この素晴らしい王女様に自由を 作:はるみゃ
ある日、私は異世界に……転生してしまった。
まぁ、流れはよくある転生モノと同じだ。
事故って死んで、目が覚めたら見知らぬ天井。剣と魔法、敵となるモンスターが存在する世界に参着してた。
転生したての当時は、それはもう大変だった。
まさか自分が転生するなんて夢にも思わなかったわけだし、そう言うのは創作の中でしか起こらない話だって信じて疑ってなかったからな。
しかも、自分の姿が年端もいかない少女と来た。
健全な男子高校生をやっていた身からすりゃ、そりゃパニックぐらい起こす。
それが一回目のパニック。
二回目のパニックは……自分が王族に転生してると知ったとき。
やけに豪華な部屋だったし、外にも全く出して貰えなかったから、もしかして貴族なのかなぁ、とは思っていたけど、まさか王族だとは思いもしなかった。
故に、王冠を被った男が目の前に現れ、父を名乗った時には、驚いたものだ。
開いた口が塞がらなくなって、驚愕って言葉の意味を真に理解したよ。
まぁ、そこまではまだ驚愕の範囲内だったんだけど。
その後の許嫁の話で、パニックになった。
まぁ、仕方ないよな。
今でさえ私の年齢はまだ十一才。当時の年齢なんて一桁だったのに、いきなり許嫁なんてさ。
日本とこの世界じゃ文化が違うし、いつか大きな苦難にぶつかるかも、なんて想像していたものだが。流石に許嫁は予想外だった。
今考えれば王族の娘として転生してる時点で可能性は十分あったわけだが、多分その頃の私は女になった現実から目を背けていたんだろうな。
その後は、確か一週間ほど寝込んだっけ。懐かしい思い出だ。
……あ、勘違いしないでくれ。
今でも男と結婚なんて断固として嫌だからな。
まぁ、もう六年近く女の子やってるから、自分が女だってことは認めつつあるんだが。一人称が昔と比べて俺から私に変わったのもそんな理由からだ。
だが、だからと言って男を受け入れるのか、なんて、話は別。
正直、無理。
いや、まだ無理……と言うべきか。
ぶっちゃけると、身体に釣られてか、男を異性として認識し始めてはいる。
だけど、まだ、愛することが出来るか? と聞かれたら即座にnoと言えるレベルだ。
一応この世界にも結婚出来る年齢が決まっているらしく、十四歳かららしい。
つまり後三年、後三年しか猶予がない。
三年で決意固めるなんて絶対無理ですね、ハイ。
だから私は結婚を避けるため家を出ることにした。
しかし、いざ王宮から抜け出そうにも、王宮の警備は厳重で、家出するにもタイミングが中々見つからない。
下手に行動して、逃げ出そうとしているのがバレたら……監視を付けられ、もう二度と逃げ出せなくなるのは目に見えている。
故に待った。とにかく期を待ち続けた。
待っている間暇だったので、本を読み、少しでも外の知識を蓄えて。
……そして遂に時が満ちた。
警備が緩んだのは私の誕生日前日。
明日のパーティーの準備が終わり、気が緩んでいたのだろう。
その夜だった。
私は胸がチクリと痛むのを感じながらも、王宮を抜け出した。
◇
「アイリス様――!?」
「駄目です! 王宮隈なく探しましたが、どこにもいません!」
「どこに行かれたんだ、あの方は……!?」
「いや、アイリス様は勝手にどこかへ行くような方ではない。きっと誰かに攫われたに違いない」
「あぁ……あはははは……あはは……」
「クレア、気を確かに!?」
その日、王都は大きな喧騒に包まれた。