やはり俺達のボーダーでの生活はまちがっている。   作:シェイド

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2026/4/5 改稿


雪ノ下隊②

 三門市(みかどし)。人口28万人の街。

 ある日、この街に異世界からの門が開いた。

 『近界民』(ネイバー)

 後に、人々からそう呼ばれる、異次元からの侵略者が門付近の地域を暴れまわり、蹂躙。

 街は、瞬く間に恐怖に包まれた。

 ()()()の世界とは異なる技術を持つ近界民相手に、地球上の兵器は効果が薄く、誰もが、都市の壊滅は時間の問題と思いはじめていた、その時。

 突如現れた謎の一団が、近界民を撃退しこう言った。

 

「こいつらのことは任せてほしい」

「我々はこの日のためにずっと備えてきた」

 

 近界民の技術を独自に研究し、「こちら側」の世界を守るために戦う組織。

 界境防衛機関、通称『ボーダー』。

 彼らはわずかな期間で巨大な基地を作り上げ、近界民に対する防衛体制を整え、街の人は歓喜に沸いた。

 

 そして、その近界民による大規模侵攻から約半年が経過した今。

 ボーダーは、新しい防衛隊員を欲していた。

 表立つ前から人がいたと言っても、数十人ぽっちという小さな規模。もしも、半年前とまた同じような大規模侵攻が起きてしまえば、次は全滅だって考えられる。その時までに民間の被害者がゼロになるように備え、戦える人員を集めなくてはいけない。

 訓練施設や階級制度、防衛任務の回し方にランク戦など、さまざまなルールを作ってきたボーダーではあるが、いかんせん人がいなければルールなど意味をなさないのだ。

 そして本日。

 ボーダーは第3回目の隊員入隊日を迎えていた。

 

 

***

 

 

 入隊日に特別にすることと言えば、オリエンテーションのみ。

 すでに所属隊員となっている俺に参加義務はないが、雪ノ下達が参加するため付き添いという形でボーダー内の体育館にいた。

 特に雪ノ下。方向音痴が酷すぎるのは、すでに今までの付き合いでわかっていることだ。全く同じような道に見えるボーダー基地内では、付き添いがいなければ迷ってしまうだろうとの懸念も踏まえている。

 

「…なにか私に対して不愉快なことを考えなかったかしら?」

 

「…考えてないです」

 

 怖いわ!なんでわかるんだよ……そういうサイドエフェクト持ちとかじゃないよね?『思考把握体質』みたいな…いたら鬼畜にもほどがあるだろ。

 しばらく5人で談笑していると、ステージに明かりがつき始める。どうやら始まりのようだ。

 新規隊員がステージに注目していると、ステージ横から忍田本部長が現れ挨拶を始めた。

 

「私は、ボーダーで本部長を務めている忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する。君たちは本日C級隊員…つまり訓練生として入隊するが、三門市の、そして人類の未来は君たちの双肩に掛かっている。日々研鑽し正隊員を目指してほしい。君たちとともに、戦える日を待っている」

 

 そう言い切り、忍田本部長は敬礼の格好をとった。それを機に、周りの隊員からは拍手が送られる。

 拍手が鳴り終わると、忍田本部長は話を続けた。

 

「さて、このあとはオリエンテーションとなるわけだが、スナイパー希望の訓練生は君たちの後ろにいる東隊員について行ってくれ。スナイパーは、アタッカーやガンナーとは違う形式の訓練を行っている為、訓練場所も別になっている」

 

 俺も合わせて後ろを見ると、最初のスナイパーで現No.1スナイパー、東春秋さんが新人隊員に向けて手を振っていた。

 新人隊員に対して忍田本部長の話が続いている中、俺に気づいた東さんが話しかけてくる。

 

「比企谷じゃないか。どうしたんだ?こんなところで」

 

「東さんこんにちは。俺は今日、彼女達の付き添いです」

 

「おっ、そうなのか。ということは、彼女達と隊を組むのかい?」

 

 この人は相変わらず鋭い。すぐに考えていることがバレてしまう。

 戦術の師匠でもあり、狙撃手としても師匠である関係から、ちょくちょく食事に連れて行ってもらっては含蓄ある言葉を受け取っている。捻くれている自覚がある俺にですら響くのだから、そりゃ他の隊員達にも慕われて納得である。

 ぼっちにすら優しい、素晴らしい人柄の人だ。

 

「はい。まあ、ちょっと色々あったんで……」

 

「なら楽しみにしているよ。早く上がってこい。俺たちとランク戦しようじゃないか」

 

「もちろん、そのつもりです。やるからには本気で挑むんで。んじゃ、一色。お前は東さんについていけ」

 

「了解です!」

 

 本部長の説明後、わざわざかしこまポーズでウインクしてくる一色。相変わらずあざとい。

 というか待って、かしこまポーズって小町の十八番みたいなものじゃなかったっけ?

 俺が変なことに思考を巡らせていたからか、いつのまにか少し話が進んでいた。

 

「君たちは訓練生だ。B級に昇格して正隊員にならなければ、防衛任務には就けない。ではどうすれば正隊員になれるのかを説明しよう」

 

 忍田さんの言葉に合わせて、壇上の天井からモニターが降りてきた。

 

「各自、自分の左手の甲を見てくれ」

 

 忍田さんの言葉に合わせて雪ノ下達も自分の手の甲を見る。俺もつられて見ると6084と示されていた。

 …雪ノ下達にランク戦のこと話してごめんなさいって、馬鹿正直に幹部会議後に言っちゃったからな。隊務規定違反で10000引かれたんだっけか。同じようなことをする隊員が出ないように戒める意味も含んでいるとは言われたが、なんか周りがめちゃくちゃ騒がしかったのを覚えている。

 …ランキング1位から圏外に落ちたからな。仕方ない。

 

「君たちが今起動させているトリガーホルダーには、各自の適正に合わせた戦闘用トリガーがひとつだけ入っている。その左手の数字は、君たちがどの程度トリガーを使いこなしているかを表す数字と思ってくれ。そして、その数字を4000まで上げることがB級昇格の条件だ」

 

 もちろん雪ノ下、由比ヶ浜、一色は全員1000。他の隊員達も同様に1000だ。

 

「ポイントを上げる方法は2つ。1つは、週2回行っている訓練生だけの合同訓練でいい結果を残すこと。もう1つは、個人のランク戦でポイントを奪い合うことだ。では、これにてオリエンテーションを終了する。みんなが正隊員になり、活躍することを願っている。頑張ってくれ」

 

 忍田本部長がそう言い、オリエンテーションは終了となった。オリエンテーションが終わるとまず最初の合同訓練が始まる。ボーダーに勤めている一般の職員が先導し訓練室に行くようだ。

 流石にそこまではついていけない。3人と別れた俺と小町は、個人ランク戦のブースに向かった。

 防衛任務は14時からで、今は11時。だいぶ空いている。

 

「誰かいるかな…」

 

「お兄ちゃん、よくここにいるなーって思ったけど、個人ランク戦のブースだったんだね」

 

「空いてる時間は、全部戦闘訓練に費やしたくてな」

 

「あんなに働きたくないでござる!って言ってたお兄ちゃんが、ここまで立派に成長して小町は嬉しいよ!」

 

 よよよ…と泣き真似をする小町。今までの俺はどれだけ駄目な子って思われてたんだよ。

 

 ランク戦のブースを小町と雑談を続けながら歩いて回るが人が疎らで、B級隊員たちしか姿がない。

 そいつらと戦えばいいって?ダメなんだよな、これが。

 前回入隊し、B級隊員である柿崎さんや嵐山さんを別にすれば、他の新しくB級隊員になったやつに興味はない。人柄的な意味でも。

 どうせ戦っても勝つ、というか勝たないとダメなんだが、最悪そいつの心を折ることに繋がりかねず、それはボーダーの戦力ダウンにもつながる。なのである程度の実力を持つ俺は相手も選ばなければならないのである。

 …あとこれ、避けられてる理由は隊務規定違反もあるな。個人総合ランキングで一応1位(入った経路的にポイントがどうしても高くなってしまった)だったところから一気に転落したからな。

 そう考えると、あれ?なんか俺って強いんじゃね?とか思ってしまうがそんなことはない。敵わない人も当然いる。

 

「ん?比企谷じゃねーか。暇か?よし暇だな。ランク戦するぞ。こっちはガチでバトってポイント超えようとしてたのに、違反して点数引かれた誰かさんがいるから鬱憤が溜まってんだ」

 

 背後から肩を組まれたと思ったら、ランキング1位になったばかりの太刀川さんが話しかけてきた。…えー違反して点数引かれた人って誰だろうなーハチマンワカンナイナ。

 小町から説明を求められたので、簡単に太刀川さんへ妹の小町の紹介と小町へは太刀川さんについて教える。

 

 太刀川慶。高校一年の先輩である。

 半年前、ボーダーができたばっかりの頃にすぐ入隊してきた人で、先程の忍田本部長の弟子である。ちなみに俺も弟子と言えば弟子だ。習ってるレベルで言えば、太刀川さんが98の俺が2というレベル。

 元々師匠は親父だからな。忍田さんと親父は良いライバルだったらしい。最後、忍田さんが勝ち越していた時に大規模侵攻があったみたいだが、聞くところによるとほぼ互角レベルだったとか。

 だからといって、今は書類整理とかでしか忍田さんとは接点がない。

 忍田さんは俺の両親よりも前から旧ボーダーで活動を続けており、黒トリガーを除いたボーダーのトリガー使いとしては最強に位置している人だ。何度も戦ったことがあるがまだ数本しかとったことがない。

 それもサイドエフェクトのおかげで先に反応したって時だけ。正面からまともにとれたのは1本だけあっただろうか。なかったかもしれないレベル。

 そんな俺に比べて、太刀川さんはすでに数十本をとっている。そりゃまあ、自分から弟子入りして数え切れないほど戦っているのもあるが、戦闘センスがズバ抜けているんだよね、この人。

 

「いいっすよ、今空いてます」

 

「よし、じゃあ俺は101に入るからな」

 

「俺は103ですね。小町、ちょっと待っててくれ」

 

「頑張ってね!お兄ちゃん!」

 

 ランク戦のブースに入り、対戦相手の中から孤月:13685を選び、申請する。

 承諾の意が画面に表示され、転送が開始される。

 ステージは市街地A、10本勝負だ。

 

 

***

 

 

 転送後、あまり距離が離れていなかった為、お互い視認できる位置まですぐに近づいた。

 

「よっしゃ、一丁斬りあおうぜ!!」

 

「はっ!!」

 

 お互いの弧月がぶつかり合い軽く火花を散らしたかと思えば、太刀川さんは俺の弧月を抑え込みにかかる。力と剣の技術では完全に差があるな。このままでは不利は明白。

 

「アステロイド!」

 

「おっと」

 

 一旦距離を取るために通常弾(アステロイド)を放ち、太刀川さんから離れる。

 弾の着弾で小規模の煙が起きて太刀川さんの姿が見えない。レーダー頼りで位置を確認しつつ、一度距離を取る。

 通常弾(アステロイド)をしっかりと当てれば、トリオン体を蜂の巣にできるだけの威力がある。至近距離だったが、どうやら太刀川さんはすぐにシールドを展開したようで、右肩から少しだけトリオンが漏れ出しているのみ。かすっただけか。大したダメージは与えられていない。

 まあ、最初の目的である距離をとることができたのだから良しとしよう。

 

「相変わらず反応と反撃が早いな。サイドエフェクトのおかげか?」

 

「ダメージ全然与えられてませんけどね」

 

「そりゃこの程度なら。お前だって同じ状況なら俺と変わらないだろ?」

 

「…それもそうですね」

 

 この程度で終わりなら、ボーダー隊員を続けていくことはまだしも、いつかの戦闘で死んでしまうだろう。対近界民と違い対人戦だと言っても、どちらも戦闘に変わりはないのだから。

 

「んじゃ続きと行くぞ!」

 

 そう言って太刀川さんは弧月を光らせ、こちらに遠隔斬撃を放ってくる。

 旋空だ。

 弧月のオプショントリガーで、瞬間的に攻撃を拡張するトリガー。

 太刀川さんの旋空は正直頭おかしい威力をしており、一度距離を誤り回避が遅れれば即真っ二つになってしまうのだ。何それ怖い。

 なんとか旋空を回避して距離を詰める。

 

変化弾(バイパー)

 

 俺が変化弾(バイパー)を使い、四方八方から攻撃を仕掛ける。だが、弾道の軌道を読み、シールドで防ぎながら近づいてくる太刀川さん。

 変化弾(バイパー)通常弾(アステロイド)と違い、弾の軌道を自由自在に設定することができる。毎回弾道をきっちり引くタイプの俺は、太刀川さんに当たる寸前で曲がり、後方からめった撃ちにするような弾道を組み上げたが、どうやら反応だけでシールドを展開しているようだ。

 いくら通常弾(アステロイド)より弾速も威力も落ちると言え、舌を巻く反応速度だ。弾トリガーの威力もうちょい上がらねえかなぁ…。

 

「旋空弧月」

 

 さすがにバイパーだけではどうすることもできず旋空を放つ、が、全く同じ軌道に旋空を撃たれ俺の旋空は霧散してしまった。

 同じ軌道って変態か?

 

「悪くないな。それじゃそろそろ決めさせてもらうぜ!」

 

 太刀川さんが2刀流で旋空を放ちながら、こちらに向かって突撃してくる。

 俺は旋空をかわしながら距離を取りつつ、通常弾(アステロイド)変化弾(バイパー)を放つが、どれもかわされるかシールドで受け止められる。

 だめだ、この距離まで来られたら勝ち目なくね?相打ち覚悟しかないか。

 

「旋空弧月」

 

「旋空弧月」

 

 太刀川さんが打った瞬間に、俺も旋空を放つ。

 旋空を打つ瞬間は誰しもが無防状態。シールドも展開できなくは無いのだが、いかんせん旋空の威力の方が高いためほぼ意味をなさない。よって互いの身体能力によっての回避しかない。

 が、旋空を撃った直後に太刀川さんの旋空が到達した為、今回防ぐ手段がなかった。すぐに真っ二つになる俺。

 

『活動限界、緊急脱出(ベイルアウト)

 

 飛ぶ前に俺の旋空がどうなったか見ると、太刀川さんの右手がなくなっていた。

 相打ち覚悟で行ってもこれですよ。はあ…今のスタイルの限界かな。

 

 

***

 

 

 結果として、対戦は8ー2で太刀川さんに負けた。

 最近めっきり勝ち越した試しがないが、強い人とランク戦をすればその分自分も強くなれるだろうと思い、太刀川さんとはかなりの回数戦っている。だからこそ変化弾(バイパー)の軌道を読まれるようになってしまったんだけども。

 いつの日か、太刀川さんも隊を組んでくるはずだ。その時までに、俺が互角以上に戦える状態でなければ、うちの隊は太刀川隊に勝てない。

 部隊での戦術もあるから断言はしないけど。努力あるのみだな。

 

「何負けてるの!お兄ちゃん!」

 

「いや太刀川さんめっちゃ強い人だから。お兄ちゃんだって2回は勝ってる」

 

「8回負けてるよ!」

 

 言うなよ小町、悲しくなるじゃねえか…。

 

「比企谷。前よりバイパーの弾道うざかったぞ。威力がちょっと弱いとは感じたがな。弧月の方はちょっと訓練サボってんのか?弱くなってるとまでは言わんが、前の方が斬り合い楽しかったぜ。どちらにしても、次も俺が勝つけどな!」

 

「いえ、次は勝ちますよ。今スコーピオン練習中なんで」

 

「おっ、迅もスコーピオン使い出してから勝率5分になったし期待してるぜ」

 

「はい、じゃあまた。ありがとうございました」

 

 こうして俺は太刀川さんとランク戦をした後、小町とオリエンテーションを終えた雪ノ下たちと合流し、後程サイゼで落ち合うことが決定。

 1人で防衛任務へと向かったのだった。

 …今日は東さんを除く東隊の3人と合同か。二宮さんと加古さんの間に立つの嫌なんだけど。三輪に押し付けよう。うん、そうしよう。




俺の中での八幡君強いんだけど、闇抱えてるし爆弾体質なんだよなぁ。
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