デュランダル ミーは未来で量産されてマース!
??? 僕なんて……
コールブラント 最強な割に影が薄いっす……
捧げよ、命。捧げよ、魂。捧げよ、人生。其れがお前達の幸福だ。……僕は生まれ育った場所で毎日の様にそんな事を聞かされていた。神の忠実なる兵士を作り出すシグルト機関、それがあの地獄の名前、思い出したくもない、でも向き合うべき過去。
姿も見たことが無く、声も聞いたことがない、そんな存在を敬い全部捧げろなんて生き方を、あの頃の僕……僕達はしてきたし、それしか知らなかった。拷問じみた訓練、洗脳同然の教育、様々な投薬や実験。正当性があると、少なくても自分では思いこんでいる人間は幾らでも残酷になれるもので、結構な数が狂ったり死んだりして……それが羨ましかった。
だって僕は他の生き方を朧気ながら知っている。皮肉な事に教会が認めていない転生って形で、よりによってシグルトが前世だったから。……そんな僕を適応できない癖に力がある危険分子と見なしたのか上は危険な任務に禄な支援も無しに送り混み続けた。成功すれば良し、死んでも良し、って感じでね……。
そして遂にその時がやって来た。毒を受けた状態で山をさまよい、倒れた僕に熊が近寄ってくる。
「……やっとか。痛いのを少し我慢すれば……」
出来れば一思いに死にたいと願いつつも毒を与えた悪魔から聞いた話を思い出す。前世であるシグルトが倒して英雄となった筈のファブニールの魂は残っていて、何故か北欧の神が復活させたとか。ふふふ、オーディンが娘を追放する理由となった男の功績など認めない、そんな感じかな?
益体もない事を考えている僕の匂いを熊が嗅ぐ。毒を感じ取って警戒していたみたいだけど大きな口を開けて喉元に食いつく……その寸前に動きが止まった。何かを見て固まっている。次の瞬間、何かに怯える様に逃げ出したんだ。気になって視線を向けた先に居たのは……。
「女神……?」
その少女は美しく、既視感があった。シグルトと恋に落ちたオーディンの娘……その二人の間に生まれた子供に似ていた。目覚めた時の夢の記憶みたいに儚くあやふやだけど其れだけは覚えていて、僕は胸が高鳴るのを感じた。これが恋って奴だって、今の人生で初めて知ったんだ……。
「ぎゃー!! ドクター、ストップストップ!」
「いえいえ、駄目です……よ! 全く、無茶を続けているようですねっ! アレは程々にしなさいと言ったはずなのですが、ねっ!!」
今、僕の目の前でメルギスが拷問を……いや、整体を受けている。ボキャとかゴキュとかおよそ人体から出て良い音じゃない物が鳴り響き、有り得ないほどに背中や手足が曲げられていた。
整体を行っているのは中年男性で清潔だが冴えない風貌だ。名前はセシル、スラムに長いこと住んでいた変わり者の医者だ。にしてもメルギスの奴、アレを続けて居たとはね。ドクターにミッチリ怒られていたよ。所で泡吹いて気絶していないか?
アレ、とは風の魔力を常時身体に纏い、動かしたい方向と逆方向に力を込めて魔力と肉体のトレーニングを行い続けるって言う考え付いても誰もしない方法で、行うのはメルギスって馬鹿だ。なんだよ、その大リーグボール何チャラギブス擬きはさ。
「この後は温灸をしますから予定はキャンセルにして下さいね。おや、疲れていたのか寝ていますね」
さて、僕の番になる前に逃げるとしよう……。
「えっと、次は……」
ジュリィとお茶でもと思ったけど取り込み中のようだ。布に型紙に沿って線を引き、線に沿って魔力で型通りに裁断、今度は糸の繊維内に魔力を浸透させると針に通して縫い合わせていく。縫い目が均等になるように、素早く丁寧に次から次へと簡単な作りの熊のぬいぐるみを作っていった。後で孤児院の子供に配る奴だね 。
「……僕も頑張るか」
アレは道楽で魔力を使っているんじゃなく、出力の制御とコントロールの訓練を兼ねている。糸に込めすぎれば切れてしまい、纏った時の面積が大きければ針を通した時の穴が大きすぎる。微細なコントロールと集中力が必要な作業を手順書を見ながら行う姿を見たら僕も浮かれた気分は消え去って訓練室に足が向いていた……。
まあ、後で誘うけどね。二人のお茶の時間は日課だし。
「さて、最初は慣らしと行くか」
訓練室に入り難易度を選択、何時もより一段階だけ落としたのは悪魔になった事で生じる感覚と実際の動きのズレの調整のためだ。変な癖が付かないようにと頭の中で動きを確認しながら装備を構えれば手抜きっぽい案山子みたいな見た目の鎧型ゴーレムが出現する。手には今の僕が装備している訓練用の剣や斧、槍を構えて襲いかかってきた。
「……結構差があるな」
二歩ほどで接近する積もりで飛べば一足飛びに息がかかる距離まで移動してしまう。慌てて左腕に装着したラウンドシールドを叩き付けて弾き飛ばし、背中から生えた龍の腕、
「ちっ! クソッタレが」
ついつい悪態を付くけど追加のゴーレムに加えて上空からエネルギー弾を撃ってくる小型の円盤も現れる。これらを捌きながら致命傷となる所なら一撃、他の部位も難易度毎に設定された回数のヒットを避けながらどれだけの時間戦い続けられるかというのが訓練の内容だ。さて、さっさと慣らしてハイスコアを狙おうじゃないか。
……って言うか悪魔になってスコアが落ちたとか彼奴が絶対に怒る。只でさ盾に作り直されて不機嫌だって言うのに手入れの時間を増やされたらジュリィと過ごす時間が減るじゃないか!
「じゃあ、ペースを上げて行こうか!!」
私服の時間を夢見て僕は気合いを入れ直す。宙から放たれるエネルギー弾の雨に、見た目と違って高度な連携を行うゴーレム達。でも、この程度の逆境なんて乗り越えてやろうじゃないか!
幸せってのは誰かに押しつけられる物じゃない。自分自身で決める物だ。僕は今の人生で、今の居場所でそれを知る事が出来た。今の目標はメルギスのコネで戦った皇帝ディハウザーと戦いと言える戦いをする事。
「うん、やるべき事が多すぎる」
さて、頑張るか。……そう言えばルーリアは何処に行ったんだろ? オフでも大体メルギスの側に居るのにさ。あの二人についてだけど周りの奴らは、近過ぎてくっつくの逆に無理じゃ?派、と、もうくっついてるだろアレは派、この二つに分かれている。そんなルーリアが見えないのは不思議だな……。
「遅くなって申し訳御座いませんわ」
メルギス先生から出された課題に自主トレを加えて夢中になっていたらお父様達に呼び出されていた時間ギリギリ。焦って汗を軽く流しジャージからドレスに着替えて応接間に向かうと既にライザーお兄様以外の家族……そしてメルギス先生の恋人……でしたわよね、のルーリアさんが居ました。あら? どうしたのかしら。
「レイヴェル、早く座りなさい」
促され着席すると違和感の正体に気付く。この部屋、使用人が居ませんわ。……つまり重要な話という事ですわね。それこそ既にルヴァルお兄様との間の子供を産んだ義姉様を出席させないレベルの。
私が感づいた時、お父様が口を開きました。
「さて、改めて紹介しよう。知っていると思うが彼女はルーリア……私の隠し子……として正式に認知する予定のルヴァルの隠し子だ。婚約が決まる直前に妊娠が発覚したな」
「……そうですの」
色々と面倒事の予感がしますけど……つまりメルギス先生が彼女と結婚すれば身内ですし様付けなどの余所余所しい話し方はされないという訳ですわね! ぶっちゃけ一番重要な事ですわ。
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