グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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野良犬の教え子達

 ……突然ですが私には目標があります。今日決めました。

 

 

「小猫さん、貴女の目標は? 私は最強の女悪魔が選ばれる魔王レヴィアタンになる事ですわ。……あら? まさかメルギス先生の弟子ともあろう者が目標の一つも決めて居ないので? おーっほっほっほっ!」

 

「……五月蝿い、焼き鳥姫。目標なんて他人に語るものじゃないです」

 

「何ですってっ!? この丸太体型!」

 

 ……こんな会話がありましたけど、影響なんてされていません。悔しいから急遽決めたとかじゃなくって、前々からの悩み事に関係することです。

 

 ……あの胸は絶対にもいでやりますが、先ずは別の目標を。……昔の日本では貧乳の方が持て囃されましたし、着物だって小さな方が映えるんです。私は日本出身だから胸が小さくても問題ないです。

 

 SS級はぐれ悪魔『黒歌』、仙術使いであった姉様を一対一で倒す。捕まえるとか、殺すとかではなく、超える。何時までも仙術が怖いと逃げるんじゃなくて、仙術なんて私には不要だと証明する。土台は作った。後は基礎と実戦経験を積み上げるのみです。

 

 

 

 

「はーい! 其処でポーズお願い!」

 

「……」

 

 今は悪魔稼業中。堕天使が侵入していようが自粛しているようでは契約者の信用を失い、屈したと内外に思われる結果になるでしょう。……それは非常に困ります。今回のようなコスプレ撮影会の報酬や評価がどれ程の物になるのかとも思いますが。

 

 

 

『進退は疑う無かれ、行動してから考えるなと言いますが……何も考えずに行動するのは問題です』

 

 私がはぐれ悪魔の妹という事で殺されそうになった様に悪魔社会は人権概念が希薄で、公爵家の眷属であろうとも上層部の私への信用は薄いでしょう。姉様を倒したとして逃げられた時に繋がりを疑われたら面倒です。だからコツコツ評価を稼ごうと、メルギスさんの言葉を思い出しながらポーズを取りました。

 

 

 今回の依頼主は前髪をオールバックにした金髪巨乳のお姉さん。名はガラティミアさん。胸が大きい以外は問題の無い、寧ろ高価そうなお茶菓子とか出してくれる上に支払いの良いお客さんです。……いや、でした。

 

 

「……はぁ。もう遊びは十分ね」

 

 カメラを放り捨てたガラティミアさん、いえ、ガラティミアの手に光の玉が出現し私に向かって放たれる。咄嗟に身を翻した私は窓を蹴破って外に飛び出るなり籠手を装着、同時に鎖付き鉄球を異空間から取り出すと向かって来る光の槍を弾き飛ばしました。鎖を持つ手に痺れが走りましたし、かなり強いですね。

 

 

 

「……一つ聞かせて。貴女、何時から不審に思ってたの?」

 

「目が笑っていませんでしたから。……そう言った人の観察方法を学んでいるので丸分かりです」

 

 背中に六枚の黒い羽を出しながらガラティミアが出てくる。上級堕天使とか面倒ですね……。

 

 

 

「コカビエル様配下で上級堕天使のガラティミアと申します。まあ、どうせ死ぬのですから覚えて置かなくても十分……」

 

 敵の目の前で名乗りを上げたので遠慮無く鎖を振り回し、今度は回転を加えた鉄球を放たせて貰います。ガラティミアも予想していたのか光の槍を振るいますが……私は籠手に意識を集中させていた。

 

 光の槍はガラスのように砕け散り勢いを衰えずに突き進む鉄球はガラティミアの槍を振り抜いたままの腕に激突、腕の骨を砕いて身体に衝突すると紙細工みたいにはね飛ばしました。

 

「な…何よ、その鉄球。神器かし…ら……」

 

「……手の内を敵に話す馬鹿になった覚えは有りません」

 

 急に威力が増したので鉄球の力と思ったらしいですが違います。正確には籠手……()()()()龍の双爪(ツイン・クリティカル)』の能力。龍の手は一定時間使用者の力を倍にしますが、これは二個一対。当然四倍になるんです……籠手の鉤爪と手にした武器の性能も含めて。

 

「……さて、連れて行きましょう」

 

 ……相手が油断してなければ対空性能の低い私では苦戦していたでしょうから正直助かりました。教会側との不干渉の取り決めも向こうから襲ってきたのだから問題ないでしょうし……お茶菓子でも食べて部長を呼んで待ちましょう。騒ぎになっちゃいましたからどうにかしないと。

 

 戦闘による被害や物音を聞きつけた周辺住民の対応を丸投げすべく私は部長に連絡を取るのでした……。

 

 

 

 

「それで小猫を狙った理由は何かしら?」

 

 あの後、急遽駆け付けた部長はガラティミアを連行、部室で取り調べを開始しました。肋骨と右腕の粉砕骨折、臓器にも多大なダメージを受けていたので最低限の治療を施して拘束した上での尋問。正直言って素直に話すとは思っていませんでしたが……。

 

 

「戦争よ、戦争。コカビエル様の望む通りに戦争を起こしたいの。流石に上級堕天使が何人も動いたら他の幹部に目を付けられて初動で邪魔されるからって本部で待機していたのだけど……メルギスとやら以外にも邪魔になりそうなのが来たから町を任されたの。事前に潜り込んでいた私を含めてね」

 

 意外な程に素直に話すガラティミア。……いえ、問題はそれ以外。彼女の言葉からして他に……。

 

「朱乃、ギャスパーを呼び戻すわ! 私は魔王様に連絡する!」

 

 コカビエルの目的が予想を超えて危険であり、当然と言えば当然なのですが幹部であるコカビエルが動かせる実力者が他に侵入している事、何よりもコカビエルが町以外の場所で其れこそ戦争に発展する程の何かを行おうと気が付いた部長は慌てて指示を飛ばす。流石に縄張りの問題で片付けて良いレベルの問題ではないと焦りを見せた部長の顔が更に歪む。校庭から強大な聖なる力が、祐斗先輩達が謹慎中の教室から窓が割れる音がして、続くように魔力を感じ取る。

 

「あら、もう行動に出たのね。皆、働き者ね……はいっ!? ヘリオーゼルっ!?」

 

 余裕綽々と笑うガラティミアは睨み付ける部長を鼻で笑いながら視線を窓に向け、何かに吹き飛ばされたのかグチャグチャに潰れた身体から血を流しながら飛んでいく金髪のソフトモヒカンの堕天使を見て間抜けな声を上げます。次の瞬間、ヘリオーゼルと呼ばれた堕天使が爆発しました。

 

 

 

 

 

「ご機嫌よう、リアス様と眷属の皆さん。異変を感じたので介入させて頂きましたわ」

 

 窓から顔を出せばジャージ姿のレイヴェルが此方を見ている。空中に……いえ、風の魔力で創り出した足場に立った彼女の手には巨大なハンマーをフルスイングした格好をしています。黄金色の柄が赤い水晶を思わせる無骨な塊に取り付けられたその武器からは並々ならぬ力を感じ取りました。

 

「……それ、何ですか?」

 

「ふふふ、これですの? メルギス先生が愛弟子である私に下さった改造神器『巨人の悪鎚(バリアント・ハンマー)』ですわ。……三トン程有るので地面に立つと足が刺さりますが、こうして風に乗れば足腰の力も十全に乗せられますの」

 

「……脳筋」

 

「何ですってっ!? もう一度言ってご覧なさいっ!?」

 

「分かった、脳筋。……言っておくけど私も別の物を貰っています」

 

 事ある毎に愛弟子を連呼するのがウザかった、他に理由は有りません……。

 

 

 

 

 

 

「中々良い度胸だが足が震えておるぞ小娘。……その服装は趣味か? 魔王の妻もそういった遊びに興じていると聞いたが……」

 

 どどど、どうしよう!? 最近自信が付いたからってケルベロスに啖呵を切った僕だけど、それに反応するみたいに奥からゾロゾロとケルベロスやワイバーン、グリフォンが出てくる。その上、禿頭に多くの古傷を持つ老人の堕天使まで現れた。背中の羽は……八枚っ!? 咄嗟に集中して時間停止を発動するけど阻まれた。このお爺さん、絶対強いっ!

 

 ……この服は契約者のお願いで撮影会やってたんです、可愛いとは思うけど。でも、僕まで公開メイドプレイやってるみたいに言わないで下さいっ!?

 

 

「少年よ、あの様な申し出をした立場で恥を知らぬ様だが……此処は手を組もう」

 

「は、はい!」

 

 ヴァスコさんは窓から身を乗り出すと聖剣を構える。確かにこの状況じゃ不干渉がどうとか言っている場合じゃない。

 

 

「はははははっ! 年をとって耄碌したか、ストラーダっ! 小娘と小僧を間違えるとはな」

 

「……うむ」

 

「さて、二つ良いことを教えてやろう。コカビエル様は既に別の場所に居る。流石に面倒な敵が多いのでな。遊びを捨てさせて貰ったぞ。そして悪魔の拠点である学園ではエクスカリバーの融合が行われる。融合の魔法陣が発動すれば町は崩壊するであろう」

 

 その言葉に僕達の間に戦慄が走る。そして堕天使は羽を広げて飛び上がった。

 

「さて、私も役目を果たすとしよう。我が名はゴルディア! 町を守りたくばこの首を取ってみよ!」

 

 叫びと共に魔獣が散らばってゴルディアは光の剣を手に向かって来る。それを迎撃するストラーダさん。僕がする事は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『……そうですか。では、お任せします』

 

 僕が選んだのはメルギスさんへの連絡。こんな時こそ強い人に任せるべきだと思ったんだけど……僕は今まで何をやってたんだっ! こんな時の為に鍛えたのに、逃げていたら意味が無いじゃないか!

 

 頬を両手で挟むように叩き気合いを入れると上空へと飛び上がる。空を飛べる魔獣が襲いかかって来るけど其れを置き去りにする速度で上を目指した。

 

「僕が此奴等を相手にします!」

 

「……分かった! イリナ、他の客を逃がしたらお前は町の避難誘導をっ! 私は日本語が分からんから学園に向かう!」

 

 

 

 

 

 

「……うん、僕になら出来るっ!」

 

 風が吹きすさぶ上空、向かって来る鳥型の魔獣やケルベロスを見下ろしながら最大まで高めた魔力を放つ……寸前で停止させる。更に最大まで高めて停止。更に、更に! コントロール出来る最大数まで宙に浮かべた魔力、それを動かすと同時に蝙蝠になって散らばると全方向に視線を向けてロックオン。拡散した魔力を打ち出した。

 

 

 

 

 

 

 

「クワトロ・フルバーストッ!!」

 

 最大限の一撃×4は全ての魔獣を撃退する。よし! もう僕は引きこもりの臆病者じゃない。一人前の男だっ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……コカビエルの捜索に向かわなければならないというのに。家出小僧の遊び相手をしている時間など無いのですが?」

 

「おやおや、これは手厳しい。ですが私としては貴方を試したいのですよ」




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