この素晴らしい王女様に自由を 作:はるみゃ
「――おりゃっ」
代々魔王を倒した勇者は王族と契りを結ぶのが慣習らしく、王族である私は勇者の血を引き継いでいる所為か、ステータスがなまじっか高い。
「――えいやっ」
話が変わるが、この世界には冒険者という職業が存在するらしい。
一言で言えばモンスターを倒してお金を稼ぐ職業だ。
「――とりゃっ」
私は思った。
この無駄に高いスペックを活かすには冒険者になればいいんじゃないか? と。
「――せりゃっ」
故に、王都を抜け出した私が向かったのは駆け出し冒険者の町と呼ばれる、アクセルだった。理由は至極単純。冒険者になるため。
「――これで最後っ!!」
私はステップを踏みながら、城から持ち出した神器である『聖剣なんとかカリバー』という名の剣を、目の前に現れた巨大なカエル型モンスターに向かって振り下ろす。変な名前の剣だが、切れ味が非常に高い上に、装備するだけで専用の魔法が使える優れものだ。まぁ、威力がありすぎるのが玉に瑕だが。
そんなことを考えながら、振り下ろした俺の一振りは、一刀両断の文字の如く、カエルの体を真っ二つにした。
通算七匹目のカエルを倒したところで、ようやく辺りが静かになる。
…本来なら素材を回収するんだろうけど……今は無理だな。
勿体ない気もするが、死体を放置し、『聖剣なんとかカリバー』を鞘にしまうと、小さく欠伸が漏れた。
辺りはすっかり真っ暗で、もうとっくにいつもの就寝時間を過ぎていた。
それに肉体的には疲れはあまりないが、おそらく初めての戦いだったから、精神が疲労したのだろう。
眠気が漂い始めていた。
「うぅ…眠すぎる……」
あまりの睡魔に、野宿して朝になったら向かおう……なんて考えが浮かんできた時だった。
遠くにぼんやりとだが光が見えた。
間違いない、町明かりだ。
「……よし」
両頬を叩いて眠気を一時的に覚まし、やる気注入。
貴族以上の印である金髪を隠すため、予め用意していたフードを身に纏うと、私はそのまま明かり目掛けて歩を進めた。
「ようやく着いた……」
それから数十分でアクセルの町に到着した。
流石にこの時間帯は出歩いている人が少ないようで、ギルドも営業時間が過ぎたのか明かりが消えていた。
まぁ、冒険者登録は起きてからでもいいだろう。それよりも今は寝床を探さないと……眠すぎてヤバイ…
「とりあえず……宿屋に……」
眠気を堪えながら、宿屋に向かう。
「いらっしゃーーー」
幸いにも宿屋の店主はまだ眠っていなかったが、私の姿を認めると、険しい顔をした。
「嬢ちゃん、今何時だと……」
「すみません……どこでもいいので寝る場所ありませんか?」
心配して言ってくれてるのは分かるが、話が長くなりそうだったので途中で遮る。
「……訳ありか? まぁいい。馬小屋でもいいなら貸せるが」
「そこでいいです……」
寝れるならどこでも良い。
即座に了承して、 馬小屋へと向かった。
案外寝心地は悪くなかった。