やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。 作:シェイド
全話を本日までに改稿しました。よければ、最初から読んでいただけると嬉しいです。
2026/4/8 改稿。
「…八幡って、どっかに行っちゃうの?」
「どっかって抽象的だな。何か見えるのか?」
「見えるって言うか、勘。もうちょっとあとくらいなのかな?角を頭につけた人がいるところに、八幡が行くような気がした」
「角って…そんな人がいる国なんて、聞いたことないんだが」
「だから勘だから。…昨日初めて会った相手の言うことくを真に受けるなんて、馬鹿じゃないの?」
「でも、鶴見はその勘で今回参加したんだろ」
「…うん。あと留美でいい」
林間学校2日目。
林間学校のスタッフとして活動してる間に知り合った、鶴見留美と川辺で話している。
この時の俺は、もしかしたら海外にボーダー組織を作るために派遣されるのかもしれないなぁ…嫌だなぁ程度の認識で、心に留めておこうぐらいにしか思っていなかった。
まさか、この時留美の言っていたことが、現実になるなんて思いもしていなかったのである。
***
「今回は嵐山と木虎の2人に広告の仕事が入ってな。元々嵐山隊だけでは人手が足りなかった為、このメンバーで林間学校のスタッフをしてもらうことになった」
A級ランク戦終了後に忍田さんに聞かされた、奉仕部への依頼。
雪ノ下に話が行き、雪ノ下隊全員がスタッフとして参加が決定。
当日までメンバーが分からないまま、朝から集合場所に来たのだが…。
嵐山隊の3人に、俺たち雪ノ下隊の小町を除いた5人。そして…
「よう比企谷、お前らも捕まった口か?」
何故か太刀川さん。なんで太刀川さん?太刀川隊とかじゃなくて単品なの?
俺がはじめに気になったのはそこだったが、他にも犬飼先輩に那須、黒江までいた。
え、なにこの面子?どういう基準で選んでんの?
「さて。今回は、林間学校のスタッフとして活動し、ボーダーの名前を広めることに加え、隊員のスカウトも目的に含まれている。現場に着いたら引率の職員に従って行動してほしい。以上だ」
俺が少々混乱している間に忍田さんの話は終わっていたようだ。結局人事についての説明なかったんだけど。
林間学校の始まりに間に合うよう、早速、手配されていたハイエースに乗り込んだ。
「いやー、この面々で仕事するなんて初めてじゃない?」
「初めても何も、どうして中高生に混じって太刀川さんがいるんですか?来てからずっと気になってたんすけど」
「大学のレポート溜め込んでたのが、風間さんから忍田さんに話が伝わってだな…罰として、肉体労働しろって言われたんだよ」
「レポートかぁ、大学生って大変なんすねぇ」
なるほど、謎が解けたわ。スタッフとして自主的に参加するとは思えなかったし。忍田さんの命令なら仕方ない。俺も太刀川さんも忍田さんには頭が上がらないしな。
「綾辻さん。林間学校に着いてからの流れや私たちの役割って、どうなってるのかしら?なにか、いただいた資料以外のこととかあるのかしら」
「配られた資料通りなところがほとんどです。太刀川さんは、事務員の方と一緒に裏方で材料運んだりするらしいですよ。他の人はスタッフとして1人1つの班を見守ることになっています。あ、黒江ちゃんは比企谷くんと一緒に1つの班を担当することになってますね」
「比企谷先輩!よろしくお願いします!」
「おう、たぶん全然に役立てないから頼りにしてる」
これどっちなんだろうな。黒江が最年少だからなのか、それとも俺にはスタッフとしての力がないとしての判断なのか…非常に微妙だ。おそらく後者と思われてそうなのは…考えないようにしておこう。
「黒江さん、この男が犯罪に走らないように見張りをよろしく頼むわ」
「任せてください!」
「俺が小学生に何かするわけないだろ。もっともまず出来るわけないし」
「どうかなー?比企谷君って、結構手が早いからね」
犬飼先輩がそんなこと言いながら、ニヨニヨとした表情を浮かべてこちらを見てきている。
手が早いってなんだよ、俺なんかしたか?年齢=童貞だぞこちとら。なんなら彼女いない歴=年齢だってのに。悲しくなってきた。
「なんかした?みたいな顔してるけどさ。この前、氷見さんと食べ歩きフェア行ってたでしょ。楽しそうに半分ことかしてたし」
「そうですよ!杏と読書デートしてたの知ってますからね!?」
「うちの隊室にきて、茜ちゃんと志岐ちゃんと謎の作戦会議してたよね?熊ちゃんと私だけ除け者にしたの覚えてるよー?」
「見間違いじゃなかったら、木虎ちゃんに向けて烏丸君のモノマネしてたよね…?」
「やってましたよ。その後に、香取と染井さんに連れられてカフェ行ってたの目撃しましたし」
「国近とこたつでイチャイチャしながらゲームやってたしなぁ」
「細井さんとさぞ楽しそうに、一緒にラーメンを食べに行っていたとの報告も上がっているわ」
「サキサキとけいかちゃんと動物園行ったのしってんかんね!」
「俺のプライバシー皆無すぎるだろうが」
「比企谷先輩モテすぎぃ!俺にも誰か紹介してくださいよ!」
「煩い。佐鳥煩い。あとモテてない」
「これだけの女の子と出かけといて、何言ってんのお兄ちゃん…いやごみぃちゃん」
多い多い目撃されてるの多いって。え、私生活ってこんなに見られるものなのか?女子会で情報共有してるにしても情報回るの早すぎやしませんかねえ?
あと小町ちゃん?ごみぃちゃんはやめよ?泣くよ??
…もういいや、到着するまで不貞寝しとこ。
「あ、逃げた!」
***
以下、比企谷八幡不貞寝後の内部通信内容抜粋。
『比企谷先輩ってもしかして…ド畜生なんですか?』
『黒江ちゃん、今まで知らなかったんだね…』
『旧ボーダーの頃から所属してるだけあって、顔は広いからな。それに女子とだけいるわけでもないしな』
『前は東さんと二宮さんに焼肉に連行されてるの見ましたよ。三輪が呆れながらついて行ってましたね』
『にしても目撃情報上がりすぎでしょ(笑)共有するグループが何個かあるくらいだし』
『比企谷君監視委員会が立ち上がっているからね、隊務規定違反しすぎだし、上からも何かあればすぐ報告をとの司令出てるから』
『正直な話、上も頭を抱えているそうよ。隊務規定違反をこれだけ繰り返していれば、本来ならクビなんでしょうけど。本人の有用性とこれまでの貢献が段違いであること、その境遇を考えれば仕方のない面もあるのと、相手側にも落ち度があるとのことで、ギリギリA級隊員として続けられているのよ。沢村さんが愚痴をこぼすのも納得の問題児だから』
『あれで最初の総合1位だったことがほんとにムカつきますよね。たまに狙撃の訓練で撃たれると頭にきます!私たちの隊が2回もB級降格を経験してるのも、全ては先輩のせいですからね!』
『それ言っちゃおしまいだよ、いろは先輩』
『私は教えてもらっている側だから、そんなにムカつくといったことはないけど…バイパーの軌道見てると、頭の中どーなっているんだろうって考えたことはあるかな。相当性格がひん曲がってないと、あんな軌道にはならないんだろうなーって思ってるけど』
『那須さんに言われるなんてあの男も可哀想なものね…』
『それもこれもヒッキーが悪いんだし!』
『うーん…私って、比企谷先輩のこと尊敬しすぎてる?』
『『『それは間違いない』』』
***
林間学校のオリエンテーションも終わり、自由時間となった。
川辺で遊んでいる小学生たちを尻目に、見守りを行っている俺と黒江は、川辺を見渡せる土手に腰かけていた。
「全員が、いい子だったら良かったんですけどね」
「あーさっきのやつな」
班行動中、明らかに1人除け者にされている女の子がいた。ぼっちの勘が言っているから間違いない、同じ匂いがする!
だが、小学生の問題に変に介入するのは、林間学校でしか関わらない俺たちの身勝手だ。黒江は気にしていたが、無暗に関わりを持たない方がいいだろう。
それが、向こうとしても俺たちとしてもベストだ。
「…ばっかみたい、皆」
「…あ、さっきの子」
「さっきの子ってなに?私、鶴見留美」
「鶴見か、どうしたんだ?」
除け者にされていた子、鶴見が俺たちの背後から現れる。ぼっちは自由時間もぼっち行動。うん、わかるぞ。
「…失礼なこと考えてるでしょ」
「そ、そんなわけないだろ?第一小学生相手に何を思うってんだよ」
「ううん、分かる。勘だけど」
「勘?鶴見ちゃんは勘が鋭いってこと?」
黒江の質問に対し、鶴見が言うには昔から勘が優れていたとのことだった。父の体調が悪くなることを予見したり、同じクラスの子が怪我するのを事前に言い当てたりしたんだとか。
その未来を見ているかのような気味の悪さから、避けられるようになったんだと鶴見は話してくれた。
「そっか…勘が鋭いのも考え物だね」
「うん、でも良いことの方が多いから…今回の林間学校に参加したのも、参加した方が良いっていう勘を感じたからなんだ」
歳が近いこともあってか、黒江と鶴見はすぐに打ち解けていた。そして無言になる俺。
いやしょうがなくない?まだ今回は、以前作られたイケメン風のトリオン体換装だからいいにしても…陰キャであることに変わりはなく、由比ヶ浜達みたいに小学生に囲まれたりはしない。
太刀川さんは、嵐山隊同様メディア露出もあるから有名だしな。登場した時に歓声が沸いたことで良い気になってたし。
裏方の仕事も、なんだかんだこなしているようで何よりである。忍田さんに慶が真面目にやっているか報告頼むと言われてるからな。これなら、変に気を揉む必要もなさそう。
「とりあえずは…鶴見」
「ん?なに、八幡」
「既に呼び捨てかよ…まあいいや。明日、トリオン量の調査があるから、楽しみにしていろよ。多分、今回の目的はお前だったっぽい」
「「?」」
黒江と鶴見が2人して首を傾げている。何それ可愛い…ついどっちとも頭を撫でかけたところで、視界の端に携帯を構えた綾辻の姿を確認。出そうとした手をすぐに引っ込め、なんとか踏みとどまる。
危ない…怖すぎだろどんなトラップだ…。こら、「やってくれたら良い写真ばら撒けたのに」って思ってるような顔しない!
黒江は黒江で「撫でないんですか?」みたいな顔やめてね。引っ込めた手が戻ってきそうだから。鶴見も勘が鋭いなら、逃げるくらいのふりをしても良いんじゃないのか…?
***
林間学校も終わり、スタッフとして参加したが正式な仕事であった為、後程今回の給料は入金してくれるとのことだった。やったぜ、タダ働き回避!
予想通り、鶴見の勘が鋭いってのはサイドエフェクトだったようだ。トリオン量はボーダー基準で8。どのポジションもこなせる量である。
しかもまだ小学5年生だ。トリオン器官は、ある程度の年齢までは伸びる可能性がある。今後の伸びしろにも期待できるようだ。
カレー作りやキャンプファイヤー、トリガー体験会と1泊2日の林間学校の真の目的は、将来有望な隊員をスカウトする為。
迅さんのサイドエフェクトから、俺たちと鶴見の会話が見えたのも決め手だったようだな。…ってことは、それくらいのレベルのサイドエフェクト…?
「でも良かったですよ。留美ちゃん、クラスでも浮いてる感じだったし、トリガー使って一躍人気者ですから」
「どうだろうな。あれくらいの年齢の子は、時間が経てばすぐに手のひらを反すからな」
「小学生相手に捻くれているヒッキーマジキモ…」
「聞こえてるからね?」
ぼそっと由比ヶ浜が溢した言葉は、的確に俺の心を抉ってくる。ま、まあ…いつものことなんで…。
どちらにせよ、次の正式入隊日には様子を見に行こうと思う。クラスでぼっちだろうが、ボーダーに友達が出来れば少しは毎日が楽しくなるだろ。
戦闘センス抜群みたいだし…緑川の4秒抜くかもな。仮入隊すればの話だけども。
それにしても…角を頭につけた人の国、ねぇ…?
これからの近界遠征、その先の未来で俺は…自らなのか状況からなのか、その選択することになるのだろうか。
鶴見留美との邂逅は、俺のこれからを暗示するものであるかもしれないと。帰ったら、実力派エリートを捕まえて色々聞かなければと考えながら。
揺れるハイエースの中で、俺はゆっくりと眠りにつくのだった。
次は玉狛での話。
その後、気分転換で原作時期に時を飛ばします。