グレモリー家の野良犬   作:ケツアゴ

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数々の不幸にみまわれる聖剣 だが、魔剣だって負けていません


龍剣士?と龍殺し

 ひたすら無心にて包丁を研ぐ。シャリシャリとテンポよく音を立て、切れ味を増していく。そんな最中、姉様が目を覚ました。

 

「な、何事っ!?」

 

「……あっ、起きたのですね」

 

 水の入ったペットボトルで囲み鎖で背面合掌縛りにした状態でフローリングに転がしていた姉様は今自分が置かれた状況が理解できない様子。目に入る場所に胸の型崩れする要因を検索途中のパソコンの画面を見つけ何故かギョッとしています。意味不明ですね……。

 

「……これだから胸に栄養を吸われた人は。あっ、そうそう。聞きたいことがあるのですが」

 

「その前に包丁を放して貰えない? てか、どうして包丁なんて……」

 

「これですか? 姉様の胸を削ぎ落とし……いえいえ、何でも無いです」

 

「絶対何かある! マジであのロリコン仮面にどんな教育を……ぶぎゃっ!?」

 

 包丁はちょっとしたジョークと威嚇の予定でしたがメルギスさんに失礼な事を言われたので万が一のことを考えて用意していた霧吹きを鼻先に吹きかける。中身? 凄く酸っぱいレモンジュース。猫科は柑橘類の匂いが苦手で猫妖怪の私達姉妹も同じ。……あと、強炭酸なので鼻の中や目に入ったら痛いです。

 

「ぎにゃああああああっ!? 目がぁ! 鼻がぁ!?」

 

「……ざまぁ」

 

 ゴロゴロとのたうち回りながら悲鳴を上げる姉様を見下ろし、足で押さえつける。こうでもしないと話が出来ませんからね。無駄な脂肪を足で踏みつつ私は姉様に問い掛けた。

 

 

「姉様、貴女は本当に暴走したのですか?」

 

「……さぁて、どうだったかにゃん? 痛たたたたっ!? 腿の内側を執拗に蹴るの止めてっ!」

 

「……正直、こうして姉様をマンションに連れ込んだ時点で不味い橋を渡っています。事前に逃亡準備する暇もなく主を殺す理由があったのか、誰かに冤罪を着せられたのか……どれですか?」

 

 この時点で私は姉様が暴走したとは思っていません。だから私を置いて逃げざるを得ないほどに切迫した状況だったと、そう思うのです。今度誤魔化したら尻を蹴ろうと爪先で小突くと姉様は渋々といった感じで口を開きました。

 

 

「……仕方ないかぁ。まあ、白音も色々と逞しく……うん、文句を言いたいレベルで逞しくなったから教えて上げるわ。……あの男、私との約束を破って貴女に仙術を使わせて道具にする積もりだったの」

 

「……そうですか」

 

「あら、あっさり信じるのね」

 

「……姉妹ですから」

 

 一時期は怯え信じられなかった癖に何をと自分に言いたくなったけど黙っておく。姉様は、そっか、ただ其れだけ言っただけですが嬉しそうに見えました。この人、変わりませんね。じゃあ、もう縄を解きましょう。

 

 

 

「……私は帰るけど大丈夫? 一緒に……は無理か」

 

「……それこそ姉様が私が助かる一縷の望みに縋って置いていった意味がなくなりますから。だって一緒に行ったら反逆者として追われて……メルギスさんにも迷惑が掛かります。部長にも……」

 

「……ふーん、随分と慕っているのね。じゃあ、帰る前にお姉ちゃんが男の籠絡の仕方を……」

 

 

 

 

 

 

 

「え? 姉様って年齢=彼氏いない歴ですよね? 籠絡云々には信頼性が……」

 

 それに私はメルギスさんに抱いているのは恋愛ではなく親愛や尊敬、共に歩きたいのではなく彼に続いて歩きたい、そんな感じです。……そう続ける積もりですが姉様は泣きながら走り去って行きました。……言い過ぎましたかも。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ。自信が無くなるね、全く」

 

 僕ことジークフリートは何度目かになる溜め息を吐く。鍾乳洞の奥、地下深い場所でも悪魔の目は暗視が効くので問題無くバーベキューをしていた。ドラゴンチェリーを使ったタレで味付けした肉や野菜はドラゴンに関わらない者でも、ドラゴンの因子を持っていれば尚更美味しく感じる上に幸福感すら得る。……教授によると人が肉を食べた時に発生する脳内物質がドラゴンの因子持ちがドラゴンチェリーを食べた場合は十倍近く分泌されるとか。ヤバい薬物じゃないよね?

 

 話を戻そう。僕が愚痴を呟く理由は目の前で熱い鉄串を素手で持って口の周りをタレでベタベタにしている幼女……の姿をした年齢不詳のドラゴンにあった。名をオーフィス、テロリストの親玉である。何故そんなのとこんな場所で飯を食べているかと言うと……。

 

 

 

 

「……オーフィスの懐柔を命じられた? 魔王も無茶を言うね。随分と信用されているじゃないか」

 

「義理の弟を使い潰そうとする奴だぜ? 転生悪魔の現状を私的に嘆いても公的な立場を優先して貴族を刺激しない奴なら無茶だって言うだろうさ……」

 

 ドラゴンチェリーのお菓子が随分とお気に召したらしいオーフィスは再び来ると言ったらしいが、上に報告したら何とか仲良くなってくれとサーゼクスに頼まれたとか。まあ、部下に戦力増強を任せる事で逆にグレートレッドに挑もうとする動きが緩慢になっている以上は役に立たないと見切りをつけさせる事も出来ず、かと言って倒せもしない。なら、懐柔は妥当な線かな?

 

「……他の勢力が何って言うかが問題だけど」

 

「既に今度行う三竦みの会談の打ち合わせで報告済みだとよ。……あっ、昨日現れたから次元の狭間に近い暗くて静かな場所で飯に誘ったけどお前も出席な。……龍殺しの元魔剣の使い手として見定めて欲しいんだ」

 

 ……てな感じで僕がこの場にいる。幼女(の姿をした最近まで老爺姿のドラゴン)を暗くて人目の付かない場所に誘うとか……うん、止そう。何かを察して睨んできている。

 

 さて、じゃあ僕の武器を再確認だ。

 

 神器 龍の手の亜種 聖剣創造 魔剣創造 二種とも龍殺しは作成可能。

 

 その他……これが重要だ。異空間に仕舞っているのは使用者の命すら削り、禁手化で龍の力が増した状態で全開にすれば致命傷すら負う最強の魔剣こと魔帝剣グラム……だった物だ。今は中央に敵の剣を受け流す役割が大きい銀の突起が付いた赤いラウンドシールドになっている。うん、面影が無いにも程が……。

 

 

「あ痛っ!」

 

 ……今現在、盾の内側にはオーラが発生しない安全設計に教授が改造って言うか別物に作り替えたんだけど、意思が以前よりハッキリした上に思考を読んだり手入れを怠ったりしたりして怒らせると痛みを与えてくる。盾に尻に敷かれている気分だよ。

 

 でも、盾の外側には相変わらず凶悪なオーラが付いているから攻撃をしたり叩きつけられたりした相手は甚大なダメージを受ける上に、内側にはめ込んだゴツい銃はチャージしたオーラを弾丸として放つ凶悪設計。……銃と盾と剣を同時に使う、それが今の僕のバトルスタイルさ。……そして、それらを考慮した結果……。

 

 

 

 

 

 

 

「……まさに虫螻と龍の戦いだね」

 

 此方を見て首を傾げるオーフィスを見ながら呟く。蛮勇と勇気は別物。時に戦わずして勝つのも重要だ。……ったく、教授が手を出して冥府を追放されたアレが使えれば倒せるかもだけど絶対じゃない。死なない以前にダメージを受けても平気だから避けるって事を知らないだろう、有効である事とそんな予測が的中する事に賭けるにはリスクが多い。ああ、本当に厄介な存在だよ。

 

 僕が平静を装う中、メルギスは新しいメニューを差し出していた。

 

「オーフィス、ドラゴンチェリーを練り込んだクリームやチョコを使った菓子が有るけど食べますか?」

 

「……食べる」

 

 こうして見ると普通の子供に見えるけど忘れるな。自分の意志で戦争を起こそうとしている奴らに力をばらまいているって。……まあ、可愛いのは認めるけどさ。あっ、口にクリームが付いてるや。指先で拭ってあげようかな……。

 

 




多分ジークが好きなヒーローはキャプテン

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