正直言って此処までとは思っていなかった。ストレスとかの精神的な負担を取り除くって術だけど、そこはサキュバスのだし結果はお察し。私はメルギスの下半身に視線を向ける。いや、幾ら何でも……。
「これは念入りに吸い取らないと駄目ね、うん」
ルナ姉は術による増強は目覚める頃には解けるとか言ってた来もするけれど多分勘違いね。起きてこの状態じゃ大変だろうし、一人で処理するから部屋から出て行けとかも言いにくいだろうし? 籍入れる私がどうにかしてやるか、仕方ないわね。
先ずは胸で何回か、と、服を脱ぎ捨てた所で動きを止める。背後に何かが居た。得体の知れない気配。力の大きさは異質すぎて感じられない。右手でメルギスを掴み、裏拳を左手で叩き込むと同時に飛び退こうとするけれど、左手に伝わって来たのは柔らかい幼子の身体みたいな感触、でも微動だにせず。
「あっ、これ駄目な奴だ」
スラム育ちの危険察知能力が告げる。仕方なく振り向くと前面をさらけ出して胸にシールを貼っただけの幼女が立っていた。うわぁ、こんな子にこんな格好させたままとか絶対にロリペド野郎ね。メルギスもそんな感じの噂を立てられているけど。
「我、オーフィス。無限の龍神」
オーフィスという聞き覚えのある名前を脳内で反芻、直ぐに思い出しちゃった。嫌な内容をね。
「あーはいはい。テロリストの親玉ね、畜生。何か出してやるから待ってなさい」
「うん。我、待ってる」
スラムには色んな奴が集まる。その為か大抵の相手が大体どんな奴か分かるんだけど、オーフィスの場合は子供だ。故に危険と判断する。目的の為に行動して、その内容や影響を考えない。なのに最強クラスって悪夢みたいな存在よ。出来るなら関わりたくないし、身内は関わらせたくない。だから刺激しないでさっさと帰って貰わないと……。
「……いい匂い」
教授の開発した無駄に大きいドラゴンチェリーははっきり言って美味しくない。スカーが色々苦心して料理しても微妙なままで、唯一美味しくできたチェリー酒以外は何故か好評なドラゴンへの輸出にしかならなくって、無駄にしないために配られた在庫をオーフィスに出していた。
ジャムを乗せたクラッカーにパイ、シロップ漬けに果実入りの大福。私が酒をチビチビ飲む中、オーフィスは無表情だけどパクパクと次から次へと口に運んでいく。指先に付いたジャムを指を咥えて嘗めとり、口の周りにベタベタと食べかすが付いていた。
「ほら、ジッとしてなさい」
「ん」
ったく、どうして私が口元を拭いてやってるのよ。オーフィスは特に抵抗せずに受け入れて、全部食べ終わると皿と私を交互に見詰める。もっと食べたいって所ね。……組織の奴らはちゃんと食べさせてないわけ? 下っ端の私達に回ってこない情報でもディハウザー・ベリアルから伝わって来るけど旧魔王連中は利用してるそうじゃない。傀儡なら傀儡らしく甘やかしとけっての。
いや、見た目通りの歳じゃないし、自分の意志でテロリストになったって分かってるけど、ちゃんと食べているのか分からない奴を見てるとちょっとね。
「アンタ、酒は飲むの?」
「お酒? 我、飲んだことがない」
……今まで誰も勧めなかった訳ね。昔は老人の姿だって聞いたけど、本人が目的以外に興味がないから誰にも誰も歩み寄ろうとしなかったって訳か。……ちっ。絆された訳じゃないけど、今日は刺激せずに帰らせるついでに在庫一掃するか。
「じゃあ、追加持ってくるまでこれ飲んでて。不味かったらジュースも有るから」
「えっと、あり、ありが……何だっけ?」
「ありがとう、よ。ったく、力貸してる奴は礼すら言わないの? 大体どうせ……」
約束なんて守らないわよ、と、言いそうになったけど止めておく。下手に行動を変えさせた方が此奴は厄介だ。じゃあ自分だけで今から挑む、なんてなったら目も当てられない。取り敢えず今は準備が整っていないって嘘を信じて行動してないんだからね……。
「ありがとう?」
「はいはい、よく出来ました。大人しくしてなさいよ?」
……にしても威厳に関わるんだから格好はどうにかさせろっての。てか、何で幼女なのかしら? まあ、特に意味なんて無いんだろうけど……。
「我、良い気分」
「酒に強くはないのね。アルコールを分解する力が低いとか? 其れは兎も角、何の用かしら?」
「我、次元の狭間をグレートレッドから取り返したい。だから仲間集めたけど弱いから蛇をあげている。メルギス、他人を強くするの上手いって聞いた。こんな姿が好きだとも」
「其れ誤解だから」
思い掛けない回答に憐れみしか感じない。テロリストの親玉にまでロリペド扱いって……こりゃ私が子供でも産んでやるしかないかしら? いや、別に惚れているから子供が欲しいとかじゃなくって。生んだらちゃんと夫婦で育てるし愛情は注ぐけど。
「我、騙された? 曹操嘘吐き?」
「曹操? 何処かで聞いた名前ね……」
曹操って名前からして東洋だろうけど何をした人物か思い出せない。……あれ? 確か何処かで……。
「引き入れた将軍や軍師が実は敵の手の者で罠にはまって大敗したり、折角築いた国をわざわざ引き入れた軍師の一族に乗っ取られた曹操の関係者かしら?」
確か二十人以上いる息子の一人が詩人として有名で七歩歩く間に詩を作れって兄貴の無茶ぶりをこなしたとか何とか……駄目だ、それしか思い出せない。まあ、どうせマイナーな人物でしょ。
「我、ぜんぜん知らない。でも曹操の子孫だって聞いた。それで……眠い」
お酒が回ってきたのかうつらうつらしだしたオーフィス。私も良い気分にホロ酔いだし少し眠るとするか。オーフィスの手を引いてメルギスが寝ていても余裕のあるベッドに寝かせ、私も少し横になる。……あっ、服脱いだままだ。でも眠いし……すぅ。
「……成る程。故郷に帰りたいという願いは共感しますが……私も悪魔社会の一員。承諾しかねます」
流石にアンタの股間がギンギンだったから解消させようとした、とか言えないから酔った勢いって誤魔化してオーフィスの話を聞かせる。ロリペド扱いには精神的に参った様子だったけど抑え込んで要求をはねのけた。まあ、旧魔王連中は絶対にオーフィスとの約束を守らないし、どうせ別の協力者を作って倒す、とか無理な算段でも付けているんでしょう。
「……むぅ。どうしても駄目?」
「はい、駄目です。ほら、今日はお土産を持って帰りなさい」
無表情ながら拗ねた様子のオーフィスにメルギスは瓶詰めのシロップ漬けやジャム、作り置きのパイを籠に纏めて入れて手渡す。……会って短時間だけど無表情でも僅かに嬉しそうに見えるのは気のせいかしら?
「分かった。我、今日は帰る」
オーフィスが消え去ってひとまず安心だけど……。
「報告書が必要ね。……懐柔を目指せとか言われたらどうする?」
「命じられたら努力するしかないですが……もう好きな物を与えるから地底洞窟の奥深くで我慢して貰えませんかね? ……それと胸をいい加減隠しなさい」
「あら、気になる? もしかして襲いたい? ……ふーん」
もしかしてオーフィスさえ居なければ襲われていたかもと何故か……何故か何故か何故か何故かっ! 惜しい気にもなったけど、顔を背けるメルギスを見れたから満足しましょう。でも、ちょっとだけ……。
不意打ちで背中から抱き付き、頬に軽くキスをする。ぷぷぷ、驚いてる驚いてる。……ちょっと熱が出てきた気がするわ。だってサキュバスの私がこの程度で……。
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ぶっちゃけトリアイナって駒を弄った結果で王の駒と変わらないが使っても責める人がいないのは……
しかし検索したらマジで乳神神社が出てきたよ 日本神話、出番がないのは良いとして……