infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来   作:伊勢村誠三

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ケイタ「さて、番外編を挟んで本編だけど、前回までどんな感じだっけ?」

セシリア「全く、これだから低脳な男は。
ウイングナイトとトラストが戦い始めたあたりですわ。」

マシュ「それからケイタさんのIS、打鉄赤龍も登場しましたね!」

セシリア「あら、そうでしたの?
よかったですわ。流石に量産機に乗ったあなた方を一方的に屠るのは気がひけると思っていたところでしたの。」

マシュ「そんな代表決定戦に繋げる為のエピソード!」

ケイタ「どうぞ!」


Dragon against Dark wing その5

1

ブラット・バレットはモトクロスバイクのレーサーだった。

「ブラット・バレットは試練に勝つ」を座右の銘とし、向上心に満ちた好漢だった。

実力もあり人気もあった。

これからももっと上を目指せる。

自分こそが最高のレーサーになれる。

そう信じて日々レースの腕を磨いていた。

 

しかしある日、彼に敵レーサーのバイクに細工をした疑惑がかかった。

謂れのない疑惑を彼はもちろん否定した。

しかしアリバイも無く、証拠もない彼は除名処分を受け追放されてしまった。

 

「私はこの試練にも必ず勝ってみせる。」

 

除名を言い渡された時に責任者にそう吐き捨て、ブラッドはその場を後にした。

しかし、啖呵を切ったはいいもののブラットは探偵じゃない。

捜査のイロハはもちろんのこと、誰かのバイクに細工をするようなレーサーの心当たりもない。

 

なんせ自分がこんな目に合うまでレースはもっと綺麗だと思っていたのだ。

普段から「あいつはそうゆうことをする奴だ。」みたいに誰かを見た事などなかったのだ。

 

手詰まりだ。

そう思いかけた時だった。

自分が不正をしていない証拠のビデオを持っているという男、チャーリーと出会ったのだ。彼はこう言った。

 

「私はある大会をプロデュースしていてね。

バトルクラブ選手権というのだが、どんなものかと言うと相手が戦闘不能になるか降参するまで戦う以外一切ルールなしレフェリーなし。

人生ってやつと同じだな。

もし負けたら、、おっとそうゆう話は嫌いだったね君は。」

 

勿論彼は引き受けた。

ブラット・バレットは試練に打ち勝つ。

どんな試練だって、バトルクラブ選手権にだって勝ってみせるとそう意気込んでトラストのデッキを受け取った。

 

そして今目の前な倒すべき敵がいる。ならばやる事は一つだ。

メタルホーンとダークバイザーが火花を散らした。

トラストはメタルホーンの先端についた角型の刃をフェンシングの様に使い、ウイングナイトを追い詰めた。

 

「一回戦からなかなかの強敵だ。俄然、やる気が出る!」

 

「お褒めに預かり光栄だぜ。ライノ擬き!」

 

ウイングナイトはバイザーをホルスターに収めると体術に切り替えた。

アドベントサイクルを足場に高所からのキック、足払い、立ち上がって飛び回し蹴り。

 

これに対してトラストは今度はメタルホーンを盾のように扱い、足払いをジャンプで避けるとバックステップで回し蹴りを避けながら体を大きく沈ませ、低姿勢から強烈なタックルをお見舞いした。

 

街灯に叩きつけられたウイングナイト。

街灯をへし折りながら、その衝撃を一身に受けてしまう。

 

「君も素晴らしい選手だが、勝つのはこのブラッド・バレットだ。」

 

ここで君はゲームオーバーだ。

そう言ってトラストは確実にトドメを刺すためだろう。

ゆっくり一歩づつ近づいて来た。

 

何とか少しは体の痺れが抜けたウイングナイトは頭の中で作戦を立てた。

近づいて来た所をナスティベントで怯ませ、ゼロ距離のファイナルベントで、土手っ腹に風穴を開ける!

ゆっくり立ち上がりカードを構える。

 

「いいぞ、そのガッツだ。

それでこそこのブラッド・バレットの試練に相応しい。」

 

こちらがカードを使おうとしてるのを察したトラストはバイザーを開けファイナルベントのカードを取り出す。

どうやら真正面から相手を倒す事に凝るタイプらしい。

ならば作戦変更だ。

 

ナスティベントを相手がファイナルベントを発動しようとした瞬間に発動して怯んだ隙にファイナルベントでトラストを契約ビーストごと貫く。

運命の一瞬まであと僅か、そう思われた時だった。

 

<ATTACK VENT>

 

「ガッ!」

 

突如金色の帯のような物がウイングナイトの首に巻きついた。

 

「死ねぇ!」

 

(この声はブレードか!)

 

どうやらお互いがお互いに集中しきって周りが見えなくなるのを待っていたようだ。

両手には何故かウイングナイトの腰に収めてる筈のダークバイザーを持っている。

 

そういえば奴はドラゴンナイトのドラグセイバーを持っていた。

奴は武器をコピーするカードを持ってるのか!

気づいたがここまで追い詰められてはもう遅い。

 

(エリー!)

 

思わず叫びそうになったその時だった。

 

<ATTACK VENT>

 

ブレードの背後から現れた犀型の大型ビースト、メタルゲラスがブレードを突進で吹っ飛ばし、ウイングナイトからブレードの契約ビースト、ガルドサンダーを引き剥がした。

 

「引け。君とはフェアに決着をつけたい。」

 

「、、お前はどうするんだ?」

 

「私はあの卑怯者を倒さなければ気が済まない。」

 

「そうか、うっかりベントされるなよ?」

 

「君も夜道には気を付けてな。」

 

ああ。と短く返し、ウイングナイトはハイウェイから飛び降りた。

落下しながら自身の専用IS、打鉄黒翔を部分展開してゆっくりと地面に降り立つ。

ISには飛行機能が付いるためコミックの超人の様に降り立つことが出来るのだ。

もっともウイングナイトは、蓮は散々ライダーの時にダークウイングでやっているので新鮮味は感じなかったが。

 

「ったく、月が綺麗だな。」

 

こんな綺麗で、ここが日本なもんだから口が滑りかけたじゃねえか。

そう愚痴るとウイングナイトは鏡に飛び込んだ。

 

 

 

2

ウイングナイトが無事戦線離脱したのを確認したトラストはブレードに向き直った。

視界の右端ではメタルゲラスとガルドサンダーが戦っている。

 

「どいつもこいつも、私の邪魔をするな!」

 

ガルドセイバーを大上段に構えたブレードはトラストに斬りかかって来た。

しかしタックルなどの突進系の技はトラストの十八番。

ブレードが剣を振り下ろすより早く懐に飛び込むと腹に正拳突きをくらわす。

 

「邪魔だと?一対一の決闘を先に邪魔したのは貴様だ。

貴様のような最悪の人間に選手の資格などない!」

 

「なんだと!?」

 

メタルホーンとダークバイザーがしのぎを削る中トラストはブレードに語りかけた。

 

「君のような自分の弱さを見ない心の貧しい奴がいるからさっきの彼のような良い選手が損をする。

私はそれが我慢ならないのだ!」

 

メタルホーンの角でフェイントからのオクターブ。

上段を狙うと見せかけて下段に仕掛ける。

体勢を崩した所に渾身のアッパーカットを食らわした。

冤罪にされてからというもの、

以前にも増してブラッドは卑怯な真似に嫌悪を示し、

スポーツマンシップに重きを置くようになった。

 

恐らく今ここで目の前の敵を倒さなければ、

自分とコウモリの彼は安心して戦えない。

それだけは何があっても認めてなるか。

 

それだけが、卑怯者に対する怒りだけが今のブラッドの戦闘への情熱を支えていた。

ブレードもまた然り、ただし彼女の怒りの根本は親友に対する束縛にも似た歪な親愛だが。

 

「ああああああああああ!」

 

「!?」

 

起き上がり、剣を構えて突貫するブレード。

先程のアッパーにまあまあ自信があっただけにトラストは一瞬止まった。

だがすぐに真正面から叩き潰すべく構え直す。

 

<LAUNCH VENT>

 

しかし両者が激突するより先に両者の契約ビーストがビーム攻撃を食らって両者の間に倒れこんだのだ。

 

「メタルゲラス!?何者だ!」

 

返事の代わりにビームが飛んできた。

トラストはメタルゲラスを退避させると素早くウイングナイトが乗ってきたアドベントサイクルに乗り、巧みなライディングでビームを避けながらハイウェイの出口に向かっていった。

 

「ふん。アホばっかで楽だぜ」

 

ビーム攻撃の犯人、トルクは悔しがって街灯に八つ当たりするブレードを見下ろしながらベンタラを後にした。

 

 

 

3

なんとか今日までに終わらせたかったとこまで終わらせられた。

最後の部品を作りかけのISにつけ、更識簪は脱力しながら深くため息をつき背後の椅子に座り込んだ。

 

あれからと言うものの、海之に話しかけられる度にライダーだって事がバレたんじゃないか?

とヒヤヒヤしながら過ごしていたせいか、

いつにも増して寝つきが悪くなったし、

食欲も失せたし、

昨日なんかぼーっと水の張った洗面器を眺めたまま夜明けを迎えてしまった。

 

そろそろ体にガタが来そうだ。

そんな事を思いながら整備室を出た直後。

 

「ちょっとよろしいかな?」

 

短い銀髪のキリッとした女性が声をかけて来た。

こんな学園の外れに用事があるとは思えない。

私目当てか?そう思って、まさか、自意識過剰だ。

と心の中で自分を嘲笑った。

私は唯一専用機の完成していない代表候補生だ。

そんな人間に興味を抱くなんてあるわけが

 

「私はロランツィーネ・ローランディフィルネィ 。

ロランと呼んでくれ。唐突だと思うのだが、

貴女とお付き合いをさせて頂きたい。」

 

「、、、え?」

 

一瞬で簪の思考回路はフリーズベントを食らった様に凍りついた。

7秒かけてなんとか頭を動かす。

まさか、アレか?

女の子なのに女の子を性愛的に、

パートナー的に見るアレか?

 

一応そうゆうのが居る事は知っていたが、

まさか自分が巻き込まれるとは。

なんとか言葉を返そうとするが、上手く言葉が見つからない。

いっそ逃げてしまおうか?そう思った時だった。

 

「待ってくれ、せめて返事を聞かせてくれ。」

 

(早い!?背後!?)

 

いつのまにか背後から抱きつかれていた。

さわさわとロランはいやらしい手つきで簪の体を弄り始める。

 

(デッキ!、、、、部屋だ。)

 

少しでもライダーの事を考えないようにする為にアックスのデッキは部屋に置きっぱなしだ。

 

「何を探してるんだい?

ポケットに入りサイズの物より大事な話の途中だよ?」

 

左胸を思い切り揉み上げられ

 

「ひうっ!」

 

残る右手が下腹部に伸びてくる。

性の諸々に疎い箱入り娘の簪にもそれだけは不味いのはなんとなく分かった。誰でもいい!誰か助けて!叫びたかったが震えきって声が出ない。

情け無い。自分は助けても言えないのか?そう諦めかけた時だった。

 

「あんた何やってんの?」

 

ロランの右手を誰かが掴んだ。

若い男のガッチリした腕だ。

その先を見ると特徴的ではないが、イケメンの部類に入るぐらいの、良くも悪くも普通そうな茶髪の少年がいた。

 

(網島ケイタ?)

 

「なんだい?私は今から彼女と愛を確かめるとこなんだ。」

 

「こんな往来のど真ん中で?」

 

「君以外いないだろ?」

 

「一人でも通行人がいるなら、目撃者がいるなら、

その子に泣き寝入りなんてさせない。」

 

「、、、いいさ。すまない簪。

柄にもなくエキサイトしてしまった。

私は本来フェミニストなんだ。

許してくれだが、必ず君をものにしてみせるよ。

では、御機嫌よう。」

 

そう気障ったらしく挨拶するとロランは角の向こうに消えていった。

 

「平気?、、な訳ないか。」

 

俯いたまま顔を上げられない。簪はケイタの顔を見れなかった。

普段ケイタがどんな風にしてるか知らないが、

駄目だと思った事を遠慮無しに言える彼が眩し過ぎた。

 

「、、ありがとう。じゃあ。」

 

「あ、ちょっと!」

 

制止を振り払って俯いたまま量に向かって走り出した。

背後でまだケイタが何か言ってるが聞こえない。

ほっといて欲しかった。

 

「痛!」

 

そうか、今走ったらロランに追いついてしまうのか。

よく見てなかったが、私が頭からぶつかりに言った形になったらしい。

恐る恐る見上げると、

 

「全く、机の角の次は人の頭か、私の占いは当たるな。平気か簪?」

 

「え、えっと、、。」

 

「ちょっとまって、あれ手塚さん?」

 

「網島じゃないか。」

 

「あ、あっと、、、。」

 

「、、手塚さんはなんでここに?」

 

「整備室に忘れ物をしてな。君らもか?」

 

「まぁ、そんなとこ。ところで手塚さん。

さっき短い銀髪の人会わなかった?」

 

「合わなかったが?」

 

「なら良いんだけど。」

 

「そうか、あ、あと簪。夜は早めに帰った方がいいぞ。

さっきたまたま簪の星を見つけたが、

同性との付き合いの運がだだ下がりだった。

運命は変えられるが、私の占いは当たる。」

 

もっと早くに聞きたかった。

占いを真に受けるかはわからないが、

デッキぐらいは持ち歩いたかもしれない。

そう思うと心がより憂鬱になった。

 

「それじゃお休み二人とも。あまり夜更かしするなよ?」

 

「お休み、手塚さんって星占いも出来たんだね。

今度俺の星も教えてよ。」

 

「構わない。またな。」

 

そう言うと海之は足早に去って行った。

 

「えっと、網島、、くん?」

 

「ケイタでいいよ。えっと、簪さん。

直ぐそこだけど送ってこうか?」

 

「、、お願い。」

 

二人は歩き出した。

 

(男の子と二人で歩くなんて、久しぶり。)

 

簪は由緒ある更識家に生まれただけあって中々お堅く育った。

確か男の子と二人きりで外に出たのなんて小学六年の夏が最後じゃないだろうか?

あのあとお咎め無しだったのはバレてないからじゃなくて、

父が庇ってくれたからだと今なら分かる。

 

「簪さんって手塚さんと喧嘩してんの?」

 

「えっ!?、、違う。なんで?」

 

「なんか、手塚さんの顔っていうか、目を見てなかったから。」

 

「ちょっと、苦手なだけ。」

 

「そっか。ちょっと安心。」

 

「、、?」

 

「いや、ぶっちゃけ手塚さんって取っつきにくいし、

宇治松さん以外の人と話してんのあんま見ないじゃん?」

 

「え?……うん。」

 

「だから簪さんみたいに苦手なりに頑張って話しかけてくれてる人がいるならその内クラスにも馴染めそうだなって。」

 

「、、、ッ!」

 

お嬢の良いとこはなんだかんだ言ってちゃんと前向こうとするとこですよ。

幼馴染で、遊び相手で、あの夏自分を連れ出してくれた少年と目の前の少年の姿が重なった。

 

「、、ありがと。」

 

「え?」

 

「ううん、なんでもない。お休み、気をつけて帰ってね。」

 

「ん、じゃね。」

 

明日はやっと良いことがありそうだ。

少し軽くなった心を抱えながら簪は寮に帰った。

 

 

3

俺は何をしていたんだっけ?

どうやら俺、秋山蓮にしては珍しくボーっとしていたみたいだな。

寝起きみたいに頭がスッキリしないし、

足元がふわふわしていてなんだかそこに立ってるかどうかさえ怪しく思う。

それでもなんとかアンカーに行くために地下鉄に乗っているのは分かるが。

 

不味いな、何時までに着けばいいんだっけ?

左のポケットに入れているサードに確認してもらおうとするがポケットには何も入っていない。

一番近い窓を見ると茶色い髪の女がサードを持ってる。

 

(畜生スられた。)

 

しかも網島とかから見ても素人と判るような奴に。

どんだけ無防備だったんだ俺。

とりあえずコイツと同じ駅で降りて尾行るか。

そう思って軽く頰を叩く。

 

十分な目覚めとは言い難いが素人一人を黙らせるだけのアクションなら何とかなるか。

幸か不幸か女は次の駅で降りた。

そこはうんと昔に母に石ノ森萬画館に連れてってもらった時に降りた駅だ。

蓮は違和感を感じながらも女を追いかけた。何故だろう。

 

何故か自分が今宮城県に居ることに不自然さしか感じない。

女が角を曲がって見えなくなった。

慌てて追うと曲がった先で女はアドベントビーストに襲われていた。

 

「ったく、仕方ないな。KAMEN-RIDER!」

 

ウイングナイトに変身して二体のピラニア型ビースト、レットミニオンに対峙する。

何故かチンピラみたいな喧嘩殺法ばかりでまるで歯応えなく倒せた。

 

「大丈夫か?」

 

アーマーを解除して女に振り返る。

よく見ると驚いたようにくりくりした碧い瞳が可愛らしい。

背も織斑妹よりないし、化粧っ気もないが、上手く言えないがとても可愛いと、蓮は思った。

 

(もしかして自分はこんな女がタイプなのか?)

 

そう思った瞬間。蓮の頭は霞が晴れたようにクリアになった。

バラバラだった記憶のピースが繋がり、

この世界が現実でもベンタラでもなく、夢だと理解した。

目の前の彼女の服が地味な黒い服から白のワンピースに薄手の瞳の色と同じカーディガンに変わっている。

 

「レン、一つだけ、お願いがあるの。」

 

彼女は上目遣いに蓮の目を真っ直ぐ見つめながら近づいて来た。

 

「今から一つだけ質問をするわ。

絶対に嘘をつかないで真実だけで答えて。」

 

何よりも綺麗な碧い目が真っ直ぐこちらを見つめている。

あの夜もそうだった。だからこそ分かる。

これは俺の虚妄だ。

 

「エリー。」

 

蓮は脇のホルスターからスタームルガーセキュリティシックスを取り出す。

エリーが動じた様子はない。

 

「お前は、俺が命に代えても眠らせ続けさせない。」

 

パン!こめかみに銃口を押し当て引き金を引く。

撒き散らされた脳漿を視界の端に捉えながらやたら近くで聞こえる発車ベルの方に向かって力なく倒れた。

 

 

 

4

目覚ましを止めてベットから出る。

割とはっきりした頭を覚め切らせる為にカーテンを開けて朝日を浴びた。

 

『おはようございますレン様。今朝はスッキリ目覚めましたね。』

 

「適度なレム睡眠のおかげでな。今日はオルコットと試合だったな。」

 

『はい。黒翔の最終確認などは?』

 

「要らない。キリエライトと藤丸が整備したんだぞ?最高に決まってる。」

 

 

 

5

亡国機業 。

組織の指針を決める幹部会と実働部隊に分かれている以外、目的、人数、その他一切不明。

第二次大戦前から存在したとされており、どれほどかは分からないが昔から裏社会を兵器産業やテレ支援で牛耳って来たとされる組織だ。

 

今、その実働部隊、モノクロームアバターは壊滅的打撃を受けていた。

突如として現れた無数のレイヨウ型の怪人による襲撃が各基地で同時多発的に起こり、特に隊長のスコール・ミューゼルのいた基地は仮面ライダーによる襲撃を受けていた。

 

「おら、何やられとるんや!

さっさと立て!まだ敵はおるやろ!」

 

仮面契約者螺旋(カメンライダースピアー)は近くに倒れていたマガゼールを無理やり立たせると再び敵に、ISアラクネを駆るエージェントオータムに向かっていった。

 

「この角野郎!」

 

口汚く吐き捨てるとオータムはアラクネのアームから無数のレーザーを飛ばす。

 

「痛、痛!お前ら俺を守らんか!」

 

迂闊に近付けなくなったスピアーは近くにいたイガゼールの首根っこを掴むと無理矢理盾にしながら接近して、そのままイガゼールを踏み台にしてオータムの脳天に踵落としを食らわす。

 

「テメェよくも乙女の頭蓋を足蹴にしやがったなぁ!」

 

「お前のどこが乙女やねん!

眼科行ってからお前ん家の鏡全部買い換えてこい!」

 

<SPIN VENT>

 

螺旋状の武器、ガゼルスタップを装備し、殴りかかるスピアー。

しかしそれより早くオータムに何者かのビームライフルが打ち込まれた。

背後の壁を破りながら仰向けに倒れるオータム。

 

「なんやお前。居ったんならもっと早よ手ぇ貸さんかい。」

 

そんなスピアーの軽口を無視してオータムにライフルを撃ち続けるのはエム、本来なら亡国機業を裏切れない筈のIS乗りだ。

 

「お疲れ様エム君。啓長君もご苦労、先に戻っていていいぞ。」

 

「へい。おいエム。俺の邪魔さえせんかったら俺はなんも言わん。

せやけど、先輩に舐めた口聞いたらリンチにしたるからそのつもりでいろ、ええな?」

 

そう言うとスピアーは鏡を通って撤退していった。

 

「さて、エム君。改めて、よくぞ我等を手引きしてくれた。

約束通り、織斑千冬、三春、一夏と決着をつけるための然るべき場所、然るべき時、然るべき力を君に授けると約束しよう。」

 

「ただし報酬として、だろう?」

 

「もちろんだ。君はさ折角手頃なハエ叩きを手に入れていて尚且つ、ブンブンブンブン目の前にハエが飛んでいたら使うだろう?

それにどちらにせよ、君ほどのIS乗りとはいえ我々のバックアップが無ければ全ての亡国の追っ手を倒すのは無理なんじゃないか?」

 

「チッ!」

 

底の見えん男だ。しかも今まで見て来た中で一番に。

エムは目の前の背の低い白人に篠ノ之箒にはサイモンズと、山田真耶にはレイモンド、リッチー・プレストンにはウォルター・コナーズと、ブラッド・バレットにはチャーリーと名乗った男、人間に擬態したカブトガニのような怪人、ゼイビアックスにそんな感想を抱いた。

 

 

 

6

背後から派手な爆音が聞こえた恐らく向こうはこちらが有利だろう。

 

「相変わらず容赦なしだねエムちゃんは。」

 

<STEAL VENT>

 

仮面ライダーストライクは対峙するスコール・ミューゼルのIS、ゴルデンドーンから炎の鞭、プロミネンスをカードの力で奪取すると今まで避けに徹していたのから転じて一気に攻め立てた。

 

両手、両足とランダムに四肢を狙いながら三次元的に飛び跳ね翻弄する。

その戦闘スタイルはさながら獲物を食らわんとするコブラだ。

しかしスコールもモノクロームアバターのリーダー、そう簡単には殺られない。

炎の球、ソリッド・フレアを巧みに操り、一撃一撃を確実に防御していく。

 

「火の妖精が随分肉体労働に慣れてるね。」

 

「蛇使いの癖に良い様に使われてる奴が言うかしら?」

 

「なんでも良いよ、僕の立場とか。

そんな物より君は、エージェントオータムの心配をした方がいいんじゃないかな?」

 

「!?」

 

一瞬の動揺をストライクは見逃さなかった。素早く杖型のバイザー、牙召杖(がしょうじょう)ベノバイザーにカードをベントイン。

 

<ATTACK VENT>

 

契約ビースト、ベノスネーカーを召喚し、連帯でお互いの隙をカバーしながらスコールをさっきまでエム達が戦っていた方に追い立てる。

遂にスコールの左腕が、ベノスネーカーの強酸を浴びて溶けた。

中から機械の骨格が露出する。

スコールを背後の壁ごと蹴り潰しながらストライクは独り言ちた。

 

「やっぱり。資料の写真の年代と今の外見年齢が一致しないわけだ。

中だけ機械にして皮膚の部分は自分の細胞を培養したのかな?」

 

「なるほど、地球でもアンチエイジングはあるみたいだね。

随分ダイナミックだが。」

 

「ゼイビアックス将軍。」

 

ストライクは背後から現れた背の低い白人に深々と頭を下げた。

 

「楽にした前ストライク。

よくこれを持って来てくれた。」

 

二人が話す横でスコールとオータムが肩を寄せ合う。

 

「ごめんねオータム、見事にやられたわ。」

 

「へ、らしくねぇ事言うんじゃねぇよ。

とは言え、不味いな。エムのナノマシンは?」

 

「何故か作動しないのよ。

兎に角二人でどうにかするしかないみたいけど?」

 

「やってやるだけだ。」

 

二人は立ち上がると3人の戦力を分析した。

今は一番ゼイビアックスが無防備。

そう思って仕掛けようとした瞬間。

 

「シャアアアア!」

 

背後から現れたベノスネーカーが二人の上から酸を吐き出した! 

 

「スコール!」

 

スコールを突き飛ばしたオータムにのみ酸がかかる。

ISは全て溶け、完全に無防備なまま残された。

 

「ふん、美しい友情だね。」

 

いつの間にか接近していたストライクに裏拳で後方に吹っ飛ばされるオータム。

 

「オータム!ぐっ!」

 

続いてスコールをエムの援護を受けながらプロミネンスで拘束し、バイザーを取り出す。

 

「亡国機業も災難だな。

君なんかを使う羽目になるなんて。」

 

<FINAL VENT>

 

それはバイザーが無慈悲に発した処刑宣言。

ストライクの背後のベノスネーカーがスタンバイする。

 

「最高の最期(パレード)見せてくれるよね、スコール・ミューゼル。はっ!」

 

バク宙気味に飛び上がり、足先が、標的を背中がベノスネーカーの口の前に来た瞬間。

吐き出された毒の激流に押し出されたストライクはバタ足の様に執拗にスコールに連打キックを浴びせ、元からか、改造によって手に入れたかを分からなくする程五臓六腑を蹴り潰し過剰な圧のかかったゴルデンドーンのコアは余ったエネルギーが行き場を失い、大爆発を起こした。

爆風を一身に受けるストライク。

その顔は仮面の下で笑っていた。

 

「スコール・ミューゼル氏の名演、残念ながらこれにて永遠に閉幕!皆様!惜しみない拍手を!」

 

「テメェ、、、ッ!」

 

なんとか痛む身体を起き上がらせたオータムは愛する人の仇を打たんと進もうとするが、

 

「おーっと待った。オータム君。君には仕事が残っている。」

 

「!?」

 

「折角新入りのエム君がいる事だし、私に逆らうとどうなるか実演したいんだ。」

 

 

そう言うとゼイビアックスは怪人態に変身してオータムの首を掴み上げる。

 

「永遠にお休み、オータム、、、ミューゼル。」

 

「ーーーーーーーーーァァァァア!」

 

一瞬エムは我が耳を疑った。

今聞こえた音は基地の何処かで爆発が起きた音だと思ったからだ。

だが違う。今の音は人の、オータムの喉から出た苦悶の音だ。

 

人間の限界を超えた音を否応なく出させるほどの苦痛とは一体なんだ?

エムにとって緊張と無限の一瞬。

ゼイビアックスが人間態に戻りオータムを離した。

かに見えた。倒れたのはゼイビアックスの方だ。

そしてオータムはまるで石ころでも払う様にゼイビアックスを足でどかす。

 

「んん〜。背が高くなった気分だよ。

どうかなストライク。新しいボディは?」

 

「凄く、、、悪そうです。」

 

「そうか、では後で身長とスリーサイズを測るのを手伝ってくれ。

いつもの店でオーダーメイドする。」 

 

「かしこまりました。」

 

声も顔もオータムだ。だがしかし喋り方と振る舞い、そしてストライクとの接し方はまるで

 

「ゼイビアックス?」

 

「ああ、私達カーシュ人にとって地球人など小さな器に過ぎない。

君も私の予備のスーツにされたくなければ日々働きたまえ。」

 

期待してるよ。と肩を叩かれる。

生きた心地がしない。

 

「どうやら、私は遂に等々、悪魔に魂を売ったらしいな。」

 

自嘲気味に笑えばいいのか本気でただ怯えればいいのか分からない。

ただ一つ確かなのは、何があってもヘマだけはしてはいけない事だけだった。




ケイタ(裏声)「辞めてリッチー!ファイナルベントの打ち合いなんて!そんな事したらウイングナイトにベントされちゃうよ!
次回、インサイザー死す。デュエルスタンバイ!」

セシリア「何適当なパロディをしてるんですか真面目にやりなさい!」

ケイタ「痛い痛い!叩く事ないじゃん!」

マシュ「じ、次回infinite DRAGON KNIGHT!」

セシリア「踊りなさい!」

蓮「上等だ!」

三春「ちょこまか逃げるな!」

ケイタ「避けてんだよ!」

心愛「一夏ちゃんが拐われた!」

トラスト「君の相手は私だ!」

ブレード「どけ!」

ドラゴンナイト「あれが、ベント?」

マシュ「次回Dragon against Dark wingその6!」

セシリア「その欲望、解放なさい?」

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