FateAccelZeroOrder--if-- 作:煽伊依緒
「どういうことだ」
「……」
少年は口をつぐんだ。
というより、つぐむほかなかった。
少年は気絶してしまった。
よりにもよってあの地下室で。
そして、おじいさんが地下室への階段を見つけて、入ってきてしまった。
少年にとってそれは予想外の出来事であった。
「……あの人は誰なんだ」
「…………」
少年は口を堅く噛み締め、ただただうつむく。
魔術の知識を多少持つせいで
少年がこの場を切り抜けるには圧倒的に経験と、知識が足りなかった。
「……なにもいえないようじゃこの家に置き続ける事は出来ない」
「――おじいさん!?」
「――――――」
おじいさんの横で話を心配そうに眺めていたおばあさんは目を見開いておじいさんに食いついた。
「……分かりました」
少年は長い間熟考した末に結論を出した。
「二か月ですけど、お世話になりました」
少年は頭を下げた。
その姿におばあさんは涙を流し、おじいさんは依然とした態度でその姿を眺めていた。
少年はまず、読み切っていない本や魔導書を少しまとめ、そして地下室を焼却した。
燃え尽きない様に魔術での防御を絶やさない様に、痕跡だけは全て燃やした。
そうして、少年は路頭に迷った。
「ねえ、本当に良かったんですか、おじいさん……」
「あの子をうちでこれ以上育てていくのが無理のあることだってことくらい婆さんが一番分かっているんじゃないか」
「…………」
おじいさんは去っていく少年の背中を少し見ただけで家の中へと戻った。
「……あんな怪物を家で飼うわけにはいかないんだよ……婆さん」
おじいさんはおばあさんに地下室の内容をほとんど話していないし、見せてもいない。
唯一言った事といえば人型の生物が何かしらの方法で保存されていた、ということだけ。
恐らくおばあさんは得体のしれない親戚の子供より、自分の子供や孫を取ったと考えているだろう。
だが、事実はそれ以上の事だった。
「……あの魔導書、あの魔法陣……世界でも壊す気なのかあの馬鹿甥は……」
本当の事を思えば、あの場で少年を殺しておくべきだったかもしれないとおじいさんは思っていた。
だがそれは出来なかった。
「あんな子供……私には無理だ」
自室へ向かう廊下の最中、老人は一人、寂しそうに肩をすくめた。
そして廊下にある一つの鍵を手に取る。
「せめて老い先短い後少しの時間くらい、ゆっくりさせてくれ」
おじいさんはそう呟くと自室に消えた。
そして、その日におじいさんとおばあさんの記憶から魔術というものはすっかりと姿を消した。
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とある日のロンドン。
その時計塔から一人の青年が旅行鞄を一つ抱えて足早に空港へと向かっていた。
「ふんふふーん」
青年は限りなく上機嫌に近く、またその姿は軽やかだった。
空港に着いて飛行機に乗り込み目的地である島国につく。
そのころにはほんの少しだが右手に痛みを感じ始めていた。
そして、当の青年本人も、その痛みについて心当たりがあった。
その事で青年はより上機嫌になっていた。
「まずは拠点からだな」
名をウェイバー・ベルベット。歳は十九。
そんな彼は景気よく極東の島国である日本という国に降り立ち、冬木という街に辿り着いた。
そして今現在、彼はこれからしばらくの間身を上手く隠していくことのできる場所を探していた。
金銭的にはホテルなどでも大丈夫なのだが、やはり上手く街の風景に溶け込むためには住宅地の中の方がよいだろうとウェイバーは考えていた。
探す事およそ三時間。
日ごろから運動しなかった彼にとってはそこそこの重労働であったが、おかげで青年にとって都合のよさそうな民家が見つかった。
子どもと孫とは別々に暮らし、今現在は老人と老婆が二人で暮らしているという家庭。
それに日本で見れば一般的な大きさの庭を持つ二階建ての建物であった。
「ウェイバーちゃん、良く来たねぇ~~」
老婆と老人には既に暗示をかけ終えている。
二人はしきりに久々に帰ってきた
「ささ、ウェイバーちゃん上がって上がって」
「久しぶりにチェスでもやるか? ウェイバーよ」
自身に一般的な祖父や祖母がいればこんな感じなのだろうか、などと柄にもないことを考えた頭を軽く振り、ウェイバーは手招きする老婆の後ろをついて行った。
その家が、つい先日にボヤ騒ぎを起こした家だとはついぞ知ることもなく……。
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