グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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野良犬と後始末

 桃花からの連絡を受け学園に来てみれば校庭に出現した魔法陣が消え失せて行き、局地的な災害にでも起きたかのような惨状の校庭には死体の山が積み重なっていく。折れた刀から次々と死体が吐き出されて行く光景は不気味を通り越してシュールにさえ映った。一体何が起きたか説明は必要です。

 

「……えっと、取り敢えず説明……の前に」

 

 膝を折り息を荒くするも切り花を杖にして辛うじて倒れ伏していない桃花を抱き上げれば顔色が悪いのが一目瞭然。先ずはアルジェントさんに治療をして貰った後で病院に搬送、完治後に説教とこぶ締めの刑ですね……。

 

「み、皆さ~ん! な、何が起きたんですかぁあああああ!?」

 

 校庭の様子を目にして到着早々に相変わらずの情けない声が出るギャスパー。まあ、事態は解決しましたが後処理が残っていますね。……あくまでもこの町はお嬢様が任されているだけですので私の仕事は増えないと、そう思いたい……。

 

 

 

 

「成る程。そういう事が……」

 

「ええ! メルギス先生の教えを活かし撃退致しましたわ」

 

 自ら進んで説明役を申し出たのは小猫とレイヴェル様。この二人ならば立場からしてレイヴェル様を無碍に扱える訳もなく、多分拗ねているであろう彼女へのフォローはお嬢様に丸投げして大体の話を聞き出しましたが……非常に厄介な事態のようです。

 

 フリードとやらが使ったという謎の蛇は恐らくカテレア様が使った物と同じ……無限龍オーフィスによる物。既に大王派の傀儡にして次期当主の婚約者となった彼女の話ではテロリストの集団を結成したとか。トップに据えた力の象徴がオーフィスで、創設者は堕天使の幹部。今後、非常に厄介な事になるのは明らかで気が重くなった。

 

「あら? 何かお悩みの様子ですわね。愛弟子として私が力になりますわよ? フェニックス家の力が必要なら何時でも仰って下さいませ」

 

 私の浮かない表情が気になったのか心配してくるレイヴェル様。やれやれ、子供に気を使われる等、私も未熟ですね……。

 

「ええ、その時は頼りにさせて頂きます」

 

 好意を利用するのは気が咎めますが必要ならば致し方なし。まあ、何かしらでお返しはしませんと駄目ですけどね。それにしてもキラキラとした眼差しを向けられていると私も少年時代から大きく変わったな、そう思いました……。

 

 

 

 

(ふふふ。今のはポイントが高めですわね。先生には今後もご指導いただき、将来的には魔王を目指す私を支えて頂きたいですもの。……うーん。もっとポイントを稼ぐ方法は無いでしょうか?)

 

 

 

 

 

 

 

「……あくまで政府から縄張りの管理を一任されているだけで、実際後始末は私以外の者が行いましたが……はぁ」

 

「おや、独り言が大きいですね。……追加です」

 

 あの後、デュランダルの先代所有者とエクスカリバーの使い手が合流、神の死は伏せて情報交換が行われた後で後始末が始まりました。完全な記憶抹消は無理なので魔獣が現れたのは烏の大群や猪が出現したと書き換え、記録媒体の改竄も無事に終了。堕天使との話し合いは外交担当の仕事で私は通常業務……では有りませんでした。

 

 

「……ぶっちゃけ悪かったわ。偽装すべきだったわね」

 

「口調、口調。乱れていますよ、全く……」

 

 目の前には書類の山で隣にはばつの悪そうなルーリア。コカビエルを撃退した彼女と、結構な数の悪魔の身体を乗っ取りS級として手配されていた魔喰いを破壊した桃花。この二人は私の眷属だった事になっている。故に主として報告書を書いているのです。

 

『現政権に危機を知らせるために立ち上がった勇敢で偉大なるレヴィアタンの末裔を始末しようとした極悪非道なる者達から尊い魔王の血族を守った事は試験無しで昇格するに値する。だが、特例故に広めず形式として受けた試験後に正式に領地を与える予定であった。だが、眷属の健闘を称え正式に発表するものとする』

 

 これが政府……正確には眷属悪魔ですらない下級悪魔に手柄を立てられるのが面白くない上層部の発表内容。あの時点で既に二人は悪魔の駒で転生していた、そういう事になったのです。なので関連する書類を急いで仕上げる必要があって大変ですが……大王家が口出しして嫌がらせを行い、その結果として、特例事項故に領地の授与は折を見て行う、として新たな領地は貰えず、経営の人材確保は時間的な猶予が出来たのです。

 

「矢っ張りルーリアは女王でしょうか? 王の側に居るのが通例ですし、貴女が側に居てくれると安心します。一緒に居てくれますか? ……なんかプロポーズみたいですね」

 

「いや、そういうのは仕事モードじゃなくって本来の口調で言いなさいって。ったく、そんなんだから童貞なのよ。まあ、結構な数の縁談話が来たけれど? それも殆どが……ぷくくく」

 

 ルーリアに怒る気力すら湧きません。敢えて後回しにしている縁談写真、軽く見た時点で……十代前半辺りの少女が多かったです。私、見た目の好みならばルーリアやルナ姉さんみたいなセクシー系なのですがね……。

 

 ロリコン疑惑が貴族社会に広まっている事に落ち込みつつも書類を片付けて最後の一枚に判を押す。さて、一時間ほど眠るとしましょう。ああ、ストレスが酷い ……。

 

 

「ルーリア、何時ものを……ルーリア?」

 

 鏡を見て我ながら疲れきった顔だと思いながら寝転がろうとすると、何時もは上から覆い被さって来るルーリアが今日は何故か枕元に正座して膝を叩いている。膝枕……ですよね?

 

 

 

 

「その枕は最高級品でよく眠れるので結構です」

 

「いや、完全無欠超絶美女の膝枕よ。てか、ルナ姉に教わったサキュバスの秘術よ。緊張とかストレスで役に()()()()奴相手をリラックスさせるの。最近覚えたんだからアンタに使ってやるわ。ほら、さっさと……」

 

 完全無欠には異議申し立てたいですが眠いので諦めて膝に頭を乗せれば確かに溜まった何かが抜けていく感覚がしてリラックスするのを感じる。最後にルーリアの目を見つめれば何時もの様に深い眠りに落ちていった……。

 

 

 

 

 

「あーあー、全く仕方がない奴。本当に私が一生支えてやらないと駄目じゃないの。私を一生縛るんだから責任取りなさいよ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジか……」

 

 起きるなりメールを見て眼鏡が話があるからと茶会に誘って来た事や、好き勝手に旅に出ていたスラムの仲間の何人かが戻って来た事、魔喰いの破片が消え失せた事、教授が変な発明を……するのは日常茶飯事だとして、つい本性が出た理由、それは……。

 

 

 

 

 

 

「「……すぅ」」

 

 右隣に上半身裸のルーリアが寝ていて俺に足を絡めて抱きついている。もう反対側には……何か着せた奴の嗜好を疑う格好のゴスロリ少女が居た……。




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