遠回りするユキ   作:苺ノ恵

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6.リアル割れするユキ

 

 

 

 

 

『___リンリン、次どのクエストに行く?』

 

『あこちゃんの好きなところでいいよ』

 

 ネオ・ファンタジー・オンライン___通称NFO

 

 リリース当初から絶大な人気を博し、数々のゲーマーを虜にしてきた壮大な世界観は、ただでさえバンドの練習で時間のない私たちの休日という休息の時間を容赦なく消費させるコンテンツに成長していた。

 

 ある程度このゲームをやり込んでいる私とあこちゃんは既にイベントのメインストーリーをクリアし、周回と言われる同一クエストを何度も繰り返しクリアするという苦行へと乗り出していた。

 

 先ほどドロップ率0.5%の紅蓮華の種子をゲットし、新しく武器を新調したところで、新たなスキルを試しながら次なるレアアイテムゲットのため攻略サイトの情報を確認し、あこちゃんに提案する。

 

『じゃあ…snowの欲しがってたアイテム取りに行く?』

 

『え?Snowさんと連絡ついたの?』

 

『ううん、あれから全然。ここ2週間ログインもしてないし…』

 

 Snowとは私たちがNFOを始めたころからのパーティーメンバーで、いつもタンク…壁役としてモンスターの攻撃から私たちを守ってくれていた仲間だ。

 

 いつもメッセージを飛ばせば、快くクエストに参加してくれていたsnowはなぜかここしばらくNFOの世界に来ていない。

 

 何かあったのかと思ったけど、ゲーム内でプレイヤーのリアルについて詮索するのはマナー違反なため、どうすることもできなかった。

 

『snow…NFO飽きちゃったのかな…?』

 

 あこちゃんが落ち込んでる。

 

 無理もない。

 

 最近は今井さんの調子が悪くてバンドメンバー全員が集まっての練習ができず、個々で練習していても、今井さんのことが心配で身が入らず、少しモヤモヤした空気が漂っているのだ。

 

 その気晴らしでやっているゲームでも、仲間と会えない事実。

 

『あこちゃん……。きっと大丈夫だよ。Snowさんだって何か事情があってログインできてないだけかもしれないし…、あこちゃん?』

 

『      』

 

『あこちゃん?どうかした?』

 

『____来た』

 

『え?』

 

『snowからメッセ来た!』

 

『ホント?!』

 

『うん!このめちゃくちゃ固い文章はsnowで間違いないよ!でも何この文章!?』

 

 喜んでいるかと思っていると戸惑った声音で取り乱すあこちゃん。

 

 すると、私のメッセージボックスにも一通のメールが届く。

 

 受信したメールを開封する。

 

__拝啓 聖堕天使あこ姫様 RinRin様

 

  お元気ですか?

 

  私はもうダメかもしれません。

 

  お二人と冒険できて私は幸せでした。

 

  暫く私はNFOから離れると思いますのでそのご連絡を。

 

  願わくば貴女方とまたどこかで会えることを願ってます。

  

 

                敬具 Snow___

 

 なにがどうしたの?

 

 私も困惑してると、あこちゃんがキャラの表情を据わった眼にしながら言った。

 

『___りんりん…』

 

『な、何?あこちゃん?』

 

『オフ会やろう!!』

 

 この時はまだ分からなかった。

 

 この選択が、図らずして例の噂の流布に拍車をかけることになるなど。

 

 私たちには、知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「りんりん、準備はいい?」

 

「うん…ちょっと怖いけど、が、頑張ります!」

 

「よし…行こう!!」

 

 意気揚々とドアを開けて漂う珈琲の香り。

 

 オシャレで落ち着いた内装の店内で、私たちに掛かる店員さんの声。

 

「いらっしゃいませー。久しぶり。あこちゃん、白金さん」

 

「お久しぶりです!」

 

「羽沢さん…今日は無理言ってごめんなさい」

 

 あこちゃんがオフ会の会場に選んだのはカラオケ店。

 

 だったのだが、お互いの素性が分からないままでは、もし何かあっても対処できないため、一時的な集合場所としてここ、羽沢珈琲店を指定した。

 

 Snowさんは随分ゴネたみたいだけど、最後は折れてオフ会への参加を了承してくれた。

 

 そうして、急いで羽沢さんに連絡して、ボックス席の一つを予約してもらったのだ。

 

 どうやらsnowは既に到着しているようで、ただでさえ人見知りの私は緊張から既に膝が震え始めている。

 

 そんな私をリラックスさせようとしてか、羽沢さんが朗らかに話しかけてくれる。

 

「そのくらい大丈夫ですよ。その変わり、優希夜君にあんまり意地悪しちゃだめですよ?」

 

「?ユキヤ君?」

 

「あれ?知り合いじゃないの?優希夜君は___」

 

 スミマセ~ン。注文お願いしま~す。

 

 他のお客さんから注文がかかり、羽沢さんは駆け足で私たちから離れていく。

 

「あ、はーい。ただいま。___ごめんね。席は一番奥だから。ごゆっくり__」

 

「は、はい、ありがとうございます」

 

「ユキヤ…ユキ…snow………どうしようりんりん。snowの本名知っちゃったよ…」

 

「今のは仕方がないよ、あこちゃん。とりあえず、snowさんを待たせちゃってるから早く行ったほうがいいかも…?」

 

「あ!ホントだ!えーと、一番奥一番奥…ってアレ?美竹さん?」

 

 羽沢さんが行っていた一番奥の席には美竹さんが座っており、どこかソワソワしている様子だった。

 

 しかし、どこかいつもの彼女と違う感じがする。

 

 服装はボーイッシュなものを好む彼女だが、今回に限って言えば完全に男装だ。

 

 トレードマークの赤いメッシュの入った髪も黒く染め直している。

 

 私が違和感を覚えていると、既にあこちゃんが美竹さん?に話しかけていた。

 

「美竹さん!こんにちは!」

 

「え…?」

 

「あれ?美竹さん?」

 

 美竹さんは心底驚いたような表情をしている。

 

 あこちゃんも、違和感に気付いたようだ。

 

 そうこうしていると、目の前の美竹さんが戸惑いながらも口を開く。

 

「えーと、こんにちは…。もしかして、あこ姫さんとRinRinさんですか?」

 

「え!?なんで美竹さんがあこたちのアバター名知ってるんですか!?」

 

「…それは僕のセリフですよ」

 

「僕!!?どうしちゃったんですか美竹さん!?」

 

 私たちが混乱していると、羽沢さんがお絞りとお冷を持ってきた。

 

「あはは…やっぱりこうなってた」

 

 苦笑いする羽沢さんに、ジトっとした眼を向けながら美竹さん?が、縋りつくあこちゃんから距離を取ろうとする。

 

「つぐみ姉さんなの?僕のこと二人に話したの?」

 

「つぐみ姉さん!!?え!え!?」

 

「あこちゃん落ち着いて…!」

 

 間反対にいる二人の顔を往復で見るたびに、あこちゃんのツインテールがピョコピョコと跳ねる。

 

 そんなあこちゃんを見かねて羽沢さんが仲介に入る。

 

「この子は美竹優希夜君、蘭ちゃんの弟ね。それで、ツインテールの彼女が宇田川あこちゃん。そして、綺麗な黒髪の女性が白金燐子さん。二人ともRoseliaのバンドメンバーだよ」

 

「「「え~~~~~!!!!?」」」

 

 三人揃って羽沢さんのお父さん(店長)に怒られた。

 

 ごめんなさい…。

 

 

 

 

 




優希夜君と蘭ちゃんの容姿はそっくりです。

蘭ちゃんをもうちょっとだけイケメンにした感じ。
(蘭ちゃん既にイケメンだから優希夜君の顔面偏差値ヤバいかも…鼻血)

でも身長は男性にしてはちっちゃいです。

蘭ちゃんよりちっちゃいです。

精々、バンドリキャラの彼女たちに弄られて泣いてくれ。

それではまたの機会に
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