マスキングかっこ良すぎる…。
RASのメンバーも本作に登場させられたらなと思ってます。
久々の投稿で恐縮ですが暇つぶしに読んでいただけたら幸いです。
「___よし、こんなもんかな」
あこが用事で出かけている間に、ドラムを叩いて音の感触を確かめようと、椅子などの位置を調節を始めて早数分。
なんとなく目を凝らしてみると小さな傷のある箇所や汚れが気になったため、掃除しながらドラムの手入れに熱中した。
太鼓にくらべると金属で作られているドラムの方が、湿気などの影響を受けやすい木製と異なり、手入れは楽だと思っているがそれはどうやら私だけの意見らしい。
妹のあこも、ポピパの彩綾も、ハロハピの花音もドラムの手入れには難色を示していた。
パスパレの摩耶は…なんていうかその、すごかったな、うん。マスキングさんはまだあまり面識ないからなあ。また今度聞いてみようかな。
そんなこんなで、いざドラムを叩こうと意気込んでいた時、私のスマホから着信音である太鼓の音が鳴り出した。表示を確認すると連絡の相手はあこだった。
何か忘れ物でもしたのかと思いつつ、通話アイコンに親指をフリックしてスピーカー部分に耳をあてる。
「もしもし、あこ?どうした?」
ドラムのスティックを2本とも左手の指に挟んだ状態で椅子に体重を預けてリラックスする。足は組まない。ドラムは姿勢が命だからだ。妙な所で意識高いのが私の短所だと少し反省する。
『繋がった!!!』
そんな私の耳に妹の良く通る高い声が脳裏を突き抜けた。驚いてスティックを片方落としてしまったが、私は悪くないと心の中で言い訳しつつ腰を屈めて落としたスティックに手を伸ばす。勿論、可愛い妹の声を聞き逃したりはしないが。
『お姉ちゃん!!どういうこと!?美竹さんに弟さんがいるなんて、あこ今の今まで聞いてなかったんだけど!?』
スティックを拾い上げて先程あこが言った内容を噛み砕く。あこと優希夜が遭遇。いや、噛み砕く必要はなかった。少し心が納得する時間が欲しかっただけだな。
「ん?………ああ、そういうことか。なんかやけにつぐのやつ、さっき電話した時に優希夜が店に寄ること気にしてるなと思ったらそういうことだったのか」
『つぐみさんも知ってたんだよね!?美竹さんの弟さんのこと。なんであこには黙ってたのさ!?』
「うん?そりゃあだって、優希夜のやつ、顔だけは一丁前に男前だからな。間違ってもあこに手は出さない様に私と蘭が存在を秘匿してたからだよ」
本当はサプライズで蘭と優希夜を入れ替えてバンド演奏とかしてみたいと思い立ち、そんなこんなしてたら奇跡的に今まで優希夜のことを隠し通せてしまっただけだ。決して狙っていたわけじゃない。何よりめんどくさいからな。因みに蘭のやつはガチだった。
『え、何そのちょっと寒気がするような理由…』
「まあ、半分は冗談だけどな」
『半分は本気なの!?それってお姉ちゃんの方が冗談ってことだよね?ねえ!?』
「まあ、細かい事はいいじゃんか」
『細かくない!あこにとっては滅茶苦茶重要事項!』
うん。今日もあこは可愛いな。…私も蘭のブラコンをバカにできないなと思う今日この頃である。
「取り敢えず優希夜には、あこに変なマネしたら切り落とすぞって私が言ってたって伝えとけばいいから」
『お姉ちゃんこれスピーカー!優希夜さんやばいくらい顔真っ青にして震えてるよ!冗談だよね?お願い冗談っ
て言って!?』
大丈夫大丈夫。優希夜がヘタレなのは私たちが良く知ってるから。そんな度胸ないしな。
「じゃあな」
私はあこの返事を待たずに通話を切り、代わりにある人物の連絡先に指を走らせた。相手は3コール以内に電話を取った。
『___もしもし?』
「悪い。あこが優希夜とエンカウントしちまった」
少し間を開けて辛うじて納得したような、無理やり理解を示すような、妙な落ち着きを孕んだ声音でスピーカーが空気を震わす。
『…そっか。まあ遅かれ早かれこうなってたでしょ?巴のせいじゃないよ』
…その言い方だと非があるのはつぐってことになるんだが…つぐからの連絡を深読みしなかった私のミスでもあるから、このことを伝えるのは筋が通らないよな。左手のスティックが行き場をなくし、左手の指の間をクルクルと往復する。私は仲間にブラコンのイライラが飛び火しないよう注意して言葉を選ぶ。
「そう言ってもらえると有り難いが、これからどうするよ?」
『別に。あこが優希夜の友達でいる分には構わないから』
「私も同感。でもまあ、あの優希夜だからな…。今回も無事に終わるとは到底思えないんだが」
たえも若干、粉かけられつつあるし…。正直なところあいつの女性関係なんて怖くて知る気にもならないしな。
『あの愚弟…いつか刺されればいいのに…』
そうそう、こういう奴がいるからだよ。
「まあそう言ってやるなよ。本人はあれが素なんだからな」
『それが余計に許せない』
「でも狙ってやってたらもっと許せないんだろ?」
『その時は私が刺す』
「頑張れ優希夜。強く生きてくれ」
暴君の圧政は今日も顕在だ。
『___それで巴?モカから何か情報引き出せた?』
私は今日、モカとコンタクトを取った覚えはない。連絡した相手はつぐだけだ。そういえばモカから情報引き出して来いって、若干据わった目でお願いされてたな。…やばい、忘れてた。こういう時に当たり障りのない言葉で切り抜けられる能力が欲しいと心底思う。
「いんや、これといって目ぼしい情報は何も。…まあ、なんとなく予想はつくけどな」
『教えて』
「仲間の私達にも答えを渋って、誰かに義理立てしてるあの感じ。湊先輩の近くにいて、尚且つモカとの接点の多い人…誰か思い当たらないか?」
『…なるほど、二重スパイってこと?』
「仲間をスパイ扱いって酷いな」
『それはそれ。これはこれ』
「さいですか」
『モカは懐柔させられてるって認識でいいのかな?』
「あの人ならクッキーとかのお菓子類片手間で作れるだろ?その線で間違ってないと思うぞ?」
『じゃあ、今は泳がせておく。それで最後にちゃんと吐かせる』
我らがボーカル様は、こと弟のこととなればどこまでも非情になれる。
「すまんモカ。強く生きてくれ___ところでさ、蘭?」
『何?』
「今どこにいるんだ?」
『猫カフェ』
敵の陣地のど真ん中じゃねえか。
「ああ…そっか。まあ、程々にな?」
『気づかれないように注意してるから大丈夫。じゃ、切るね』
「………そういう意味じゃないってのは、今更なんだろうな…」
そもそも、なんで私は蘭の奇行に肩入れしてる形になってるんだ?こういうのはバンドリーダーの役目だろ?…ダメだ。ひまりが介入したら場が混乱するだけだった…。わかり切っていることだった。
私はスティックを置いて部屋を後にする。どうにも今は気持ちよく叩けるような感じじゃない。私はジャケットを羽織って玄関に向かう。行き先は言うまでもなかった。
◇◇◇
「___あれ?お姉ちゃん?お姉ちゃんってば!?…切れた…」
あこちゃんが呆然とする中、一応年長者である私がこの混沌と化している場をなんとかせねばと思い、メニュー表を開いて飲み物の注文をみんなに促す。
「えっと…先に飲み物を、頼みませんか?あこちゃんも」
先ほどまで震えていた優希夜くんがようやく顔を上げて私の開いたメニュー表に視線を落とす。
「あ、はい。すみません。ありがとうございます」
「あこはココアをアイスで」
「じゃあ、私は…ブレンドをお願いします。ゆ、優希夜くんはどうしますか?」
「えっと…では、僕もブレンドを」
「畏まりました。少々お待ちください」
羽沢さんが伝票を持って厨房に入っていく。
取り残された、というよりもボックス席に腰を落ち着けた私たちはなんとも言えない雰囲気の中、妙な沈黙に悩まされていた。こういう時はいつもあこちゃんが場の空気を変えてくれるのだが、お姉さんに隠し事をされていたショックと優希夜くんを美竹さん(お姉さん)と間違えた気恥ずかしさからか、先ほどから優希夜くんの方を向こうとしない。かと言って、人見知りの私に場の雰囲気を変えられるような会話力などあるはずもなく、この空気に耐えること以外の手段が見当たらなかった。
どれくらいの時間そうしていたのか。口火を切ったのは意外にも優希夜くんだった。
「あの…まずは改めて、オフ会へのお誘いありがとうございます。今更ですが、snowの美竹優希夜と言います。よ、宜しくお願いします」
「RINRINでお世話になってます…白金燐子です。こ、こちらこそ宜しくお願いします」
「宇田川あこです。よろしく…」
「お二人はRoseliaのドラムとキーボード担当でしたよね?先日のライブでは姉がお世話になりました」
「え?優希夜さん、あこたちのこと知ってたの?」
「ライブハウスには姉の手伝いで何度か顔を出してるので、その時に皆さんの演奏を見て衝撃を受けたのは良く憶えています。…まあ、まさか宇田川さんが巴姉さんの妹だとは思わなかったので…そっちの方が驚きましたけど」
「うちのお姉ちゃんが迷惑かけてすみません…」
「いえ、こちらこそ姉の蘭がご迷惑をおかけしてます」
謎の謝罪を始めた2人に完全に置いてけぼりを食らった私は、極力この場の空気に溶け込めるよう気配を消す。そんな全く意味のない努力をしていると、羽沢さんがトレーに注文した飲み物を乗せて歩いてきた。
「お待たせしました。アイスココアとブレンド2つになります。ごゆっくりどうぞ」
「つぐみ姉さん、ちょっといいかな?」
「え?何?」
「いいから早よ」
優希夜くんがつぐみさんを連れて私たちの死角になる壁の向こうまで移動する。声が聞こえなくなったのを見計らって私はあこちゃんにここぞとばかりに相談する。
「あこちゃん、これからどうしよう?」
「ごめんリンリン。あこ、優希夜さんの目を見て話せない…」
「だ、大丈夫だよ。優希夜くんも気にしてなさそうだったし、あこちゃんと同い年なんだから話もきっと合うよ」
「で、でもあこ…男の子とどんな話したらいいかわかんないよぉ…」
「え…?」
衝撃の事実。あこちゃんは男の子に耐性がなかった。確かに幼稚園以降は学校に女の子しかいない環境で育ってきたから同年代の男の子との接点は皆無だ。
「でもあこちゃん、それならどうしてオフ会しようなんて…」
「snowってもっと年上だと思ってたから…」
「あ…同年代だから恥ずかしいんだ」
「うぅぅ…りんりんが苛めるぅ…」
「いつも通りのあこちゃんで大丈夫だよ。ほら、ココア飲んで落ち着こ?」
「ん…」
こんなにしおらしいあこちゃんはじめて見た。
私は親友の新しい表情を知れたことに心を躍らせつつブレンドのティーカップを傾ける。うん、砂糖はいらないかな。これが俗に言う砂糖吐きそうっていうのかな?
男女とも恥じらう姿は実に良きですね。
最近衝動的に購入した漫画「性別モナリザの君へ」を拝読しましたが、控えめにいって最高でした。
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それではまたの機会に