やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。 作:シェイド
防衛任務の定刻が終了し、始末書類を作成してから次の迅さん達へと引継ぎを行い、ボーダー本部を後にする。
迅さんと別れ際に『素直にな』って言われたんだが、どういうことだよ…。
ボーダーを出た俺が目指すは、学生の強い味方であるサイゼリアだ。
何故かと問われれば、先程の3人に呼び出された、としか言いようがない。
トリガーの換装体を解き、私服のポケットからMAXコーヒーを取り出して一気に飲む。暴力的な糖分を口の中に広がった。うん、美味い。
昔から好きだったが、このところ毎日頭を使いすぎている自覚はある。一度に大量に糖分を摂取できるマッカンを、俺は重宝していた。
ちなみに新たな家となった、ボーダーの中にある部屋には箱で積み込まれている。
サイゼに入って席を見回すと、俺に気づいた由比ヶ浜が手を上げていた為、4人が座っている席に向かう。
ん?4人いる…?
「って、小町…」
「お兄ちゃん…」
着いた席には雪ノ下、由比ヶ浜、一色に加えて、なんと小町までいた。
小町とはここ2ヶ月ぐらい、ろくに会話出来ていない。
理由としては、俺が防衛任務かランク戦しかしていないこと、小町が1人でいるのが寂しくて俺が新トリガー開発の手伝いをしている場所まで突撃し、邪魔をしてきた時に大声で怒鳴ってしまったことが原因で気まずいのだ。
しかし、座れる場所が小町の横しか空いていなかったし、一色と小町が座っているサイドの座席に座る。
少しだけ無言の時間があった後、最初に口を開いたのは雪ノ下だった。
「あなた、ここ半年以上ろくに顔すら見ないと思ったら…ボーダー隊員になっていたのね」
「正確には、今のボーダーが出来た当初から…いや、その前から参加してるから、なったってのも違う気はするがな」
「そんなことはどうでもいいの!なんでそのことあたしたちに隠してたの、ヒッキー!」
由比ヶ浜が怒ったように言う。
…意味がわからない、なんでお前が怒るんだよ。関係ないだろうが。
「別に隠してない。ただ、防衛任務やらなにやらで忙しかっただけだ。話は終わりか?」
「ちょ!?待ってくださいよ先輩!こんな可愛い後輩を置いてどこにいくんですか!?」
「書類整理、戦闘訓練」
「あなたが働いているなんて嘘も大概に…いえ、先ほど働いていたものね」
「ああ」
「ヒッキーが働くなんて……」
確かに、約半年前の俺からしたらありえないくらい働いている自覚はある。ま、今ではこれが普通で、むしろ今日は防衛任務しかしてないため少ないくらいだ。
なんだ?こんなくだらない話をするために俺を呼んだのか?危険区域にまで立ち入ってきて?
…時間の無駄でしかない。とっとと帰るかな。
「じゃ、話は終わりでいいよな?」
俺はそう言い、席を立つ。が、左手をガシッと掴まれる。
「ま、待って!まだ話は終わってないよ!」
「じゃあ早くしてくれないか?俺は忙しいんだ」
「なんで…なんで……」
「あん?」
「なんであたしたちのこと避けてるし!」
……ぶちっ。
由比ヶ浜の一言で、俺の中のなにかが切れた音がした。
……なんだ、なんなんだ、お前らは一体何がしたいんだ?
「じゃあ、あれか?お前が俺の代わりに、俺たちの生活費を稼いでくれるのか?」
自分でも驚くほどに低い、威圧する声が出た。
「ヒッ、キー?」
由比ヶ浜も普段の俺とは違う威圧的な声に怯えている様子だ。
すると、由比ヶ浜に代わって雪ノ下が話し始める。
「比企谷君。あなたのご両親が亡くなったこと、そしてそれに伴って、生活費や学校の教材費なんかのお金が必要なことを小町さんから聞いたわ」
「ごめんねお兄ちゃん。小町は何もしてなくて、ただ寂しがって。お兄ちゃんばかりが時間を使って、ボロボロになって」
「何言って……ッ!」
何言ってるんだ、と言おうと小町を見ると目から涙を流していた。
小町は小町なりに今の状況、自分たちの状況を理解し、俺が仕事をすることが生きていくには必要なことに気づいていた。
小町自身も1人の時間が多くて寂しかったのは分かっていた。
それなのに、無視してしまっていた。そんな無視していた俺を心配してくれていたんだ。…さっきの俺の発言なんて、前に奉仕部に依頼しに来た川…川…川越?さんが言ってたのとまんま同じだし…視野が狭くなっていた。
「…ごめんな、小町。ごめん。兄ちゃん、周りが見えてなかった。お兄ちゃん失格だな…」
ここ最近は何を食べたかすら覚えていないほど、無為に1日1日を過ごしていた。空いた時間に簡単に作れて食べられるものばかりだった気がする。
あとは東さん達に連れてかれるご飯屋くらい…そう考えたら俺、だいぶ迷惑をかけていた…?
「ううん、小町も勝手に雪乃さんたちに話しちゃったから。ごめんなさい」
こうしてお互いに謝罪し、最近全く話さなくなっていた小町との間は元に戻った、と思う。
しかし、まだ根本的なことは解決していない。
そう、俺たちの生活費……お金のことである。
そのことについて小町と話そうとした時、一色が立ち上がった。
「なんだ、どうしたんだ一色」
「雪乃先輩、やっぱりあの案がいいですよ!」
あの案だ?
「ええ。小町さんとの仲も戻ったようだからこの際提案するわ。
私たちもボーダーに入ろうと思うの」
え?は??
「は?」
おっと、突然のことで頭がパンクしそうだ。おい、文脈が意味不明すぎるだろ。なんで俺と小町が仲直りしたら、お前らがボーダーに入ることになるんだよ。
「なんで、お前らがボーダーに入ることに繋がる」
「今の比企谷君はB級個人の隊員。防衛任務でしか給料を受け取れず、防衛任務は出来高払いとその日その日で収入は異なる。そうでしょう?」
「雪ノ下、なぜその事を…スポンサーか」
「そう。雪ノ下建設がボーダーのスポンサーについているから、スポンサーに対しての説明にあったのよ」
「じゃ、じゃあお前らが入る理由ってのは……」
「比企谷君。私たちとチームを組んで、A級になりましょう。そうすれば出来高払いに固定給がついて、生活が安定すると思うわ」
やはり、か。
ボーダーは本部を作り上げた後、半年間の間で様々な制度を作っていたが、その中にチームランク制というものが存在する。
ランクは精鋭のA級、一般戦闘員のB級、見習いのC級で、黒トリガーを持つ人は規格外としてS級扱いになり、このランク制ピラミッドの外に分類される。
B級からA級に上がるためには、個人ではなくチームとして昇格試験に合格しなければならないため、現在A級部隊は狙撃手として最初の隊員である東さん率いる東隊しかおらず、他はB級個人やB級部隊である。
たしかに良い話ではあるが…。
「断る」
「!?」
「な、なんでですか?!」
「わざわざお前らが俺や小町のために、ボーダーに入って縛られる必要はないだろ。それにボーダーに入るということは、トリオン兵と戦う、いざとなれば前回のような襲撃時に人々を守るために戦うことになるんだぞ。あんな化け物達…トリオン兵には恐怖しか湧かないんじゃないか?今回、家を壊されたりしなかったとしても、あの化け物共が街中で何をしたかは目にしただろうが。そんな相手と戦闘なんて本当にできるのか?」
「お兄ちゃん…」
「…俺たちの生活を気遣ってくれるのは嬉しい。少し気分も落ち着いたし、素直にありがとうと言わせてくれ。だが、だからといってそこまでしてもらう必要はない。要は俺が、今の生活を続けていけば問題はないんだしな」
そう言ってから、出された水を飲む。
奉仕部に足を運んでいた頃の俺だったならば、『施しを受けるつもりはない』とでも言っていただろうか。あれ、どちらにしても断ってるくね?
さっきの雪ノ下の発言は、実際は今現在の俺の収入源のうち50%の話だ。ここに残り50%、組織運営に携わっていることやトリガー開発部門での仕事の報酬を俺は受け取っており、今でA級隊員並の金額は手にできている。…休みが全くないってだけで。
こいつらは、善意で言ってくれているのだろう。伊達に半年前まで一緒に過ごしてきたわけじゃない。
それでも、わざわざボーダーに入ってまで俺に付き合う必要はない。
こいつらにはこいつらの時間があり、これから先の将来があるのだから。
静かになり誰も話さなかったので見回すと、小町はこっちを見ていて3人は俯いていた。
…さてさて、久しぶりにサイゼに来たんだし、ミラノ風ドリアと辛口チキン、ドリンクバーでも頼もうかね。
と、俺がメニューを頼もうとしていた時だった。
バンッ!
由比ヶ浜がテーブルを叩きながら立ち上がった。
「少しはさ、あたしたちを頼ってよヒッキー……!」
「由比ヶ浜、俺は別に「ヒッキーが私たちの時間を自分のために使うことをやめてほしいってのはわかった!でも、あたしたちだってヒッキー助けたいの!」
「今までは一人で抱え込むしかなかったとしても、今は違うでしょう?私たちがいるわ」
「先輩。そんなに、私たちは頼りないですか?」
「お前ら…」
…そうか……そう、だよな。
俺は何でもかんでも一人でやろうとしていた。というかしていたし、一人でやるべきことだとも思っていた。
それは間違いじゃない。だけども正解でもないのかもしれない。
困った時は周りの人に頼る。人が当たり前のようにできていることが、俺にはできていなかったのだ。
これじゃあ、雪ノ下のことなんも言えねえな。
「…本当にいいんだな?」
「ええ!」
「うん!」
「はい!」
「そうか。…なら、よろしくな」
こうして第一次近界民侵攻から約半年。
雪ノ下たちがボーダーに入隊することが決まった。
***
「じゃ、解散だな。小町、今日はここで晩御飯食べて帰ろうぜ」
「わかった!」
「じゃ、あたしも食べて帰る!」
「私もです!」
「私も食べて帰るわ。だから比企谷君。食事の間ボーダーについて詳しく教えて欲してちょうだい」
「了解」
結局全員で食事を注文し、ボーダーについて話し合うことにした。
さすがに4人席に5人は多いので、先に俺と雪ノ下、由比ヶ浜と小町と一色で別れ、大体のことは俺と雪ノ下で話すことにした。
ひとまずランク戦の仕組みを伝え、それぞれのポジション決め(仮定)をすることに。
話終わりぐらいに料理が運ばれてきて食べ始める。
俺の話を聞きながら、今後のことを色々と考えていた雪ノ下が話し始める。
「なるほど。つまり、ランク戦でどのくらい勝ち進んでいけるかが昇格のための条件ね」
「ああ。昇格試験の内容はわからない。いくら前から組織に籍を置いていても、A級やS級ではない以上他の隊員に比べてズルになってしまうからってことでランク戦の昇格試験については教えてもらってないんだ。…だがまぁ、簡単には上がれないはずだ、今現在1部隊しか存在してないから」
「1つだけなのだから、少なくとも簡単ではないはずよね。それで?計画はあるのかしら?」
「今すぐに具体的に思いついてはいないが…そうだな。まずは半年程度、次の夏休みくらいまでと考えているが、その間に力をつける。俺たちはもうすぐ中3に上がるし、小町の中学入学もある。色々とゴタゴタするだろうし、毎日毎日訓練するわけにもいかない」
「いいんじゃないかしら。私は賛成よ」
「よし、お前がオッケーなら他もオッケーだ」
「結衣先輩はともかく私もですか!?」
「ちょっといろはちゃん、それどういう意味!?」
由比ヶ浜と一色が何か騒いでいるが無視である。
「それで、肝心のポジションなんだが…こればっかりは適正もあったりするし、初めはセンスがモノを言う。ある程度このポジションをやりたい!って目安をつけておくことぐらいしかやることないな」
「ちなみに比企谷君は、どのポジションなのかしら?」
「俺は攻撃手と射手を合わせた万能手ってポジションになる。殆ど実践は射手みたいなもんか。あんまり弧月…ボーダーの武器になる剣型のトリガーの才能はないと思うが、今また別のトリガーの練習をしているからなんとも言えない」
「トリガーにはどんなものが?」
その後もトリガーの武器の種類や、ポジションの説明をしていく。
結果、とりあえずとしてポジションを決定した。
雪ノ下:攻撃手
由比ヶ浜:射手
一色:狙撃手
小町:オペレーター
本人たちの希望も合わせている為、トリガーの適正に合わないかもしれないが、一応このスタイルで行くことにした。
さて、みんなが基礎からやるなら、その間に俺も最近迅さんが開発した、スコーピオンを使いこなせるようにならないとな。
こうして、俺たちのまちがったボーダー生活が幕を開けた。
うーん、最後雑すぎましたかね?
反省しています。
現段階での八幡のプロフィールです。
比企谷八幡
14歳
中学生
8月8日生まれ
ペンギン座
A型
トリオン8
攻撃8
防御・援護7
機動4
技術6
射程5
指揮2
特殊戦術1
トータル42
サイドエフェクト:強化神経
中枢神経系及び末梢神経系が文字通り強化されている。
情報処理速度、反応速度、バランス感覚、集中力、記憶力、ストレスへの対処能力が軒並み強化。
神経を強化するトレーニングで得られるものとは異なり、本来の人の限界である物理的反応速度約0.1秒、神経伝達速度毎秒120mのリミッター制限がなくなった状態。当然ながら耐久性も向上しているが、長時間の戦闘は心身の異常をきたす恐れがあり、廃人となる可能性があるデメリットも存在している。
現時点では、自身で神経を強化する度合いを変えることは出来ず、人よりもちょっと反射神経いいかな?程度の効力。
ランクC。菊地原の強化聴覚よりも劣る。(他者への共有もできず、菊地原の聞き分けみたいな精度もない為)
メイン:アステロイド、孤月、旋空、シールド
サブ:アステロイド、バイパー、シールド、バッグワーム
まだまだ序盤なのでこのくらいで。
このあとの流れとしては
・このまま入隊からB級部隊結成、A級へ
・時系列を高2の4月に飛ばす
のどっちかですかねえ。
まあすべては私のその時の気分で決めようかと思います。
では、また次の話でお会いしましょう。