やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。   作:シェイド

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えー、今作品の問題児である、比企谷八幡が隊務規定違反しまくるお話です。
かと思えば、雪ノ下達が地味に暴走している理由が分かる回でもあったり?

サブタイトル:「依頼者:迅悠一」

2026/4/7 改稿。


閑話 雪ノ下隊の捻くれ者

 世界が、真っ赤に染まった。

 そう表現するのが、1番正しいと思う。

 

 あの第一次近界民侵攻によって、多くが変わってしまった。

 幸いにも私や私の家族に被害はなく、これまでと変わらない生活が続き、言ってしまえば殆ど影響はなかった。

 …いや、むしろ父は、地位を上げることになった。

 

 近界民の襲撃による被害は、前代未聞の規模であった。多くの建設物や道路が崩れ去り、壊れ、砕け散っていった。

 近代兵器がほとんど意味を成さなかった近界民相手に、『ボーダー』を名乗る人々が近界民を次々に撃退。おかげで、東三門市壊滅のみで済んでいたものの、避難民や家を失った人、家族を失った人は数多く存在していた。

 そこで雪ノ下建設は、これからも続くであろう近界民からの襲撃に備えるボーダーに対して投資を行いつつ、私財も投じて被災者への支援を行った。

 その結果、より一層大きな会社へと成長し、父は、県議会議員の中でもトップの力を持つようになった。

 

 家が大きくなったが、私自身への影響は特になかった。復旧した学校へ通うようになり、由比ヶ浜さんと共に奉仕部の活動も再開した。

 たまに一色さんも訪ねてくるようになり、前と同じようで…その失いたくないと初めて思えた居場所は、酷く変わってしまった。

 本を読んでいても、気分転換に紅茶を飲んでもいても…。気が付けば、ついその()()()()()()()へ、視線をやってしまっている。

 

 ポツン、と。1つだけ、離れた場所に置いてある椅子。

 そこの席が定位置の彼は、大規模侵攻以降、奉仕部へと姿を現すことはなかった。

 

 

***

 

 

 再開した学校では、クラスが特別編成で行われていた為、私も由比ヶ浜さんも彼とは会う機会がなかった。

 …いや、本当は探した。一色さんも1つ下とはいえ、生徒会の会長を務め、たびたび彼を頼っていたから、学校中を探したらしい。

 それでも、見つからない。

 由比ヶ浜さんが1度だけ会うことが出来たとのことだったが、声をかけるのが精一杯だったと言ってきた。それってどういうことなのかしら…?

 

 大規模侵攻が終わり、そして…彼と会わなくなってから、半年が経った頃。

 私たちは彼に会えない、見つけられないことに我慢が出来なくなり、彼の家があったであろう場所へと向かった。

 …大規模侵攻による攻撃の痕が激しい。そんな跡地を歩いていき、確かここだったはず―――

 

 ―――私たちの目に入ってきたのは、家があった場所に建てられた2つのお墓と、その前で泣き崩れている小町さんの姿だった。

 

 

***

 

 

 彼…比企谷君は、妹の小町さんと共に無事だったと聞いたけれど、ご両親が近界民…それも人型の近界民に殺されかけ、比企谷君を守る為に黒トリガーになったという。

 その()()()()()()()と呼べる黒トリガーを目の前で敵に奪われ、比企谷君は敵とすら思われなかったからか、それとも気まぐれか。トリオン体の身体を貫かれはしたものの、見逃してもらえたとのことだ。

 そんなことがあってから…彼は、小町さんを守る為に。自分たちの生活費を稼ぐ為に。そして、近界民への復讐の為にボーダーで訓練に励み、防衛任務をこなし、バイトをし、目まぐるしく過ごしていたというのだ。

 

 …学校へは来ても、私たちのことを後回しにして、奉仕部へ顔を出すことを忘れる程に。

 

 小町さんから話を聞いた私たちは、どうにかして彼の力になりたいと話し合い、その結果、ボーダーへ入隊することを決めた。

 人を頼るということは、人として弱いことだと思っていた。それを違うと教えてくれたのは彼だ。なら、今度は彼を助けなければならないと思った。

 

 最初は私たちを拒絶していた彼も、小町さんの涙を見てからは少し正気を取り戻したのか、私たちを歓迎してくれた。

 …シスコンなところは全く変わっていないのを見て、少しだけ安心したのは秘密なのだけど。

 でも、気持ちはわかるかもしれない。不謹慎だけれど、私だって両親が2人とも他界し、姉と2人だけになったら…いえ、そこまで変わらない気もするわね。ただ比企谷君がシスコンなだけだったわ。

 

 

***

 

 

 ボーダーへ入隊し、B級に上がって隊を組んだ。入隊から半年後、ランク戦に参入した時だった。

 私たちは初参戦にしてB級4位と健闘しており、次の試合結果次第では、A級へ挑める挑戦権が与えられる上位2位以内に食い込める…と思っていた矢先。

 

 その日、彼は新入隊員であるC級数名の首を、スコーピオンで刎ねた。

 …私が、大規模侵攻後の()()()()()()()()()()()に対して、確信を得たのもその時だったけれど。

 

 彼のその行為は、ボーダー隊務規定に違反するものであり、そのシーズンのランク戦資格を私たちは失った。

 彼自身にも罰則が加えられ、彼の最も得意とするスコーピオンのポイントを10000点失った。

 私たちは愕然とした。何故、どうしてと彼を問い詰めたものの、彼は『悪い』の1点張り。

 …当時、個人総5位だった彼の隊務規定違反は、多くの人の間で話題となった。騒ぎ立てるのはC級や一部のB級だけたったけれど。彼のことを少しでも知るB級隊員以上は、むしろ彼に同情していたり、同調している節すらあった。

 …初代東隊の、東さん、二宮さん、加古さんには本当に彼がお世話になっていた。いつも捻くれた発言ばかりする彼が、珍しく素直に接していたのはこの3人くらいだろう。

 

 それに、今ではだいぶ女性の正隊員も増えてきたけれど、当時はまだ数も少なかったことも起因し、私たちの隊で唯一の男性ということもあってか、彼に対しての悪口を聞くことばかりだった時期でもあった。

 当時は本当に、比企谷君の悪口を言っていた隊員全員の首を刎ねてやりたかったわね。

 …彼を悪く言うのは私や由比ヶ浜さん、一色さんに小町さんだけでいいのよ。それが、私たちだから伝わるやり取りなのだから。

 

 

***

 

 

 彼は、旧ボーダー時代からの古株であり、本部や支部の幹部との繋がりも強いからか、何度かボーダーのスポンサーが集まるパーティで姉と会っていたと、姉本人から聞いた。

 かつて、彼のことを『理性の化け物』と評していた姉が、「比企谷君。あれはもう、変わり果てちゃったんだね」と、儚げに、まるで過去の彼を懐かしむように言ってきたことを、今でも鮮明に思い出せる。どうやらパーティー会場でも色々あったようだが、彼が解決したらしい。彼らしくない方法で。

 

 …「でも、今の方が剥き出しの欲望って感じで求めてるものが分かりやすいし、以前の彼より好みかもね~』とか言ってる姉には、ちょっと頭を抱えたが。

 ただ同じように、私もボーダーへ入隊した時から思っていた。彼は、前のような理性が効かなくなっているのではないか、と。

 理性が効かないといっても、考えなしに女性を襲うという様なものではなく。少し…いや、前の彼から考えるなら、かなり攻撃的になってしまっているようだ。

 …両親が目の前で近界民に殺されているのだから、復讐に憑りつかれてしまっても仕方ないと思うのだけれど。

 

 ランク戦資格を失った初めてのシーズンを終え、次のシーズンの話に移る。カメレオンが開発されたことでステルス戦闘が流行し、菊地原君のサイドエフェクトも駆使し、圧倒的な強さを誇ってB級1位の地位を得た風間隊に続き、2位でシーズンを終えた私たち雪ノ下隊は、昇格試験をパスし、無事、結成の目的であったA級へ昇格することが出来た。

 …全勝出来なかったのは悔しかったけれど、それよりもA級に上がることができた。そのことの方が大事なのだから、高望みしてはいけないわね。

 

 だが、彼はまたやらかした。次は民間人に対してだ。

 ボーダー隊務規律では、民間人へのトリガーの使用は許可されていない。それでも、彼はトリガーを使って痛みを与えたという。

 その結果、雪ノ下隊はA級昇格後にすぐさまB級に降格。もちろん、前代未聞の出来事だった。

 さすがの私たちも、今回ばかりは許せるものではなかった。彼個人のポイントが全体的に引かれたとはいえ、部隊としての連帯責任を毎回負うのだ。

 小町さんも含めた4人で彼を囲み続け尋問。…16時間ぐらい粘って、ようやく根負けした彼は、私たちにこう告げてきた。

 

『…雪ノ下も、由比ヶ浜も、一色も、そして小町も。全員が馬鹿にされた。だから、罰を与えてやったんだよ。カッとなってしまったのは謝る』

 

 …彼のそういったところは変わらなかったらしい。

 本人が馬鹿にされていて、私たちすら気付くことが出来なかった。いや、彼が隠し続けていた、彼に対しての嫌がらせの数々をその身に受けていたという話も聞いたけれど、それは悪意の矛先が彼自身だったから耐えられたことなのだろう。私たちも知ることがなかったから、特に支障がなかった。

 それに、民間人へのトリガー使用と言っても、その民間人たちは当時ボーダーに在籍していた、B級隊員の差し金で比企谷君を怒らせたことが、後々になって判明している。だからこそ、彼はクビにならずに済んでいる。普通であれば、記憶処理をしてクビを切られても仕方がないレベルの案件なのだから。

 …当たり前だけれど、彼に対して嫉妬し暴言を吐いていたB級個人の隊員は、既にボーダーを去ったわ。記憶処理もしてもらったから、ただただ私たちに対しての恐怖心だけが残っているんでしょうけど。

 

 比企谷八幡君。彼は、なんでもかんでも自分を犠牲にして解決しようとする。いや、本人に至っては犠牲とすら思っていない。それが、当たり前のことだと本気で思って生きてきた。

 私たちと奉仕部の活動を通して、そんな体質も少しずつ改善が見られていた頃に…大規模侵攻が起きて、両親の死、近界民への復讐心、残された妹を守らなければならない気持ちと、彼から余裕を奪うに余りあることが一気に彼を襲ったのだ。

 …おかしくなっても仕方がない。むしろ彼だからこそ、この程度済んでいるのかもしれない。

 

 彼と、今後どう接していくべきか。そんな話をしていた時だ。

 奉仕部を訪れた人物がいた。

 

 

***

 

 

 訪ねてきたのは、玉狛支部所属の迅悠一。黒トリガーである『風刃』を所持するS級隊員であり、未来が見えるというサイドエフェクトを持っている人物だ。

 そんな大物がいきなりうちを訪れ、こう言ったのだ。

 

『雪ノ下隊の4人にお願いがある。どうにか、()()()()()()()()()()()()()()()()理由になってくれ』

 

 迅さん曰く、将来的にまだ未確定ではあるものの…彼が、近界へと消えてしまう未来が見えると言う。

 そんなことが起きれば、ボーダーは混乱必須。あと大変な闘争が起きてしまうとのことで…その起こしたくない未来を防ぐ為に、私たちへ依頼してきたのだ。

 私たち自身が、彼を繋ぎとめる鎖になって欲しいと。彼が、自分の命を文字通り使う様な、自己犠牲を起こしてしまわないように。

 

 

***

 

 

「そんなことがあったんだねぇ」

 

「はい。なのでそれからというもの、出来る限り彼と一緒に居ようとしています。ですが、中々これが難しいのよね…」

 

「だよねー。ヒッキーすぐにどっか行っちゃうんだもん!」

 

「ですですー。先輩には()()、私の荷物持ちをしてもらおうと画策しているんですけど、他の方々に邪魔されちゃうんですよ?酷いと思いません?」

 

「思わない」

 

「あざとさ120%の女の子なんて、お兄ちゃんに似合いませんよ。お兄ちゃんは、小町と一緒にいるのが一番なのです!」

 

 そして現在。

 ちょうど彼が、嵐山隊と広報の仕事をこなしている間に…最近、以前取り決めた協定を破り始めている国近先輩と香取さんを捕らえ、お話をすることにしたわ。

 

「それで国近先輩、2人っきりの状態で何をしたんですか?」

 

「え~っと~…内緒♪でもでも、私たちに加えて公平君もいたし、完全な2人きりってわけじゃないよ?」

 

「その出水君から、『柚宇さんに出ていけって言われた…くっ、今度比企谷爆殺してやるっ」って言伝を預かってますが?」

 

「それって言伝なの~?あれは~…まあまあ、いいってことで~」

 

「彼、防衛任務に初めて遅刻して始末書書いてましたよ」

 

「…それでも内容は黙秘しますっ」

 

「香取先輩、小町の許可なしに勝手にお兄ちゃんへ変な薬飲ませてましたよね?1日中連れまわして…何してるんですか?」

 

「あ、あれは悪戯が過ぎたっていうか…反省してるわよ!あと、あの薬があんなに効くだなんて思わなかったのよ!あとあたしを詰める前に、あの開発部にいる材木座ってヤツを問い詰めなさいよ」

 

「もうあの人はスコーピオン(改)で爆破しましたよ。今頃『悪いことしてごめんなさい』ってカードを首からかけて仕事してます」

 

「えぇ…比企谷の妹怖っ…」

 

 迅悠一のサイドエフェクトは、確かに未来を見通す力を持つ。

 それは、時に大勢の命を救うこともあれば、事前に策を巡らせることも出来る。本人が永遠と未来が見えてしまい、見たくない世界線も見えてしまうという嫌な要素もあるが、人間が持つ力として破格すぎる能力だ。

 だが…未来というものは無限に広がっており、分岐点も当然、無限に存在している。

 いくら、目の前の人間の未来を見通せるとは言えど、その全てを把握することなど人間には出来はしない。それが出来るのは、神と呼ばれる存在だけだろう。

 

 だから…といっていいのか。迅が伝えた依頼によって…

 

(比企谷君と一緒に読書したいし、出かけたいし、ずっと一緒に居たいのは本音よ。だけれど…どうすればいいのか全く分からないわ。気が付けば、彼に悪口を言ってしまっているし…。こうなったら、姉さんに頼るしかないのかしら?)

 

(ヒッキーを最初に好きになったのはあたしなのに!あたしなのに~!!気づけば玲ちゃんの家には何度も行って、もう親公認みたいになっちゃってるし。生徒会室の中で遥ちゃんと抱き合ってるし!?あたしだって、あたしだってヒッキーに抱き着きたいのに!!でも、いきなり抱きついたら絶対引かれるし…優美子にまた相談しに行かないと!)

 

(先輩の攻略難易度桁違いに高過ぎませんか!?中学の頃だって、あの葉山先輩並みに難易度高かったのに…高校へ上がってからは、ボーダー組も参戦して更に競争率上がっちゃったしさぁ…。もういっそのこと、既成事実作って無理矢理にでも責任を取らせた方が…っていやいや!まだ学生だよいろは!落ち着いて!)

 

(お兄ちゃんが必死に働いてくれてるおかげで、小町は生活できてるから、せめてものお返しにいいお嫁さんを探してただけなのにな…。お兄ちゃんが他の女子と仲良くしてるのを見ると、最近どうしようもなくイライラしちゃうんだよね。…小町、どうしたらいいのかな?お兄ちゃん…っていうか、早く瑠花姉とくっついたら解決なんだけど、あの朴念仁はなぁ…って、瑠花姉も同じようなもんか)

 

(う~ん、やっぱり攻めすぎたかなぁ~?ゲームをずっとしてたのは嘘じゃないけど、どんなゲームしたかまでは…ね?それに、対戦ゲームの勝者の特権って言って、無理矢理一緒に寝た挙句に、寝顔写真もかなり撮っちゃったんだけど、まぁいいよね!バレてないし!いつも比企谷君真面目だから、たまにはガス抜きしてあげないとね~って、上には怒られちゃったけど。…写真は、ちゃんとボーダー組のLINEにも張るつもりだし~…半年後ぐらいまでにはね!)

 

(別に比企谷のことなんてなんとも…ま、まぁ?トリオン体の改装を身長小さめのイケメン少年にして召使いみたいに扱っちゃったけど…あの開発室のデブに貰った、『八幡専用回復ドリンク(1日中ドリンクを飲んでから最初に見た人の言うこと聞いちゃいます。記憶は一度寝ると消去されるのでバレる心配はありません)』とかいうものを半信半疑で飲ませてみたら、本当に言うこと聞いちゃうからついね…。華も楽しそうだったし!あたしは、別に比企谷が好きってわけじゃないんだから!あたしは烏丸ファンなんだから!!)

 

 頼んだ相手が、恋愛音痴ばかりだったのだ。

 ここにいる面々以外も複雑に絡み合いながら、物語は紡がれていく。

 

 ―――やはり私たちのボーダーでの生活はまちがっている。




ゆきのんとその他諸々の口調おかしいと思うけど許して!
俺ガイル原作読み直しますわ。そしたらたぶんぼーなすとらっくを聞きたくなるんだ。
そしたらアニメに派生して、そんでOPを聴き続けるようになって。
また違う、二次創作作品を書き始めるんだ…知ってる。
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