やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。 作:シェイド
突然だが、奉仕部について話そうと思う。
元々奉仕部とは、総武中学校時代、平塚先生が立ち上げた問題のある生徒を集めて、生徒たちの抱える問題解決を通し、各個人の成長を促す部活動であった。
その奉仕部が形を変えて、現在はボーダー本部にて認められた活動となっている。活動の理念は『魚を取ってあげるのではなく、その取り方を教える』。
つまりは、問題解決の方法を提示したり、導いたりはするものの、解決自体は依頼者本人がするってわけだ。
…まあ、最近だとただの便利屋扱いになっている気もするが。どんな問題を丸投げしても、大体解決してくれるという認識を持たれてそうなまである。
米屋の課題消化然り、黒江の入隊勧誘然り、唯我を鍛えること然り、広報活動然り…まあ最後のは、A級部隊の任務内容でもあるから、完全な依頼とは呼べないかもだけど。
律儀に全員が奉仕部を認識して、依頼という体で伝えてくるのだ。わかりやすくてありがたいが、最初の頃にC級の馬鹿共がえっちなことが出来ると勘違いして突撃してきたから、名前も考えものだ。変える気はもうないみたいだけどな。
…あ、そいつら?小町にそういう感情を向けた時点で万死に値する。ボーダー本部に語り継がれる、雪ノ下隊の伝説の1つ。俺がやった『ボーダー基地殲滅戦』だ。
その結果、当時の俺達はA級への昇格が決まっていたのに、再度B級に落ちることになった。毎度毎度ランキングに1位や2位で上に上がりながら、すぐに戻ってくるというはた迷惑な部隊である。
だからいつも、B級ランク戦は3位までに入れば昇格できるなんて揶揄されるまであった。実際、3位で昇格していった部隊もいるし…俺達が降格して取り消されることばかりだから。
「終わりました」
「八幡君。流石に仕事が早いわね。じゃあ次これね、よろしく!」
「うっす」
「返事はうっすじゃないわ、はい、よ」
「…はいっす、沢村さん」
「っすはいらない!」
俺は本部基地にて、資料作成と今後のランク戦や新人隊員たちの書類整理作業を手伝わされているが、給料が出ている為、これは奉仕活動ではない。
雪ノ下や由比ヶ浜、一色が俺に押し付けてきたわけじゃない。雪ノ下隊に来る仕事ではなく、俺個人に来る仕事なのだ。なんならいつも指名なまである。
旧ボーダー時代から、両親についていき少し手伝いをしていた俺は、現在でも上層部から割と仕事を回されていたりする。
もちろん、今やっている一般隊員向けの資料や、広告資料作成などではなく、もっと組織の機密に関わる案件を調べたり手伝ったり処理したりなんてしている。天羽の黒トリガーが隠密に向いていない分、俺が懐刀的な役目を果たしてるってわけだ。
最近は三輪隊がその役目を担うことが多いけどな。俺が言うこと聞かない時もあることを、少し面倒に思っているのもあるのだろう。城戸さん派閥にも、忍田さん派閥にも、林藤さん派閥にも出入りしてるからな。全部が全部信用はできないだろうし。
ただ、二宮隊がB級に降格したのは驚きだった。現場任務についていなかった人間の中で、他の隊員で内情を知り得ているのは東さんと俺だけというのもまた、ボーダー上層部側の人間扱いされている感がある。
だから二宮隊の遠征参加を許可したらよかったのに。鳩原さん技術だけなら狙撃手最強だったろうが。人が撃てないって欠点もあったが、それを補い余りある強さだったぞ二宮隊は。それでも太刀川隊には勝てなかったけど、唯我じゃなくて鳥丸だったし…今なら1位も問題なく取れるだろ。そんな簡単に取らせるつもりも負けるつもりもさらさらないがな。
このことを雪ノ下達は知らない。…いや、なんとなく雪ノ下だけは気づいてそうでもある。二宮隊の降格と昇格停止処分は全体に通知されて、掲示板に張り出されていたしな。
聡い分、推測くらいなら立ててそうだ。
奉仕部の話に戻すが、提案したのは雪ノ下だ。
もちろん、俺たちが中学時代にやっていた活動でもあり、由比ヶ浜が「ボーダーでやるのも楽しそうじゃない?」と言ったことが根本には存在するものの、まだ未成年の人間が多いボーダー隊員達の手助けや悩み相談を行え、心のケアも出来るのではないか。そして、それはボーダーの内部には無いものではないか?みたいな感じで上層部に話を持っていくと、これがまた珍しくすんなりと通って1年前に設置された。
悩み相談室や精神科の先生が非常勤で籍を置いているものの、中々トリガー関係のことや多感な時期にそういった場所を選ぶのは抵抗を示す人は少なくない。
当時は確か、B級2位でA級昇格試験を突破し(雪ノ下は全勝出来ていないことに不貞腐れていた)、俺が先程話した規律違反したことで、即座にB級に逆戻りしたんだっけな。
今思い出していくと、B級参戦後の雪ノ下隊は、目立つことをし過ぎな気がする。
雪ノ下の太刀川さんとの300本勝負(うち85勝196敗19分)であったり、由比ヶ浜のダークマター生成による被害者の会が結成されていたり、一色があざとさ全開で色んなとこでその真価を発揮し、一部のボーダー隊員を良い道具扱いしてしまったり、小町が俺の将来の義姉探しで大規模な嫁度対決大会を開いていたりと。んとまぁ、随分暴れてきたものだ。
え?俺?…聞くなよ、大体やらかして隊務規定違反し続けてるのは俺だけだし。ポイント引かれた数だけで、総合ランキング5位にはなるからな。どうかしているのは分かっている。
ただ、両親を失ってからの俺は、少し変化が生じているだけなんだろう。こんな俺のことも俺は大好きだからいいのである。社会はブラックコーヒーみたいに苦いんだから、自分自身くらいは自分にマッカン並みに甘くてもいいだろう。
しばらく本部長補佐の沢村さんと書類整理を進めていたが、一段落したのか沢村さんが話を振ってくる。
「今ふと思ったんだけど、八幡君って今は誰と付き合ってるの?なんか、たくさん噂聞くんだけど、結局本命誰か分からないし」
「今ってなんなんですか。生まれてこの方彼女いたことないです。噂も全部デマでしょ、どうせ」
「そうなの?小南ちゃんに嘘つかないから凄く懐かれてるとか、綾辻ちゃんと温泉デートして朝帰りしたとか、三上ちゃんと観覧車の中で5時間閉じ込められてたとか、那須ちゃんの身の回りの世話をしてるだとか色々聞くわよ。最近だと、黒江ちゃんをストーカーしてるって話も聞いたんだけど…ロリコン?」
…毎回思うんだけど、誰がこの噂を流してんだ?しかも、全部微妙に間違ってない。
いや、黒江の件は完全なデマだけど。黒江と確かに一緒にいることは最近多いが、飯食べたり他の奴も一緒だったりするし、見たのはどうせ米屋辺りだろ。後でランク戦でしばき倒すか。
小南とは旧ボーダーの頃から知り合っていたし、歳が一緒だったこともあって仲良くなったってだけ。当時から騙されやすい…いや、騙されやす過ぎるくらい純粋だってことに気づいてからは、悪意から俺が守らないと…!なんて当時の比企谷少年(小南のことを結構真剣に好きになってた)は思ってしまって、その名残から、小南に対しては嘘をついたことはない。
でもそれだけだぞ?戦闘狂だし、戦うと良い訓練になるから、いつも玉狛支部行く時は30本くらいやってるし…。勝ったり負けたりだ。
勝ち越した方が負けた方に一つ命令できるルールでやっており、俺が勝ったらカレー作ってもらったりマッカンを奢ってもらったりで、小南が勝ったら頭撫でたり膝枕したりだ。あと雷の日に一緒に寝るとか。
好きだった子と一緒に寝るのは緊張で死にそうだった。サイドエフェクトの力を最大まで切っても小南の小さな動作にすら反応してしまい、結局徹夜したのは良い思い出だ。
綾辻と温泉に行ったのは、確かにその通りではある。だが、あれはたまたま町で会って俺の買い物に付き合ってもらい(雪ノ下達へのプレゼントを選ぶ為、少し意見を聞いた程度。ちゃんと自分では選んだ)、ついでで貰った福引券を引いたら、特賞の旅館1泊2日無料券2人分が当たったってだけで。
雪ノ下達は数合わないし、誰かに送るとしても期限が次の日だったから、仕方なしに非番だった綾辻と行ったってだけで温泉は男女別だったし。
…部屋は一緒で、布団1つしかなかったのは綾辻に本当に申し訳なかったが、特に間違いを起こすこともなく、お互いリフレッシュ出来た良い旅行だった。当然、この時も徹夜である。
なんで女の子ってあんなにいい匂いするんだろうね。同じ旅館の同じシャンプーとリンス、ボディソープを使ってるのに別物を使ったかのような匂いの差が出るよね。不思議だ。
三上のはなんだったかな。あー…あいつの弟や妹達が遊園地行きたいってことで、ちょうど暇だった俺と小町が一緒に行って、観覧車に乗るタイミングがトイレで小町達とズレて、更に俺と三上の乗った観覧車のゴンドラがちょうど真上に来るタイミングで止まったってだけのハプニングだ。
ほんとなんつータイミングだよっては思ったけどな。今思うと、偶然って怖過ぎる。何もなくてほんとに良かった。
5時間も復旧されなかったが、スマホと水とお菓子あったからそこまで退屈じゃなかったな。トイレ済ませてたのも大きかった。最悪の場合は、トリオン体になるつもりだったし生きてはいただろうけどね。
暇なこともあってスマホをガンガン触ってると、ボーダーのLINEグループとかが大変に煩かった記憶はあるが。あの状況で憎まれ口叩いた菊地原は、後々に個人ランク戦でポイント奪い取ってやったが、歌川から三上のことを思い遣っての発言だと知らされて謝ったんだったか。ポイントは返してねえけど。
那須についてはまぁ…小町が日浦と同い年で仲が良く、女隊員ばかりでウチも似たようなものだから付き合いが多いのだ。防衛任務もかなりの頻度で同じになるしな。
那須はトリオン体だと元気だが、生身が病弱である。前にランク戦終わりに、ボーダーから那須の家まで送ってた時に倒れられてからは、都度かなり気を遣うようにはしている。身の回りの世話の方は、そこまでしていない。するとしても、ご両親が帰ってくるまでの間に、食事の準備とか食べさせたり、話し相手になったりくらい。
熊谷や日浦が来れる時はすぐ帰ってるし。
…誰だよ、俺が那須の着替え手伝ってるとか言い出した奴は。三馬鹿の誰かだろうけどな、どうせ。今度スマブラで3人ともぶっ飛ばそう。今決めた。
「半分はデマです。あと別にやましい事とかないですよ。全部流れでそうなってしまったことばかりですし。あと黒江には稽古つける以外何もしてないです。だから通報だけは勘弁を!」
「しないわよ!にしても、半分は本当のことなのね。ふーん?なんだかんだ手は早いんだ。モテ男め」
「いてっ。はぁ…確かに嘘ではないですが、大した話でもないんですって。小南とは昔馴染みみたいなものだし、綾辻と三上は偶然の産物、那須は体調壊した時に居合わせて、それから気を遣ってるだけなんで」
よし、書類整理完了っと。これだけで給料増えるんだから本当に助かる。既に俺と小町が高校を卒業するまでの貯蓄は出来ている。大学は…どうすっかな。どうせこのままボーダーに就職するだろうし、学びたい事なんて…いやまあ、大学生というものを謳歌したい気持ちはあるよ?二宮さん達の話を聞いてるとな。太刀川さんは除く。あの人、ボーダー提携で大学進学できたことで、両親が大層喜んだくらいに絶望的だったからか、全く参考にならんのだ。
こらそこ、二宮さんとか加古さんも参考にならないとか言わない。あとで怒られるの俺なんだよ?
「残りも終わりました」
「ありがとう八幡君!お疲れ様~!今日はもう帰っていいわよ」
「うっす。…あ、そういや沢村さん、忍田さんにアピール出来てますか?瑠花から聞く分には全然でしょうけど」
「うえっ!?」
「いや、そろそろ何か進展あってもいいんじゃないかって話ですよ。俺の周りでも聞くレベルですけど…」
「お、大人を揶揄うのはやめなさい///わ、私も八幡君君の噂のことは言わないから!」
「わかりましたよ、仕方ないですね」
ふっ、チョロい。沢村さんなんてこの話題で1発で逃げ出せるぜ。
俺と共に書類仕事をしていた、本部長補佐の沢村さんは2年前までバリバリのアタッカーであり、忍田本部長に師事してたから地味に姉弟子でもある。…妹弟子になるのか?その辺全然覚えてねえ…。
俺は、沢村さんが入ってくる前から所属していたし、上層部とは何かと関わることが多かった為、割と親しかったりする。
仕事仲間みたいな感覚だな。今でもこうやって事務仕事一緒にやることあるし。
沢村さんが忍田さんに惚れているなんて、一目見れば大体1発で分かる。俺の観察眼を舐めるなよ!
…まあ、大体の古株隊員や沢村さんを知っている人は、皆知ってることなんだけども。
本部の資料室を出て、とりあえず歩き始める。
午前中は仕事で手一杯だったが、午後は防衛任務もなく暇だ。飯食べた後、ランク戦ブースでも覗いてみるとするかね。
***
食堂でA級気まぐれ炒飯を食べた後、俺は個人ランク戦のブースに来ていた。
炒飯の具は蟹で、安いし美味かったのだが…やっぱり炒飯と言えば、加古さんの当たり炒飯が1番だよなぁ。
食堂の炒飯を普通とした場合、加古さんの当たり炒飯が天国でハズレが地獄だ。安定を選ぶのが1番なのかもしれないが、一度当たり炒飯を食べると、ずっと忘れられないくらいには美味いため、これからもギャンブルみたいに抜けられないんだろうな。
ハズレ炒飯をムシャムシャ食べてる黒江くらい、俺も胃が強ければ良かったのに。
「あ、八幡君。今からランク戦するの?」
俺が炒飯について考えていたところで、声をかけてきたのはB級那須隊の隊長、那須玲だった。
バイパーの軌道をリアルタイムで引ける数少ない射手の1人であり、マスターランク手前くらいにいる実力者。最近では、よくランク戦をしたり教え込んだりしてる黒江と同じで、弟子ってわけでもないが、たまに戦闘スキルを教えたりする間柄の相手だ。
ただ、那須は綺麗すぎるからか、C級隊員達からの目がうざったい。なんであんな美人と腐り目が!?って悪口が過ぎるだろ。俺の腕のエンブレム見て逃げ出せ!と思ったら、俺普段着を換装したままだったわ。
換装を入れ替え、A級4位と入った腕の雪ノ下隊エンブレムを見て逃げ出していったC級たちを尻目に、那須と改めて向き合う。
「おう。那須も同じか?」
「私も今来たとこなの。今日は熊ちゃんと一緒に来たわ。ほらあれ」
那須が示した先には、緑川に攻められまくってる熊谷がいた。
…あ、
思った通り、そのまま緑川の攻めを捌き切れずにベイルアウトしていく熊谷を見ていると、那須が話を続けてきた。
「八幡君。今から特訓ってことで、ランク戦に付き合って?」
「それはいいが…熊谷といいお前といい、今日はマスターランクに挑む日なのか?」
「うん、そうなの。前回のランク戦で勝てなかったのは、もちろん戦術や連携がうまく行ってなかったこともあるけど、個々の力量が足りてなかったのもあるからね。ポイントも大事だけど、それより強さの方がもっと大事だから」
那須の言うことは、もっともである。
マスターランクと呼ばれる個人ポイント8000点は、確かに強者の証でもあるのは事実だ。一種、強さの指標に使われるしな。
だが、ポイントだけで隊員の強さの目安にはなったとしても、正確に測ること等できやしない。
例を挙げるなら、B級弓場隊隊長の弓場さん。あの人なんかは、マスターランクの銃手で強さ的には銃手NO.1であるのだが、ポイントとしてはそこまで高くない。自分よりも強い相手や、同じくらいの相手とバトルことがほとんどで、マスターランク以下とはほぼというか、頼まれない限りは闘うことがない。それでもポイントを維持できており、トップレベルの隊員であると言えるだろう。
うちの隊で言うなら由比ヶ浜だな。あいつはマスターランクに成り立てぐらいのところをずーっと1年間くらいうろうろとしているが、格上に挑むことが多く、ポイントにこだわりが全くと言っていいほどない。
かくいう俺も、ポイントにこだわりがない方だと思う。…隊務規律違反してポイント大幅に減らされてるし、守ろうとする気がそこまでないからな。そう言えるはずだ…いや、ちょっと今違うかこのことは。
「自力の強さはチームの戦力に直結するから、悪くない手だな。んで、今回はどうする?射手縛りでいいのか?」
「うーんと、そうだね…。最初の10戦は射手縛りで、次の10戦がスコーピオンの爆発しない方込みの万能手縛り、最後10戦が全部あり、かな」
「わかった」
軽く30戦することになってしまったが、まあいいか。那須の射手としてのセンスは抜群だし、その成長には目を見張るものがある。バイパーの軌道なんかは結構参考になるし、俺の訓練にもなるのだ。那須とのランク戦は、毎回結構有意義だしな。
「じゃあ私、203に入るわね」
「俺206な」
***
「やっぱり強いね八幡君!全然敵わなかったよ」
「いや、那須も前より強くなってたぞ」
ランク戦30本やった後、一旦休憩ということになり、俺はマッカンを、那須はカフェラテを買ってブース前のソファに腰掛けていた。
最初の10本勝負は、7ー3。次の10本が9ー1。最後の10本は10ー0で勝利した。
射手としては、那須のバイパーに3回やられてしまったが、合成弾を作る隙が大きかった為、そこを利用して置き玉や時間差ハウンドを利用し勝利した。合成弾を使うタイミングや合成速度を上げていくと、そのうち射手だけなら勝率は五分になりそうである。
もちろん、そんな簡単に追いつかせないけどな。
スコーピオンを使うとオールラウンダーとの練習になると踏んだのだろうが、俺は迅さんや風間さんのスコーピオンの戦闘を参考にしつつ、独自のスタイルにバイパーを合わせるスタイルのため、那須としては相当やりづらかったと思われる。そんなスコーピオン使いは、今のB級にはいないしな。
射手が怖いのは中距離だ。つまりは近づいて仕舞えば射手は基本的に不利になる。なお二宮さんは除く。
その距離で、モールクローやフェイントをかけたスコーピオンの攻撃を見せながら、その対処に追われている間に上空からバイパーやハウンドでトドメを刺したり。その逆も多用している。
那須が弱いのではない。射手は基本、この俺のスタイルとは相性が最悪なのだ。もちろん、射手1位の二宮さんは除かれ、戦いすぎて全部かわせるようになった2位の出水も除く。加古さんはむしろスコーピオンの練習の為に、わざと手を引き出させられ、手本にさせられている感覚すらあるレベルだ。
射手トップの3人相手だから、全然納得出来てしまうのだが。
ここに俺が開発したスコーピオン(改)も使いだすと、もっと対応が追いつかなくなる。当然、そうなるように狙っているわけだがな。
建物に向かって投げて爆破させ、バイパーの軌道を見えなくしたり、スコーピオンによる速攻を仕掛けたり、ひたすら投げつけることもあれば、投げた後に自らのハウンドで当てて目の前で爆破させたりなど、多岐多様な使い方が可能なのだ。オールラウンダーは慣れると結構使いやすいと思われる。
…メテオラを内蔵する分、トリオンを消費するという欠点はあるがな。ダメージ食らってるとガス欠を気にして使えなくなることだってあるし。
他の難点を挙げるならば、どんなものに当たっても爆破してしまうことと、狙撃による射線を通しやすくしてしまい、狙撃手強化に繋がってしてしまうこと。だからまあ、射手相手ならかなり有効をとれる。当然、二宮さんにはシールドで防がれるから効きやしないけど。出水には効く。爆破最高だぜ。お返しとばかりに
「やっぱり、合成弾を使うのはよくないかな」
「よくないってわけじゃないだろ。合成弾は強力な攻撃だし、当たれば確かに有効だ。だが、作るまでの時間のロスと使用するタイミングの見極めがまだまだだな。出水みたいに2秒でやるのは、ちょっと頭おかしいし無理があるだろうし…そうだな、作成に10秒かからない、出来れば5秒前後で作成できるまで練習すればかなりの力になるはずだ。あとは使うタイミングだな。これはチーム戦術もあるし、チームで考えた方がいいかもしれん」
「そっか。ありがと八幡君!凄くわかりやすくて、今後の方針が決まったよ」
「それは良かった。俺もいい訓練になったし、楽しかったぜ」
「あ、もうこんな時間だ。家に帰らないと……」
「送ってく。前みたいに倒れられたら、お前の両親に合わせる顔がない」
「え、私の両親?」
「ああ、前にちょっと話してな。娘さんの世話を男がしてるってのは嫌な顔されると思ったんだが、なんかお礼言われて那須のこと守るとか言ってしまったからな」
「え、そうなんだ///…じゃあエスコートよろしくね?」
茶目っ気たっぷりの視線でこちらを上目遣いで見てくる那須。めっちゃ可愛い…じゃないわ、しっかりしろ。
那須の両親とは、熊谷が少し前に俺のことを話したらしく、スーパーで1回声をかけられたことがある。
なんで分かったのかと聞くと、特徴的な目にアホ毛、常にダルそうにしているとの情報で、俺しかいないと思ったらしい。
……一発で話しかけられて当てられたのは嬉しいことかもしれないが、内容が内容だけに悲しくなった覚えがある。今でもちょっぴり悲しいし。
その那須の親に話しかけられた時は、娘に悪い虫がついてると思われて声をかけてきたのだと思い、その場で土下座したのは余談である。
いや、だって小町にそんな男がいた日には、俺なら血涙を流しながらでも殲滅しに行くと思うし。千葉の兄妹としては普通の行動、なはずだろ?高坂さん家もそうするはずだぜ?
んで、土下座したから那須の両親が困惑して、オロオロされたんだっけ。その時に通りかかった一色が、面白そうとばかりに動画に撮って、雪ノ下達に見せたり三馬鹿に見せたりしたせいでまたしても一悶着あったりもしたが、これは余談か。
頭を上げてくれと言われ、頬でも打たれるかと思えば、物凄くお礼を言われたんだった。
なんでも、那須のご両親曰く、仕事の為に自分たちがついていない時、那須の看病や倒れた際に適切な対処をしてくれたことが嬉しかったのだとか。
その後、那須の家でご飯ご馳走になったり、帰ってきて泊まるつもりだったのだろう那須隊メンバーが那須に向かってニヤニヤしてたような記憶もある。
ちなみに俺が何故、人の看病や緊急時の対処が出来ているのかと言えば、ボーダー隊員として働きつつ、そういった知識を勉強していたからだ。その場での緊急処置が行えれば、助かる命が増えるかもしれない…などと言う立派な目的ではなく、目の前に小町が倒れて何も出来ないのは嫌だったからという理由である。
…両親は救えなかったが、小町だけは救うと決めているから。
今日もいつものように那須を家に送り届けると、ちょうど帰ってきていたご両親に捕まり、夕食に誘われてご馳走になった。
またしてもそのことが、ボーダー隊員達にバレて、俺がスコーピオン(改)で連中を爆殺したのはまた別の話である。
那須さんは可愛い。健康になって欲しいけど、病弱という設定が儚さを上げてて更に綺麗に見えるから悩みどころじゃないかと作者は思う。
アニメのオリジナル部分も那須さんがいたから見てたまであるし。