ガンバライダーロード000   作:覇王ライダー

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第2話

ロードが目覚めた時、目に見えたのは天井だった。

白く塗られた天井には小さな無数の穴が開いていて数えるのにも億劫になる。少なくとも彼が倒れた実験室とは違うことは明らかであろう。

じゃあ一体ここはどこなのか?彼はあの時何があったのか?最後は感電して笑っている研究員達がいたことは思い出せる。しかし不思議なことにその後のことを何も思い出せない。なぜ?何があった?何一つとして記憶から這い出てこない。

「起きた?ずっと寝てて心配だったんだから。」

ロードが声がした方向に驚いて見ると、そこにいたのは環だった。普段見慣れていなかったから気付かなかったがそうか、ここは医務室だったのかとようやく理解できた。そのまま黙って起き上がると目の前には時計が見えた。彼が実験を行ってから早十二時間程が過ぎていた。

こんなに睡眠を取ったことなんて初めてかもしれない。いや、恐らく致死レベルのことでもなければここまで寝ていることなんてないだろう。ということは自分は致死レベルの何かが起きてここまで眠っていたという推測になるのか?

冷静になっても何も思い出せない。自分に何が起こったか思い出すべきだ。しかし何も・・・。

環は寄り添ってロードの手を握った。冷たかったロードの手に少しずつ温度を与えていくようだった。

「途中までは精神が安定してたんだけど電気ショックの後から精神状態が不安定になって暴走したって聞いた。ロードは何か覚えてることある?」

ロードは首を横に振る。環は頷いてロードへと問いかける。

「・・・ねぇ、二重人格って知ってる?」

「二重人格?」

環はロードの手を離して立ち上がった。ベッドに寝たままのロードは環の方へと体を翻した。

「自分の中にもう一人の自分がいる人が偶にいて、その時の記憶が無い人もいるらしいの。」

自分がそうだと言いたいのか?ロードの中には否定の気持ちもあるが、もしそうだとするなら今回のことは全て納得がいく。機材を破壊したことも電気ショックの後を覚えていないことも全て自分じゃない"もう一人の俺"がやったとするなら・・・。

様々なことを考えてしまうと頭がパンクしそうになる。険しい表情を浮かべるロードへと環は再び声をかける。

「ねえ、ロード。」

「えっ?あ、はい?」

慌てふためくロードにまあまあと宥める。

「今度、お休みに街に行かない?」

ロードは黙った、いや黙らざるを得ない。

この人は何を言っているのか?ここで俺がはいそうですね行きましょう。なんてことを言ったところで通るはずがないだろ。

整理して話そうとした時環が畳み掛けてくる。

「あぁ、ロードの休みに関しては私が申請を出して社長には言ってるから。」

「言ってる!?」

そんなことが可能だなんて聞いたことがないし出来る人なんて聞いたことがないぞ。余計に混乱して話を切り出せないロードへと環は寄って囁く。

-ロードも外の世界を知りたくない?-

 

メディカルチェックが終わるとロードは付き人の研究員と自分の部屋へと戻る。腕に手錠のような枷をつけられて歩くため歩きにくくて仕方がない。二人は無言で無言のままエレベーターに乗りそのまま降りていく。

地下では殆ど清掃などもされていないからコンクリートの悪臭と人々の汗や色んなもの混じったような臭いが鼻を刺激する。

自分がもっとマトモな人間ならこの臭いだけで倒れていただろうによくこんなところで生きていけるもんだ。

研究員とともに歩いて行くとロードの部屋へとついた。部屋のロックが開くと研究員はロードを投げ飛ばして部屋に放り込んだ。その流れるままロードは投げ飛ばされて壁に叩きつけられた。ドアが閉まるまで研究員の影が映る。顔までは見えないがおそらく惨めだと、愚かだと笑っているのだろう。マシンを破壊することしか出来ないようなお前は兵器だと笑っているのだろう。

ドアが閉まると、ロードは思い切り壁を蹴った。

「俺は・・・どうして。」

こんなはずじゃなかったのかもしれない。幼い頃から訓練してきて傷ついてきた。でもこんな感情は初めてだ。悔しくて辛くて歯を食いしばらなきゃ抑えられない。

何がいけなかったのか。何故こうなってしまったのか自分でさえもわからない。

「でも・・・。」

外の世界に行けば何故自分が戦うのか。何のための今なのか、分かる気がしているのかもしれない。

 

GRZ社の研究室では日々ガンバライダーたちの機器の開発、そしてガンバライダーをアシストする研究者たちの研修が行われている。

部屋自体はこじんまりとしているのだが、周囲には機器や何やら難しそうな文章の並んだ書類が重なっている。

環はそこにある人を探して尋ねていた。

「あぁ、シルバくん。それに・・・」

「九重ですよ。そろそろ覚えてください?」

環がそう九重に注意を受けると、シルバへと駆け寄った。

シルバはここに勤めて二年目の研究員であり、九重とは同期で研修の頃からの仲なのだ。

「二人はいつも一緒だよね。」

「そりゃまあ、俺たちの研究が似たところにありますからね。」

環にシルバがそう明るく返す。

彼らの研究しているのはガンバライダーの成分から得た情報を具現化する研究だった。

九重は眼鏡を上げると、データをじっくり見つめる。そこに映っていたのは以前模擬戦を行ったロードの戦闘だった。

「これロード?」

九重はうなずいてじっくりと見つめる。

「この泥の成分は物質をなんらかの形で形成してその姿へと変える物質。つまりこれをライダーに適応させれば仮面ライダーを擬似的に作り出せるというわけです。」

泥は人や様々な形へと変化する。これを利用すれば確かに仮面ライダーの形に変えることは可能だ。しかし

「そんなことが可能なの?」

環の質問に嬉しそうな笑みを二人は浮かべた。

「不可能を可能にする。それだけの科学力が今のGRZ社にあると分かれば世界はGRZ社や僕らにがぜん注目する。それだけでもワクワクしますよ。」

二人の研究オタクは止まりそうにないな。そう環が諦めに近いため息をついたあと、シルバの肩を触る。シルバは集中して気づかなかったのか肩を少し震わせる。

「ビックリした・・・。どうしたんですか?」

環は笑顔でシルバへと寄り添う。

「それより、"アレ"は完成した?」

「あぁ・・・"アレ"ですか?」

三人は同時に液体の入ったボトルへと目を向けた。その中にはリンゴを模した紋章が刻まれた錠前が入っていた。

"リンゴロックシード"

かつて仮面ライダーバロンが使用したロックシードというアイテムで、北欧神話に伝わる"黄金の果実"、万物を司る力を秘めた力を誰かが何かしらの形で擬似化させたものだ。

九重とシルバはうーん。頭を掻いた。

「試験的に使用可能ではあるんですけどね」

「まだまだ本家には出力が劣るようでして。」

環は二人の言葉にふーん。と頷く。

「何が足りないの?」

九重はデータを見せた。

「リンゴロックシード、もといその元にあるゴールデンロックシードはヘルヘイムの森の力や人の闇を食らってその出力を上げていたと考えられます。」

「つまり、そこまでに出力を出せる物質が無いって話?」

シルバは頷いて話を続ける。

「たとえ人の闇を食らったとしても環さん一人の力でどこまでの出力を出せるか・・・。」

環はリンゴロックシードを眺めた。

黄金の果実、ヘルヘイムや心の闇の力、もっと知るべきところはこの会社にもあると言うことか。

 

目覚ましのアラームが鳴るとロードは飛び起きて立ち上がった。

彼がそうなるのも無理はあるまい、彼にとって初めて今日が外に出る日なのだから。

支度をすませると、研究員と共にエレベーターへと乗る。今日は仏頂面の研究員の顔も笑っているように見える。そうか、俺が外に出ることを喜んでいるのか、そう錯覚をしてしまうくらいだ。

エレベーターから降りると、そこで環が出迎えてくれた。

「ロード、行こうか。」

ロードは頷いて歩いて行った。研究員はその後ろ姿を見送った。

研究員はため息をついてエレベーターへと乗る。

「よくあの人が許可を出したもんだな。」

-檀 黎斗-

GRZ社の社長であり、ゲンムコーポレーションという大手ゲーム会社の社長を父に持つエリート中のエリートだ。

彼の規制は厳しく、社員たちでさえ来た瞬間緊張感が漂う厳格な人間があんな兵器を外に軽々と出すだなんてとても思えない。

何か裏があるはずだ。あの女医は何を隠し持っている?研究員の頭では整理しきれないほどの推測が頭を過ぎていくのだった。

 

街へと着くと、二人は環の車から出た。

環が用意していたのは大きなワンボックスカーで恐らく二人の買い物くらいでは満タンにならないだろう。

ロードには周囲の光景が新鮮なのかあたりを何度も見渡す。

「そうよね、あなたにとっては初めて外の世界だもんね。」

ロードは環の言葉に頷く。

「外がこんな広くて大きいと思ってなかったよ!それに空気も美味しい。」

はしゃぐロードの手を取って環は歩き出した。ロードもそれについていくように足を進める。

ロードは普段の服装じゃまずいと環が用意してくれた白いシャツの上に青いジャケットを着ていた。これもまた新鮮なのか何度も手に取って触っていた。

「ほらほら、色んなところ行こう!」

「そうだね!俺も色んなところに行きたい!」

環がそういうとロードはそう返した。

環もこんな明るいロードの笑顔を見るのは初めてかもしれない。見慣れない笑顔に環は少し笑みを返した。

「環さんどうしたの?」

ううん。と環は返した。彼自身が喜んでいる。それで今は良いのかもしれない。

 

-GRZ社-

檀の元に訪れたのは研究員の九重、そしてシルバだ。檀は大きなデスクチェアに座って二人を見た。

「どうしたんだい?」

九重は大きく息を吸って檀へと問いかけた。

「環さんに緊急用の戦極ドライバーを渡したのはあなたですか?」

檀は不敵な笑みを浮かべる。九重とシルバはさらに問い詰める。

「ライダーシステムの危険性はあなたが一番わかっているはずだ。認識が必要ない戦極ドライバーでも危険」

「君たちは私がなんの考えもなしに彼女に力を託したと言いたいのかい?」

二人は黙り込む。檀は机に肘をついて話を続ける。

「君たちが研究する以前からガンバライダー及び仮面ライダーの力を研究していたのは存じ上げているね?」

二人は頷いて檀の話を聞く。檀はゆっくりと立ち上がる。

「その中でも戦極ドライバーは認証の必要ない黒影トルーパーがいることから注目されていた。そして開発者である戦極凌馬でさえ作れなかったライダーを我々は作り上げた。」

二人の前にプロジェクターから映像が流れる。そこに書いてあった文字は

-プロジェクト セレジオン-

 

ロードと環の買い物が終わると二人は疲れたのかゆっくりと車に乗り込んだ。

ロードの服やアクセサリーなど沢山のものを後ろの荷台に詰めていた。

「疲れたね!」

ロードの嬉しそうな顔に環は手を伸ばす。ロードは動かずそのまま凍ったように止まった。

「ソース付いてるよ。」

ロードの口に付いていたソースを指で取ると、環はソースの付いた手をティッシュで拭き取った。

ロードもごめん。と少し照れたように言った。

「ロードも楽しそうでよかった。休暇を取った甲斐もあったわね。」

「あぁ!ホントに外の世界ってこんなに明るくて楽しいんだね!」

ロードの嬉しそうな横顔を環は見つめた。

彼とは医者として十年近く見てきたつもりだったが、こんな表情をするのは初めてだ。本当に純粋な子供のような明るくて光った目、普通に暮らしている子供達と何も変わらない本当に純粋な子供だ。

こんな子供でさえ戦いに向かい死んでいく。そんな現実がふと過ぎると環の表情は少し陰った。だが

「環さん?」

ロードがそう問いかけると環はふと我に返って笑顔を戻した。

「ううん、今日楽しかったね!」

そう言い、車を発進させようとした時だった。

「ッ!?」

目の前に暗い緑色の虫のような生物が蔓延っていた。大きさはおそらく人間と同じくらいだろうか、ロードと環はすぐさま車から降りた。

"インベス"

本来ならヘルヘイムの森に住む怪物で人々を傷つけかねない凶暴な性格だ。

ロードが向かおうとした瞬間、環はロードを止めた。

「私が行くから大丈夫だよ。」

「環さん・・・?」

そう言って環は車の中からベルトを取り出して腰に装填する。そして腰元からロックシードを一つ取り出した。

"オレンジ"

インベスたちへと環は突撃していく。

「久しぶりに力を借りるよ-セレジオン-」

-変身-

環は空中から現れた橙色の塊を蹴飛ばしてインベスへとぶつけた。塊は環の元へと戻ってきて頭へと被り物のようにくっついた。

"オレンジアームズ 花道オンステージ"

環が変身した戦士は一気に駆け抜けてインベスたちを切り裂いていく。ロードはそれをただ見つめていた。

「すげえ・・・。」

呆然としているとあっという間に最後の一体を切り裂いて爆発させた。

爆炎と煙の中、彼の目の前にいたのは橙の鎧を纏った白銀の騎士である。

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