やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。 作:シェイド
・八幡と小町の両親黒トリガー化。
・黒トリガーは二つとも第一次近界民侵攻の際の敵国の手元に
・最初から強すぎる、とかA級1位、とかない。
・奉仕部は中学の話。すべてが一世代下がる形に(夏を除く)
・八幡、最初仕事大好き人間、というかワーカーホリックだろこれ。
・時系列が半年遅くなってる。しかしこれ以降はワルトリ原作と変わらずに進む。
・俺ガイル勢が加わることによるランキングの変化有り。が、極端には変わらない。(攻撃手1位、とか射手1位、とかない)
……今のところこれくらいですかね。
プロローグ①
青春とは嘘であり、悪である。
青春を謳歌せし者たちは常に自己と周囲を欺く。
自ら取り巻く環境のすべてを肯定的に捉える。
何か致命的な失敗をしても、それすら青春の証とし、思い出の1ページに刻むのだ。
例を挙げよう。彼らは万引きや集団暴走という犯罪行為に手を染めてはそれを「若気の至り」と呼ぶ。
試験で赤点を取れば、学校は勉強するためだけの場所ではないと言い出す。
彼らは青春の二文字の前ならばどんな一般的な解釈も社会理念も捻じ曲げてみせる。彼らにかかれば嘘も秘密も、罪科も失敗さえも青春のスパイスでしかないのだ。
そしては彼らはその悪に、その失敗に特別性を見出す。
自分たちの失敗は遍く青春の一部分であるが、他者の失敗は青春でなくただの失敗にして敗北であると断じるのだ。
仮に失敗することが青春の証であるのなら、友達作りに失敗した人間もまた青春ど真ん中でなければおかしいではないか。しかし、彼らはそれを認めないだろう。
なんのことはない。すべて彼らのご都合主義でしかない。
なら、それは欺瞞だろう。嘘も欺瞞も秘密も許術も糾弾されるべきだ。
彼らは悪だ。
ということは、逆説的に青春を謳歌していない者の方が正しく真の正義である。
結論を言おう。
リア充爆発しろ。
「なぁ、比企谷。私が授業で出した課題は何だったかな?」
「……はぁ、『中学生活を振り返って』というテーマの作文でしたが」
「そうだな。それでなぜ君は犯行声明を書き上げている?新手のテロリストなのか?それともバカなのか?」
「少なくともテロリストではないです」
「君の目はあれだな、腐った魚の目のようだな」
「そんなにDHA豊富そうに見えますか。賢そうっすね」
「……はぁ。君は捻くれているな」
「そうですか?」
「……君は部活やっていなかったよな?」
「はい」
「よし、ではこうしよう。まずはこの舐めた作文はやり直しだ。書き直せ」
「……はい」
「それと、この作文の内容や君の言動から罰を与える。その罰とは奉仕活動だ」
「え」
俺はこの後、人生の分岐点とも呼べるであろう奉仕部に入部させられ、雪ノ下雪乃と出会い、奉仕部として色々な活動を行い、色々な人の感情を知った。
その中でも最初の依頼者でその後部員となった由比ヶ浜結衣や、修学旅行後の重苦しい空気の中で生徒会選挙の依頼をしてきた一色いろは。彼女たちと出会い、日々を過ごすことは小学校の俺からしたら想像もできないだろう。
こんな生活も悪くない……と思っていた時だ。
《近界民》による第一次近界民侵攻が起こったのは。
***
俺の両親は現在ある界境防衛機関、通称《ボーダー》の前の組織、所謂旧ボーダーに属していた。
そんなこともあれば、幼いとはいえ中学に上がってから俺もその人たちと顔を合わせ、トリガー技術による戦闘などを教わったりしていたものだ。
そしてあの運命の日。
俺は小町とともに自宅にいて、両親は旧ボーダー組織のところに行っていた。
昼を過ぎたごろ、三門市内全域に異世界からの扉が開いた。
そこから《近界民》が飛び出し、縦横無尽に暴れまわった。
俺と小町はいち早く家を飛び出したおかげで怪我を負わずに済んだものの、家は《近界民》の踏みつけによってぺしゃんこになってしまった。
俺はすでにトリガーをもらっていたため、小町をボーダーの組織が作った避難所に連れて行き、戦闘に参戦した。
まだまだ立派とは呼べない戦いだったが、バンダーやバムスターを少しずつ撃破していた時だ。
目の前にナニカが勢いよく地面に衝突し、俺はその余韻で吹き飛ばされた。
すぐさま顔を上げると、ボロボロになった両親と一人の男がいた。
「親父、お袋!」
「八幡!?」
「きちゃダメ!!逃げなさい!!」
「お前、何しやがった!!?」
無我夢中でアステロイドを謎の男に向けて放つ、が、男は全く意に返していないようでガードしながら笑っている。
「あれは君たちの子供かな?良いトリオン量だ。連れて帰ったら有益な存在になりそうだ」
男はそう言うと一瞬にして俺の目の前に現れ、右腕で俺の腹をつこうとした。
全く反応できずに俺は攻撃をくらうところだったのだが……
「ぐっ!!」
「ああっ!」
親父とお袋が俺を庇ったのだ。
「……やはりどの国でも子を思う親は強いな。だがもう、限界のはずだが」
「どうやらお前の言うとおりらしいな、ぐっ……」
「……八幡。あなたを放置して小町ばかり可愛がってごめんなさい。あなたは一人でもなんでもできるからと、ちょっと放置し過ぎていたわ……」
「急に、なに、言ってんだよ……?」
「すまなかったな……最後の頼みを聞いてくれ。今すぐ逃げろ!小町の元に走れ!!」
「なんで、なんで親父、お袋!死ぬんじゃねえよ、おい、おい待てよ、待ってくれよ……」
「少し待ってろ、死ぬんじゃねえよ。ずっと一緒だ」
そう言って両親は自分たちのトリオンと全生命を注ぎ込み二つの黒トリガーとなった。
「親父!?お袋!?あ………あ、あぁ、なんで、なんで!?なんでこうなるんだよ!?」
「………黒トリガーが二つですか。これさえあればこれ以上の侵略は必要ないでしょう。もらっておくぞ」
「おい、返せ……それを返せよ!!」
「少年、一つ教えてあげよう。ほとんど、この世の不利益はその当人の能力不足だ。君が弱かったから両親は死んだんだよ。ま、その両親が救ってくれた命を大事に生きろよ、くくっ」
そう言い残し、男は目の前からまたしても一瞬で消え去った。
その時俺の中にあったのは弱すぎる自分自身に対する怒りと、両親がいなくなったことに対する悲しみだけだった。
***
近界民による初めての大規模な侵攻は2日に及び、東三門地区が壊滅。死者1200人以上、行方不明者400人以上の被害が生じて幕を下ろした。
そんな中、界境防衛機関「ボーダー」が、三門市内に現れた近界民を撃退して、組織の存在が世間一般に認知された。
ボーダーはすぐさま巨大なボーダー本部を作り上げ、近界民に対する対策や、防衛隊員の募集をし始めた。
俺は旧ボーダーからいたため、そのまま組織に所属した。
城戸さんや忍田さん、林藤さんに両親が黒トリガーと化したこと、二つとも敵に奪われてしまったこと。家が壊され、財産もすべて揉み消されてしまったことを話した。
すると、本部基地の中の部屋を自宅代わりに使っていいと言われ、小町とともに暮らし始めた。
小町は最初、両親が亡くなったことを知った際ショックで気絶してしまい、半年くらい病院に入院していた。
その間、俺は小町のお見舞いを毎日行きつつ、まだ体制が整っていない中で唯一しっかりとしてある防衛任務をこなしていった。
見舞い以外の時間をほとんど費やしたことで生活していくことはできるだろうぐらいのお金が手に入ったが、小町の中学校入学を考えると余裕があるとは言えなかった。
学校が始まってもその生活は変わらなかった。
奉仕部にも行かず、遅く学校に来て終われば即帰宅→小町のお見舞い→防衛任務と毎日を過ごす。
周りに色々言われていたような気もするがまったく耳に入らずこの生活を半年以上続けた。
半年経ったことで小町が回復し、学校に行きだして以前と同じように振る舞い始めていた頃だっただろうか。
ある日の防衛任務で警戒区域外に向かおうとする近界民を追い、弧月で近界民を倒した時のことだ。
その近くに三人の一般人がいたのだ。
その三人とはーーーーーーーーーー
「……ようやく見つけたわ、比企谷君」
「ヒッキー……」
「先輩……」
「お前ら……」
約半年前まで日常のすべてといっても過言ではない奉仕部と生徒会長一色いろはだった。
毎日一話、多分途中でぱったり止むかもですが……。