グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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ライザー、短期間の修行で真女王状態のイッセーしかもグレートレッドから体もらったイッセーとある程度戦える程に やっぱり上級悪魔が努力したら伸びが段違いなんだね……


サキュバスとコカビエル

「ふはははは! 我が輩の最高で最強な知能が新たな術を生み出した! 名付けてデスイーターである!」

 

 私が幼くスラムで暮らしていた頃、冥府を追放されて流れ着いた教授は今も昔も変な物を創り出していた。この時も私やメルギス……もうこの世に居ない奴らも含めた子供を呼びだして術式を披露する。誰も期待していない目をしてたわ。教授は気が付いてなかったけどね。

 

「んで、どんな物なんだ、教授?」

 

 放置しても聞かされるので皆がさっさと聞いて遊びに行こうと役目を押しつけ有った結果、メルギスが訊ねると教授は更に調子に乗っていた。いや、本当に幸せな人だと思うわ。てか、死神(デス)が作った術が死を食らう(デスイーター)って……。

 

「聞きたいか、そうであろうそうであろう! なんとこれを背中に刻むことにより、本来死をもたらす筈の弱点となる力を貯蔵、必要に応じて全解放で己の力に上乗せ出来る上に、一定上溜め込む事で力が上がるのだよ。ふふん! どうかね、素晴らしいであろう!」

 

 まあ、子供だけ呼んだ理由は刻めるのは一定以下の年齢って事だったけどね。……刻む途中で複雑な術式を間違えたら教授が死んでいたとか他にもデメリットはあったんだけど……天才だわ、あの人って……。

 

 

 

「……やっぱ月見酒をしに人間界まで行こうかしら?」

 

 スルメをツマミに領地で作っているチェリー酒の瓶を片手に散歩中、味気ない夜空を見上げて呟く。これでメルギスでも側に居たらたのしいんでしょうけど……変な意味はないからね? 兎に角、誰か誘うべきかと思いながら真っ先にメルギスを呼び出しそうになって携帯を懐に戻す。今は多分、痛々しい女魔王との食事会ね。……帰ったらマッサージでもしてあげるべきね。彼奴と会った後は本当に疲れて居るもの。

 

 

「いや、腰揉んでやるより胸揉ませてやった方が良いかしら? その流れで押し倒されても仕方ないわよね、私って絶世の美女だし」

 

 彼奴は全裸よりも下着姿の方がフェチを刺激されるってのは隠していた本で知ってるし、ブラの上から揉ませるか中に手を入れさせて揉ませてやるか悩むものね。まあ、それは流れで決めるとして……。

 

 正直、彼奴に全部背負わせているって罪悪感が有る。お母さんが父さんを愛してたからこそ身を引いて姿を消して、嫁に隠れて探し出した私に一緒に暮らそうって言われたけど、死んだお母さんの覚悟を大事にしたいからって断った。……せめて皆を二人で背負えば今よりはマシになってたんだろうな。

 

 そうこうしながら彼奴の顔を思い浮かべると酒のせいで……絶対に酒の影響で顔が熱くなっていく。べ、別におとことして好きな訳じゃないんだから当然よ! 寝てる間に搾り取るのは彼奴だけってのは対象に選んで良い奴の中で一番強いからだし? 偽装とはいえ結婚するのに抵抗がないのも仲間だからだし?

 

 そうやって極々当然の事を再確認しているとメルギスから連絡が入る。随分と精神的に疲れた声で、コカビエルって堕天使が悪魔の領地で何かをやらかすかも知れないって。……うん、本当に辛かったのね。

 

 

「帰ったら腰と肩を揉んでやるか。少し無理してでも休みを取ってあげる。……私がいないと本当に駄目なんだから」

 

 あの馬鹿の稼ぎは大きい。数年前まで逼迫していたグレモリー家のお家事情が回復する程度に利益を上げている領地の必要書類は膨大で、グレモリー家に関わる者の手を借りる気は無いからってのが今の忙しさの理由の一つ。……鍛錬の時間が多いってのが一番だけどね。

 

 だから本当に心身共に疲れた時は静かに休ませてあげる、その予定だったのに……。

 

 

 

 

 

「誰、彼奴? 空気読めってのっ!」

 

 スラムでの生活は厳しい。仲間内の結束は強くても外から幾らでも敵がやってくる環境は私の感覚を鋭くして、遠くから敵意を放ってくる男の姿を発見するに至った。しかも堕天使、その上最上級クラス。そんなのが攻撃を仕掛けて来ようとしたのを見た瞬間、考えるよりも先に体が動いていた。

 

 

 

 

「あの馬鹿の仕事をこれ以上増やして堪るもんですかってのっ!!」

 

 全速力で飛来する私に向こうも気付き光の槍の射線上に私を入れた上で放つ。広範囲に散らばった大量で高密度の光の槍の群れ。其れ全てが私の体に吸収された。

 

 痛ぁあああああああああああああああっ!? ヤバい、マジで痛いっ! 悪魔の弱点である光を大量に喰らった私は激痛を感じながらも涙を堪えて間抜け顔を晒す男の顔に拳を叩き込む。風の魔力の足場を踏みしめた渾身の一撃の威力を伝えきると同時に炎の魔力を放った。範囲ではなく威力を重視した魔力は男を地面に叩き落とし、私は更に追撃を雨霰と降り注がせる。

 

 流石に最上級堕天使と正面から戦えるかってーの! 相手が本気出す前に少しでもダメージ稼いで援軍と一緒に囲んでボコる、其れが一番よっ! 

 

「ちっ! さっさと死んどけってのっ!」

 

 再び飛来する光の槍。さっきみたいに吸収するけれど、デスイーターの弱点として吸収中は魔力による攻撃も防御も出来ないのでこっちの攻撃は止み、また凄く痛い思いをする。その上、別にダメージが無いわけでもなく範囲内に拡散した全てを集めるから寧ろ増える。しかも土煙が晴れれば何やら感づいた様な顔を向けられるし……。

 

「ちょいと厳しいわね……」

 

 ポケットに入った携帯に手を伸ばして救援コールを手早く行う。本当はメルギスを呼んで助けて貰いたいけど……頼ってばかりじゃ女が廃るってもんだわ! 私は光の剣を両手に好戦的な笑みを向ける堕天使に向かって人差し指で首を掻き切る仕草をとった。

 

 

 

 

 

 

「ふはははは! 良い、良いぞっ! 最初は軽く捻って終わりかと思ったが予想以上の力に謎の能力。小娘、名を名乗れっ!」

 

「はっ! 小汚いオッサンに名乗る名は無いってのっ!」

 

「ならば名無しとして死ね、小娘っ!」

 

 随分と品の無い娘だと呆れながらも力には血湧き肉踊る。だが、あの力の弱点は見抜いた。精々が上級悪魔の上程度の娘に負ける程鈍っている気はない。暫く楽しみたいが屋敷の者に逃げられては面倒だ。……少し惜しいが終わらせるか。

 

 光の剣を投擲、それを追尾する様に接近する。案の定消し去られるが顔が僅かに歪むのを見てダメージ自体は蓄積されていると確信した。拳を握りしめ放ち、同時に羽で切り裂こうと襲い掛かる。全体を覆うのではなくピンポイントで防ぐ障壁によって防がれるが迂回させておいた光の玉が小娘の背後から迫った。

 

「っ!」

 

 正面からの拳と羽、背後からの光球。其れを今度は全体に広げた障壁で防ぐも強度は落ちる。後は逃さないように追いながら連打を続ければ良いだけだ。

 

「取ったっ!!」

 

 遂にその時は訪れる。拳障壁を崩し、羽が体を貫く。心臓と肺を確実に貫き、最後の一撃を出す前に首を切り飛ばす。……呆気ない。力は上々だが近接戦の経験が不足していたな。……さて、さっさと屋敷を襲うか、と、そう思った時であった。心臓と肺を貫き首を切り飛ばした体が動いて俺の羽を掴んだのだ。

 

「き、貴様まさか……っ!」

 

 俺の直感を肯定する様に小娘の遺体……いや、身体は紫の焔に包まれ切り飛ばした筈の頭が再生している。酷く不機嫌な顔が俺を睨んでいた。

 

 

「ったく、この力は使いたくないから極力傷が付かないようにって言うか絶世の美女の体に傷を付けるとか馬鹿なのかってのっ! ってか、馬鹿決定っ!」

 

「小娘、貴様フェニックス家の者だったのかッ!? ぐっ!? ぐぬぅうううううううううっ!?」

 

 体を貫いた羽に感じる灼熱、そして激痛と虚脱感。この溶けた鉛を血管に流し込まれたみたいな痛みと力が抜けていく感覚は……毒だとっ!

 

 

 

「小娘、何…を……!」

 

「敵に言うと……って、やばっ!?」

 

 こうなったら一人でも多くの悪魔を殺し否が応でも戦争を再開させてやる。俺は最後の力を振り絞り、小娘の腕を掴むと同時に例の力の範囲外に創り出した特大の光の槍を屋敷に飛ばす。この殺し合いは貴様の勝ちだが……勝負に勝ったのは俺様だっ!

焦りを見せて振り払おうとする小娘を俺は渾身の力で掴み、光の槍は屋敷へと一直線に向かっていく。そして……。

 

 

 

 

 

「助けはさっさと呼んでよね、ルーリア。……ギリギリ間に合った……よっ!!」

 

 屋敷から飛び出してきた古傷だらけの眼帯の男、其奴が構えた盾に光の槍は防がれ、それでも押し込もうとするが上空へと弾かれる。宙を舞った槍は庭の一角に突き刺さり、消え去った。

 

 

「……呆気ないのは俺だったか」

 

「そうね。……最後に名乗るかしら?」

 

「コカビエルだ、小娘。精々手柄にするが良い」

 

 名乗った俺は目を閉じ……る等はせずに俺を殺す相手を最後まで視界に収める。心臓を魔力が貫き、内部から焼き尽くされて意識が途絶えるまでずっと俺は小娘を見続けた。……自分を殺す相手の名前くらいは知っておきたいが仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それに、奴が目的を果たしてくれるだろう。俺は使う気が起きんかったが面白い手土産も貰った事だしな……。

 

 




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