やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。   作:シェイド

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筆が乗ります。他の人の短編集読んでしまったからでしょうか。
自分が読みたいものを求めて。


依頼人:木崎レイジ

 ある日のこと。

 俺は、玉狛支部へと足を運んでいた。

 林間学校後、迅さんに未来の予測を聞く為、空いた時間は迅さんを探しに向かったものの…なんと、今日まで1度も会わないという事態に陥っていた。

 …これはそういうことなんだろうな。俺には伝えたくない未来予測が迅さんに見えていて、俺と話すことで未来が変化するから顔を合わせないようにしているのだろう。そうに違いない。

 前に熊谷にセクハラしていたことを上層部に伝えて叱られたから、その仕返しに…なんてわけではないだろうし…え、ないよね?やべ、ちょっと自信ないぞ。

 

「お邪魔します」

 

「はーい!って、比企谷君じゃないか!」

 

「宇佐美。ってなんだ、とりあえずその手のワキワキ止めていただいて…」

 

 眼鏡を光らせながら現れたのは、玉狛第一のオペレーターである宇佐美栞。

 前風間隊のオペレーターでもあり、宇佐美が担当する隊は今のところA級トップレベルのみときている。そう考えると優秀だな…。心なしか、眼鏡がキランだと光っている。

 

「早速!前回のやしゃまるゴールド達の敵を取らせてもらおうか!新たに生み出したやしゃまるブラックの強さに慄け!」

 

「あーえっと後でで。今日は、木崎さんに呼ばれてきたんだよ」

 

「レイジさんに?」

 

 そう、俺が今日玉狛支部に来たのは、木崎さんから連絡を受けたからだった。

 なにやら俺宛で依頼したいことがあるとのこと。一体何なんだろうか…。

 

「お、比企谷先輩。こっちで会うの、随分と久々ですね」

 

「烏丸。今からバイトか?」

 

 宇佐美の相手は程々にしてリビングへ入ると、ちょうど入れ替わりで出ようとしている烏丸に出会った。

 烏丸京介。元太刀川隊オールラウンダーであり木崎さんの弟子。家が貧乏な上に大家族と、ボーダーでの正規給料、出来高ボーナスに加え、バイトを複数掛け持ちする生活をしているバイト戦士である。

 

「先輩の後に入った居酒屋、また基本給上げてくれたんでめっちゃ助かってます。よく賄い持って帰れるのもありがたい」

 

 律儀に頭を下げてくる烏丸だが…そりゃ、あの頃は必死だったと言えども、見た目があまりイケていない陰キャが辞めた代わりに、もさもさしたイケメンが入ってきたのである。その上、気が利き面倒見も良い。結果として売り上げに貢献しすぎたから、当時の店長が昇進したみたいだし。今でも昇進のたびに紹介料を俺に払うとか言い出したもんだから、代わりに烏丸の給料をあげてほしいと毎回お願いしているだけという話だ。たまに賞与もやってくれてるらしいし。

 

 …俺はもう、雪ノ下達とボーダーのおかげで十分に生活できるだけの金銭は貯まっているのだ。

 ただ、これまでの習慣からか、飯を忘れて訓練や防衛任務、開発室の手伝いに書類整理と…見かねた忍田さんから連絡を受けたであろう、東さん達に飯屋に連れ出されることは変わっていないが。

 

「じゃ、俺行きますね」

 

「お疲れ様。バイト、頑張ってな」

 

 バイトへ出かけていった烏丸を尻目に、俺は奥へと進んでいく。

 …こちらをジ―って効果音が聞こえてきそうなくらい見続けている小南は、一旦無視だ。どうせ仮想戦闘モードで戦えって言うんだろうし。いつものことだろ。

 

「比企谷すまんな。わざわざこっちにまで来てもらって」

 

「木崎さん、ご無沙汰してます」

 

 小南を無視していたら、俺を呼び出した張本人である、木崎レイジさんが姿を現した。

 うーむ、小佐野の頭の良い筋肉って表現は分かる気がするな…。体の鍛え方から、俺とは雲泥の差だ。筋力付きにくいのか、俺はあんまり筋肉量多くないし。

 代わりに持久力だけは自信がある。

 最近、生身のトレーニングがトリオン体の動きに直結することを知った葉山が、なんの因果か俺が自主トレしてる時に現れたのだ。その中でせっかくなら競いながらやろうと提案されたので、これまでの鬱憤を兼ねてハーフマラソン分くらいの距離を走り、競り勝つ程度には持久力は上がっているみたいだからな。

 葉山の悔しそうな表情が見れて、大変満足したのはここだけの秘密である。

 

「早速なんだが話を聞いてくれ。…小南、席を外してくれるか?」

 

「え!?あたしここにいちゃ駄目!?」

 

 ソファに腰かけ、木崎さんと向き合うように座ったところで、当たり前のように俺の横に座ってきた小南に対し木崎さんが声をかけている。

 …珍しいな。小南に聞かせられないような話って何かあったっけ?

 

「宇佐美、すまんが小南を連れて出かけてくれ。これで好きなの食べて良いから」

 

 そう言って宇佐美に5,000円を渡す木崎さん。おつりを返さなくていいという太っ腹ぶりである。そこまでして俺に相談したい事って…?

 ギャーギャー言ってる小南を、ウキウキで連れ出す宇佐美の姿を見届け、玄関の扉が閉まったことを確認し、改めて木崎さんと向き合う。

 真剣な眼差しだ。ごくっ…一体、何の依頼なんだ…?

 

 

***

 

 

「瑠花」

 

「ん?ハチマンじゃん。何かあった?」

 

 木崎さんからの依頼を受け、宇佐美のやしゃまるブラックをボコボコにし、小南との20本勝負で敗北した翌日。

 俺は本部にいる、忍田瑠花に会いに来ていた。

 今から約3年半前。大規模侵攻後に少ない人数で活動していたボーダーが、突如としてこんな巨大な建物を建てることができたのは、この瑠花と玉狛の林藤支部長の親戚となっているお子様の陽太郎、そして唐沢さんの尽力が大きい。

 唐沢さんは主に資金面や戸籍作りでの活躍だろう。スポンサーを片っ端から引っ張てきているのは現在も変わらずだが、俺たちの給料や資源のもとを辿れば唐沢さんが引っ張てきたお金だ。

 

 そして、どこか日本人離れしている美少女の瑠花。こいつは()()()()()()ではない。

 旧ボーダー時代より、同盟国であったのはメソン、デクシア、そしてアリステラの3国。そのうちアリステラは、5年程前の戦いで滅んでしまったのだが、その時、まだ子供だった王女が目の前の瑠花なのである。

 ちなみに陽太郎は王子様で、玉狛支部のエンジニアとなっている自称カナダ人のクローニンは護衛だったっけ。

 国が滅んだ時点で失われるはずだった(マザー)トリガーは、この2人へ秘かに継承されていたというわけ。()がいない分、(マザー)トリガーとしては規模が小さいと、林藤支部長から聞いたことがある。

 

 そんな瑠花だが、今は忍田本部長の親戚という扱いで、唐沢さんがうまいこと戸籍をいじるよう顔を利かせたんだとか。陽太郎が林藤支部長の親戚扱いなのも同じ理由である。

 普段は(マザー)トリガーを動かしている時以外、比較的自由に本部で過ごしている。本部住まいなのは俺と小町と同じで、そのことからも小町はすっかり懐いてしまっているのか、「瑠花義姉ちゃん!」と呼んでるくらいだ。

 …その義姉は間違いじゃないかと聞いたが、間違いじゃないらしい。一般隊員は多分C級隊員か事務員と勘違いしてそうだが。

 瑠花は(マザー)トリガーを動かす役目があり、その近くには旧ボーダー時代からの人間と幹部たちしか踏み入ってはいない。ボーダー最重要場所といっても過言ではないのだ。そんなところに俺は、愚痴を言う為だけに来たのだ。

 

「瑠花。木崎さんがゆりさんと出かけたいらしいんだが、誘う勇気が出ないんだと。どうしたらいいかって、昨日相談されたんだ」

 

「そんなくだらない話を、わざわざする為にここまできたの?」

 

「え、そうだよ?」

 

「はぁ…呆れた」

 

 (マザー)トリガーを動かしている瑠花は、俺の発言に心底どうでもいいと溜息をつきながら答えてくる。

 昨日、人払いまでした木崎さんからの依頼は、玉狛支部所属のオペレーター、林藤ゆりさんと出かけるにはどうしたらいいかとのことだった。

 突っ込みどころ満載ではあったが、旧ボーダー時代からゆりさんに惚れてる気があった木崎さんだ。当時は俺も両親についていった時、たまにしか話しているところを見なかったが、挨拶だけでも嬉しそうにしていた木崎さんを覚えている程だ。当時、女の子に優しくされたらすぐ好きになっちゃう系小学生の比企谷少年は、その気持ちが痛いほど理解できていたのである。

 

 ただ…大学生となった今でも、大した進展がないのはちょっとびっくりだけど。ってか、これなら小南も知ってんじゃね?とは思ったが、木崎さん的に小南には関わってきて欲しくないんだろうな。

 気持ちはわかる、絶対におちょくってくるだろうし。あのニマニマ顔腹立つんだよなぁ。爆散したくなる。

 

「くだらないって言ったってなぁ…。もう、長いこと想ってるんだろうし…それを年下の俺に相談してくるくらいには、現状をどうにかしたいって気持ちがあんだろ。勇気ってそういうもんだろうが」

 

「…響子と忍田の進展のなさとどっこいどっこいね」

 

「違いねー」

 

 瑠花は忍田本部長の親戚扱いである為、基本は近くで生活をしている。当然、本部長補佐である沢村さんとも関わり合う回数は増えていく為、はよくっつけよ状態を見続ける羽目になっているというわけだ。

 

「仕方がない、俺からゆりさんに声をかけて…ま、何人かでのご飯会でも開けばいいか」

 

「…声かけるのは、ハチマンじゃなくて木崎にやらせなさいよ?本人から声をかけるってのが大事なんじゃない」

 

「…今度はなんの漫画の影響だ」

 

「漫画じゃない。すべての恋が終わるとしてもシリーズを読んでたらね…」

 

「あれか」

 

 アリステラの王女だった瑠花だが、娯楽が少なかったのか、こっちに来てからハマったのは漫画やドラマ、小説といった類である。大体コイツが何か言うときは、最近見たものに影響されてることがほとんどである。

 

「よし、こんなもんでしょ。今日しなきゃいけないこと終わったし、ここに来たってことはハチマン、あなた暇ね?」

 

「暇ではある。あと6時間後から防衛任務あるけど」

 

「十分。陽太郎も含めてお茶しましょう」

 

 

***

 

 

 結局、木崎さんには自分で誘ってくださいと伝え、誘いやすいように会話を誘導した甲斐もあり、うまいこと玉狛支部全員での焼肉が開催された。

 忍田さんと沢村さん、瑠花も集まっての会になった(瑠花は陽太郎に会いにきていた)。その際、小南が俺と瑠花がボーダー近くのカフェでお茶していたことに言及し、宇佐美やゆりさん、沢村さんがニヤニヤしてきていたが…瑠花の「ハチマンはハチマンであって、それ以上もそれ以下もない」と、某VRMMOデスゲームに似たような言い回しがあったなと感じる発言で、一気に俺が振られたみたいな空気になったことは今でも根に持っている。

 

 別にそんなんじゃない。ただ…瑠花と話している時が一番気を遣わずにいられるってだけで。

 つい呟いてしまったこの発言で、比企谷八幡監視委員会がざわつくことになるのだが…今の俺は、知る由もないのだった。




次回より原作始まります。

書きたい閑話ややり取り出てきたら、新しく枠作って書いてみるかねえ。
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