やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。 作:シェイド
A級ランク戦、第5戦終了後。
『では、今回の総評を影浦隊からお願いします』
『今回のMAPは市街地A。特にこれといった特徴のないノーマルマップであり、3部隊での乱戦を狙う形であったと思いますが、概ね展開としては影浦隊の思惑通りだったと思われます。ただ、雪ノ下隊と戦う際に乱戦を選んだのは、少し失敗だったのではないでしょうか』
『と、言いますと……』
『雪ノ下隊は、バランスの取れた良いチームで隙が少なく、弱点という弱点が殆どないことでも知られていますが、中でもエースの比企谷と銃手の由比ヶ浜。あの2人は、特に乱戦に秀でています。人が集まったところで、うまく場をごちゃらせてから点を取るのが得意な比企谷と、近距離での奇襲が効きにくく、むしろ一方的な奇襲を仕掛けることが多い由比ヶ浜。この2人を戦場に揃えてしまったことが、反省点と言えるでしょう。影浦隊のエースである影浦には、不意打ちも狙撃も効かない。しかし、比企谷と戦いながら由比ヶ浜の援護射撃を避けるのは、相当やりづらかったと思います』
『それはもちろん、三輪隊にも言えることでしょう。今回、ランク戦で珍しくも、比企谷が爆破するスコーピオンを使わないでバイパーやハウンドでの支援に徹してたことも大きかった。米屋が爆破スコーピオンから意識を削がれていたところに、バイパーを放つ素振りから流れるようにスコーピオンを投げられ爆発。一撃で倒されてしまった。あれで、比企谷としては随分と楽になっただろうからね』
『雪ノ下が三輪を止めている間に、北添と絵馬を釣り出して一色と由比ヶ浜が抑えに行く。前持って決められた動きだったと思われます。もしも米屋が生きていれば、由比ヶ浜は一色を手伝うことが出来なかったでしょうし、比企谷を狙撃で倒せたかもと思いますね。当然、比企谷が避けるかガードをする前提で対応することにはなると思いますが』
『比企谷と影浦は、実力的にも相性的にも五分と言っていい。米屋も状況次第でどちらも倒せる実力者だけど、今回ばかりは由比ヶ浜の援護が効いていたね。米屋が倒れたところですぐに由比ヶ浜が姿を眩まし、エース同士の一騎打ち状態に持ち込んだ。通常通りの雪ノ下隊だったら、比企谷は放置で残り3人が纏まって点を取りに行くスタイルがほとんど。今回みたいに、比企谷と由比ヶ浜が組んだ例は過去に一握りほどしかなかったから、そんなレアケースに当たった影浦隊と三輪隊は、虚をつかれてもしょうがないね』
『比企谷の役割が大体他部隊のエースとの一騎打ちなことが多い分、援護があるだけでやりづらさが段違いだったことでしょうね。三輪と米屋が揃って仕掛ければ、比企谷も1人でも多く道連れにする戦法に切り替えたと思いますが、雪ノ下が完璧に三輪を抑え込んでいたことが地味に良い仕事してました。万能手として、お互いに3位4位で入れ替わりが多い分、実力的に五分である為に、足止めで十分と考えてる雪ノ下を崩すのは難しかったでしょうから。奈良坂と古寺の2人は、バラけて三輪と米屋を援護するより、三輪を援護して確実に雪ノ下を倒しておいた方が良かったかもしれませんね。影浦が比企谷を倒したとは言っても、足を失った状態では一色を探しにいけなかった。雪ノ下隊に点をやらないことだけを考えるなら、影浦隊を諦めて1人ずつ倒すのも面白かったかもしれません、転送位置にもよるので一概には言えませんがね。次回に期待しましょう』
『なるほど…!東さん、迅さん、解説ありがとうございました!さて、今回の対戦結果で暫定順位が入れ替わります。3得点を挙げた雪ノ下隊が4位へ浮上、影浦隊と三輪隊は変わらずーーーーーー』
***
チームランク戦での解説陣からは、基本的に俺だけディスられる側なのだが、今回は仕掛けがうまくいったようだ。
二宮隊がB級に落ちたことで、代わりとばかりにB級1位の影浦隊がA級に上がってから、初の対戦となった今回。
初期転送位置から雪ノ下が三輪の足止めを行い、米屋との合流を阻止。影浦隊がやりたかったであろう、俺と米屋にカゲさんをぶつける作戦に乗っかった。
ゾエさんの適当メテオラもうざかったし、由比ヶ浜との距離が近かったから、スコーピオンしまってバイパーで2人を牽制しながら、シールド使って守りに入り、由比ヶ浜に射撃をしてもらって動きにくくしながら後退していき、前がかりになってきたところを唐突のスコーピオン(改)を投げつけて米屋を爆破。月見さんにも読み勝てて良かった。4人編成のチーム相手には、情報を大量にぶん投げて処理を遅らせることが1番だからな。これは東さんの教えである。
一色がゾエさんと絵馬の位置を把握したってことで、由比ヶ浜にはそっちへ行ってもらった。おかげで獰猛な笑みを浮かべたカゲさんと、しっかりタイマンすることになってしまい、結果的に敗北したものの、ゾエさんと古寺を雪ノ下と一色が倒す時間は作れた。
ちなみに三輪は絵馬に狙撃され、絵馬は奈良坂に狙撃され、ゾエさんを一色が不意打ちハウンドとスコーピオンで追い詰めたガードさせ続けたところで、背後から由比ヶ浜がバッグワーム徹甲弾奇襲でゾエさんを滅多打ちにし、古寺によって由比ヶ浜が狙撃されたことで位置を把握した雪ノ下が、追いかけて古寺を倒した。
あとはみんな、隠れて残り時間をやり過ごしてたな。点より安全をとったことになる。カゲさんは片足だけど動けなくてもマンティスで殺しにくるし、そこに手間取って奈良坂に狙撃される危険があったからな。雪ノ下の良い判断だったと思う。
これを本人に言ったら、「上から目線な上司面谷君、影浦先輩に負けた言い訳はないのかしら?」って言われたけどな。
いや、米屋倒したんだから許してくれよ。あと上司面谷は、流石に語呂悪すぎる。
結果、3ー2ー2でうちの勝利。順位が上がって4位になり、次は加古隊と冬島隊が相手になっている。
…超絶面倒な2チームが揃って相手になるって最悪なんだが。トラッパーいる部隊が同時に2つはキツすぎる。マップ選択権は加古隊にあるし、なんだか非常に嫌な予感しかしない。
第3戦は草壁隊と片桐隊に勝って3位へ浮上し、第4戦で太刀川隊と二宮隊にボロ負けを喫して落ちた後に、今回で4位に戻ってきた。
次勝ったところで太刀川さんとこだろうし、楽に勝てるところがどこにもねえ。サイドエフェクトもガンガン使わざるを得ず、能力値を伸ばせる分、体調がマジでずっと悪いような状態である。
いやまぁ、A級の時点で全部隊強いからこそ、サイドエフェクトを多用せざるを得ないんだけどね。使わずにある程度戦えるように練習してる最中だが、サイドエフェクトを使おうと意識しなければ、米屋達三馬鹿に4-6、3-7レベルだ。
A級であることを考えれば、この4年で成長したとは思う。だけど、このままではあの野郎に勝つことは出来ない気がする。
…まだまだ、鍛錬が足りていないようだ。
***
自室でマッカン飲みながら本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。
珍しいな、今のノック的に雪ノ下だ。
「なんだ?」
「依頼者よ比企谷君。今回の話だったら、あなたが適任だから任せるわね」
突然やってきて一方的に話を通した雪ノ下が、スタスタと隊室から出て行った。
気になって部屋を出て居間に行くと、荒船さんが紅茶を飲んで座っていた。
「よっ、比企谷」
「荒船さん?どうしたんですか?」
「今日はお前に用があって来たんだよ。依頼ってわけだ」
荒船さんが俺に用?孤月でランク戦やろうって話とかか?
B級荒船隊隊長の荒船哲次さん。荒船隊は、隊長の荒船さんがエースで孤月使いの攻撃手で、隊員の穂刈さんと半崎が狙撃手という珍しい構成のチームだ。
特に荒船さんは、マスタークラスの攻撃手で強い。前に那須がアタッカー対策手伝って欲しいとか言ってきていたのは、荒船さんに斬られたことも関係してるんだろうし。
「ランク戦ですか?最近になって、ハウンドと孤月を連動させる練習してるんで、喜んでお受けしますが」
「お前、ハウンドも使うのか?そういや、前のランク戦やってた時使ってたな。まぁ、それも面白そうだが、別件だ」
「別件?」
「俺は、近いうちにアタッカーをやめる。いや、この表現は間違いか。アタッカーからスナイパーに転向するつもりだ」
「え?マジで言ってます?…もしかしてですけど、村上先輩にポイントを抜かされたから、とかですか?」
荒船さん程の人が、アタッカーからスナイパーへ転向する理由が分からん。半年前くらいに弟子に取ったという、鈴鳴第一の村上先輩がポイントで抜かしたから、それで…?
いや待て、これはないな。この人はそんなタマじゃない。それならまず教えないタイプだろ多分。
「違う。俺の目標は、木崎さん以来の完璧万能手なんだよ。攻撃手、銃手、狙撃手のマスタークラスまで導けるメソッドを確立して、将来、完璧万能手を増産して軍隊みたいに作るのが、今の所の最終目的だ」
うわっ、何かめっちゃ物騒なこと言い出したぞ。
木崎さんに次ぐ完璧万能手になる?それはいい、この人アタッカーとして普通に強いし、なってくれたら戦力上がるし全然いい。むしろ応援する。
だがマスターレベルにまで至るメソッドの確立。これは、道のりが相当険しすぎるだろ。凄い向上心だな。
ちなみに完璧万能手に俺の名前が挙がらないのは、単に射手だからってだけだ。
…二宮さんにボコボコにされてから、人に見せられなくなってしまってわけじゃないよ?ホントダヨ。
しかし、そうなると俺を訪ねて来たのって。
「俺に用って、唯我を鍛えたことに関してですか?」
「ああ。前回のランク戦をみたが、あのお荷物君が凄まじい変わりようだったからな。んで、出水に聞いたらお前が鍛えたってことだったから、その方法を聞きにきたんだ。あとついでに、木崎さんに対してアポ取ってくれると助かる」
「なるほど。いいっすよ、協力します」
「ありがとよ」
そういうことであるなら、何なりと話そう。多分、使えないだろうけど。
唯我の鍛え方は至ってシンプルだ。まず、銃でひたすら撃つ感覚を体に覚えさせ、意識しなくても的や相手を見たら、指が反応するレベルにまで反復練習をさせる。
次に、銃の間合い…銃手の立ち位置の説明をし、それぞれの対ポジションに合わせ、距離の限界を叩き込んだ。
と言っても、家何個分くらいまでなら届くからーって程度の教え方だから、大したものでもない。
最後に、実践でやらせ続けた。俺との模擬戦での動きからみて、勝てそうな相手に挑ませて勝たせ、調子に乗らせる。それで勝手に強いやつに当たってくれたら、現実を知るだろうと思ってやらせてたのだ。案の定、由比ヶ浜にボコボコにされたから想定内である。
臨機応変な対応を捨てる代わりに、1週間で戦力に少しはなるレベルには出来る。やることなんて間合いに来たら撃つ、隠れた状態から奇襲し一撃で仕留めるように撃つ、右で顔狙って撃ち、左で足狙って撃てば大体はどっちか当てられるし有利に事を運べる。上手くいけば勝てる。まぁ、相手に先手を取られると、何もできない戦闘法だからA級とかだと瞬殺されるんだけど。
実際に前回の太刀川隊の対戦では、辻に奇襲を仕掛けて片腕を奪っていたものの、すぐに旋空弧月で斬られてベイルアウトしてたし。
出水からは、相手の片腕でももぎ取ってくれるだけで戦力アップだと言われたが、これは本当にその通りなので、異論はない。雪ノ下も少し後悔してるような顔してるくらいには、唯我の成長は目覚ましいのである。
この話をペラペラと話すと、荒船さんからはどん引きされた。何かおかしいこと言ったか?一週間泊まり込みでひたすら訓練させれば、この程度は出来るようになる。学校の時間と食事の時間と睡眠の時間以外、全てを当てれば楽勝だぞ?唯我の奴も途中からテンションハイになってたし、楽しそうだったんだがな。
俺は一応攻撃手、射手、狙撃手、実は銃手と手を出しているので、荒船さんとその後も話し続けた。育成プログラムを考えるのがかなり楽しく、盛り上がったっていうのもある。
そしてその夜。
木崎さんに連絡を取り、俺は玉狛支部へと向かうのだった。
両親を失ってから、殆どをトリオン体で過ごしており、娯楽も何も楽しまない半年間がある今作品の八幡君だからこそ出来た教え方です。
多分、俺ガイル原作より人に教えるのが下手くそになっています。どんなものでも。