FateAccelZeroOrder--if-- 作:煽伊依緒
相変わらずつたないですが、読んでいただけると幸いです。
ーーーーこの物語はifのものだ。
一歩違えば全てが変わっていた。
そんな儚い物語。
「……」
「大きな声を出してはいけませんよ」
コクコクと無言で頷く少年。
暗い場所だが顔を見れば一目でわかる。怯えていた。
何とかしてあげたいと思うが、こればかりはどうしようもない。
当主様は必死に時間を稼いでいる。
そして明日から、おそらくこの子が当主になるのだ。
私は無言でその子を抱きしめた。
「×××××さん、大丈夫ですからね」
「……」
肩をがたがたと震わせ、私になされるがままの少年。
こんな幼い子さえ巻き込まれる。
一体どうしてこんなことになってしまっているのだろうか。
私はそんな風に思い、ため息を吐こうとして止めた。
今吐いてはこの子が余計に苦しむだけ。
「行きますよ」
物音が聞こえなくなってからきっちり一分。
私は男の子を連れて歩き出す。
しかし、私のこの判断は間違っていたことをすぐに思い知らされた。
相手は魔術師であって殺し屋。
こんなことはすぐにでも分かるのだ。
「――――ッ!」
咄嗟にポケットに入れていた宝石に魔力を込め前方へ放る。
一瞬前まで感じられなかった気配が結界の網にかかった。
「チッ……」
あからさまな舌打ちが闇の中から聞こえてくる。
そしてそれに続く鉛玉。
一秒に数十発と言う勢いで吐き出されるそれを、放った宝石が膜のように広がり全てを受け止めた。
響き渡る乾いた鉄の音、宝石の盾もそうそう長く続くものじゃない。
「こっちです」
「……うん」
私は来た道を引き返そうとして――気付いた。
向こう側にもう一人いる――――。
「しまっ―――」
「させるかぁぁぁ!」
脇の道から飛び出てきた男が飛来する銃弾をその身で受け止めた。
相手からすればかなりの不意打ち。
だが、その撃たれた相手こそ彼らにとっての本当の目的であった。
「当主様!」
「構うな! 行け!」
私は震える手をしっかりと押さえて男の子を抱きかかえる。
呪文を唱え走り去る。
「……ケッ、魔術師殺しが」
「あいにく様、流石に見過ごせるレベルじゃなくなったってわけさ」
静かにその男は銃弾を装填しなおした。
「……なあ、息子だけは見逃してくれないか」
「断る。あの息子に変な細工をされていたら困るのはこちらだ」
「……なら、此処で精一杯足掻くしかねえか」
そんな声が走り去る通路に反響して私の方まで聞こえてくる。
振り返ってはいけない。振り返ってはいけない。
しかし、次に聞こえたのは絶叫だった。
「うがああああああああッッ!」
それ以後何も聞こえない。
―――いや、聞こえる。聞こえてしまう。
コツコツと反響する奴の足音が、妙に、鮮明に。
「
私には、聞こえた。
「×××××さん! 逃げて!」
彼を押しやり、一人構える。
通すわけにはいかない。
なんとしてでも彼は、あの男の子だけは何としてでも守り通さなければならない!
「勇敢な女性だ、どうしてあんな奴の所で働いていたんだ」
「……あんたみたいな魔術師殺しには分からないわよ」
「そうか……そうだろうな」
男は銃を向ける。
その顔には見覚えがあった。
最近当主が注意しておけと言っていた男。
私にはこいつが有名なのかは知らない。だが、私たちに敵対することは分かっていた。
「衛宮切嗣ッ!」
「すまないが、終わらせてもらう」
========
体感的には一分。
実際には二倍速にしていたから三十秒と言ったところか。
「……マイヤ、そっちはどうだ」
「申し訳ありません。取り逃がしました」
「……そうか」
数日前とある場所から依頼を受けた。
人道に反する方法で急成長を続ける家系がある。
当主とその妻を殺害してほしいと。
「……まあいい、もとより依頼にあの少年は入っていなかった。それより早く戻って準備をしないと」
「はい」
僕は無線機を懐にしまうと靴音を立てて歩き出した。
「あんたが守りたかったもの、これで守れたのか?」
応えはない。
床に転がった女は今も無数の傷から血を流し、その場に倒れ伏している。
「こんなことになるなんて、僕も焼きが回ったかな……」
ふと脳裏に自分の妻の姿と、娘の姿を浮かべてほくそ笑む。
彼女たちのためにも自分にはなさなければならない事がある。
「……こんなことはもう、止めるんだ」
男は、一人の孤独な男はその場を立ち去った。
拙い文章ですか読んでいただきありがとうございました。
ちょくちょく更新していく予定なのでまったり待っていただけたら幸いです。
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