やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。   作:シェイド

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2026/4/6 改稿


依頼者:嵐山准

「さて、戦犯谷君。何か…申し開きはあるのかしら?」

 

「えー俺は悪くない、いつも俺を1人にする雪ノ下達が悪い…いえ、何もありません!申し訳ありませんでした!」

 

 A級ランク戦、第2戦終了後雪ノ下隊隊室の真ん中で。

 正座をして隊員達に頭を下げている男がいた。…俺だった。

 

「ぶーぶーだよヒッキー!あたし物凄く、痛かったんだからね!?」

 

「そうだよお兄ちゃん!罰として、今度結衣さんと一緒に買い物してきてね!小町からの罰ゲームなのです!」

 

「うええ!?」

 

 そう、なんとなく察するだろう。今回の試合中、相手チームではなく由比ヶ浜を爆殺してしまったのだ。あと雪ノ下の片腕も奪った。

 第1戦目を大差で勝利し、一気に5位へ浮上した俺たち雪ノ下隊だったのだが、今回の相手は風間隊と嵐山隊。

 

 転送位置から雪ノ下と由比ヶ浜が合流を果たし、一色が2人を援護できる位置に着き、俺は1人で、バッグワームを着て倒せそうな相手を探していた。

 万能手ランキング2位の嵐山さんが1人で走っていたから、合流される前に奇襲を仕掛けたのだが…それ自体が罠だった。バッグワームを着た時枝と木虎が襲い掛かってきた為に嵐山さんは諦め、スコーピオン(改)を地面に放り、爆散させてから逃走を図った。

 

 逃げた先で風間さん達が合流を狙っており、これまた3人揃われると敗北間違いなしなので、まず近い1人を倒そうとしたら、それが運悪く風間さんだった。

 これが歌川や菊地原なら急いで戦ったとしても腕1本ぐらいで済ませられなくもない。だが風間さん相手だと普通に敗北するか、サイドエフェクトの反動で他の人に殺されてしまう。だから。スコーピオンで戦闘をしつつ、歌川と菊地原が嵐山隊に捕まっている間に、由比ヶ浜と雪ノ下に援護に来てもらうように要請した。

 普段なら俺を放置する雪ノ下だが、嵐山隊と歌川・菊地原コンビの元に行く為にも、()()()()()俺と風間さんが戦闘中のルートを通る必要があったので、()()()()()助太刀してくれるという流れに。

 言っていいかな…同じ部隊なのに、助太刀するのにそんな渋るのっておかしくない?結果的には渋ってもおかしくないこと起きてるけどよ。

 

「で、その後由比ヶ浜が、いつも通りの徹甲弾での奇襲を風間さんに仕掛けたわけだが」

 

「その瞬間、たまたま先輩が風間さんに向けて放ったスコーピオン(改)を風間さんが避けて、それに結衣先輩の徹甲弾が当たって……」

 

「背後に控えていた上、咄嗟にシールドまで張った私ですら片腕を失うくらいの大爆発が起こった、と」

 

「いやー、でも仕方なくね?風間さん相手に時間稼ぎとか、スコーピオン(改)使わないとかなり無理しないとだぞ」

 

「だとしてもアタシ痛かっただよ!?」

 

「その機を逃さんとばかりに、佐鳥先輩に狙撃された雪乃先輩と、風間さんを狙撃した私」

 

「そして、お兄ちゃんが乱戦してた嵐山隊と風間隊のとこに突撃して、木虎ちゃんを落としたけど…」

 

「嵐山さんと時枝君のクロスファイアを食らって脱落。一色さんに姿を隠してもらったから、なんとか2-2-2で済んだけれど。普通であるなら、大敗北必須の展開よ」

 

「誠に申し訳ございませんでした」

 

 俺は、今一度全員に謝りつつ土下座をする。この隊の中で、1番地位が低いのは俺なので下手に出続けるしかない。中学から変わらないだろうって?ほっとけ!分かってたことだよ!

 その後も一色の「大体先輩は~」から始まる日頃の恨みまで入ってそうな愚痴に、「ヒッキーのロリコン!」という、一時期B級以上の隊員たちにいじられ続けたネタから由比ヶ浜の愚痴、更に「やはり比企谷君には、改めて更生措置が必要なようね」と雪ノ下により怖いお言葉の数々を受け、「お兄ちゃんは義姉ちゃん候補がこんなにもいるのに、なんで誰も選ばないの?!」という意味不明なお説教を受けていた中だった。

 

 コンコン、と隊室のドアの鈴が鳴り、来客が提示された。

 

「はい、どうぞ」

 

「失礼するよ」

 

 そう言って入ってきたのは、先程俺たちと戦った、A級暫定6位の嵐山隊隊長、嵐山准さんだった。

 

「ランク戦終わりで悪いんだが、少し頼み事があるんだ。次の入隊オリエンテーションと広報活動の際、雪ノ下隊にも協力して欲しいという話なんだが…」

 

 嵐山さんによれば、美形ぞろいの雪ノ下隊は現役高校生と中学生のみで構成されており、同じような中高生の隊員を対象として、もっと隊員が獲得できることに繋がるのではないかという話だった。

 …ふっ、やはり俺は美形に入るのか。目以外に限ればイケメンと、以前から自負していただけのことはあったようだぜ。

 

「あ、でも比企谷。お前は改造するってさ」

 

「改造…?え、なんですか、俺解剖でもされるんですか」

 

「そんな大層なものじゃないよ。トリオン体の見た目をいじるって」

 

「改造しないと駄目に決まってるじゃないですか。その目が、他の全てを台無しにしてるんですよ」

 

 突如として聞こえてきた毒舌の声の主は、嵐山さんの後ろに立っていたようで姿を現す。

 さっきのランク戦で、最後に俺が無理矢理倒した木虎である。

 

「酷えな、一応先輩だぞこちとら」

 

「酷いのはどっちですか!あの乱戦の中、私にだけにスコーピオン投げて、バイパーで閉じ込めて、なんとか防いでたら時間差のハウンドで滅多撃ちとかおかしいです!」

 

「あの状況だと、お前だけちょっと浮いてたからね。歌川と菊地原はちょっと距離あったし、嵐山さんと時枝は2人揃ってたから狙うにしても倒せなかっただろうし。少し距離を置いてたお前が悪い、俺は悪くない」

 

「ぐぬぬ……」

 

 嵐山隊の万能手である木虎藍は、リアルでぐぬぬとか言っちゃうちょっと痛い子なのだが、これでもお嬢様学校に通う由緒正しい令嬢である。木虎ぐぬぬとか悔しがってるの見てると、不思議と様になってるから不思議。流石、生意気な後輩枠の1人だな。

 他にその枠には、風間隊の菊地原や片桐隊の結束も同じ枠にいる。

 

「で、そこのそれを改造するのは当然として、私たちは何をすればいいのでしょうか?」

 

「今から嵐山隊の作戦室でその件に関する会議をやるから、来てもらっていいだろうか。あ、比企谷は木虎について行って、早速改造してもらってこい」

 

「マジかよ…」

 

 え、俺何されんの?目抉り出されたりはしない…よな?怖いよ、助けてよ小町…ちょ、そんな簡単に見捨てないで!?

 

 

***

 

 

「おおー、改造後は中々悪くないじゃないですか。もう普段から、そのトリオン体で換装すればどうですか?」

 

 俺を改造するというのは、トリガーの改装機能を使ってトリオン体時の顔を変えるというものだった。

 いやまあ、本当に目以外は俺の顔まんまだし、目だけ変えているから文句はないよ?仕事だし。

 でもさ…え?ここまで変わんの?俺の顔のパーツ的に、目以外はイケメンって説は本当だったようだ。…自分でこれまでも言ってきたけど、顔を見てようやく実感が湧いたわ。

 

「おま、そんなことしたら、トリオン体を解除した時に詐欺だとか何だとか言われるだろうが。それにお前、この見た目でランク戦とかに出てきて、俺が今までと同じような戦闘したらどうなる?」

 

「…見た目完全に別人なんで、咄嗟に反応できないかもですね。笑顔で爆破スコーピオンとか投げて来られたら、多分爆破されます」

 

「だろ?」

 

「…自分で言ってますけど、悲しくならないんですか?」

 

 木虎が呆れた目を俺に向けてくるが、事実だから仕方ない。…今夜は枕を濡らすことが確定だ。泣き叫んでやる。

 

「でもまあ、その見た目だったら雪ノ下先輩達にも見劣りしませんから。今回の仕事の時は、その換装体で広報活動と入隊オリエンテーション出てくださいね」

 

「…聞いていいか?俺と烏丸ならどっちがイケメンだ?」

 

「そりゃもちろん烏丸先輩……って!??」

 

「いや、見た感じバレバレだから。カッコいいもんな烏丸。元A級1位の万能手で強いし、ユーモアあるし、家族思いの良い奴だからな。ライバル多いだろうけど、俺は応援するよ」

 

 あわあわと赤面している木虎だが、あれは惚れても仕方がない。師事してたなら尚更だな。

 何なら烏丸はファンクラブまであるって噂だし。嵐山隊も全員に対してあるんだろうけど。

 あ、佐鳥はなさそうだな。あってもなんか小っちゃい子に人気ありそうだ。

 

 見た目を改装したトリオン体で、木虎と共に嵐山隊を訪ねると、室内にいた全員が『……誰?』と言ってきた為、後ろにいた木虎が即吹き出しやがった。

 そりゃ顔違うけど、一応顔の輪郭は同じなんだから、何とか気づいて欲しかったな。…地味に小町まで、本当に分からないみたいな顔をしていたのが、1番傷ついた。

 …そんなショックを受けてる俺の後ろで、今なお必死に笑いを堪えている木虎は、後でランク戦で痛い目に合わせなければ。同じようなトリガーセットで戦って、ボコボコにして泣かしてやる。

 

「その、木虎さん、こちらの方は……」

 

「くふっ…ひ、ひひっ、えっと…ですね。こちらは、ただ目だけを変えた、元腐り目の比企谷先輩です」

 

 なんだ元腐り目って。腐る目に元とかあるの??初めて言われたわそんなこと。

 

「……ヒッキー?」

 

「おう」

 

「あの、好きな飲み物は何ですか?」

 

「はぁ?マッカンに決まってるだろ」

 

 その返答を聞き、隊室にいた木虎以外が集まって「比企谷君っぽい?」「いやまだ決めるのは早計ですって!」とか言うぼそぼそ声が聞こえてくる。

 そんなに疑われるのかよ、普段の俺の目そんなに酷いですかね…。

 

「将来の夢は?」

 

「専業主夫」

 

『あ、比企谷だ』

 

 俺の見極め方ってマッカンと専業主夫なの?雪ノ下達と佐鳥はともかくとして、嵐山さんと時枝と綾辻にまでそう思われてんのかよ。

 もうちょっと、真面目に生きようかな。普段の言動気をつけようっと。

 

 ちなみにだが、オリエンテーションで広報活動としてテレビ出演しても、終始無言かつジェスチャーのみで対応したことから、『あのイケメン隊員は誰だ!?』と、一時期ボーダー内で噂されるのは別の話。

 また、正体を見破って俺を訪ねてきたB級やA級の隊員が、顔面詐欺と笑いまくっていて、俺がランク戦で復讐したのもまた別の話である。

 あとオペレーターだが結束はマジで許さん。「イケメンの匂いがしないから、この人は比企谷先輩ですね」とか、オペレーター女子会で言ってたの小町から聞いたからな。

 それで盛り上がってるオペレーター陣も嫌なもんだ…。こういう時に草壁が大して反応しないのがまだ救いだった。

 

 そして、この一件をきっかけに、とある事件がこのあと起きるのだが…この時の俺は、そんなことを知る由もないのだった。




ネタに困らない。これだからキャラが多い作品は最高なんだよな。
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