Fate/underLine1999英雄選定   作:木浦

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フェリパは、なんの病気にも呪いにもかかってません、人型止めたり、眼がギョロっとしたもしません
あと、ミラナの身長は170cmぴったりです
烈火が小さいわけではありません

こちらは、どこ直したか自分でも覚えてないけど、修正
20/02/25



――2日目

 翌朝、フェリパは潜伏先である海藤明子宅のキッチンで朝食作りに励んでいた。

 家主はまだ寝ている。

 ならば、私がという殊勝な心掛けをしたわけではない。

 いつもの習慣で身体が動いたのだ。

 そこで、フェリパは一つの疑問にぶつかった。

 時計塔にいた頃は、いつもメイドに任せていた。

 時計塔にいた頃は、朝食はいつも自分で作っていた。

 明らかに矛盾しているが、少し考えれば自ずと答えが出た。

 その後、香りに誘われて家主が起きてきた。

「おはようございます」

「……前は、わたしとおんなじで料理なんて出来なかったのに、彼氏でも出来た?」

 前は?

「違います、それに来てたのは私ではなくて姉ですよね?」

 咄嗟に思い着いたことを口にした。

「あれ、そうだっけ?」

「そうですよ、違うところはありますよね?」

 なぜ、そんなことを思い付いたのかわからないが、結局のところ、自分と間違える年齢の女性なら姉妹か従姉妹だと言いくるめるしかない。

「言われてみれば、たしかに。違和感というかなんというか」

 明子は、フェリパの赤い目をじっと見ながら顔をムニムニと揉んだ。

「お姉さんより肌がキレイ、これは若さか?」

「さて、どうでしょう?」

「お姉さんとは逆でバリバリのインドア派?」

「インドア派かどうかわかりませんが、外を出歩くより掃除とか料理とか家事をしているほうが好きです」

「むむむ、良くできた妹さんだ。嫁にほしい」

「考えておきます」

「なんと、脈あり!?」

「だらしない異性に引っ掛かるくらいなら、気楽な同性の世話をしているほうが性に合ってますので」

「それは、言えてる」

「そういった意味では、お姉さんはわりと好みです」

「あらまあ」

 そうした世間話をしながら情報を集めた。

 

 やがて、家主は仕事に出掛け、フェリパと無言でいた男が残された。

「アサシン、貴方はいまの状況をどう思いますか?」

「それは、ライダーの真名に関してでしょうか?」

 確かにそれも重要だが、本心で言ったのか彼なりのジョークなのか、それとも話を逸らそうとしたのかは、解らないが、

「そうではないです。私が本物のフェリパお穣様ではないことです」

 右手に令呪はあるが、的外れというわけでもあるまい。

「……いつからお気づきで?」

「朝食を作っている最中に。お嬢様方は料理はできませんでしたから」

 咄嗟に姉と出たのも本物のフェリパの姉と面識があったからだろう。

 名前はなんといったか……やはり、思い出せない。

「なるほど、身体に染み付いたというやつですか?」

「そうですね。矛盾した状態で考えをまとめるのは大変でしたけど」

 精神とはデリケートなもので、壊れてしまえば暗示どころではい。

 そうならないためには、矛盾に出くわした場合は、問題をスキップさせるのが一番手っ取り早い。

 考えをスキップさせながらも、スキップしたことを気づかせたということは、気づくことは想定内ということだ。

 要するに、

「フェリパお嬢様の代役として恥をかかせないようにしないとなりませんね?」

 本物のフェリパ=ファハルド=ティヘリナも近くにいるのだろう。

 それを感づかれないよう、せいぜい派手に暴れて、ついでに一花咲かせてみせましょう。

 

 ミラナは、無料の街の地図が欲しかったが、そもそも、この街には観光ができる場所は山くらいしかない。

 それも、日帰りにちょうどいいやつ。

 つまり、無料の観光案内などはないのだ。

 ならば、することは一つ。

 足で調べる!

 ……のは、めんどくさいので使い魔を出すことにした。

 すべては、語学教師に紹介されたこのホテルのベッドの寝心地がいいのが悪いのだ。

「わたしは使い魔を使うのに集中するから見張りは任せた」

「了解した」

 セイバーが返事だけを返した。

 このホテルには、カジノがない。

 これでは、せっかくの黄金率を活用することが出来ない。それが、残念でならないのだ。

 

 ライダーは、マスターに問う。

 どんな願いも叶えられる方法があるならば、なにを願う?

 街のどこかにある術式が、英霊の座と呼称される場所から英霊のコピーとしてサーヴァントを引き寄せ、主にマスターを楔として現世に繋ぎ止める。

 楔がなくなれば、自動的に小聖杯にくべられる。

 そうして最後の一組になった時点で、溜まった魔力に見合った形で願いを叶える。

 相応の魔力をくべれば、聖杯はまさに万能の願望器として機能するだろう。

 そうでなくとも、勝者へのささやかな褒美くらいにはなるはずだ。

「わからない」

 ならば、聖杯自体に願いを視させ叶えるまで行ってもらうことになる。

 願いを拒否すれば、願いは叶わないという願いを叶えてしまうかもしれない難儀な爆発物。

 逆に、この世界の事象ならば、どんな願いでも叶えることができる奇跡の存在。

 それが、万能の願望器、魔術師たちの聖杯なのだ。

「ライダーは、どんな願いを叶えたいんだ?」

「聖杯に掛けるほどの願いはないが、個人としては、此度の戦がよき終わりを迎えることを望んでいる」

「よき終わり……勝ちたいってことか?」

「そうではない。無論、負け戦をするつもりは毛頭ないが、一つ目の願いであるよきマスターとの縁は叶ったようなのでな。後は他のマスター連中も含めて、此度の戦での経験がその後の人生に有益であれというのが、某の願いである。しかし、これも聖杯に叶えさせるべき類いのものではない。かといって、ほかの願いとなると思い付かんのだ」

「おれは、てっきり、天下を狙うもんだとばかり思ってたよ」

 当人にどれだけその気があったかはわからないが、ライダーの実力なら天下も十分に狙えた。

 しかし、ライダーは人ではなく、病に打ち負かされた。

「あやつらが部下として其に下に仕えるというのであれば、それも面白いが、残念ながら、それは、過去や現在を変容させてまで成すべきことではない。欲を出すならもっと別の場所で出すべきだな」

 別の場所。

「なんにしても、勝ち残ってからの話だ」

 ライダーの本分は、情報戦に勝利してからの行動であり、一対一で本領を発揮するタイプではない。

 それに、本気で人を殺しにくるやつらでも、サーヴァントが人ではないにせよ、殺すというのは、秀的には後味が良くない。

 それでも……という言い訳もしたくはなかった。

 勝たねばならないという意思の欠如が、この二人の共通性だった。

 

 うっかり転倒し右腕を骨折、二週間の安静が必要。

 医師に、そう診断してもらうために、烈火はアーチャーに右腕を折ってもらった。

 覚悟だなんだと言いながら、なんの処置もしないで悲鳴も上げず耐えたことには感心したが、同時に、この少年はとんでもないバカなんだと認識させられた。

 背伸びをしているのは、見え見えであったが、それはそれで好感が持てた。

 

「マスターは、てっきり同性愛者なんだと思ってたけど、違ったのね」

 アーチャーは、通販サイトで、気に入った服がないか物色しなが言った。

「いったい、なにをどう勘違いして、そうなった?」

「そりゃ、子持ちとはいえ、若い女が同じ寝室にいるのに、手を出さないどころか口説きもしない。かといって、ほかの女の匂いがするわけでもなし、なら、疑われても仕方がないでしょ?」

 ほかの女の匂い。していたら、していたで厄介なことになりそうだ。

「聖杯戦争に集中しているとか、自分がサーヴァントだからとは考えないのか?」

「まぁ、私はほかのサーヴァントとはちょっと事情が違うしね。襲われたいわけじゃないけど、男の子なんだし、こっちもウブな生娘でもないし、誘われた時はマスターのご機嫌取りだと思って諦めるわ。ああ、それと、スタイルには自信があっての発言です!」

 確かに、スタイルはいいし、言うことも一理あるのが逆に鬱陶しい。

「でも、ペッタン娘が好きなのか、ちょっと目付きが悪いのがよかったのか、棒切れ体型がよかったのか、口調がおかしくでバカっぽいところがよかったのか、ボーイッシュなのがよかったのか、変化球で赤毛や眼の色が好みだったのか……続けていい?」

「やめてくれ。それと、あれはボーイッシュとは言わない」

 烈火としては、よかった点は別として、否定しておくべき点は、そこだけだった。

 アーチャーが、どうやって、彼女のコートの下の凹凸なし体型を判別したかはまったくの謎である。

 自分との共通点に関してなにも言わないのは、スタイルに関しては本当に自信があるからだろう。

 

 アーチャーとしては、魔術師でありながら、術者としての血統より見た目を気にしてしまうあたりは、やはり年相応。

 向こうが、並んだら、目線の高さが同じになる男をどう思うかは知らないけど、こんな反応するなんて、お坊ちゃんは、やっぱりかわいいなぁなどと思っていた。

「自覚があるなら良し。でも、あえて言わしてもらうけど、こっちは後衛、あっちは前衛。戦って有利な相手ではないなら、同盟は組むべきではないわ」

「わかっている」

 あれをうまく誘導する自信は、烈火にはない。

 それに、魔術を科学のためのカンニングペーパー扱いしていることを魔術師に知られるのは怖い。

 サーヴァントだって、曲がりなりにも、最優のセイバークラスだ。

 アーチャーは、紋章魔術を主体にする魔術師のため、クラススキルである対魔力だって考慮しなくてはならない。

 もしものときは、魔術で強化して物理で殴り殺すくらいでいなくてはならない。

「後、組むなら、宝具で工房を消し飛ばさないやつにして頂戴」

 対軍以上の宝具だと工房ごと消し炭にされかねない。

 神秘の秘匿もなにもあったものではないが、アーチャー組が敗退すれば、それで良しとするならば、躊躇わないだろう。

「そもそも、組んだからって宝具まで教えるバカはいないだろう?」

「いや、存外いるかもよ? 宝具はサーヴァントにとって最大の、ですもの」

 誉もしくは、汚点。

 誉ならば、使えるときを待ち望むだろうし、汚点ならば、令呪で無理やり使わせるくらいはしなくてはならない。

 そんなことをすれば、サーヴァントとの信頼関係は間違いなく破綻する。

 逆に、現代の魔術師すら、どうにもできないサーヴァントでは聖杯戦争を勝ち上がるのは難しい。

 そうなると、やはり信頼関係は重要だとわかる。

 なのに、この女ときたら……、

「マスター、サーヴァントが来たわ。セイバー以外の、ね」

 まったく、次から次と。

 

 烈火とは、凝った名前だ。

 それが、日向烈火に対する第一印象だった。

 性格は、根暗だが、周囲をよく見ようとしているし、優し過ぎず甘過ぎず、かといって厳しいわけでもなく、真面目そうに見えてなんとなく片手間でしていると感じるところはあるものの、基本的に善人であることは、相手の死角は狙わないようにしていることからもわかる。

 そんな同級生だ。

 事件に巻き込まれているなら、助けたくもなる。

「其は、他国の術にも明るいというわけではないが、どうやらサーヴァント避けの結界は敷地をぐるりと囲むように張られているようだ」

「破れるか?」

「結界自体は、無理に押し通ったところで然したるダメージはないであろうが、さらに困った事態を招くことになるやもしれん」

 たしかに、飛び込んだ先で動けなくなっても困る。

「日向か日向の知り合いがマスターになったのか、巻き込まれないよう対策を取ったのか、どっちだと思う?」

「祖父に言われて住んだだけのお主と違って、霊場の上にこれだけの規模の工房を構えながら、聖杯は不要という魔術師はおらんだろうな」

 日向の家は、この土地に昔からある家柄らしい。

 なら、事情を知っているかもしれない。

「行ってみるしかないか」

 ネットでの情報収集を終え、さらに図書館でもと思い、そのついでに寄っただけなのに、まさかこんな事態になっていたとは。

 正門からいつものように守衛と話をし自らの来訪を知らせてもらい、正面から日向の自宅へ向かった。

 守衛に不自然な様子は見られなかった。

 道中でも、人からもサーヴァントからも妨害はなかった。

 魔術師からしてみれば、無用心以外のなんでもないが、秀なりに警戒もしていた。

「おっ、日向」

 右腕をギプスで固定した烈火の姿を見据え、片手を上げて歩み寄った。

 すると、彼は左腕を上げ、

「止まれ、マスター!」

 霊体化を解いたライダーに肩を掴まれた瞬間、秀の目の前で炎の壁が立ち上がった。

「なんで、魔術使いですらないやつが、サーヴァントを連れてるんだ?」

 炎の壁は消えたが、秀には烈火が怒っているのはわかった。

「なんでって」

「ああ、悪い。やっぱり、説明はしないでくれ。そいつになにを吹き込まれたか知らないが、令呪でさっさと自害させて教会に保護してもらえ。場所は把握してるか?」

「自害って、なに言ってるんだ。バカか、お前!」

「バカはお前だ。絶対に死なせないとかサーヴァント同士の戦いがメインだからとでも言われたのか? 無用心に近づいて、普通なら丸焼きにされてるところだぞ? 危ない目にあったから次は幸運がなんて思われちゃ隔離でもしなけりゃ護りきれないぞ?」

 烈火は、怒鳴りはしていないものの、早口になっている。相当、苛立っているようだ。

「ちょっとまて、別におれは次は幸運がなんて思ってないし、それに丸焼きってなんだよ!?」

「こういうことだ」

 烈火は、指で銃を真似、火球を放った。

 ライダーは、それを軍配で叩き落とした。

 火の粉が舞う。

「あっつ、危ないじゃないか!」

「いいか? サーヴァントってのは、今どきにの天才より優秀なやつばかりだ。だからサーヴァントよりマスターのほうが狙われる確率が高い。サーヴァントなんてマスターがいなけりゃ、かってに消えてくれるんだからな」

 場馴れしてやがる……これが、本物の魔術師ってやつか。

「ふむ、どうやら、ここが分かれ道のようだ」

「ライダー?」

「我がマスターよ。そなたは良き友を持った。敵対はしているが、頼りになる」

「それにしたって、やり方が強引すぎる! おれは降りないぞ!」

「いずれ、戦いを続けるか降りるかを問うつもりであったが、その必要はなかったようだ」

「ああ、まったくだよ……アーチャー!」

「黒雲!」

 ライダーは、愛馬を呼び出した。

 調教された馬の出だしは、人間に劣る。

 しかし、黒雲も武人の馬、そう易々と仕留められるわけではない。

「手綱を離すでないぞ!」

 ライダーは秀を愛馬に乗せ、自らは殿を勤めながら、二人の放った炎を叩き落としながら撤退した。

 

 アーチャーは、マスターに命じられた通り、距離を見計らって攻撃を止めた。

「うまく逃げきれたと思われそうで、いやなんですけど」

「あのサーヴァントなら、そうは思わないだろうさ」

 問題はマスターのほう。

 うまく諭してくれないと、サーヴァントという力を信仰することで自分が強くなったと勘違いしかねない。

 まったくどうして、こう回りくどいトラブルが起きる?

 戦わせて、勝ち負けを決める。それでいいじゃないか!?

「マスターがそう言うならいいけど、あのお友達さんの概念ごと抉り取られた右目を見てると、ろくでなしのことを思い出してイヤなのよね。あんまり関わりたくないわ」

「右目?」

 秀の祖父から代々幼年期に右目を潰すと聞き、現に義眼ではあるが、それは魔術に類するものではない。

 気にする要素はなにもないはずだ。

 しかし、祖先が魔術師で、目に呪いを受けて没落したのなら、霊脈の上にある一軒家に住んでいることやサーヴァントを扱えるだけの魔力を持っていることも筋が通る。

 問題は、身内を含めて、復興を狙っているか否かだ。

 こんなことなら、もう少し情報を聞き出して置けばよかった。

「まぁ、あいつが、死んだのは確かだからそっちは気にしないで置きましょう」

 優秀な部下を持った彼女と勇者を育てることに長けたその姉、二人の扱った槍は、大元をたどればそのろくでなしの槍をモデルにしているし、アーチャーほどの実力があれば、戦死者の選定に来ていた時に、面識があっても可笑しくない。

 姉妹の戦いにも当然のことのように介入していただろう。

 日陰で鍛えられた者が、脚光を浴びて、デビューすることへの比喩なのかもしれない。

 ともあれ、相手は主神だ。

 サーヴァントとして、召喚するには、神性が邪魔になる。

 もし、召喚したいならば、対象自身になんらかの方法で神性のランクを最低でもAに落としてもらわなければならない。

 死ぬことがない者を、召喚するよりかはマシだろうが、それでも難易度がかなり高い。

「いまさら死んだ神を気にする必要もないし、ライダーの馬の名前もわかったことだし、そっちを先に調べましょう」

 確かに、馬の寿命から考えれば、どんな名馬でも十分に候補は絞り込める。

 真名さえわかれば対策も立てやすくなる。

「そっちは、俺がやっておくから、アーチャーは、引き続き警戒のほうを頼む」

「了解したわ」

 

「危ないところだった。マジで、日向がマスターだったなんて」

 命からがら逃げ出した。あれだけのことが出来るなら、男薙刀も片手間になるわけだ。

 秀はそういう認識だった。

「危なくはなかった。あのマスターもアーチャーも余程の愚鈍でなければ当たらぬよう調整していたし、火の玉のほうも火傷をせぬよう温度を下げたものもあった」

「まさか、あの目は本気だった……いや、違うか」

 本気で心配された結果がこれである。

「くそっ、マスターはろくでなし揃いじゃなかったのかよ?」

 友人のなんと優しいことか。

「これが敵に塩を贈るってやつか?」

「残念ながら、塩を贈られたのは、正面から破るべしと判断されたが故だ」

「要するに、日向はおれたちを最優先で仕留めにくるってことか」

「秀よ。望むなら、あのマスターの言うように……」

「やめてくれ、ライダー。おれは、おれみたいに誰かが巻き込まれる前に、戦いを終わらせる。それには、お前の力を借りなきゃならない。方法は無茶苦茶にしかならないだろうし、やりたい連中からは水を注すなと言われるだろうけど、それでもだ」

 やめる気がない以上、速やかに、全員倒して戦い自体を終わらしてしまうのも手ではあった。

「宜しい。ならば、某はそれを助けよう。しかし、道中の安全については諦めよ。某より後ではあっても死ぬ可能性も忘れるでないぞ」

「ああ、わかった。この命は預ける」

 欲の出しどころは定まった。

 その上で、秀は自虐する。

 この戦いで一番無駄な駒は自分だと。

 なにせ、戦いたい理由はあるのに、戦わなきゃいけない理由がない。

 自分程度の信念で動いている者だってたくさんいるだろう。

 しかし、こうなったことに、なにかしらの意味があるとしたら、それくらいは見極めておきたい。

「そうと決まったら、まずは、マスター全員に会ってどんなやつがいるか見極めないとな!」

 会ったは、アーチャーにアサシン。

 残りは、セイバー、ランサー、キャスター、バーサーカー。

 どのマスターにも理解されないかもしれない。

 協力すると言って置きながら後ろから討たれる可能性もある蕀の道だ。

 それでもやると決めたからには、頑張らないといけない。

 

 お嬢様も気づくことが前提なら、もう少し記憶を残しておいてほしかった。

 違和感から自分の正体に行き当たったフェリパだったが、なにかを思い出せたわけでもなく、どのように振る舞えばそう見えるか悩んでいた。

 顔も思い出せない相手の仕草を真似るくらいなら、自然体でいたほうが偽装にはなるか?

 そもそも、お嬢様方は料理とは無縁だった。

 そんな、お嬢様が異国の図書館で料理本を読んでいる時点で、すでに不可解だ。

 メイドの仕事に料理は含まれていたが、図書館で調べるほど熱心だったのかは、思い出せない。

 しかし、この機会に日本の料理を修得してお嬢様方に振る舞うのもメイドの仕事ではあるのだろう。

 そこに、偽りはないはずだ。

 

 今朝のことです。

「はじめまして、お嬢さん。おれ、ランサー。今回は戦いに来たんじゃなくて、君におれの嫁になってほしいと頼みにきたんだ」

 生まれ初めてプロポーズというものをされました。

 相手は、サーヴァントでクラスはランサー。

 これって、自慢になりますか?

 なりませんね、ただの厄介事です。思わず、馬鹿らしい話をしました。

 膝まずいて、目線を合わさせていたランサーさんに、バーサーカーが父親のように立ち塞がりました。

「残念だが、ランサーよ。貴様が、どれほど彼女を愛していようが、彼女は貴様に構っている暇はないのだ」

 ランサーさんは立ち上がり、曲がりなりにも敵であるバーサーカーの肩に手を置き、

「わかってないな、おっさん。おれには才女を見抜く才能があるんだ」

 あまりに、自然な動きに攻撃かと警戒も出来なかった。

 にしても、才女を見抜く才能か、当たっているなら、ちょっと嬉しい。

「いまはまだ、ちょっとばかし経験不足だけど、将来は大物になるぜ。それに、おれの嫁も結婚したときも同じくらいの歳だった。年齢に関して問題ないなら、ほかのことだって問題にはならない」

「そうか、問題はないのか」

 問題大有りだ、この浮気者めっ! 奥さんに泣かれるぞ!

「バーサーカー。わたしはマスター、この人は敵サーヴァントだよ」

「ああ、そうだったな」

 バーサーカーは、逸話通りの流され易さだ。

 交渉事では役に立たない。

「ランサーさん、でいいかな? せっかくの申し出ですが、お断りさせていただきます。それにこれから学校です」

「おっと、そうか。そうだな、学業は大事だ。おれも、暇が出来た時にそろばんやってたおかげで、その後いろいろ役に立った。そんなわけなら、出直させてもらうぜ。また、後でな」

 ランサーさんは、現れた時と同様、あっという間に去って行きました。

「……あんなに聞き分けがいいなら、もっと話を聞いておけばよかった」

 少し勿体ないことをしました。

「私はむしろ、最後の言葉のほうが気がかりだ」

 いずれ殺し合うことになるのだから後でというのも、厳密には違ってはいない。

 そう言われなくとも、妙な感じではありました。

 

 そして、放課後。ランサーさんは再び現れました。

「またなって言ったからな」

「言いましたね」

「たしかに、ここは人目がない。しかし、サーヴァントは闇夜で戦うものだ」

 バーサーカーが、周囲を警戒しながら、もっともなことを言いました。

「たしかにそうだ。しかし、戦ってのは、単純な武の競い合い以外にもするだろう?」

「と、言いますと?」

「うちのマスターに共闘の推薦をしても構わないか?」

 共闘は前回もやったけど、ランサーもライダーもライダーのマスターも最後は揃ってバーサーカーには負けてしまった。

 居れば心強いのはたしかだけれど、信頼できるかわからない相手に、こちらの弱みである燃費の悪さがどれほどのものかバレてしまう。それは、まだ避けねばならない。

「バーサーカーは強いですが、燃費はあまりよろしくないので平等な共闘は出来ません。なので、せっかくの申し入れですが、辞退させていただきます」

 悪いとは思うが、事実なので仕方がない。

「たしかに、こちらもいきなり過ぎた。すまん、マスターにはバーサーカーのマスターは善良だったとだけ伝えておくよ」

 ランサーさんは、朝と同じく、さっと帰っていきました。

 なんだか、気になる言い回しだけど、まぁいいか。

 

 ランサーは、マスターが控えるホテルまで戻り、バーサーカーのマスターの印象を伝えた。

「なるほど、そう動いてきたか。しかし、お前自身のスキルで印象を操作してしまっているかもしれんぞ?」

 オジェットは、バーサーカーのマスターの暗殺を依頼されたにしては、興味が別にあるように見える。

 そもそも、魔術協会にとって彼女を殺すことになんのメリットがある?

 魔術師としては、三流にも満たない。

 固有結界などの希少な素養を持つなら、殺害より保護だ。

 いや、彼女の連れていたサーヴァントがバーサーカーであるという前提自体が間違っているとしたら?

 なんらかの理由でクラスが変わっているとしたら?

 あの杖を持っていたアーチャー。彼女は本来のキャスター。

 あの陰気なセイバーは、アサシンか。

 そして、あのバーサーカーはバーサーカーではない。

 そういう、前提でクラスを考えるなら、この反応の薄さも納得がいく。

 自分のステータスは、マスターによって上下している部分はあるもののランサー時の基準値とさほど変わらない。

 自分を抜いた六騎で?

 いや、自分のことは気にしなくてもいいか。

 マスターは、本来のバーサーカーを探っている最中か?

 律儀に忠を尽くしてほしい。というのが、マスターにサーヴァントとして希望された要件だった。

 しかし、このオジェットという男は、なにを隠している?

「そりゃないさ、おれにだって相手の本音くらい見抜ける」

 思案を他所に、ランサーは、自信を持ってマスターに告げた。

 たしかに、相手の敵意を削ぐスキルは持ち合わせているが、交渉ができるようになる、攻められにくくなるだけであって交渉事にも多少のプラスはあるが、本来は存続させることがメインだ。

「それとも、別に気になることでもあるのかい?」

 オジェットは、笑みを浮かべ、

「なに、この年齢で誘拐犯と間違われたくはないだけさ」

 どちらにせよ、オジェットからしてみれば、子供をいきなりホテルまで連れて来られるほうが困まる。

 むしろ、こちらから出向くくらいの気でいるほうがいい。

「はっはっはっ、そこはマスターの愛想によるさ」

 彼女は、愛想が良ければ手を貸してくれる。

 ランサーは、彼女の表情からそう感じた。

 もちろん、聖杯戦争に参加している以上、チャンスがあれば、あの不自然な笑顔をしながら仕留めにくるだろうが、問題がなければ協力は出来る相手だ。

「私は、愛想を振り撒くより謝罪をして回るほうが先になると思うがね」

 時計塔内の派閥争いもここまでは影響していないだろうが、この国独自の組織のすべてが、それを見逃してくれるとは限らない。

 そんなときは、まず謝っておくのがこの国での処世術だ。

「そんときは、そんときさ」

 ランサーは、頭を切り替えた。

「なぁ、マスター。俺が主の前で主のお気に入りを斬ったように、彼女を斬るとは考えなかったのか?」

 そうなっていれば、謝罪どころの騒ぎではない。

 暗に、情報の開示を求めているのだ。

「あのバーサーカーのマスターを殺す理由はない。お前なら、そこに気づくと踏んでいた。お前の言う主のお気に入りも、取り入るばかりの男だったと聞いている。ならば、マスターが不利になる動きはするまい。これが、お前に対する私の評価だ」

「それは、ありがたい話だわ」

 お見通しといえるほど、信頼してくれているわけか。

 しかし、一言足りないのは、たまに傷だな。

 

 足長坊主。

 諜報活動に長けたその男は、生前にそう畏怖された。

 その諜報活動を支えたのが、三ツ者や歩き巫女と呼ばれる旅をする神職たちである。

 ライダーが呼び出した、片目を隠した少女。

 現代風の衣装を持ち合わせていないため、いまは胴着のような忍装束を着ている彼女が、歩き巫女の筆頭だという。

「キャスターの所在について手間取りましたが、昨日、お館様より言い遣った件について報告に参ったしだいにごさいます」

「うむ。秀よ、寒空の下ではあるが、情報をまとめたい。構わぬか?」

「ああ、逐一家に戻るのも効率が悪い」

「うむ、では、報告を頼む」

「畏まりました。こちらが街の地図の写しにございます」

 それは、他のマスターの潜伏先やなんの役に立つのか解らないバーの場所までとずいぶん細かい。

 どうやら、ライダーは情報を元にもしもの時の逃走ルートなども思い描いているようだ。

「では、引き続き、情報収集を頼むぞ」

「御意」

 言い残し、少女は消えた。

 さすがは忍者と、秀は思った。

「ライダーの部下ってのは、あれが、普通なのか?」

「そうだとも言えるし、そうでないとも言える。忠実で優秀であるがゆえに筆頭なのだ。それに見目も性格も良い。気に入ったのなら側に置くが?」

「いや、いい」

「うむ、やはり其のほうが良いであろう? 知れば小言を言う者もいるが、マスターの命ならば仕方ない」

「いや、そっちも必要ない。おれが聞きたいのは」

「あれだけ動ける者を、其はなにゆえ戦力として使わぬのかか?」

「ああ」

 ライダーの性格からしてわざわざ使えるものを使わないとは思えない。

「簡単なことだ。其は呼んだ手勢に必要な能力しか持たせておらんからだ。魔術師程度なら、どうとでもなるが、そのままでサーヴァントを相手にするにはちと厳しい。魔術師が大挙して押し掛けてこない限りは戦力として数えてはいかんぞ」

 サーヴァントやその使いは、なにをするにも魔力を消費する。

 そしては、消費量は能力値に比例して上昇する。

 ならば、逆に、必要ない能力を削ぎ落とせばその分だけ消費は抑えられるわけだ。

 彼女もサーヴァントとして呼べば、相応の実力はあるものの、いまの状態では、サーヴァントの相手にならない。

「幸い、この街には金の買い取り場もあった。おかげで現金の入手には困らん。飲食代を工面してやれるというのはありがたいことだ」

 もちろん飲食のためだけ渡しているわけではないが、秀のことも考えれば、部下に金は必要だ。

 あまい相手には、とことんあまいのだ。

 ライダーは、手品のようにビー玉サイズの砂金を取り出した。

 正規の価格で売却できれば、あれ一個でも結構な額になる。

 黄金率というスキルのちょっとした応用だ。

「もちろん、金だけあれば、すべてうまくものでもないが、心を傾けるくらいは出来る。そもそも、世の中には、自らが傷つくことを好む者のほうが少ないのだ。争いを避け金も貰える。組織ならば腐敗を危惧するところだが、他人がすることなら、そう厳しくする必要もあるまいて」

 ライダーは、自らは僧侶や巫女を使う一方、家臣の家にそれらを泊めることを一切禁止したという。

 すべては、情報戦に勝つため、彼はその道に長けている。

「ここから、ニ番目の近場に住むのはバーサーカーか」

 場所も住宅地だ。奇襲から戦闘になった場合、被害を減らすことを優先で動いてほしいと通達しておいたほうが良さそうだ。

 

「なるほど、あれがライダーとそのマスターか」

 ミラナは、使い魔である黒ずんだ鳩を操りながら、ニヤニヤ笑っていた。

「あいつに着いていけば、ほかのマスターの情報も得られそうね」

 ミラナは、自画自賛する。

 これを見ていたセイバーは、マスターの使い魔は黒い鳩、鴉と似た鳥だと思えば、目先の欲に敏感なマスターが使い魔として使役しているのも頷ける。などと考えていた。

 会話はなく、ツッコミ役も不在であった。

 

 秀とライダーがバーサーカーのマスターの元へ向かっていると街中にも関わらず、人影が徐々になくなっていった。

 そして、すっかり居なくなると、その代わりには、一人の女性が待ち構えていた。

 両手を上げてはいるが、魔術師ならどんな攻撃をしてくるかわからない。

「はじめまして、ライダーのマスターさん。ワタクシは、此度の聖杯戦争の監督役の補佐をしております、テヘーラと申します。若輩の身でありますので、気軽にさん付けでもシスターテヘーラでも好きに呼んでくれて構いませんよ」

 秀も、街に教会があるのは知っていたが、こうしてシスターを見るのは初めてだ。

 そのシスターさんが、なんでこちらのことを知っているのか疑問だが、監督役の特権かなにかなのだろう。

 それにしても、アサシンのマスターに似ている。

「えっと、テヘーラさん? もしかして、参加を監督役に申告しないといけないとかあったんですか?」

 自分でもなんでマスターに選ばれたか解らないのに、いきなりそんなことを言われても困るだけだ。

 一方、申告を無視した魔術師を見ず知らずの眼鏡さんに片付けてもらえたシスターは、

「いいえ、申告は必要ありません。実際、バーサーカー組とアサシン組とは会っておりませんから。今回は、お見かけしたのに無視するのはいかがなものかと思い、挨拶と聖杯戦争について疑問があればお答えしようと思ったしだいです」

 妙な胡散臭さはあるが、言っていることに不自然な点はない。

「そうですか? それじゃ、質問なんですが」

「はい、なんなりと」

「聖杯戦争ってのは、参加したくないやつでも参加できるもんなんですか?」

「そうですね。基本的に、参加したい方とシステムが参加すべきと判断した方だけで行われるので、やる気は関係あるかと言われれば半々です」

「つまり、おれは、システムに選ばれた側?」

「儀式をしていなければ、そうなります」

 した覚えどころか、存在すら知らなかった。

「じゃあ、システムに選ばれる条件は?」

「前提としてサーヴァントを扱える素養があること。サーヴァントを連れて他所の土地へ行かないような開催地に縁がある方。それらのシステムが術式から削除されていないこと。こんなところでしょうか? ひとまず七騎のサーヴァントを揃えて、後はどうとでもなれと判断していた頃のなごりだそうです」

 要するに、サーヴァントを扱えるなら誰でもいいように聞こえる。

 実際、穴埋めのために選ばれたに過ぎないのかもしれない。

「主催者を問いただしたいのであれば、郊外にあるビルで寝泊まりしております。襲撃したいのなら、詳しい場所をお教えしますが、いかがします?」

「いや、各マスターの位置情報については把握しているゆえ、それには及ばぬ」

 さっきまで、霊体化していたライダーが現れた。

「あら、ライダーさん? はじめまして。なかなかの情報収集力ですね」

「うむ、それで主催者というのは、郊外のビルで寝泊まりをしているのなら、キャスターのマスターか?」

「ええ、そのとおりです。と、言いたいところですが、少し違います。キャスターのマスターは主催者の部下で、その……ノリが軽いと言いますか、乗せられ易いと言いますか」

 テヘーラは、眼を反らし頬を掻く。

 要するに、キャスターのマスターは主催者の口車に乗ってしまっているわけだ。

「サーヴァントも他の方のように、手を出さなければ、無害というわけでもなさそうです」

 キャスター組はキャスター組で要注意らしい。

「魂食いか?」

 キャスターは、術に長けたサーヴァントだ。

 クラススキルである陣地作成と組み合わせ、住人から魔力を吸い上げ自らの力にすることなど、雑作もないことだろう。

 加え、この街の人間の魔力の質は、聖杯戦争の舞台に選ばれるだけあって、他の地域より良い。

「手の内を明かされたわけではないので、なんとも言えません。たとえ、サーヴァントとマスターがなにも考えてないような方でも主催者の配下ではあるわけですし、魔術師である以上、いざとなれば、なにをしでかすか」

「うむ、気に留めておこう。しかし、今日はバーサーカーとそのマスターを見定めることに集中させてもらいたい」

 ライダーは、秀がテヘーラとの会話の違和感に慣れ始めるのを危惧し、会話を終わらせにかかった。

「そうですか。確かに、長く引き留めてしまいました。申し訳ありません」

 彼女は、伝えるべきことを伝えきったのか、それとも、強引なことが嫌いなのかあっさり引き下がった。

「バーサーカーのマスターには、ワタクシのことはご内密に、口が軽いシスターがいるとバレた日には、お二人を恨まなければならなくなります」

 それは、立場からなのか、バーサーカーのマスターの性格のことなのか、ご苦労なことだ。

「本来は、聖杯戦争なんかに参加できるような性格ではないのですけどね。だからこそ、静かに怒るタイプでして。年相応の穏やかさに義憤が混じるといいましょうか? ある意味、あなた方とは、同道異結な存在です」

 これまた、聞いたことのない四字熟語を使う。

「とにかく、ワタクシの存在は内密に願います」

 テヘーラは、念を押して去っていった。

 

 室内に行かれては、鳩には翼も嘴も出せない。

 しかしながら、バーサーカーとそのマスターの外見くらいはわかるかも知れない。

 まさか、バーサーカーが、アーチャーに続いて現代風の服装をしているわけはないだろう。

 ミラナの鳩は、少しだけ秀たちが進むと予想した方向へ羽ばたき、バーサーカーの矢に射抜かれて死んだ。

 

 不自然な動きをする鳩を射ち落としたバーサーカーは屋根から降りてきた。

「良かったのか? いまは一矢でも貴重なはずだが?」

 サーヴァントの武器も技もマスターの魔力を使用するものであり、その魔力自体が希少なスミレが安易に消費していいものではない。

 現に、スミレも立ち眩みを覚える。

 表情は、相変わらずの笑顔ではあるが、顔色も良くない。

「必要な時には回復していると思う。それにあんまり放置して力押しに持ち込まれても困るし」

 本来、持っている精密性、技量を下げ、身体能力を強化したクラスが力押しに弱いというのもなかなか皮肉な話だ。

「ひとまず、バーサーカーは、簡単に倒せる相手じゃないって伝わったと思う。少なくともランサーさんにはね」

 それに、このバーサーカーは、狂化されてはいるが、技量はまったく下がっていない。

 燃費が悪い点を除けば、このバーサーカーは、高い戦闘力に意志の疎通も容易。

 騙され易いが、それは本人も自覚している。マスターが、注意し続けられれば弱点にはならない。

「マスターは、ランサーを買っているな?」

「わたしには敵を低く評価できる余裕なんてないからね。敵の長所や癖はどんどん見つけていけていかないと」

 最強のサーヴァントに最弱のマスター。

 これが、スミレの自分たちに対する評価だ。

 ほかのマスターと組んでいれば、容易に勝者となれた。

 バーサーカーは、それほどに優秀なサーヴァントだ。

 ならば、自分に補える点、戦闘での援護や魔力に関してはどうしょうもないので、敵の戦術を読む、慎重に動くくらいは頑張らないといけない。

「それに、いま射ち落とした鳩の人にもなにか長所があるはずだよ」

 決断力と敵の長所を冷静に評価出来るのは、スミレの長所だとバーサーカーは考えている。

「その長所を使わせないで、バーサーカーが戦い易い環境に持っていくのが私の仕事なんだよ」

「ふむ」

 バーサーカーは、自分はよい指揮官に恵まれたようだと、つくづく思う。

 

「む、どこかの陣営の使い魔が落とされたぞ」

 バーサーカーが、ミラナの鳩を射落とすのを見てライダーが唸った。

「近寄るなってことか?」

「どうであろうな。こちらの諜報は見逃していまの鳩は落とした。相手の力量を計っておるのやもしれんぞ?」

「なら、合格ってことか?」

 攻撃もされなかったし。

「さて、我が臣下たちは曲がりにも諜報を生業とするもの。向こうに気づかれたこともわからんとは思えんが」

 マスターが、人型を射つのを、躊躇した可能性もある。

「なるほど」

 そもそも気づかれなかったという線もあるのか。しかし、それはそれでどうなのだ?

「さて、どうする? 進むか下がるか?」

 ライダーはマスターに決断を促す。

「……進もう」

 ここで下がったら、バーサーカー組と話す機会は二度と来ない、そんな気がする。

「よろしい。ならば、参ろう」

 

 バーサーカーたちが住む家は、言ってしまえば、普通の一軒家。そう形容するのが一番しっくりくる建物だった。

「家とあんま変わらないな。こっちはたまにじいさんがくる程度だけど。これだけ普通だと、逆に入り辛い」

「そうさな。どうにか、あぶり出すことができれば……」

「その必要はありませんよ」

 家から出てきたのは、顔色の悪い少女だった。

 笑顔ではあるが、体調が芳しくないらしい。

「今日はよく人が訪ねてくる日なのでしょうね。はじめまして、バーサーカーのマスター、歌方スミレです」

 彼女は、ドアに寄りかかりながら挨拶をした。

「ああ、辛そうなところ悪い。おれは海藤秀。こっちはライダー。少し話をしたくて来たんだ。いま大丈夫か?」

「はい、大丈夫なので出てきました」

 受け答えは、問題ない。顔色については、気にしてやらないほうが警戒させずに済みそうだと秀は思った。

「…………」

「ライダー?」

「サーヴァントはどこにいる?」

 サーヴァント同士なら、霊体化していても見ることはできる。

 しかしながら、周囲にはその姿は見当たらない。

「バーサーカーなら、いまからでも先手を取れる位置におります。スキルによる補正もありますので、わたしをここで殺すことは不可能と思ってください」

 年齢は、中学生ぐらいだろうか、堂々とした彼女の表情と言動。

 顔色の悪さと外見を差し引いても、本来は不似合いのはずのものが、妙に噛み合っていた。

「もしかして、魔術師なのか?」

「サーヴァントのマスターに、それを聞きますか?」

「…………」

「実は、ランサーさんからも共闘のお誘いを受けていまして……ですから、共闘のお誘いはお断りします。必要と判断した場合だけ、その場限りとしての共闘は有りなのですが」

「ああ、おれ達は共闘じゃなくて、一般人を巻き込まないようお願いして回ってるんだ」

「それは……立派ですね。見習うべきことなのでしょう。では、一つ質問させて下さい。いま一人を見捨てて自分が助かれば、後日、自分を含めて三人は救えるとなった場合、あなたならどうしますか?」

 いつくるかも解らない後日。

 言い訳になる理由。

 確実に一人を見捨てたという事実。

 前者を選べば、後者の二人を危険にさらすことになる。

 しかし、それでも、

「後悔したくないから一人を助けて、後の二人も助かるようあの世で祈るよ」

 

 模範的な自己犠牲、この人は早死にしそうだ。

「ライダーさんも同じ意見なのですか?」

「うむ、某が生きた時代は略奪が常であったが、この時代は我がマスターのような人間の時代。過去の人間がその理を乱すことは最小限にすべきであると某は考える」

 サーヴァントとも方針は一致している。

 仲違いする可能性は低そうだ。

「……お話は理解しました。お二人がそういう考えなら、常にとはいきませんが、一般人を巻き込まれそうになった場合、出来るだけ共同で対象する。もちろん、強制はしない。この条件で構いませんか?」

「ああ、それでいい」

「某も異論はない」

「では、バーサーカー。聞いての通りです」

 霊体化を解いたバーサーカーが、上空から落ちてきた。

 いや、家を飛び越えてきた。

「人的被害を出さぬようにというのは了解した。しかし、器物についてはさすがに、無傷とはいかんぞ?」

 ライダーには、バーサーカーと呼ぶには、いささか冷静過ぎに見えた。

「それについては、問題ないでしょう。キャスターは、かなり暴れていましたが、騒がれることもなく修理されてましたし」

「そうなのか?」

「そのために、あのシスターのような監督役がおる」

「シスター?」

「いや、えっと、とにかく、壊さないに越したことはない。そうだろ?」

 さっきからずっと、笑顔のままなのが逆に怖い。

「そうですね。思い切り暴れたいならキャスターの拠点あたりが広くておすすめですよ」

 シスターテヘーラとキャスター組には、なにかあるとは感じていたが、こちらも因縁があるようだ。

「ありがとう、辛いところホントごめんな。今回は、これで帰るよ」

「では、ご健闘を御祈りしております」

 スミレは、家の中へ戻って行き、それを見届けたバーサーカーも霊体化して家へ入っていった。

「他の陣営に見られるまえに我らも退散するとしよう」

「ああ、一旦、家に帰って次に備えよう。キャスター組と会うのはちょっと難しそうだけど、ランサー組は彼女と組んでるから上手くいきそうだ」

 秀は、スミレの引っ掛けに見事にはまっていた。

 

 トゥーエ=トリベール。

 本来なら戦犯として銃殺刑となっているはずの男。

 少し昔の話になる。

 彼は、軍に所属しているころ、自らが所属する隊の全員と他の部隊長ニ名を一人で殺害した。

 なぜ、そんなことをした? と裁判で問われ、

「命令書が偽造であると気づき、それを実行前に止めるには、この方法しかないと判断しました」

 命令書が偽造であるというのは正解でもあり不正解でもあり、その行動は正当であるとされたものの、いまだにそのことを飲み込めていない。

 気づけた理由もどうしてこの方法を取ったのかも、この命令書がどのような存在なのかも、当時は理解出来なかった。

 しかし、当時はそれを説明する知識もなく、成り行きに任せ処刑されることとなった。

 それを救った、いや、トリベールの身柄を自らの元へ横流ししたのは、魔術に通じる政治家の男であった。

 彼の手引きにより、彼と殺害した仲間たちは、友軍からの誤爆により死亡したとされた。

 自らを失った男は、彼の指示の下、魔術協会と世界各国に支部を持つとある組織のエージェント兼パイプ役となった。

 微弱な魔術回路に質の悪い魔力。

 当然のことながら魔術刻印もなく、魔術師としては重宝されないが、組織としては、トリベールのような魔術回路に加え、高い精神抵抗指数まで持つ人材は貴重だ。

 本人のいないところで一致した利害により、いくつかの事件に巻き込まれるはめになった。

 必要ならば、誰でも殺し、過去の経歴や素行が狂っていようが利用する。

 それが、トリーベルが組織に抱いている印象だ。

 抵抗力が無ければ、いまは同僚となった組織の人間に殺されたか記憶処理されていたか、はたまた自害か、やはり戦犯として処刑されていたか。

 しかし、幸福な人生を歩むのに必要だったのかと問われれば、疑問だ。

 

 なにせ、トリベールは、精神抵抗指数だけが突出しているだけのただの人間なのだ。

 これまでの戦闘経験も強化魔術を使えば、いくらでもひっくり返せるレベルだ。

 格闘に関しては、魔術の使えないロストマンに棒術でボコボコにされたばかりだ。

 そんな実力だからこそ、借り受けたスタッフは最大限活かすことを選択した。

 職務に殉ずる覚悟がある者が選ばれているが、この魔術協会その他との協定違反スレスレの状況で人命を消費することは、なるべく避けたかった。

 結果としての必要最低限の損害。それには、リーダーである自分のみ死亡という結果も含まれる。

 

 部屋がドアがノックされた。

「エージェント・トリベール。お時間、よろしいですか?」

 この声、たしか小美野といったか?

 口調からして火急の用事ではないようだが、少なくとも耳に入れておくに越したことはないだろう。

「ああ、なんの用かな?」

 返事を返した瞬間、ドアが蹴り開けられ、トリベールはその無粋な来訪者のほうへ向けて発砲し、壁に隠れた。

 日本での活動のために支給された、サブレッサー一体型のハンドガン。

 サイズが、中途半端なせいで取り回しが悪く、痕跡を残さないために、使い物にならなくなっても持ち帰らなければならない難物。

 励振火薬の通常弾ではなく気体爆薬のケースレス弾というのも慣れない。

 不意討ち対策で支給されたわけではないが、いい加減で扱い辛い武器だ、惜しむことはない。

 ここで壊してしまえば、回収の手間も省けるというものだ。

 音声封鎖が細かく施された、このホテル内での、発砲は許可されているが、銃の所持すら禁止されている国での発砲は極力控えたい。

 それに、この銃自体もほかのスタッフにも秘匿していた。

 魔術師なら、暗示で情報を盗ったり、いまのように死地へ突撃させるくらい容易なことだからだ。

 相手に組み付いたまま自爆させることも出来ただろうが、爆発音はなかったから、彼女の身体はまだ原型を留めていると思いたい。

 撃ったことについては申し訳けないが、用件を告げる前にドアを開けるはめになったことを悔やんでほしい。

 元々が低料金ホテルのため、L字型の手狭な部屋であったが、おかげで素早く隠れることができたし、装備も手が届く位置にある。

「ごめんなさい。実力のほどを確認したかったもので」

 若い女の声だ。

「それで、わたくしめの実力は如何様に評価していただけましたかな?」

 不本意さを隠して返答しながら、飛び出すタイミングを探る。

「ええ、冷静に振る舞えることは、評価に値するわ」

 相手も、当然そのことに気付いているはずだが、慌てた様子はない。

 もっとも、慌てたところで実力が上下するなら、暗殺者にも兵士にも不向きだし、意味もない。

 こちらも平静でいるべきところだ。

「私は、あなた方に協力をお願いしたいのだけど、かまわない?」

「ご指名いただけるのは光栄ですが、名も名乗らない相手とは交渉いたしかねます」

「それは失礼。改めまして、私の名はフェリパ=ファハルド=ティヘリナと申します」

 やはり、アサシンのマスター。セイバーとそのマスターが、別行動を取らざるを得なくなるほどの暗示の達人。

 相手の足音まで暗示に利用したという情報から参加スタッフの一人に姉妹揃って歩くミーム汚染呼ばわりされた、今回の聖杯戦争で一番の面倒な人物だ。

 マスターやサーヴァントとの対峙は、想定内だが、これほど行動が早い者がいることには、驚いた。

 正体が割れていないアサシンが控えているのなら、下手に仕掛けても返り討ちに遭う。

 捨てゴマとバレないよう、アサシンの宝具は無理でも、手口くらいは開示させなくてはならない。

 一番捨てゴマとバレにくいとはいえ、リーダーは辛い。

 それに、彼女が相手なら、いくら耐性があっても迂闊に飛び出すわけにはいかない。

「スペイン人だからもっと長い名前を期待したかしら? なんなら、両親のファミリーネームを並べて名乗り直しますけど?」

 なるほど、こちらの情報網も、どの程度かは把握済みというわけか。

「いいえ、結構。それでフェリパ嬢は、サーヴァントを持たない我々になぜ協力の依頼を? 我々の組織で使用している重火器より貴女が連れているサーヴァントのほうが有用なのでは?」

 マスターだけにならともかく、情報も事前対策もない状態で、サーヴァントから逃げ切るのは無理だ。

「歩兵火力を競うつもりはありません。残念ながら、サーヴァントは一人に付き一騎が基本でして」

 要するに、人手がほしいわけか。

 露払い、もしくはマスターを暗殺するまでの囮役でもさせたいのか?

 たしかに、前情報なしに基本的に戦闘力の低いアサシンを他のサーヴァントと戦わせる気にはならないのだろう。

 捨て石にされる人間は、何人も見てきたが、この使い方は悪手だ。無駄な消費だ。

「我々の目的はわかっておいででしょう? まず、貴女単独での戦闘力を見せていただかなければ」

「そう、私の実力を見せればいいのね?」

 そういって、彼女は、先ほどトリベールに発砲された小美野を投げつけてきた。

 反応して、発砲してしまいそうになる。

 製造元とはいえ、貴重な対霊子弾を無駄撃ちしてしまったらどうするつもりだ?

 ともわれ、覚悟を決めるしかない。

 相手は、戦車でも戦闘機でもターミネーターでも化け物でもサーヴァントでもない、人間だ。

 多少、条件に不利はあるが、やれる。

 トリベールは、ドアのほうへ飛び出し、生きているか死んでいるかもわからない小美野を窓から投げ落とした。

 生きていれば、優しい危険生物扱いされる人間が一人増えるが、いまは気にしている場合じゃない。

 室内から人影は見えない。

 右か左か解らないが、せめて、得意な間合いで勝負を仕掛けよう。

 相手の位置については、仕掛けて確認するしかない。

 右に銃口を向けて飛び出し、いないと見るやすぐさま左を向いた。

 いきなりドアを閉められて正面から激突とならなかったのは有難いが、相手が相手だけにすでに退路は断たれ、どちらへ進んでも誘導されたように感じる。

 少女の手にしたメイスが突撃してくる。

 トリベールは、それをナイフの柄で受けた。

 見た目は華奢でも、相手は魔術師だ。

 素手で首の骨をへし折るくらいの強化魔術は使ってくる。

 事前情報によれば、彼女は、訓練として巣立ち直前の子熊とその母熊一家と戦ったが、熊の親子はまるで歯が立たず一方的に殺されたらしい。

 その程度では、化け物と呼ぶにはほど遠いが、治癒魔術が少々出来るだけトリベールにとっては脅威だ。

 しかも、メイスは、防具の上からでも致命傷を負わせることが出来る武器だ。

 防弾ベストを着て刃物を相手にするよりは場違いではないが、戦闘服の上からでもまともに食らえば骨や内臓に響く可能性があった。

 対生物なら、外郭を無視して内臓を狙うのは、どこでも変わらない。

 いくら大型とはいえ、ナイフはそんな武器を受け止めるのに使っていいものでもない。

 それに、この状況は、彼女に暗示を掛ける時間を与えてしまう。

 止めるも耐えるも出来ない相手に、不要な近接を続けるほど、愚かなことはない。

 しかし、実戦経験のある魔術師といえど、敵地にいつまでも留まるほど人間離れしたことは、そうそう出来まい。

 暗示だの魔術だのを使ったところで、多数の人間を圧倒できるなら世話ない。

 回避に徹しつつ、救援を待つのが自分とっては安全手ではあるが、それでは被害を増やしてしまう。

 ならば、一人で仕留めるまで!

「火が着いたかしら?」

「少しだけ……ですよ!」

 トリーベルは、この娘とも呼べる年代の少女に対して虚勢を張った。

 メイスにナイフの柄を乗せて跳び、天井を足場にして、フェリパの後ろへ回った。

 振り向き様に、フェリパが踏み込んでくる。

 さすがに、反応が速い。

 メイスを受けず、その場から下がらずに避け続けた。

 攻める隙は、なかなか見つからない。

 フェイントすらしてこないとは、駆け引きは嫌いなのか?

 そんなとき、トリベールが使っていた部屋から爆発音が鳴り響いた。

 トリベールは、壁まで破壊されたら、どうしようかと心配したが、耐震強度のおかげか取り越し苦労で済んだ。

 相手が、不測の事態である爆発に、どれほど動揺してくれたかは解らないが、この隙に攻めきれなければ、この場を切り抜けることはできない。

 当たれば致命傷になりかねない武器を相手に、拘束を目的とする決闘。

 せめて、相手が男だったら良かったのに。

「自分のいた部屋が爆発したのに気にならないの?」

 部屋自体は、気にならない。

 気になるのは、ある実験の使用されるはずだった特注の狙撃銃。

 北米支部にいる友人に頼んで、アメリカ本部から回してもらったもので、材質上、通常の手流弾程度では、破損することはないはずだが、もし破損したとなれば、叱責は免れない。

「部屋の様子を気にして抑えられる相手ではないので」

 思考を切り替えるついでに言ってはみたものの、彼女も自分の部屋が爆破されたにも関わらず、攻める手が止まらないことから、いまの爆発が誰の仕業か感づいているだろう。

 それでも、意表は突けていたのか、動きがぎこちなくなった気がする。

 無論、フェイントの可能性も十分考えられるが、その上で押し通る!

「あくまで雇用関係ではなく、対等な協力関係にしたいというわけね?」

「察しが良くて助かります」

 なにせ、自分はマスターの相手だけで手一杯なのに、後ろにはサーヴァントも控えている。

 少しでも使えるところを見せて置かないと逃げることも出来ない。

「不要な営業ですが、貴方の気が済むのでしたら、しばしお付き合いしましょう」

 フェリパは、メイスを振り抜くと同時に左手をトリベールに向けた。

 ガンド撃ちと呼ばれる、どこにでもある呪いの類いだ。

 ガンド撃ちの威力は、ほとんどないものからマシンガンクラスまで、攻撃用ではなく特殊な術式そのもの付加して射ち出すものもあるとかないとか。

 なんにせよ、当たりさえしなければ、無反動拳銃の類いと変わらない。

 この間合いで、射線を確認していては、一瞬で判断しても遅い。

 射線は勘に、連射力は運に頼るしかない。

 しかし、両手で使っていたメイスを片手に持ち変えたのだ、出来た隙は強引にでも使わせてもらう。

 強化されている手足を打撃でダメージを与えるのは難しい。

 なら、狙うべきは基本通りの位置。

 人体の急所となる場所。

 彼女の令呪がちらりと見えた。

 牽制か、本命か、どちらともわからないガンドが顔の横を過ぎて行く。

 彼女のメイスが棘付きでなくて本当に良かった。

 

「私の実力のほどは、評価に値するレベルでしたでしょうか? チームも実戦に対応出来るレベルに仕上がっています。互いによい条件での交渉が出来るでしょう」

 メイスを足で押さえ、どちらかが下手に動けば、フェリパの首に当たる位置にナイフを着けてトリベールは言った。

「貴方のいる組織は、人を不必要に使い捨てるって有名なのだけど、貴方は違うのかしら?」

 そんなことを、魔術師に言われたくはないが、ゲストには、ゴマくらい擦らねばなるまい。

「私は必要と判断して、友人を殺し、その死体を盾に使った男です。今回限りの付き合いになる相手に手心を加えるなどと」

「なるほど、それが貴方の長所になるのかしら? ともわれ、降参しますわ」

 

 意思表示としてメイスを手放したが、優劣は変わらない。

 トリベールがサーヴァントが近くにいると勘違いをしていることではない。

 罪悪感。

 自身に向けられた恐るべき罰。

 戦場帰りが掛かりやすい病気ともいえる。

 肉体的苦痛は、訓練で耐えられるようになっても、精神的苦痛はいづれ終わるという希望なしに耐えようとすれば、それこそ精神を潰す原因になる。

 これは、暗示を掛けるのには、もってこいの隙間だ。

 神がなにをお考えになられて、肉体的苦痛より先に精神的苦痛を感じる器官をお授けになられたのかは解らないが、おそらく殺し過ぎを防止するためなのだろうが、フェリパはこれを生物が持つべき優しさだと思っていた。

 でなければ、思考という概念はこの世界から早々に消滅していただろう。

 愚痴を吐くくらいは、許してやるべきだ。

 それに聞いている者が、警戒すべき相手でも。

 本来は、表情も視線も囁きも、警戒すべき毒。

 その言葉を信じてはいけない。

 その眼差しを信じはいけない。

 その肢体を信じてはいけない。

 そんな相手に、彼は自身の耐性を頼りに、気を許した素振りをしながら交渉と共闘をしなければならないのだ。

 偽装した令呪も自らの魔力で偽装したものならば、そう簡単に見破れまい。

 不敏ではあるが、お互い仕事だ。同情は出来ない。

 目を見て話さないことぐらい許してやろう。

 逆に、それが彼にとって仇となるのだから。

 

 トリベールは、フェリパを伴って会議用の部屋へ移動した。

「いつでも動けるよう、サーヴァントを実体化させて置かなくても構わないのですか?」

 霊体化したサーヴァントは、こちらからもあちらからも干渉をすることは出来ない。

 即座に、判断してもタイムラグが出る可能性はあった。

「ええ、霊体化を解除してから攻撃しても十分間に合う位置にいます。それに、こちらのサーヴァントはアサシン。闇に潜むのは得手でしてよ」

 それを埋めるために、疑念の種を蒔き、躊躇わせる。

 アサシンは、呼ばれることが多すぎて対策が立てられたハサン以外のアサシンであると感づかせる。

 そうなれば、反応が遅れるのは仕方ない。

「そもそも、あなた方のサーヴァントに対する評価は、強大ではあるが恐怖には程遠いという位置付けでしょう?」

 そもそも、駆け引きに揺さぶりやハッタリは付き物だ。

 好きなわけではないが、アサシンの真名はまだ検討中のはずだから、その分、優位のはずだ。

「ほかの魔術師は別として、私はあなた方が所属している『組織』の能力を評価しています。数秒間だけでも、あの蜘蛛の身体に水晶のキノコを付けたことは、それだけでも驚愕に値するのです」

 わざとらしく『組織』という単語を強調した。

 後ろが見えているとわざわざ強調するために、表向きでも本来の名称でもない『組織』という呼び方を使ったのだ。

 鉄砲玉扱いなのか、それとも管轄が違うからか、彼にはなんの事だか判らないらしい。

 物体を水晶に換える能力を持つ蜘蛛型の生物がいるところまでは予測できるだろう。

 キノコの意味やそれでも吹き飛ばなかったことも予想できるだろう。

 だが、その意味までは予想出来ない。

 彼の組織内での立場は、そこだ。

「話が逸れましたね。では、改めてまして、条件交渉を始めましょう」

 動揺していないのは、訓練の賜物かブラフに見えたか、まぁ、御し難い女と見られなければ、それで十分だ。

 

 身体強化は、魔術師にとって基本だ。

 火を起こすにしても風を起こすにしても、土地との相性、本人の属性、出力の調整力などの個人差が出るが、身体能力ならば、属性は関係ないし、姿勢が良くなって身長は多少伸びるかもしれないが、出力を上げ過ぎたところで体重が増減するわけでもない。

 土地との相性が合わないなら、そもそも、その土地で活動するべきではない。

 それは、マスターでもサーヴァントでも変わらない。

 ゆえに、身体強化は基本なのである。

 

 朝から晩までという言葉がある。

 身体能力の強化は、魔力の消費は少ないが、それでも朝から晩まで使い続けるのはキツい。

 しかも、今回はそれすら使用禁止とされた状態でサーヴァントと一緒にランニングしていた。

 キツいを突き抜けて、なぜ死ななかったのか疑問な状態からミケリーノもダールマンも気を抜いてしまった。

 一度、気を抜いてしまえば、即座に同じレベルの緊張状態へと持っていくのはなかなかに面倒である。

 キャスターだけは、笑みを浮かべている。

 どのようなキツい労働も面白みのない雑務も笑顔で胸を張って行うようにと掛けた暗示のせいだ。

 人当たり良くという暗示も掛けているが、これも狂化のせいで万人受けするか怪しいものに変異している。

 キャスターは、自らにすら正体を隠し修行してきた男であり、サーヴァントとしての彼は、主神のためならば、すべてを犠牲してしまうのが平常なのだ。

「サーヴァントランサー、推参! キャスター組がなんで朝からランニングしてんのかは知らんが」

「たっ、助かった」

「サーヴァントランサー! 今宵の鍛練の締めにふさわしい相手だ。我ら二人は足手まといにならないよう下がっている。キャスターよ、張り切って鍛練するがいい」

「任されよ!」

「うん、状況はなんとなく飲み込めたが、緊張感を持ってくれ」

 二人の様子から二人は本当にサーヴァントのランニングに付き合わされただけというのは、わかった。

 しかも、マスターの話だと、早朝からずっと。

 相手の油断を誘う作戦なら、これ以上ないほどの結果を出したが、当人たちにそんなつもりはないだろう。

「んなこと言ったって、このバーサーカーもどきのキャスターは言うことなんて聞いてくれないんだぜ。オレ、マスターなのによ」

「バーサーカーもどきのキャスター……」

 あれが、依頼にあったバーサーカーのマスターか? こちらも暗殺の必要があるようには見えない、横の男はどうか。

「なぁ、社長」

「なんだ?」

「ランサーのマスターって男? それとも女?」

「男だ。魔術は強化回復を得意としている。経歴のほうはわからん」

「そうか。キャスター、もしもの時は助けてくれ、ほかは任せた!」

「任された!」

 強化が得意なら直接殴りにくるだろう。

 ミケリーノにして見れば、勝敗は、サーヴァント任せにしてくれれば、一番ありがたいわけだけど。

「キャスターねぇ」

 ランサーはニ槍の長槍を構えた。

 キャスターが、陣地作成だけを条件に選ばれるのなら、この手のタイプはけっこうな数の該当者がいるが、術者と見るにはいささか難がある。

 身体は屈強そのもの。

 槍で薙いだら、槍のほうが折れそうだ。

 こちらとしては、本人の能力値が高いタイプより陣地作成や強固な工房を持っていたほうが、陣地進行で崩しやすくなってやり易いわけだが、そう簡単には優位相性には出くわさないか。

「接近戦でランサーがキャスターに後れを取るわけにはいかないわな」

 幸い、こちらの武器は薙刀ではなく槍、突くのが本業だ。

 キャスターが、武器を召喚した。

 あれは木製の杖……ではなく槍?

「貴殿の槍術を私に見せてくれ!」

「ランサーに槍で挑むか? いいぜ、勝負!」

「行くぞ!」

 キャスターが吠え、突進する。

「来い!」

 ランサーも来いと言いながらも踏み込んだ。

 

 サーヴァントは、各クラスの基本値というものが存在するが、とかく、この耐久自慢の風変わりなキャスターにいたっては、筋力・俊敏・魔力・幸運に+が付いている。

 この補正は、一瞬だが、+一つで二倍、二つなら三倍。C+ならAを上回る能力を発揮できる。

 しかし、耐久A+に筋力Cの攻撃が通じないわけではない。

 キャスターの槍は、キャスターの体格と比べ細くバランスが取れていない。

 あれでは、扱い辛いだろう。

 リーチは、こちらとさほど変わらない。

 魔術に関して素人だが、その辺りの備えはマスターに任せればいい。

 注意連絡なし、良し。

 数度の打ち合い。まんざら素人ではないらしい。

 片眼による支障もない。

 しかし、槍兵に敵うレベルでもない。

 ランサーは、キャスターの槍を振り上げた隙を突いて、そのまま槍を腹に打ち込んだ。

 槍は貫通し、キャスターは呻いた。

「悪いが、戦場で敵に指南してやるほど面倒見は良くないんだ」

 これで、キャスターは脱落。

 しかし、ランサーが次に取った行動は長年の戦働きで得た、スキルにすらならないほど誰もが持つ直感に従ったものであった。

 ランサーは、キャスターに突き刺した槍を手放し後ろへ下がった。

 ランサーとして現界したおかげか、寸前のところでキャスターの槍を避けることが出来た。

 槍を引き抜く暇もないほどの一瞬だった。

「おしい!」

 ミケリーノが声を上げる。

 キャスターは、ゆっくりと身体を起こした。

 まさか、ランサーが槍の一本を手放すとは考えなかったようだ。

 苛立ちからか、腹に突き立てられた槍を片手で引き抜きそのままへし折った。

 傷は、治癒魔術で即座に塞がれた。

「槍の一本は封じることが出来ただけ良しとしよう」

「……喜んでいるところ悪いが、槍を一本取った程度で無力化できるほど日本人をあまく見ないことだ」

 戦場で槍が折れないはずもなく、槍で名の知れた武将も槍しか使えないでは手柄を立てられない。

「なるほど、強化が得意というのは伊達ではないらしい」

「どういうことだ?」

 強化魔術とは、文字通りの意味であり、一流ともなれば武器や服、さらに上、神代の魔術師ともなれば他者も強化も自在となる。

 宝具には遠く及ばないにしても実用性は十分にある。

「そのままの意味だよ。どこまで耐えられるか試させてもらう!」

「くっそ、キャスター、魔術使え魔術!」

 ミケリーノはそれを理解していないまま、サーヴァントに指示をだした。

「いや、これは日本の槍術を学ぶチャンスだ! ゆえに、わたしは槍のみで戦う!」

「んなこと言ってる場合か!」

 キャスターは、マスターの命令に反し槍での戦闘をご所望らしい。

 座に帰ってしまえば、現界中に得た経験のほとんどが他人事となってしまうというのに、理解に苦しむ。

 それに、槍で鍔競り合いなどという愚行をするつもりもない。

 突いては下がるを基本戦術に、払いと誘いと隙を突く一撃。

 型や流派が整っていない時代の槍術。

 故に、動きは実戦経験から予測するしかない。

 しかし、キャスターの本職は技や術を覚えること。

 自ら助言したり、部下や武器に命じて戦局を変えさせたことはあっても、術もなしに戦ったことはほとんどない。

 そうなると、キャスターには頑丈さしか残らない。

 それが、ランサーからすれば一番厄介であった。

 先ほどは槍で貫いたが、大したダメージは残らなかったようだ。

 それでも通じてはいた。槍を無力化する能力ではなく、耐える能力が働いたのだろう。

 槍に耐える能力、もしくは、致命傷を受けても動ける能力。

 どちらかを使って時間を稼ぎ、後ろの二人のどちらかが治癒魔術を使う。

 令呪を持っている男は、騒ぐばかりで魔術を使ったように見えない。

 どんどん、らしさが無くなるな。

 時間経過で強化されるかもしれないし、弱体化するかもしれない。

 どちらにせよ、手早く仕留めるに越したことはないだろう。

 マスター、首を取るぜ?

 ああ、見てはやれんが、派手にやれ。

「よしっ!」

 ランサーは、槍を構え突進した。

 キャスターはそれを迎え撃つ。

 狙うは胴体、槍を崩す。

 狙うは槍、その技を盗む。

 ランサーは、縦横無尽に駆け、槍を受つ。

 キャスターは、動作こそゆっくりだが、視線は槍を追って高速で動いていた。

 そうして、ランサーの手癖を技として記憶していった。

 そして、

「止めた!?」

「その動きはすでに見た。別の動きを頼む」

「なら、これはどうだ!」

 ランサーは、全速力で突きを放った。

「この国の言葉で言えば、その技も見切った、と言えばいいか?」

 先ほどと同じように、キャスターはランサーの槍を止めてみせた。

「……さて、どうかな?」

 ランサーが、笑みを浮かべた瞬間、ミケリーノの頭が銃弾で吹っ飛ばされ、それとほぼ同時にオジェットの肩を銃弾が貫通した。

 それに、キャスターが反応した隙をついて、ランサーは撤退した。

 

「さて、ミスタートリーベル。貴方はあれをどう見ますか?」

 オジェットを狙撃したポイントから少し移動した場所でフェリパが聞いてきた。

「魔術に関して無教養なのですが」

 ランサーのマスターがサーヴァントの不利を悟り、キャスターのマスターを射殺した。

 銃を使う魔術師は多くはなく、技量からの絞り込みも、意味があるかは別として出来なくはない。

 しかし、湿らせたマントだけで位置を隠せたと余裕を見せるスナイパーが聖杯戦争に出てくるだろうか?

 それで聖杯を狙っているとならば、銃を扱った経験はあっても、実戦で使った経験は浅い者の犯行であろう。

 しかし、目的が聖杯ではなくキャスターのマスターであるミケリーノ=コスタの殺害なら、事は変わってくる。

 こちらなら、目的は果たしたし、その後を気にしなくてもよいのだがら、自分が討たれるのも覚悟の上というわけだ。

「絞り込むには情報が不足しています。結論を出すには早計かと」

 あのタイミングで撤退しては、キャスターはベルノルト=スキットル=ダールマンと再契約をして戦線に復帰することは目に見えているだろう。

 時計塔に雇われる男が、その程度のことに気づかないものか?

「狙いは、今後のランサーの行動如何で見えてくるでしょう。私が言えるのはここまでです」

「そう、そうね」

「別に懸念があるのでしたら伺います。それとも、ダールマンはこちらで狙撃して起きますか?」

 狙撃も人並み程度には出来るところも見せて置かないと、本当に元軍人かと笑われてしまう。

 わざと、ランサーのマスターを生かすようにしたのがバレるのはもっと不味い。

「いまはいいわ。キャスターのマスター、事前調査で過去が判らなかった人物の片方があっさり死んで拍子抜けしただけです」

 キャスターのマスターに関してはこちらと同じ。

 この分だと、ランサーのマスターの経歴もある時期を境に追えなくなっているのも、ダールマンや歌方スミレの経歴に不自然な箇所があるのも同様か。

 『改竄された文章』の写しから改竄を取り除くことは、ミーム汚染に耐性があっても難しいのだ。

「どちらにせよ、ランサー単独ではキャスターには勝てないでしょう。所持している宝具がどのようなものか判らなかったのは残念ですが、アサシンの敵ではありません」

 彼女は、自らのサーヴァントに自信を持っている。

 アサシンで、そこまで優秀なサーヴァントがいるのか?

 足を掬われないことを祈ろう。

 

「すまん、マスター。仕損じた上に離脱まで手伝ってもらって、サーヴァントの恥さらしだ」

 命じられた通り、計算通りという顔をして撤退したが、これは腹を切って詫びねばならぬとランサーは考えていた。

 最後の突きが止められた瞬間、ランサーは宝具を発動させようとして失敗した。

 通常ならあり得ないが、とにかく起こった。

 ならば、電撃をと思ったが、それもダメだった。

 おかげでオジェットは、二人を狙撃するつもりが、ダールマンからの反撃を受ける覚悟でキャスターのマスターだけを狙撃するはめになった。

 他のマスターに位置を知られるのだから、本来は令呪も使わねばならないところだが、そうしなかったのは、まだ使い道があるとかいう寝ぼけた理由ではなく、互いに牽制しあって追いかけてこないと踏んだからである。

 現に、肩に受けた傷はすぐにふさがった。

 毒や呪いの類いもない。

「いや、お前が苦労したおかげでキャスターの真名に当たりが着いた」

 そんなことは、気にもせずオジェットは言った。

「本当か!?」

 ランサーにしてみれば、確かに、宝具かスキルを食らったようだが、真名解放がされた様子はない。

 武器が木製以外に、どんな情報が隠れていたのか?

「種を明かしてしまえば、奴の使った宝具は真名を開かす必要はないものだった。かといって、常時発動型ではないだろう。おそらく、ある種のキーワードを相手に伝えることで発動するタイプだ」

 ある種のキーワード……、

「貴殿の槍術を私に見せてくれ、か?」

「察しがいいな。当たりだ」

 キャスターの宝具。自身の正体を隠した状態、現在の状態で相手に技の手本を見せることを強制するのが、キャスターの宝具の効果だ。

 武器が木製の槍、キャスターでありながらAランクの耐久。

 ランサーの武器制限を無視する宝具を上から塗り替え、それでいて、近くにあるだけで呪いの類いを打ち払う御刀を封じる宝具。

 後は、真名がわかった相手に対しても発動するか、すでに習得済み、見切った技能に対して発動するかは、仕掛けてみなければわからない。

「お前の攻撃用の宝具は御刀を使う。武器を槍のみに制限されていれば発動出来るわけもない」

 ランサーは、宝具を複数所持している。

 その一つが、ある一定以上の実力のある相手、要は武将格に該当する相手のみに使用できる攻撃用のものであり、生前、縁のあった刀を使用する。

 本来はトドメ専用で、威力が低く刀が破損する可能性もあり、使うサーヴァントは滅多にいない。

 ランサーの場合、無窮の武錬なしで、刀を平常使用できるランクまで上げる宝具を二つ所持しているが、ランサーの持ってきた御刀は、呪詛や病、鳥系が相手ならともかく、それ以外にはただの刀としか扱えない。

 ビームが出せるだの、ほかの能力なんてない。

 そんな御刀でサーヴァントと戦うわけには、いかない。

 もし、キャスターが魔術による遠距離攻撃をしていた場合のランサーは火力不足を承知で電撃で反撃し、異常に気づいただろう。

 故意にやったのなら、キャスターも中々に食わせ者だ。

「仮に名付けるなら、なんとするのが適切か?」

 智を欲し、他者を誘惑し、求めるものを見させ、それを学習する者。

「やっぱり、見切られる前に仕留められなかったおれの落ち度か」

「同時に、偽装の槍を持たせた上に、即座に宝具を使わせなかった俺の落ち度でもある。令呪の消失も確認出来なかったが、ダールマンがキャスターのマスターに化けていたか否か、こちらで得た情報も含めて依頼主に確認してもらわねばならん」

 仕事の一つは片付けたと中間報告はしたが、突発的な事故も聖杯戦争には多い。

 キャスターのマスターが、死亡した場合、強制的に蘇生させるレベルの魔術刻印を持っているなら、今頃、元気に跳び跳ねているだろう。そればかりはどうしようもない。

 

 

 




東京タワーが赤い本当の理由エンドからの日本の少子化の本当の理由エンドになってた気づいたのが、5月の終わり、
話の一部が飛んでいることに気づいたのが、今日、いつも一手遅い
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