この素晴らしい王女様に自由を 作:はるみゃ
「――それで、イリスさんはどの職業になさいますか!?」
「えっと……少し考えさせてもらってもいいですか?」
興奮気味に聞いてくるお姉さんに少し恐怖を感じつつ、そう聞くと、二つ返事で了承をもらった。
私の会話に聞き耳を立てているのか、異様に静かな施設内が気になるが…………それは無視して今は職業について考えよう。
さてさて、何にするのが一番いいのだろうか……?
当初の予定では職業はナイトを選ぼうと考えていたのだが、それはあくまで選択肢が基本職のみだった場合のことだ。上級職からも選べるのなら話は別。優れている職があるのに、わざわざ基本職を選ぶ理由もない。
提示された職業を見ながら、私は思慮の渦へと飛び込んだ。
最高の攻撃力を誇るソードマスター。
高い知力を誇り強力な魔法を扱うことができるアークウィザード。
パーティーを組むとどうしても身バレの危険性が高くなる。
故に、ソロで活動していくことを考慮した結果、候補はこの2職に絞られた。
剣をとるか魔法をとるか、それによって戦い方が大きく変わってくる。どちらにすべきか……。
そして――
「……じゃあ、ソードマスターにします」
五分におけるシンキングタイムを終えた私は無難にソードマスターになることにした。
よく考えたら強力な魔法は『聖剣なんとかカリバー』の機能で使えるし、だったら別にアークウィザードじゃなくてもいいかなと思ったのだ。
「ソードマスターですね! ではそれで登録させていただきます……っと、では改めて。冒険者ギルドへようこそイリス様。スタッフ一同、これからの活躍を期待しています!」
お姉さんはそう言うと、にこやかな笑みを浮かべた。
瞬間、今までの静寂を打ち破るかのように歓迎の声が先輩冒険者達から飛ぶ。
……下手に活躍して関係者に目を付けられても困るから活躍するつもりはないんだけど…………
無論、それを口に出すことはせず、私は小さく頷きを返した。
「こちらこそよろしくお願いします」
冒険者登録を終えた後、私は酒場の席に座り、ミルクを飲みながら自分の冒険者カードを眺めていた。
冒険者イリス。
それが私の新しい肩書きと名前。
今日から私は王女アイリスではなく、只の一冒険者のイリスだ。
国のことなんて知ったことか。今の私には関係ない。私は冒険者らしく私のやりたいように生きる! 結婚なんてしないからな、絶対に。
そう決意すると、何となく肩が軽くなった気がした。
◇
一方その頃王城では
「相変わらず犯人とアイリス様の消息は不明のままです」
「くっ、どこの誰がアイリス様を攫ったんだ…! 見つけたらただじゃ済まさない」
まさかアイリス自身が家出したとは誰も思わず、存在しない敵へのヘイトが溜まっていた