やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。   作:シェイド

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俺ガイル勢の話が続くけど許せ。

地味に黒江と同時期入隊していた、葉山と三浦、戸部、海老名と奉仕部のお話。

原作の八幡と隼人の関係性めっちゃ好きなんすよね。理解してくれる方いる?
俺ガイル短編集を書きたいと昔から思いながら、他の方々の作品で満足してきた(自分の書くもののクオリティが上回らないと感じていた)のですが、年齢重ねてきてようやく満足いく内容が書けるようになってきました。

いつかは挑戦したい。

2026/4/7 改稿。


依頼者:葉山隼人

「やあ、お邪魔するよ」

 

「誰だお前」

 

「ヒキタニ君と同じクラスだった、葉山隼人だよ。僕たちもボーダーに入ったんだ。仲良くしよう」

 

「…お山の隼人?何だそれ、自己紹介上手いな…いいと思うぞ、俺は」

 

「お山じゃなくて葉山だよ。…ヒキタニ君、俺なにかしたかな」

 

「お山じゃなくてパーマ?お前パーマじゃねえだろ。でもパーマでも似合いそうだなイケメンが」

 

「それは褒めているのかい…?ヒキタニ君。何か俺、悪いことしたかな?」

 

「俺こそおかしなこと言ってるか?駄山君。俺は比企谷なんだよな」

 

「……」

 

「……」

 

 本日、雪ノ下隊の隊室を訪れてきたのは、先日B級に上がり、隊を組んだばかりである葉山隊の隊長、葉山隼人だった。

 何の用かは知らないが、俺はこいつが嫌いだ。こいつも俺が嫌いだからか、名前を知ってるくせにヒキタニとわざと呼び間違える。

 なら俺だって、(リア充共の)お山の葉山だったり、パーマだったり、駄山と呼んでも問題ないだろう。お互い同じことをしているのに違いはない。

 

「…今日は依頼があってきたんだ、雪ノ下さん」

 

 よし勝った!俺から目を逸らした時点で、お前の負けだ葉山!

 

「依頼?A級ランク戦が佳境に入ってる今の時期に依頼って、ちょっと考えなしが過ぎるんじゃないかしら」

 

「そうかな?昨日のランク戦を見させてもらったけれど、全員がいい動きをしていたじゃないか。結衣が大暴れしてたから、よく覚えてるよ」

 

「確かに昨日は勝てたわ。でも、だからって次も勝てるわけじゃない。そんなに簡単に勝てるほど、A級ランク戦は甘くないのだけど」

 

「そうですよ!これから連携の訓練やるところだったんですよ?」

 

「それは…すまない。だが、俺たちも時間がないんだ…。頼む、力を貸してくれ」

 

 おお、あの葉山が早くも頭を下げた。珍しいこともあるもんだ。

 しかし、ここまでして伝えにくる依頼ってなんだ?葉山達はB級に上がったばかりで、今は防衛任務に苦労している頃だろうに。隊室を貰ったんだから、仮想戦闘モードで近界民を倒す練習からし続けろよ。トリオン兵なんて決まったパターンしかしてこないんだから、動きを突き詰めていけば、どこまででも早く、的確に殺せるようになっていける。

 先日、玉狛支部にお邪魔した時、宇佐美の最新作やしゃまるゴールドを木端微塵にし、フルボッコにしたのは良い思い出である。気分がスカッとしたからもう一度と頼んでみたが、断られてしまった。

 …帰る時に『次こそは比企谷君を殺せる近界民を作って…フフ、フフフ、フハハハハ!』とか聞こえてきたが、聞かなかったことにした。だって怖いし。

 

 

 ちなみにだが、今現在隊室内にいるのは俺と雪ノ下、それに一色の3人と依頼者を名乗る葉山の計4人である。小町は那須隊のとこに遊びに行ったし、由比ヶ浜は今頃弓場さんとドンパチしている頃だろう。そしてそれを里見が見て『うっひょ―!』とか叫んでるはず。あの3人お互いに倒したり倒されたりしてるの、良い関係だよな。

 

「…まさかとは思うのだけど。貴方たちは、次シーズンのランク戦から参加するつもりなの?」

 

「…は?」

 

「え、マジですか?」

 

 葉山の依頼内容を推測していたであろう雪ノ下が導き出した答えは、俺と一色が一瞬呆けるくらいには驚く内容だった。

 通常、というより俺たちがそうだったのだが、B級に上がった→隊を組んだ→チームランク戦だ!!とはならないのである。いやまあ、なるとこもあるんだろうけど、それ多分、隊を組む以前から連携の練習やそれぞれ師匠のもとで訓練を積んでいるような人間に限るだろう。

 組んだタイミングにもよるだろうが、基本的にランク戦シーズンが始まる頃に隊を組んだであれば、目の前のシーズンは無視し、来シーズンから参加するのがセオリーだ。

 何故、と言えば様々な理由が挙げられるが、大きく2つある。

 

 1つは、C級である訓練生の頃とは違い、防衛任務が少なくとも3~4日に1回くらいのペースで必ず回ってくること。防衛任務自体はこなせても、その後の他の隊への引継ぎや近界民の残骸の回収、報告書作りなどやることが一気に増えるのだ。まずは、これに慣れた上で学校に通い、更には自己鍛錬も忘れてはならない為、生活サイクルが整うまでの時間が必要になってくる。

 

 もう1つは、部隊としての練度の問題だ。これは現在A級暫定2位の風間隊が例外に当たるのだが、風間さんが訓練生時代の菊地原と歌川をスカウトし、元々から部隊のコンセプトを決め、やることなすことを完璧にこなし続けた結果、B級ランク戦に即参加かつ、そのままの勢いでA級へと駆け上がっていくという偉業を達成出来ている。

 これは、風間さんの考えていたことが完全にハマったと言うのもそうだが、風間さんの意図通りに指示に従い、動き、遂行できた菊地原と歌川の2人の能力の高さによって達成出来た高度なものであり、他のB級下位の個人隊員が同じことをしようとしても、無論、無理な話なのである。

 

 葉山達がどのように訓練生時代を過ごしてきたかは知らないが、三浦や戸部が訓練しようぜ!なんて言うのは想像できない。葉山が言えば従うだろうが、こいつは命令とかそういうのは嫌いだろうし、どうせ好きなようにさせてたはずだ。ツケが回ってきてんだろうな。

 

 俺たちだって、全員がB級に上がってから最初のシーズンは参戦していない。

 もちろん、初めてランク戦が導入された年でもあり、どんな風にランク戦が進んでいくのかが分からなかった為ってのもあるが、何よりも勝つ為にチームワークを高めたり、戦術の研究、個人スキルの向上、地形に慣れる為の練習もしたものだ。

 それでも4位止まりだったし。…いや、俺のせいでなかったこと扱いになってるから言えないが、恐らく隊務規定違反さえしていなければ、実質2位までは上がれそうだったことも考えると、そのままランク戦に参加したところでどこまでやったとしても、中位か下位で止まるのがオチだろう。

 

「ああ、そうなんだ。戸部と優美子が、ランク戦なんて楽勝だとか何とか言って姫菜を説得して、次回から参加することを既に運営に伝えてしまっていてね。どうにか取り消せないかと思ったけれど、取り消すことに戸部と優美子が反対でどうしようもないんだ。姫菜はチームの雰囲気の為か、否定することをやめてしまったし…」

 

「…それで?あなたの依頼は?」

 

「…俺たちを強くしてくれな「却下」

 

 ぴしゃり。流石雪ノ下である。さすゆきっ。

 

「言ったでしょう?私たちは今、私たちのことで精いっぱいなのよ。自分たちの力になることならまだしも、葉山君達の部隊を今から強くしてくれですって?自分たちの力の向上を他人に頼りすぎてはないかしら?自分たちのことは、自分たちで高めるべきだと思うけれど」

 

 雪ノ下の言うことはもっともだと思う。だが、それだと奉仕部の存在意義も揺らがないか?そりゃあ、今シーズンは遠征隊に選ばれる上位3位以内を目標としているから、現在5位であることを踏まえて、他のことに気を回す余裕がないのも理解できるが。()からは、嵐山隊と並んで広報活動であったりお悩み相談をしても、他のA級部隊に引けを取らないと判断された為に奉仕部の設置は許可されているんだし。

 

 それを置いておくにしても、葉山の言い方も悪かった。せめて、「強くなりたいから協力してくださいお願いします」と言えば、雪ノ下がスパルタで教えてくれるのではないだろうか。中学の時の戸塚相手でやっていた、死ぬ気で素振り、死ぬ気でランニング、死ぬ気でランク戦みたいに脳筋戦法になりそうではあるが。

 だが、この理論はあながち間違ってないからやってみても良さげな内容だな。今度、太刀川さんか風間さんか二宮さん、弓場さん辺りに50本勝負を挑んでみるか?死ぬ気でやれば、全部勝ち越せるかもしれない。サイドエフェクトの反動ヤバそうだし、確実に翌日1日中吐き気と眩暈に襲われるだろうから、かなり覚悟が必要だが。

 全員に対して勝ち越したことはあるにはあるものの、全体的な勝率で言えば、恐らく2割を切るだろう。

 最初の頃に負け続けたのもあるが、そのくらいの実力差は全員に対してある。本番を想定してサイドエフェクトを多用すれば、ごり押しで勝てなくもないが…ただただ、ズルをしてる気分になるし。

 

 …俺は、あの雪ノ下雪乃のチームのエースを張ってるんだ。もっと、もっと強くなりたい。そうでなければ俺は…あの野郎に勝つことは出来ない。あいつだけは絶対、絶対に…俺の手で…

 

「…んぱい、先輩?」

 

「っ…わり、なんでもない」

 

 少しばかり、自意識に深く潜りすぎていたらしい。ふと気づけば、一色が袖を掴んで心配そうに見つめてきていた。

 

「…そのウルっとした目やめろ。一瞬ときめきかけたじゃねーか」

 

「ときめきかけた!?それってつまり『お前のそういった顔好きだぜ』ってことですよねそうですよね!?でもでも、まだお付き合いするには段階を踏むべきだと思いますので今すぐは無理ですごめんなさい!」

 

「久々に聞いたぞ、それ。これで俺は何回振られたことになるんだ?」

 

((全然振られてない…今すぐじゃなきゃ付き合うんだ…))

 

 女子の袖掴む仕草ってこう、グッてくるんですよね。分かるか?分かるよな?

 ま、今は葉山のことだ。

 

「おい葉山。別に、ランク戦に参加してもいいんじゃないか?それで敗北すれば、三浦も戸部も自分たちは弱いって流石に自覚するだろ。那須とか照屋あたりにボコボコにされてろ」

 

 少し前に由比ヶ浜が葉山、戸部、三浦の3人と対戦していたので、ログを確認してみたが…大方の予想通り、由比ヶ浜が全員をハチの巣にしていた。

 葉山隊の編成は、3人とも攻撃手で風間隊に近い編成だ。葉山がハウンドも入れていたから、歌川枠とすると実質同じようなものだが、似ているのは編成のみ。

 3人とも弧月使いでポイントも似たようなものだったが、流石に葉山が頭一つ抜けていた。それでも、動きとしてはB級中位に届くか?ぐらいの実力なので、当然3人がかりでも由比ヶ浜が笑顔で穴だらけにしていた。あれトラウマなってない?大丈夫?

 

「それは…」

 

「少なくとも考える頭があるお前なら、チームランク戦を勝ち上がるのは容易じゃないってくらい理解できてるんだろ?どうせ防衛任務の報告書もお前が大部分やってるんだろうし、チームのエースだってお前だろ。いくら何でも無理がありすぎる。別にお前がどうなろうが知ったこっちゃないが、お前に限界が来たら、葉山隊自体が駄目になるのは簡単に想像がつく。だから、やめとけ」

 

「…君のそういった洞察力は、いつになっても本当に凄いな。でも、俺が言ったところで優美子や戸部は聞かないと思う」

 

「それもう、隊として致命的じゃないです?」

 

「いろはの言う通りかもしれない。だけど俺たちは、俺はボーダーに所属して、住民を守る為に力になろうと思って話し合って入隊した。そしてB級に上がって、これからも4人でやっていきたいと思ってる。だから…」

 

 だから、今の状態を保ちたい。チームで、4人でいる為には、葉山と海老名さんが折れるしかない、と。

 …中学のあの頃から色々あって関係性も進んだのかと思ったが、彼らは変わらないらしい。そんな偽善で取り繕ってる偽物なんていらないだろうに。

 それでも、彼らがそれを心から大事にしていることは知っている。海老名さんだけはそうでもないってのもだけど。

 …仕方ないか。これしかないだろうし。

 

「なあ、雪ノ下。1つ、提案があるんだが」

 

「…聞きましょう」

 

「明日のランク戦が終わった後、防衛任務前の時間なら…」

 

 

***

 

 

「よし、じゃあ作戦を立てよう」

 

 俺たち、葉山隊の構成は攻撃手3人という、A級の風間隊に近い編成だ。でも、彼らのように近距離での連携はあまりしない。どちらかと言えば、各人が好きに動いて点を取るようなスタイルだろう。

 …まだ隊としてのスタイルを確立できてない、とも言えるけどね。

 

「それにしてもマジやっばいわ~、A級3位の雪ノ下さんとこの隊と模擬戦とか、めっちゃ燃えるっしょ!」

 

「でも雪ノ下さん達って、この前戦った結衣がめっちゃ強いだけっしょ?なら雪ノ下さんやヒキオ、一色の奴を倒して結衣に3人同時でかかればいけると思うんだけど」

 

 確かに、結衣とはこの前隊室に来てもらって対戦したけど、俺たち3人とも手も足もでなかった。結衣がめちゃくちゃ笑顔で銃を乱射してきたことが余程恐ろしかったからか、終わった後に優美子は泣いてしまったけれど、あれは、俺もチビりそうなくらい怖かった。後で戸部がこっそり『ちびったわ~』って愚痴ってきた時に、思わず頷いてしまった程には恐怖体験だった。

 だが…果たして、結衣1人が強いからといって、A級ランク戦で勝てたりするものなのだろうか?防衛任務も数回こなしたことで少し色んな隊とも交流したが、近くで見た近界民を倒す手際を見ていると、どうにも全員が結衣、もしくはそれより高い実力を持っていると考えることもできる。

 

「優美子。相手はA級部隊で、俺たちはB級に成りたての新米チームだ。前に聞いた話だけど、素の運動能力はトリオン体の動きにも影響があるってことだから、結衣があれだけ動けると考えると…比企谷といろはが結衣と同じくらいの実力で、雪ノ下さんはもっと高い実力を持っているとみるべきだ。気を引き締めていこう」

 

「隼人君の考えすぎっしょ!結衣が化け物なだけじゃね?俺たち訓練やってた時、結衣より全然弱いやつしかいなかったし?」

 

「隼人は油断するなって言うことでしょ?油断なんてせずに、あの雪ノ下を、あーしの弧月で一刀両断してやるんだし!」

 

 駄目だ…2人とも、訓練生時代のまんま来てしまってる感じだ。あの時だって、確か当時は小学6年生だった黒江双葉って子がすぐB級に昇格して、A級部隊に入ったって話題になっていたんだ。そのほかの訓練生と戦って負けることはほぼなかったけれど、彼女とは何度戦っても勝てなかったんだ。あの子より強い比企谷のイメージは確かに湧かないが…いや、あの比企谷が自信たっぷりにいやらしい顔をしながら、告げてきた作戦だ。弱いわけがないと考えるべきだ。むしろ、その逆…いや、まずは目の前の試合に集中しよう。

 

「とりあえず支援は任せてね!しっかり隼人君とヒキタニ君を引き合わせるから!ハヤハチこそ至高!」

 

「姫菜!擬態しろし!」

 

 姫菜もこんな感じだし。オペレーターとしての能力は申し分ないと思うけれど、こういうところは何とかしてもらいたいね。

 

『そろそろいいですかー?トレーニングルーム繋げときましたんで、指定してある番号の部屋に1分後集合でお願いしますねー』

 

 姫菜のオペレーターデスクから、比企谷の妹の声が聞こえてきた。どうやらそろそろらしい。

 

「隼人!」

 

「隼人君!」

 

「隼人君」

 

 3人が近寄ってきて、手を合わせてから俺を見つめてくる。そうか、今回の戦いは、俺たちの初陣と言っても過言じゃないからね。円陣をする気なのか。

 

「よし、相手はA級部隊だけど、気持ちで負けないように頑張ろう!」

 

「「「おー!!」」」

 

 転送開始10秒前になり、姫菜がオペレーターデスクに座り、俺たち3人は出撃の準備をする。

 …ふと、比企谷が提案した作戦が思い起こされた。

 

『明日のランク戦が終わった後、防衛任務前のフリーな時間が2時間くらいあっただろ?その日、俺達と葉山隊で模擬ランク戦をしてみないか』

 

『…そうね、それが手っ取り早いでしょうし』

 

『ああ。葉山、明日の夕方、チーム全員で隊室に待機していてくれ。俺たちと模擬戦をしよう。それでお前の依頼、というか考えていたことは恐らく達成できる。その後どうなるかは、お前たち次第だがな。頑張れよ』

 

『あ、ああ。分かったよ』

 

 正直、どういう意味なのか理解できてなかったが、雪ノ下さんもいろはも比企谷も全員が納得がいってるようだったし、悪いことではなく、俺の依頼を解決に導くものなのだろう。A級部隊との対戦を通して、自信をつけさせてくれる気なのだろうか?

 この時の俺は、こんな暢気なことを考えていたんだ。

 直後、あの言葉の意味を…暫定A級3位にして、B級ランク戦を全勝し昇格した、雪ノ下隊の強さの断片を、知ることになるなんて思わなかったんだ。

 

 

***

 

 

「転送後の感じは、個人ランク戦と変わらないんだな」

 

 転送された先は、前もって伝えられた通りステージA。市街地マップでこれといった特徴がない、所謂ノーマルマップと言われている場所だ。

 レーダーで位置を見ると、近くには2人、遠くに2人。…あれ?俺を合わせてもマップ上に5人しかいない?

 

「姫菜。レーダーに5人しか映っていないのって…」

 

『多分雪ノ下さん達のうち、2人がバッグワームを起動してるね。バッグワームは、狙撃手や不意打ちを狙ってくる人が使うことが多いって聞いたことあるから、全員警戒してね!』

 

 バッグワームか。確か、俺たちがB級に上がってから正隊員のトリガーをもらいに行ったとき、最初から入れてあるやつだったな。レーダーに映らなくする機能があるって開発室の人が言ってたっけ。

 

『隼人。あーしと隼人が近いから、誰か挟み撃ちにしに行かない?』

 

『俺はヒキタニ君発見したから、早速戦ってくるべ!』

 

「よし。俺と優美子は一先ず合流しよう。雪ノ下さん達を見つけ次第、バッグワームを起動して挟み撃ちに。戸部、くれぐれも無理はするなよ」

 

『大丈夫しょ!ヒキタニ君ってば、俺がいない方ばかりを見てるぜ?いっちょ倒しに行ってくんべ』

 

 背後からの奇襲なら、比企谷を倒してくれるかもしれない。それよりも、優美子と合流して消えていないもう1人を見つけないと。

 比企谷がバッグワームをつけていないことは分かったから、雪ノ下さんか結衣かいろは。狙撃手のいろはがバッグワームを使ってるとみると、残り2人のどっちがつけてるんだろうか?いや、まずは優美子と合流して、それから―――

 

 俺がそんなことを考えていた時、少し遠くの場所から流星のように1つの光がステージから飛んでいった。

 あれは…!?

 

『隼人君!戸部っちがベイルアウトしたよ!』

 

「何だって!?」

 

 まさか、早すぎる。戸部の奴が背後から仕掛けて比企谷がベイルアウトしたのならまだしも、戸部が…?

 

 

***

 

 

「…今頃、葉山の奴は「戸部がベイルアウトしたってどういうことなんだ?」とか考えていそうだな」

 

 先程、背後から拙い動きで旋空を撃ってきた戸部に対し、一歩左に動くことでそれを躱し、目を見開いている戸部の首をスコーピオンで斬った後、先に飛ばしておいたバイパーとハウンドの群れを全身隈なく浴びせて粉々にしやったのだ。戸部は特徴のないB級下位みたいな動きしてたな。

 あれでランク戦を勝てるとか本気で考えていたのか…?舐められすぎだろ。流石にあれでは…B級17位くらいで終わりそう。今16チームしかないから、実質最下位ってことだがな。

 

『先輩先輩、もう葉山先輩と三浦先輩撃っちゃっていいですかー?いいですよねー?2人とも絶対にツインスナイプで落とせますよ?2枚抜き気持ちいいんですよね~』

 

「いや、2人が合流して話し始めた、足を止めた瞬間に三浦を殺せ。最後は、雪ノ下と由比ヶ浜がやってくれるだろ」

 

『しっかし舐められたもんですね~?なんでB級に上がりたての素人が、暫定A級3位のうちに勝てると思っちゃったんですかね?』

 

「…まあ、葉山はあの2人に合わせてたんだろうよ。他の訓練生と少しは話をしてるだろうが、チームランク戦がどんなものか実感してなかったんじゃねえの?ミーハーな戸部や三浦が、ランク戦を見ていないのは意外だったが。葉山個人だと、うちのランク戦をどれくらいかは知らんけど見てたっぽいから、少しくらい対策してくると思ったのにな。時間の無駄だったかもしれん。悪いな」

 

『先輩が謝ることないですよ。いずれにせよ今後何回も訪ねられても迷惑ですし、ここらで1回思い知らせておくのは大切です』

 

「そうだな」

 

 だからこそ、戸部を殺すのにあんなオーバーキル攻撃をしたんだしな。

 …そろそろ葉山と三浦が合流して、2人で戸部が落ちたことで混乱してる頃だろうか。

 

 

***

 

 

「隼人!なんで戸部の奴が落とされたわけ?」

 

「多分だけど、比企谷にやられたんだろう」

 

「ヒキオに?戸部が負けたってこと?戸部の方から奇襲をしかけておいて?」

 

「ああ。そうじゃなきゃ戸部がベイルアウトした理由に説明がつかない。いろはに撃たれたってのも考えたけど、姫菜が狙撃の弾丸の形跡がないことを確認してる」

 

「…じゃあ、まずはヒキオから挟み撃ちにするっしょ?位置は分かってるし」

 

 優美子の言う通り、比企谷は戸部を倒したところから1歩も動いていない。位置が割れてるのは彼だけだし、もう1人は少し遠めだ。

 

「分かった。まずは比企谷から倒しに行こう」

 

「っし、ヒキオの首を斬り落としてやるし!」

 

 握り拳を作ってやる気な優美子を見ながら、比企谷のいる方向へ行こうとした、そんな一瞬だった。

 

『狙撃警戒!!』

 

「え?」

 

「あ…っ!?」

 

『戦闘体活動限界、ベイルアウト』

 

 さっきまで隣にいた優美子が一瞬で仕留められ、ベイルアウトしていった。

 狙撃ってことはいろはか!?…完全に警戒をしていなかった。

 

 …ああ、なるほどね。今ようやく、比企谷が言ったことの意味が全部理解できたよ。

 

「つまりは実力差を見せつけることで、戸部と優美子にランク戦参加を諦めてもらうってことか」

 

「ええ、それともう1つ。葉山君も含めて、単純にチームで戦うということを理解できていないわ。今シーズン全てを準備に使えば、それも解消されるでしょう」

 

「ははっ、そうだね。甘かったのは俺も同じってことか」

 

「で、でも…!えーっと…」

 

「いいんだ結衣。カバーしきれないくらいに、俺たちの動きは悪かっただろ?」

 

「ええ、悪いわね。確実にB級ランク戦下位に沈むと思うわ」

 

「即答だな…」

 

「当然よ。全員、まずは誰かに師事することをお勧めするわ。師匠と弟子という関係が難しいのであれば、自分達なりに他の人の戦闘記録を見直して自分の戦い方に活かしていくことね。さて…終わりにすしましょうか。今日のランク戦の反省会がまだ終わってないのよ」

 

 雪ノ下さんと結衣の2人で来るか?いや、雪ノ下さん1人かな。

 いろはの狙撃もあるし、いつの間にか比企谷もレーダーから消えている。考えることって本当に多いんだな。

 雪ノ下さんは弧月使いか。なら、最後くらい一矢報いたいね。

 

 そう意気込んで剣を交え、気が付けば俺は、隊室のベッドに横たわっていた。

 雪ノ下さんの剣を2回受け止めて、3回目で袈裟斬りにされたんだ。剣速が早過ぎる。

 

「凄いな、本当に…。これが正隊員、これがチーム戦、これがボーダーのA級チームなのか。本当に、俺たちは甘かったんだな」

 

 駆け寄ってくる3人を見ながら、俺は気持ちを新たにした。

 ちゃんと準備してからランク戦に参加するよう、2人を説得することから始めなくちゃだな。

 

 

***

 

 

「で?」

 

「で?って…ランク戦の参加は辞めることになったよ。2人とも、自分たちの力のなさを分かってくれてね。俺も隊長としての指示出しや動きがまだまだだから、これから練習を続けて頑張ることにしたんだ」

 

「まぁ、妥当だわな。むしろあれで偶然だとか偶々だとか言って参加してたら、雪ノ下に失笑されるところだっだぞ。一色もかなり厳しいこと言ってたし。由比ヶ浜は、お前たちと仲いいからあんまり言わないけど、内心戦う価値すら感じてないと思うぞ。バトルジャンキーだし。俺はどうでもいいが、俺たちと同級生の奴らがランク戦で失態を晒すところとか見たくねえしな。知り合いってバレたら、他の隊の面子から酷評の嵐を食らうだろうし」

 

「相変わらずだな。…あの後、ログを見たよ。俺は、君の強さが羨ましい。弧月を使ってると思えば、一番得意なのはスコーピオンって話聞いたよ。どうやったらそんなに強くなれるんだ?」

 

「ひたすらランク戦で太刀川さんとか二宮さん辺りにボコボコにされてれば、自然と強くなれるぞ。あの2人にボコボコにされてると、不思議と他の人との戦いは怖くないんだ。感覚を麻痺らせることをお勧めする」

 

「…それはちょっと、遠慮しておこうかな」

 

 いい判断だな。前にいけ好かないイケメンの話をしたら、太刀川さんと出水がランク戦で戦う気満々になっちまってたから。どちらかの姿を見たら逃げろよ葉山!

 もちろん、葉山にはそのこと伝えないけどね。あの2人に捕まって、ランク戦ブースに連行される葉山の姿は正直見てみたいし。

 

 事の顛末だが、あの後葉山隊の隊室で、自分たちがランク戦で戦っていけるとは思えなくなったようで、次回シーズンの参加は取り消すことになったらしい。

 隊として、これからしっかりと準備してスタートを切ることにしたんだとか。

 

「あー、そうだ。戸部が比企谷へのリスペクトでちょっと煩いんだ。戸部と会ってどうにかしてくれ」

 

「は?なんでだよ」

 

「比企谷に滅多打ちにされてから、あまりの実力差に呆然として比企谷の過去の戦闘を見返してるうちに、ファンになったらしいよ。いつかは、比企谷とも張り合えるような弧月使いを目指すって意気込んでるんだ」

 

「…そうかよ。戸部には頑張れと伝えておいてくれ。俺は知らん。弟子とってねえからな」

 

「ははっ。そのうち絡まれるだろうけど、俺は絡むなとは言わないからね。チームが強くなるんだから、むしろ推奨するかもしれない。ウザ絡みしろってね」

 

 葉山は珍しく素で笑っているように見えた。どうやら、憑き物もとれたみたいだな。

 中学の頃から、葉山はみんな仲良くを地で行く男であり、自分の意見よりも周囲の調和や関係が拗れることがないように動いていたことは、教室の片隅から見ていて分かっていた。

 だからか、葉山は自分を表に出さないのが癖になっているようだ。トリオン能力と素の身体の運動神経を考えると、もっと強くなるだろうしな。

 

「…お前、そっちの面の方がいいぞ。ここは別に学校じゃない、異世界の敵と戦う為の組織なんだ。()()()()()()()()じゃなくていいだろ。俺はぶっちゃけ、どっちのお前も大嫌いだが」

 

「!…奇遇だな。俺もお前が大嫌いだよ」

 

 そう言い合った後、背を向けて反対へと歩みだす2人。

 そんな2人の顔には、自然と笑みがこぼれていたのだった。




はい、長々と駄文書いちゃった第二号ですね。
でもこれで葉山がキャラ崩壊しても何の問題もなくなったし……はっちゃけさせていこう。

そういや最近この作品の話を書く時、ワルトリのアニメを流してやってるんですが、二期はまだしも一期目は違和感と拙さが凄い。オリジナルの話が増えてるところも原作好きだとちょっと微妙だったし。
作品の厚みにはなるから、この作品にも適用させていきたいところだけれど。

あとは、キャラの声が本当にイメージと外れること多くて。鈴鳴第一がアニメだとかなりイメージ合ってて好きかなぁ。
声とのマッチなら断トツで二宮さんだけど。安定の諏訪部ボイス。焼肉行ったらジンジャーエールは確定演出。
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