近い扱いを受けていたと聞きます。余計な知識を付けず都合のいい聖女であって欲しいとの願いもあったのでしょうが守るために居場所を限定して護衛や見張りを付けていたのも事実。だから悲しそうにしながらも納得してくれました。

 

「二人共、ごめんなさい。存分に恨んで結構です。でも、その代わりに危ないことは絶対に……」

 

 流石に二人を担ぐのは小柄な私では難しいので襟首を掴んで引き摺って旧校舎まで運ぶ。途中、桃花ちゃんが此方を見て直ぐに目を逸らしたのが気になりました……。

 

 

 

 

「……そう。良くやったわ。でも、私達に知らせるって手もあったんじゃ……」

 

「あ、あの! その場合、逃げる可能性もあったんじゃないでしょうか。祐斗先輩の足で逃げられたら沖田さん位しか追えませんし……」

 

 流石に手荒だったと遠回しに注意されるもギャー君のフォローが入る。気絶させた二人をどうしようか部長が悩む中、連絡を受けた沖田さんが直ぐにやってくると言って来ました。最悪拘束でしょうか? 祐斗先輩は特に精神状態に問題がありますが……それはちょっと嫌です。私も姉様の件の直後は拘束されて、ギャー君も引き籠もりが性にあったとはいえ封印経験者。

 

 少し判断を間違ったかと思った時、ノックの音が扉から。沖田さんにしては少し早い気が……。

 

 

 

 

「ご機嫌よう、リアス様と眷属の皆さん。ちょっと失礼いたしますわ」

 

「貴女は……」

 

 扉を開けて入ってきたのは沖田さんではなくライザー・フェニックスの僧侶にして妹、私が先日のゲームで足止めを言い訳にしてサボ……ライザーとの戦いに参加しなかったレイヴェル・フェニックスでした。……あの時、こんな会話が有ったのを思い出しました。

 

 

 

 

「……足止めですか。ふぅん。まあ、それは兎も角として……貴女もメルギス先生の教え子なのでしょう?」

 

 私が部長への義理立てとメルギスさんの立場を考慮して残った事を見抜いた様子でしたが、驚いたのはそれ以外。まさかフェニックス家の人にまで指導を……いえ、婚約で結びつこうとしている仲ですから不思議ではないのでしょう。

 

「先生から聞いていますの。レイヴェル様以外にもお嬢様の眷属二人の指導を任されています、とね。先生の愛弟子としては他の教え子に興味がありまして……ふっ」

 

 値踏みするような眼差しの後、鼻で笑われる。……おい、何処を見て笑った? 取り敢えず第一印象は最悪だったと記憶しています。

 

 

 

 

 

 ……僕は自他ともに認める臆病者。メルギスさんは臆病は慎重さの現れって言ってくれるけど小猫ちゃんはヘタレヴァンパイアって言ってくる。そんな僕は今も怯えていた。

 

「お茶ですわ」

 

「あら、これはどうも。……警戒しなくても結構ですわ。私、婚約破棄は逆に助かったと思っていますの。お兄様とリアス様では将来的に此方が頭を下げる問題に発展しかねませんでしたし。まあ、お兄様もあの年齢も出身もバラバラの大人数相手に修羅場になっていない部分は評価してくださいましね」

 

 朱乃さんが少し警戒した様子でお茶を出すけれど彼女は優雅に笑うだけ。警戒する此方が間抜けに感じる様子に皆さん拍子抜け。で、でも小猫ちゃんは……。

 

「……それで何しに来たのですか?」

 

「あら、怖い。私は先生の愛弟子で、貴女達も先生の教え子。同門じゃ有りませんか。まあ、両家の合意での試合での結果にグレモリー家の眷属が異を唱えて暴れ、グレモリー家出身の魔王様が後押しをした。敵意を持ってると思われても仕方有りませんが貸しとして何時か回収させて頂く算段ですのでご安心を。……と言うより、本日は貸しが増えたとお伝えに来た迄ですわ。先程、グレモリー家の使用人の少女を助けましたの」

 

 さっきから何か恨みでもあるのかレイヴェルさんを睨んでいる小猫ちゃん。特に自分を愛弟子って言った途端に発する空気が鋭くなった。嫉妬? もしかして身長がそれほど差がないのに胸周に差が……。僕は二人の胸に視線を向け、納得した。

 

「……(後で腹パン)

 

 ひぃいいいいいっ!? 僕にだけ聞こえるドスの利いた声が投げかけられる。だから何で心が読めるの。……って、グレモリー家の使用人の子を助けたっ!? 一体何が……。

 

 

 

 

 

「桃花が襲われたのね。あの子、メルギスの部下でもあるから後で知らせないと。それで犯人は?」

 

「……倒したけれど逃げられた、と言った所でしょうか? 下手人の中年男性の腕を焼き尽くした途端、魂が抜け出る様に無傷の少年が体から出て来て刀を持って逃げましたの。流石に怪我人が優先ですのでフェニックス領の病院に運びましたわ。……まったく、今日は小猫さんに用事があって来ただけですのに」

 

「……私に?」

 

 病院の住所が書かれたメモを部長に手渡しながら煩わしそうに呟くレイヴェルさん。名指しされた小猫ちゃんはキョトンとしていた。うん、本当に何の用だろう?

 

 

 

 

 

 

 

「……分かりました。部長、そういう事ですので……」

 

「……ええ、私が流石に表立って関わったら反発を受けそうね。今度の指導の時にでも伝えてちょうだい」

 

 イッセー先輩との戦いの後、ライザーさんはドラゴン恐怖症で引きこもりになったらしいです。三男でも仕事はありますし、世間体もあるのでどうにかしたいけどカウンセラーに伝手はない。だから顔の広いメルギスさんに頼りたいけど表立って頼れば先日の一件を不満に思っている人の反発を買う。……だから小猫ちゃんを通して頼もうと来たとか。

 

 部長達は納得した様にしているけど、レイヴェルさんの行動力は凄いなぁ。僕も少しは見習わなくちゃ。

 

 

 

「では、私はこれで。先生から送られてくる課題のリストをこなさなければなりませんので」

 

「……私とギャー君は呼び捨て。貴女は様付け。……愛弟子?」

 

「んなっ!?」

 

 最後まで優雅に振る舞っていたレイヴェルさんだけど、最後に小猫ちゃんが発した言葉に余裕が崩れる。部長、面白そうに見てますけどどうにかして下さい。

 

 

「あらあら、ソーナも大変ね」

 

 ……うーん。あの二人のは恋愛なのかなぁ? 僕にはよく分からないや。

 

 気絶したままのイッセー先輩達の扱いを決めようと話し合いが行われる中、最後の言葉で勝ち誇った表情になった小猫ちゃんが胸のことを忘れてくれたら良いと願っていました。

 

 

 

 そして、その夜の事。悪魔の契約の仕事で契約者の下に飛んだ僕は安ホテルの一室に転移しました。窓からは隣の廃ビルが見えて……あれ? 何か巨大な生き物が……。

 

 気になった僕が視線を向けると月明かりがその姿を照らし出す。三頭を持つ巨大な犬の魔獣ケルベロス。冥府の入り口に生息する筈のその姿を視認した時、僕がいる部屋より上の階に向けて巨大な火球が吐き出された。

 




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