「やっぱ《ダークマター》がないと回転しないなぁ」
オレはデッキを一人回ししながら呟く。
遊戯王をしなくなってから今年で何年目だろうか。かつて一緒にやっていた友人たちは止めてしまった。それ以来、デッキを作ってもデュエルすることがなく、心のどこかで虚しさを感じていた。
たとえ環境=先攻ワンキルだとしても、なぜかオレは遊戯王から離れられなかった。オレに遊戯王を勧めてくれた友人も止めたというのに……。
最近は遊戯王の世界で生活している夢を見る程に頭がおかしくなっている。
「……このオリカ達でも混ぜてみるか。どうせやる相手いないし」
オレはデッキに数枚、オリカを入れて再び一人回しを始める。そしてカードを入れたり、抜いたりを繰り返していると眠くなってきた。
「……なんか……眠い……な」
まだ昼間だというのに、急に襲ってきた眠気に逆らえず、オレは机に突っ伏して目を閉じた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
目を覚ますと見知らぬ天井が見えた。
「どこだ、ここ……。というか体に違和感が……」
胸に手を当てると、なにやら柔らかいモノがあった。服の中を見てみると、小さなお山が二つあった。下を確認するがアレは無かった。
「……うそだろ、女の子になってる」
その事実にショックを受け、再び誰かのベッドに倒れ込む。
「って、誰かわからない人のベッドにいつまでもいるんじゃない!」
ガバッと起き上がりベッドから出る。
立ってみると、以前より視線が低くなっており、違和感が凄い。そのことに戸惑いながら部屋を出る。
部屋から出て左右を確認すると、凄く見覚えのある女性が歩いてきた。
「あ、目が覚めたんですね。良かったです。マスターが下で待ってますので、案内しますね」
「あ、ありがとうございます」
女性は微笑むと来た道を引き返す。オレは彼女の後についていく。この人、絶対に《ガーディアン・エアトス》だよな。羽根ないけど。
彼女の案内で、この家のリビングと思われる広い部屋にやって来た。その部屋には、茶髪の青年が小さな黒いドラゴンと戯れていた。
「マスター、ちょうど目が覚めたようでした」
「そうか、ありがとうエアトス」
「はい!」
あ、やっぱり《エアトス》なんだ。でも、なんで会話できてるの?
「まあ、そこに座れ。お前の状況を説明するから」
「お、お願いします」
「お茶、持ってきますね」
エアトスがお茶を持ってくると、青年が話始める。
この町は
オレの原因もその歪みであるが、かつてないほど歪なものだったために、元の世界の座標がわからず、オレを帰す手段がない。とのことだ。
ちなみに、この時空間の歪みによってこの町に来てしまった人を“迷い人”と呼ぶらしい。
「なあ、お前になにがあったのか、教えてくれないか」
「お、おう」
オレは元の世界のことや意識を失う直前のことなど、様々なことを伝えた。オレの話が終わるころには黒いドラゴンは自分の尾を抱きしめて寝ていた。よく見ると《ダーク・リベリオン》じゃね、このドラゴン。
「なるほど、大体わかった」
青年はそう言うと、残りのお茶を飲み干す。そして、カップを置くとこう言ってきた。
「とりあえずお前、住むとこないだろ。この家に使ってない部屋あるし、ここ住め」
「え、いいのか。じゃあ、よろしく頼む」
「おう。俺は
「
互いに自己紹介をして握手をする。
こうして、女としての生活が始まるのだった。