FateAccelZeroOrder--if-- 作:煽伊依緒
「って、ジルじゃないあんた」
「おおぉぉぉぉぉぉ! ジャンヌ! ジャンヌではありませんかああああ!」
「え、二人って知り合いなの?」
三者三様の返答を見せるが、一人、少年だけは三人全員を睨み付け、殺意を露わにしていた。
「お前等全員……俺の敵なのか」
「はああ? あんた何言っているわけ?」
くるりと白髪の女性は姿勢を変え、マントを翻しながら、少年に挑発的な笑みを見せる。
ガチャリと音を立てる鎧は漆黒の色に塗られ部屋の小さな明かりを反射し、鈍く光っていた。
「あんたが私を
あくまで挑発的な態度を止めない女性。
その体が纏う漆黒の鎧は、部屋の明かりを受け鈍く光っていた。
「……令呪?」
「ええ、令呪よ」
少年は女性が指し示した右手を確認する。
そこには見慣れない赤々と輝く模様があった。
そして、散々自分が苦しんでいた痛みは、いつの間にか消えていた。
「その令呪がなくなんない限りは――、まあそうね、あんたの
「……サーヴァント?」
少年の頭は錯綜していた。
気が付けば殺されそうになっていて、次の瞬間には自分の
端的に言えば、理解の限界だ。
「おぉ……ジャンヌよ……我が救済の御子よ……」
「あージル、そんな風に呼ばないでくれる? 私はあいつとは違うんだから」
「あいつ……? あいつとはいったい誰の事なのでしょうか?」
「……あ、そ。分からないならいいわ」
理解できたのは一先ず命の危機が去ったということだけ。
少年は心拍数を落として、取りあえずの冷静さを取り戻そうとするが、
「少年よ!」
「ひっ……!」
突如として身を乗り出してきたキャスターに恐れおののき、心拍数が急激に落ちた。
「ちょっとジル、怖がられてるじゃない」
「……申し訳ないジャンヌ……怖がらせるつもりはなかったのですよ……」
目玉をギョロギョロと動かすキャスターはしょんぼりとしながらも少年の方に視線を戻した。
「少年、この世に再びジャンヌを呼び出してくれたこと、心より感謝申し上げます。
よくぞジャンヌを呼び戻してくれました」
「……」
「彼女こそが救済の御子! 生前と髪の色や風格が異なる気がいたしますが、確かに! 彼女はこの世に生を与えられた聖女なのです!」
心底嬉しそうに語るキャスターと、それを苦々しく見つめるジャンヌ。
八騎目のサーヴァントはこうして現界した。
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「……ここは……」
闇夜に包まれた世界で、一人のフードを被った男が何もない空間から現れた。
カチャ……小さく金属音を立てながら、男は周囲を確認する。
どこか見覚えのある様な雰囲気の世界。
いつか昔、きっと見たことがあるのだろうこの世界に、男はため息を吐きながら言葉を吐き出した。
「……仕事を始めよう」
男はそう言うと闇夜に溶け込んでいった。
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『アンサモンプログラムスタート!』
聞きなれた電子音がそう告げた後、一瞬の浮遊感と共に、光に包まれ少年は見知らぬ大地を踏みしめた。
「ここは……」
「先輩、レイシフト成功……です。ここは冬木――のはずなんですが」
「……違う、ドクターに聞いてはいたけど……燃える前はこんな町だったんだ……」
大きな赤い橋が見える岸辺に藤丸とマシュ、そしてエルメロイⅡ世は降り立った。
「マスター、感傷に浸るのは後だ。こちらはすぐにでも行動しなければ」
「あ、そうだね……」
そう答えた少年の顔は、それでも尚落ち着かない。
そんな少年の顔をエルメロイⅡ世は複雑な面持ちで見つめた。
「してレディ、何か感じないか?」
「え……何かと言われましても……」
「奇門遁甲、八門金鎖の陣!」
その場にいた全員とドクターがエルメロイⅡ世の突然の攻撃に虚を突かれたものの、周囲を警戒した。
しかし、何も起こらない。
「……先生?」
「……おかしい、今のでかからないというのか……?」
「どうしたんですか?」
「……本来ならアサシンが今の術にかかってもおかしくないはずなんだ……突然現れた私たちに対応しきれていない……? いや、あの遠坂がそんな失態を犯すはずが……」
エルメロイⅡ世はぶつぶつと独り言を続ける。
苦々しいように見える表情には若干の焦りさえ感じ取れた。
そう、まるで何時ものエルメロイⅡ世とはどこかが違うような。
「とりあえず、マシュ。サークルの設営をしてくれるかな?
そうしないとこちらからも十分な支援をそちらに遅れないんだ」
「あ、はい……そうでした……」
マシュはそう言うとおもむろに盾を手に、サークルの設営に取り掛かる。
しかし、
「……上手く、いきません……」
「無理そう? マシュ」
「何か特殊な術式がこちらを拒んでいて――」
「ああ、それはそうだろう。ここは遠坂家の土地だからな」
「遠坂家?」
「此処の土地を独占している魔術師の名前だ。まあ、現当主の娘がのちに私の弟子になるんだが――
――今はそんな事を話している状況ではないな。
そう言うことなら手っ取り早く管理者の要石を壊してしまおう」
あっさりとそう言い放つエルメロイⅡ世にDr.ロマンは慌てた様に反論する。
「いやいや、そんなことしたら管理者が本当に怒っちゃうのでは!?
それにその管理者の娘が未来の貴方の弟子なのでは!?」
「この世界と私の世界はそもそも違う世界だ。私には関係がない。それに」
「それに?」
一拍、間を開けたエルメロイⅡ世は噛み締めた歯を開けた。
「急がないとまずいかもしれない。既にこの聖杯戦争は私が知っている物とはかなり異なっている可能性がある」
ろくな説明もないままに、マスターとマシュは走り出すエルメロイⅡ世に続いて走り出した。
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