FateAccelZeroOrder--if-- 作:煽伊依緒
「問おう、貴方が私のマスターか」
もうそれなりに『その言葉』を聞いてから時間が経過した。
計画も、それに必要な武器も、既に手元に揃っている。
衛宮切嗣は普段からまるで部下の様に扱っている舞弥という女性に武器の調達を要請していた。
スナイパーライフルや手榴弾、様々な鉄製の武器が切嗣の足元に並べられていく。
「それで、これからどうしますか」
「一先ずはアイリとセイバーに任せる」
ジャコッ、とそんな音を立てながら銃の感触を確かめる切嗣。
その横で舞弥は少し疑問を抱いていた。
「我々の出番は今しばらくない、と?」
「いや、戦場には出るさ。ただしばらくは様子見さ」
並べた武器からスナイパーライフルを手に取り、その感触も確かめる。
冷たい鉄は、切嗣に戦場を思い起こさせた。
「チャンスがあれば敵を狙ってもいいが、そんな簡単に敵は隙を見せてはくれないだろうからね」
切嗣はそれを肩に構え、スコープに目を落とした。
赤い十字が窓の外、はるか先へと視点を合わせーー燃え盛る炎に視線は釘付けにされた。
「舞弥、今すぐ外出の支度をしてくれ、五分以内だ」
「……! 了解しました」
彼女が横で武器をしまうのを音で確認しながら、切嗣は視線を火の手から離さなかった。
舞弥が横で作業を行っている最中も火の手は上がり、いくつもの火柱を立てている。
そして、
「っ……思ったより早いな……」
サイレンの音が切嗣の耳に届く。
火事が起きたことに町の住人が気が付いてしまったのだ。
「舞弥、準備は出来たか」
「はい、車も下に停めてあるので直ぐに出せます」
「よし」
切嗣の顔は冷めていた。
火の手を見た時からうすうす感じてはいたが、あの火の手は魔術的隠蔽がされていない火だ。
切嗣が思いついた考えは二つ。
この火事は魔術とは関係ない、ただの一般人によるものであること。
もう一つは神秘の秘匿という魔術師にとっての常識を守らない異端な魔術師がいること。
そのどちらかだった。
しかし――――
(……どちらにせよ、あの火柱を見ればサーヴァントが集まってしまう……)
火の手は凄まじかった。
何せ、遠くからでも家より大きな火柱が確認できたのだ。
マスターであれば不審に思うのが当然だろう。
ホテルの一階に降りた切嗣と舞弥は暗器を隠しながら車に乗り込み、火の手が上がった方向へ向かう。
そして一瞬の逡巡の後に、手元にあった携帯電話を握った。
その電話は数回のコールの後に言葉を返した。
「え……えっと……切、継……?」
「ああ、そうだ僕だよアイリ」
「そ、そうなのね……良かった……」
「すまないがアイリ、今は凄く時間がない。端的に話すよ」
「は、はい!」
切嗣は自分のここまで見た火事の状況を端的に説明すると、セイバーと二人で現場に向かうように指示した。
「構わないけど……本当に他のマスター達は来るのかしら……」
「大丈夫さ、たとえ誰もいなくてもセイバーの姿を見れば一目散に駆けつけるだろうさ」
「……そうね」
アイリと切嗣の会話はそこで途切れた。
これでセイバーとアイリは火事の現場に向かうだろう。
「舞弥、こっちは後どれくらいで着きそうだい?」
「……サイレンを鳴らして通った消防車のせいか、少し道が混んでますね……到着は十分後ほどになるかと」
「ありがとう」
切嗣は懐にしまっていた自分の銃に弾丸を詰める。
顔はますます冷たくなった。
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「これで終わりだな」
そんな言葉が聞こえた直後、少年の耳には全く異なる野太い男の声が響いた。
「アーララララライ!」
「うわわわわわわああわあわ!」
どでかい馬に引かれた戦車に乗った大柄な男と、男性にしては小柄な青年が、突撃を仕掛けてきた。
「バカバカバカバカバカ! どうしていきなり戦場のど真ん中に行くやつがいますか!? まず最初は影からコッソリと―――」
「甘いわ! そのまま見ていたらどうなる! この町はこ奴らの炎で一面燃えてしまうわ!」
あまりの事態に状況を飲み込めない三人の中、一番最初に動いたのはアサシンだった。
「チッ……」
舌打ちだけを残し、アサシンは一瞬にして影へと消えた。
一目見ただけで現れた者の強さを図ったのか、マスターの指示なのかはわからなかったが。
「……まずい……ジャンヌ……」
「ええ……これは、ちょっとまずいわね」
いつもなら自信ありげに物事を語るジャンヌが、本気の顔で「まずい」という。
それほどに目の前の大柄な男には圧迫感があった。
こいつはまずい。
今まともにやり合えば、負けるのはこちらだ。
「して、そこの小僧。貴様がその女のマスターということでよいか? もう一騎おったのは……アサシンだとは思うんだがなぁ……逃げられたか」
「お前がいきなり割って入るからだろ馬鹿!」
「うるさいわ、坊主はとりあえずあの女サーヴァントの情報でも探っておれ」
ごくりと唾をのむ。
「ジャンヌ……逃げられるか?」
「今の状況じゃ厳しいわ。何とか隙を作らないと」
声を潜めて語ったそれも、大柄な男は笑みを浮かべてみていた。
余裕の笑み、強者の笑み。
一体その笑みがどのような意味を持つのか、俺にはわからなかった。
「まあよい、此度は戦をしに来たわけではないからな。余による宣戦布告をしに来たようなものだ」
「宣戦布告……?」
「おうとも! これほどな炎、音を響かせて、よもや誘われたサーヴァントが余だけなわけがあるまいて。
他にも居るのだろう? 闇に紛れて覗き見しておる輩が」
コツコツと音がした。
それも複数。
背筋が凍る。
この男の呼びかけに応じるような存在。
それも複数。
この男から逃げ切るなんて言う話ではない。
この場から生きて帰ることができるかという問題になりつつあった。
「ほう……? そなたらだけか? この場に居合わせた者は」
「ああそうだ。我々だけだ」
長髪の男は片手をポケットに入れたまま、イスカンダルを見つめてそう言い放った。
「我々だけだ」
と。
これからキャラ崩壊しそうな気がして心配です。
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