この素晴らしい王女様に自由を   作:はるみゃ

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追手

 

 

「また……ですか……」

 

 

 

 初クエストから一週間後のこと。

 

 

 

 細道を歩いていた私は足を止めると、息を殺して近くの物陰に身を潜めた。

 

 十秒と経たないうちに二人の男が目の前を横切る。

 

 

「――やはり人目の着くところにはいないか……どこ行かれたんだ、アイリス様は」

「――だから何度も言っただろ、こんな辺鄙な町にはいないって。とにかく早いとこ引き上げようぜ……」

「――そうだな。あと少し滞在したら引き上げよう」

 

 

 私に気づかないで二人の男は雑談を交わしながら通りすぎていく。

 彼らは鎧を身に纏っていた。ベルゼルグ王国の紋様が刻まれた鎧を。

 

 十中八九いなくなった私を捜索にきた王国兵だろう。

 

 

「ホントめんどくさいなぁ……早く諦めてくれればいいのに」

 

 

 小さく嘆息。

 この様子じゃ今日もギルドへ向かうのは無理そうだ。

 

 

 

 二人の男が完全に立ち去ったのを確認してから、物陰から出た私は、そのまま踵を返して馬小屋へと歩を進めた。

 

 

 

 

 こうしてアクセルで巡回している兵士達の姿を見かけるようになったのは、三日前からだった。

 

 流石に兵士達がいるなかで、堂々と町を歩く度胸もなく。

 兵士達が来てからは馬小屋に引きこもる生活を続けていた。

 

 まさか温室で育てられた王女が馬小屋で寝泊まりしているとは思っていないのか、馬小屋にやって来ることがないのが唯一の救いだが……当然不満がいくつかある。

 

 一つは馬小屋の宿泊料はただではないこと。寝るだけなら千エリスと安いが、ご飯やお風呂も合わせるならば値段は八千エリスと倍以上に膨らむ。かなり痛い出費だ。収入がない状態でこれは結構辛い。

 

 兵士達が来るまでの間は毎日カエル討伐して荒稼ぎしまくっていたとは言え、減る一方の財布に少し頼りなさを感じ始めていた。

 

 

 二つ目が引きこもっていても現代日本と比べて娯楽が少ないこの世界ではやることがないことだ。

 馬小屋の広さ的にも、せいぜい素振りが出来る程度。

 当然素振りなんて楽しいはずがなく、やっててもすぐ飽きる。

 

 つまらない毎日だった。それこそ城にいたときよりも。

 

 

「はぁ……」

 

 

 素振りをしていた手を止め、何度かも分からない溜息を吐く。

 

 盗み聞きした会話的にもうすぐ居なくなるのだろうが、その時間が長く待ち遠しい。

 

 私は鞘に入れたまま振っていた『聖剣なんとかカリバー』を壁に立て掛けると、藁の上に横になり、目を閉じる。

 

 明日になればいなくなっている、そう淡い期待を込めて、私は眠りについた。

 

 

 

 結局、王国兵がアクセルから去ったのはそれから二週間経った頃だった。

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