infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来 作:伊勢村誠三
蓮「作者なら今ようやく中古で見つけたケータイ捜査官7のブルーレイと人造人間キカイダー THE ANIMATIONのDVDを鑑賞中だ。カンペなんてもう頭にないさ。」
ケイタ「よくそんだけ買って金欠にならないな。兎に角今回は番外編という名前の導入回です!」
蓮「それでは、お楽しみあれ。」
1
「もしもし?」
蓮は朝一番で電話をかけた。
時刻は朝7時。向こうの時間は丁度19時。
まあいい時間だろう。
もっとも蓮は今まさに電話をかけようとしている相手ならたとえ真夜中だろうと叩き起こすが。
『もしもしレン?アンドリュー達とは会えた?』
「ええ。本当によく働いてくれましたよ。
ポリー・ナポリターノアメリカ海兵隊IS師団長、
又の名を馬鹿クズの極みの淫乱バイ女!!」
『ええ!?なんで怒ってるのよ!?』
「当たり前です!国防の要の専用IS持ちを上に無断で日本に行かせるとか何考えてんですか!
狩野刑事に口止めできなかったら国際問題になってましたよ!?
しかも本人は言ってませんでしたけど、
布仏の件の捜査を翔太郎先生とフィリップ先生に依頼したのあんたでしょ?」
『わ、私はお気に入りの部下を助けたくってぇ、ぐすん。』
「嘘泣きしないでください。
てかあんたの場合自分の命狙ってる奴さえ部下なら等しくお気に入りでしょ?」
『へへへへ、バレた?』
ポリーは基本的にだらし無く色狂いで間違いなくアラフィフなのに19歳とか言い張ってるヤバイ人だがこうゆう所だけは、
人間としては間違いなく最悪寄りの最悪にカテゴライズされるが上司としては蓮もアンドリュー達も尊敬している。
「それで、約束の賞与七倍の件どうなりました?」
『ぐっ!忘れたかと思ってたのに。』
「金の事は忘れませんよ。
ナイトメアのメモリを回収するまでに用意しといてくださいね。では。」
溜息をつきながらベットに腰を下ろす。
怪人屋騒動のおかげで最終日の今日以外ゆっくりできる日がない。
(しかも事件の余韻が抜けきらない。)
少しでも気を楽にしようと部屋に備え付けの冷蔵庫からお気に入りのシャンメリーを取り出して瓶ごと飲む。
爽やかな甘みがが口の中に広がった。
そしてまた溜息結局慌ただしい連休だったと再び溜息をついた時ドアがノックされた。
「? 開いてるぞ。」
「おはよ、蓮。」
入ってきたのはケイタだ。
休日のケイタにしては早起きで驚く。
「どうした?なんか急用でも入ったか?」
「そうなんだよ。少しで良いから金を貸してくんない?」
すぐ返すから。と手を合わせるケイタ。
「いいけどなんに使うんだ?」
シャンメリーをもう一口含む。蓮はすぐに後悔した。
「デート。」
「ブフッゥウ!…………ゴフッ!ゴッ!ゲホッ!…はぁっ!?」
2
話はまあ俺が、網島ケイタが寝てる時まで遡る。
俺はゴールデンウィーク最終日ぐらい惰眠を貪ると決意し熟睡していた。
昨日カーテンをちゃんと閉めれてなかったせいか日差しが少し入ってきて半分起きちゃったけどもうちょい微睡んでようと思って体を動かした時だった。
何か柔らかいものが手に当たったんだ。
抱き枕を抱いた覚えはないし、
ドアは閉まってるからティッピーが入って来るわけがない。
じゃあなんだ?と思って布団をめくってみたら一夏がうずくまって寝てたんだ。
…………いやちょっと待て蓮、手錠と拳銃は必要ない!
サードもグラインダーを着信するな!
『お前のような奴に逮捕状も処刑台も辞世の句も必要ありません。』
「煩い強姦魔。顔良し、スタイル良し、性格良し、妹属性、主婦属性ありで、その上脈アリの幼馴染に唾つけとかないなんて一応このssの原作って事にしてるラノベの主人公ぐらいなんだよ。」
メタ発言はやめろ!
そりゃ確かに俺も健全な男子高校生な訳だし興味はあるさ!
一夏のことも憎からず思ってるし、まあ、なんだ。
本人となるとなんか違うけど一夏みたいな女子がタイプさ。
けど一夏の保護者は一応千冬さんだぞ?
もしそうゆう行為に及ぼうものならかはあの人に股間どころか下半身を消しとばされるぞ?
それにベットの中に潜り込まれるのも8回目だし。
『四年の間に7回もあったんですか?』
「完全に脈アリだろ。」
いや、一夏は甘えん坊なだけだよ。ただ、
「ん………。おはよ、寝坊助さん。」
普段しっかりしてる分、我慢してる分緩んだ時の反動がヤバいだけで。
「ッッッッ!…ホッ。(良かったブラはしてるから見えない)お、おう。おはよう一夏。」
「ねぇさあケイタ?」
「な、何?」
「ケイタは言うことあるよね?」
「言うこと?」
「考え無しに飛び出したよね真夜中に。
心配したんだよ?」
「う。」
「私徹夜でゼロワンやハイシーカーと探したんだよ?」
「ぐ。」
「しかも私が走り回ってる間に理世さんの可愛い後輩と
イイコトしてたとか。」
「してない。泊まったけどラインは超えてない。」
「と、に、か、く!ケイタには責任を取って貰います!」
「責任?」
「それはね。」
3
『それがデートというわけですか。』
「しかもただのデートじゃなくて、
天ノ川学園高校の制服で来いって。」
天ノ川学園高校とは、
もしケイタにIS適性が無かったら通っていたはずの学校で、
ケイタ達は知る由もないが二人の熱い仮面ライダーを輩出した学校でもある。
「何故また私服じゃないんだ?」
『なんでも一夏は制服デートがしたいけどIS学園の制服じゃ目立つから。と』
「で、そんなギャルゲのイベントみたいな事のために金を貸せと?」
「ちょっとでいいんで!」
「………。一万だけだぞ?」
「ありがとうございます!」
4
一時間後、駅前の広場に青いブレザーにストライプ柄のネクタイ。
それから黒いチェック柄のズボンのケイタの姿があった。
一応変装のつもりか黒縁のスクエアフレームの伊達眼鏡をかけている。
「いたいた!天高の制服目立つしすぐ見つかったわね!」
「……。帰っていいか?」
ゆったりとした長袖にジーパン姿の鈴音と白いシャツにデニム姿の蓮の姿もちょうどケイタの死角にあった。
二人ともケイタのように変装のつもりか鈴音は髪を結ばずに下ろしたままどっかのトレジャーハンターが十年ぐらい前にかぶっていたのによく似た帽子をかぶり、蓮はファイブゼロワン事件の頃と同じツンツンヘアーに戻している。
「帰っちゃダメ!あんたは知らないでしょうけどね、
一夏とケイタは見てるこっちがイライラするぐらいイチャイチャのラブラブの癖に今まで一線を超えなかったのよ!
そのせいで二人揃ってエイセクシャルなんじゃないかって、
どこまで行っても一つ屋根の下で暮らしてたせいでブラコン、シスコン止まりか!って思うぐらいに!
その二人がいま制服デートよ制服デート!
見届けないとダメよこれは!
それにもし尾行がバレてもあんたと遊びに来てるって言えばか不味くはならないでしょ!」
「聞けば聞くほど俺関係なくね!?」
《貧乏くじ引きましたね》
(黙れサード不意打ちでデッキ越しに話しかけるな)
蓮は今本日二度目の後悔をしていた。
鈴音のお見舞いに行った時にうっかり二人が制服デートだと口を滑らせてしまったのだ。
そこからの行動は早かった。
電光石火の速さで蓮の財布を搔っ払い病院から脱走した鈴音は一番近くのユ○クロで変装用の服を追いかけてきた蓮の分まで一式揃えるとダッシュで駅まで来たのだ。
(俺の安らかな休日は何処へやら。)
《夏休みまでお預けですね。》
(煩い頭が痛くなる。)
《しかし、このまま尾行を続けて良いものでしょうか?
レン様一人なら兎も角、鈴音様ははっきり言って足手纏いでは?》
(言い出しっぺは俺じゃなくて鳳だからな!
まあ確かにはじめての探偵ごっこではしゃいじゃいるが鳳はどっちかと言えば二人のデートを応援している。
騒ぎすぎないように見張ってりゃ問題ないだろ。
問題は背後の奴らだ。)
《ですね。シーカーからの映像によれば
……箒様とセシリア様に一夏様のお兄様です。》
(織斑のやつと億歩譲って篠ノ之はわかるがオルコットまで何してるんだ?)
《……。レン様、あなた本気で言ってますか?》
(何がだ?》
《…まあ、あなたは一途な方ですからね。》
「あ、一夏来た。移動するっぽい。行こ?」
不意に鈴音に手を取られる。
二人を見失わないように早足で歩いた。
(ま、退屈だけは無さそうだ。)
《ですね。》
5
「ケイタお待たせ!」
階段の方から半袖のワイシャツに灰色のベストと赤いリボンに黒いチェックがらのスカートの一夏が来た。
どこから用意したのか鞄まで持ってる。
「結構待った?」
ふわりと右腕に絡まりながら上目遣いで見てくる一夏に一瞬くらっと来るケイタ。
なんとか顔が少し赤くなるぐらいで済んだ。
おそらく視線をやれば女子だらけのIS学園に放り込まれ耐性をつけて無ければ顔が茹で蛸のようになっていただろう。
「い、いや、俺も今さっき来たところ。」
「ふふふ。わかってるね。」
「? 何が?」
「なんでもない!それより早く行こ!
ケイタの好きそうなとこばっかだから!」
ケイタの手を引き心底楽しそうに歩く一夏。
この状態、ケイタが勝手にプリンセスモードと呼ぶ状態に一度なれば一夏は羞恥心のたがが外れ蠱惑的色気たっぷりのグイグイ来る系ワガママ女子に変身してしまうのだ。
《我に帰って苦しみ悶える一夏を慰めるまでが君の仕事だな。》
(言われなくとも、もう8回目だ。)
6
「なあ、セシリア。」
「なんですのー?」
「あれ、手を繋いでるよな。」
一夏とケイタを見ながら言う箒。
「そうですわねー。」
ふふふふ。と薄ら笑いを浮かべながら蓮と鈴音を見るセシリア。
二人とも見てる方向は違えどその目は同じようにハイライトが消えている、
死んだ魚類のような目だ。
「そうか、幻覚でも何でもなく、
あれは現実なのかな!良し!殺そう!」
どこから取り出したのか箒は日本刀を、
セシリアはドラグノフ狙撃銃を構える。
「ま、まてよ!箒もセシリアもどうしたって言うんだよ!?」
「三春、あれがなんだかわかるか?」
「一夏とケイタのことか?二人で遊びにって感じだろ?」
「それを世間一般では何というかご存知で?」
「遊びに行く以外なんかあるかよ?」
「……。では、若い同じ年頃の非常に仲の良い二人がショッピングなどを楽しむことはなんと言いますか?」
「デートか?」
「そうゆう事です。」
「?」
今だにポカンとしている三春を全く考慮せず二人は追跡を続けた。
(おのれ特徴なしのムッツリ助平め!
一夏にあんな格好をさせるとは!
待っていろ一夏!
必ず決定的瞬間を抑えてその男に誅罰を与えてやる!
ついでに秋山も!)
甘えん坊の一夏というものを全く知らない箒にはケイタの方が付き合わされてる側だという発想は無いようだ。
いつも通りの偏愛とすら呼べそうな執着を遺憾なく発揮している。
その強さはもし蓮や簪あたりが知ったらバイ疑惑を拡散されるレベルで酷かった。
セシリアも五十歩百歩だ。
クラス代表決定戦でプライドとか諸々を打ち砕かれたセシリアは蓮というはじめて出会った男に魅せられた。
どこか冷めてるようで対峙した時に感じた熱さは本物だった。
そんな掴み所のなさ、謎さにセシリアは引かれた。
故に自分の見たことのない蓮を引き出している鈴音に嫉妬を感じていた。
「鈴音さん。必ず貴女の
ふふふふふふ。と薄ら笑いを浮かべるセシリアに流石に三春も引いている。
(俺のIS特訓は何処へやら。)
前回もISの体の動きを教えてもらうはずが箒にそもそも剣道がなってないと言われてケイタとの試合まで剣道の練習しか出来なかったのだ。
まあ、ISの操縦を習った所でケイタには勝てたかどうか微妙だが。
今回も敵情視察とか言って貴重な練習日を削って二人のストーキングに付き合わされている彼はある意味被害者だ。
(ま、鈴の奴を叩きのめせるヒントが少しでもあればいいんだけど。)
渋々三春は二人を追いかけた。
7
ケイタと一夏は博物館に辿りていた。
今は洋画の特設展示をやっているらしい。
ケイタは昔から博物館や美術館が好きだった。
多種多様な宝物が展示されている館内を練り歩くとまるで宝箱の中を探検してる気分になれるからだ。
「ここのレストランのアイスパフェが美味しいんだって。」
アイスもケイタの好きな物だ。
どれくらい好きかと言えば昔小学校時作文で将来の夢はコンビニのケースのアイス全部買い占めるか、17アイスを自販機ごと買うことと書いて怒られたぐらいに好きだ。
因みにその夢はまだ諦めていない。
「早速アイスを「見てからお昼にしてその時にね。」……アイスを先「見てからお昼にしてその時にね。」……アイス「見てからお昼にしてその時にね。」…分かったよ。」
それを少し離れた所から蓮と鈴音は尾行を続けていた。
「で、どうだい迷探偵鳳?
あんたの見立てだとこれからどうなる?」
「一説によれば芸術品の鑑賞は潜在的な興奮を高めると言われている。
そしてこの博物館は美術品から蝶などの虫や星についてなども展示されてる。
全部見ようと思ったら夕方までかかるわ。
けど、この博物館の最上階にはレストランがある。
つまりお昼はそこで食べれるから一日中いても問題ないわ!」
「つまり?」
「1日かけて美術品の1日世界旅行を堪能した二人は駅前のそうゆうホテルで愛を確かめ合い「もういい。頭ウルトラハッピーなお前に聞いた俺が馬鹿だった。帰るぞ。」
なんでよ!これからが面白いんじゃん!」
「あの二人がそこまで行ける訳ないだろ。
仮に行けたとしてもラブホやカラオケでヤるんなら壁越しの声さえ聞こえないだろ?
そんなんエロ同人誌の導入部分しか読めない様なののどこが面白いんだ。
そんなもんよりこの前ヤフオクで落札した今日届く予定のレア物のCDの方がよっぽど面白い。」
「な、な、な、なんて例えよ!
てかなんで知ってるのよ!その……え、え…………。」
「無理矢理上司に読まされたんだよ。
他の奴はどうか知らないけど押しキャラが陵辱されてるとこ見て喜ぶ神経が俺には分からん。」
「あ、あんた人前でよくそんな事ペラペラ言えるわね!
てかなんのキャラよそれ!」
「キュアパイン。」
「えぇ?あんたプリキュアとか見るの?」
「上司に無理矢理見せられたんだよ。上映会とか言って。」
「それでハマってんじゃん。」
「上映会の前日、疲れてたから半分寝てたら居残りだとか言われて『好きなキャラ選べ。』って今まで見た事ない様な真剣な顔で言われてキャラデザで選んだんだよ。そしたらなぜか翌朝まで語り尽くされた。」
おかげでなりたくも無かったフレプリ博士にはなれたが。
と複雑な笑みを浮かべる蓮。
「さて、無事二人を見失った事だし帰るか。」
「あ、本当じゃん!あんた秋山計ったわね!」
一人で博物館に突撃していく鈴音を見送ると蓮は振り返った。
予想通り箒と三春は鈴音を追って博物館に。
セシリアは真っ直ぐこっちに来た。
「あら、レンさん。御機嫌よう。奇遇ですわね。」
「成る程分かった。」
「?レンさん?一体何が分かったと「お前らがあんな下手くそな尾行で俺を欺けると思ってた事だ。」な!い、いつから気付いて!」
「駅前広場からだ。」
「そ、そんなとこから………。」
「あんだけ殺意をダダ漏れにさせといて面と向かわないと気付けないのなんて男の方の織斑ぐらいだ。で、何の用だ?まさか告白とか?」
冗談めかして言う蓮。
しかし真っ赤になって俯き、次顔を上げた時には真剣も真剣な顔になっているセシリアを、みてすぐ真顔になった。
「はい。あの時わたくしを否定したその時から、お慕いしておりました。」
「………。そうか、その気持ちには応えられそうにない。」
「ッ!…理由を、お聞きしても?」
「お前を心から愛せる自信がないし、
俺はあまり他人を信用出来る性分じゃないし、
ただ女友達に尾行ごっこを付き合わされていただけで殺意を抱いてくる奴を異性として意識できるか?と言われれば微妙だ。」
それと後エリーのやつに惚れた弱みだ。
最後になんて事のない様に、取ってつけた様に呟いた。
一瞬茶化してるのか?と怒ったセシリアだが蓮の自分で自分にびっくりだ。
というような顔を見て直ぐに怒りが収まった。
「…まあ、そうゆう訳だ。諦めないのは勝手だが、
色々責任負いかねる。」
「そう、ですか。」
目尻を抑えてセシリアはかけて行った。
幸い見てる人はあまり居なかったらしい。
蓮はセシリアが走り去ったのと反対方向に歩いた。
する必要のなくなったツンツンヘアーを元の髪型に戻す。
帰って着替えよう。
ここから歩くとなるとラビットハウスまでえらい時間がかかるが仕方ない。
《レン様もようやく素直になられましたね。
気の毒ですが、セシリア様に感謝です。》
(……サード。俺はエリーを助けるためなら黒幕だろうと誰だろうと、ケイタ達でも殺す。)
《結果あなたやエリー様、他の方々が不幸になっても?》
(どうせ初めから自己満足だ。)
《ならせめて死ぬ気でその自己満足を通してください。
それだけでもしなければ貴方はなんのために人を殺してまでそう願い続けたか、分かり無くなります。》
(無論だ。それに今は気持ち的には、エリーのやつにあいつらがバカやってるとこ見せて心の底から呆れさせてやりたい気分だ。)
《そのいきです。》
しかしオルコットには悪い事をしたな、とも蓮は思った。
容姿は兎も角、性格的には好感が持てるし、
諦めの悪い奴は相手してて飽きない。
だから、また、否まだ来るだろう。
(さて、最終的にどうオルコットに俺を諦めさせるかだな。)
8
蓮の言う通りセシリアは蓮を諦めていなかった。
(諦めませんわ。
どれだけディスアドバンテージがあろうと、
決定的敗北を突きつけられるまで、なんとしても諦めませんわ。)
セシリアは不屈だった。
そうでなければ両親が列車の事故で死んだ後、
遺産を縁戚に騙し取られまいとIS操縦や勉学に励み全てとはいかなかったが守りきった。
自分は強い女に産まれたのだから。
あの強い母の娘なのだから。
婿養子故、母に下手に出ていた父を見て育ったせいか、
セシリアの中では男=卑屈みたいなイメージがあった。
IS学園に入学する少し前、男が転入してくると聞いた時も、
所詮素人、プロの自分が手取り足取り教えてやろう。
むしろ自分の方から手を揉みながら平身低頭で懇願してくる筈、とすら思っていた。
しかし蓋を開けて驚いた。
最初は見栄を張ってカッコつけてるだけかと思ったが、
自分の対峙した蓮は奇をてらったスタイルで勝ちを奪いに来た。
身体を痛めつけ心を揺さぶり、
自分の前に立つ相手を親の仇が如く殺し尽くす為だけに徹底的に倒す。
まさにそれは戦う姿。そんな蓮に心を惹かれた。
勿論その後見たケイタや三春にも驚かされたが心にきたのは蓮の姿だけだった。
(わたくしは、母様の娘としてでもオルコット家の当主としてでもなく、
セシリア・オルコットととして貴方をものにしてみせますわ!)
涙はもうなかった。次に流す事があるとすれば、
それはきっと決着がつく時。
果たしてそれはどんな涙か分からないが、
それでもきっと後悔だけはないだろう。
奇妙な確信を胸にセシリアは顔を上げた。
9
一方アメリカではIS師団長、ポリー・ナポリターノは
なんとか蓮に賞与七倍を諦めさせる方法を考えていた。
(どうしよう………レンに下手な言い訳しようものならジャパニーズニンジャの魔法みたいな動きでいつのまにか壁と熱烈にキスする羽目になるし、
かといって賞与七倍はいくらなんでも無理だわ。)
溜息をつきながら頭を抱える。
ポリーは、人百倍部下思いで義に熱く、
いざ戦闘となればまだISのない時代に
『奴とその部下を足止めするには三個師団が犠牲になる』
と言わしめた「黒い龍のポリー」の異名を持つ間違いなく米軍最強の一角なのだが酒や美男美女に弱く、
色狂いでサボり上手な世間一般で言うダメ人間だなのだ。
それもかなり重度の。
その上彼女は金の塩梅が何より苦手で今までも3回ほど破産しかけてアキツネやジュリエットに泣きついているのだ。
それをいいことに蓮に報酬をカサ増しされて上に怒られて減給されたのも一度や二度ではない。
次やったら間違いなく今年のボーナスは無しだ。
「どうしたものかしら?」
「あら、お悩み見たいね師団長?」
「どうせボスに報酬のことでヘソ曲げられたんだろ?
本当金に関しちゃあんた程あてにできない奴も居ねえよな。」
「ハリエットにアンドリュー。お疲れ様。
流石は我がIS師団が誇る破壊部隊の斬り込み隊長のツートップ。
予定より早いわ。」
「ええ。アキツネも寄越してくれたらもう半日早く終わったんだけど。」
「仕方ねーだろ。あいつだって忙しいんだ。」
注文のデータだ。そう言ってポリーのデスクにデータを置くアンドリュー。
「ありがとう。今日はもう上がっていいわ。」
「おう。」
「待ってアンドリュー。あなたはそれでいいの?」
「何がだ?」
「私はいい加減欲しいの。織斑千冬を殺す許可が。」
姉のジュリエットによく似た猫目が鋭くポリーを見据える。
「忘れてないよねポリーさん。
私達があなたやレン少佐に従ってるのはその為だけ。
あのクソ女がのうのうと呼吸してるだけで虫酸が走ってるの。
そろそろいいよね。」
パキパキと背中にハリエット専用IS、アラクネプロトタイプ改カーマインタランチュラを部分展開し、8本のレーザーアームをポリーに向ける。
「駄目よまだ。」
パン!一発の銃声の後にアームの一番外側の関節が力を失いうな垂れた。
いつ展開したのか、ポリーの左一の腕には黒い禍々しい形のISが展開され、
レミントンに似た散弾銃、ヘルドラゴン・ショットが握られている。
(噂にゃ聞いてたがとんでもねえチートだな。
ヘッドのIS、ブラックヘルドラゴン。
ジェット推進で自由に動かせる弾丸を八発同時に精密コントロールするとか流石米軍のサイボーグ技術の結晶だぜ。)
「冗談よ。それより早くデータを見て。
それならレン少佐も機嫌なおしてくれると思うから。」
部分展開を解除しアンドリューの手を引くハリエット。
「この後暇?デートでも行く?」
「暇だけど行かねー。
オメエは身元まともな癖して腹ん中まるで見えねえんだよ。
おっかねえ。」
「酷いなぁ、私あなたのことまあまあ本気なんだよ?」
「本気にまあまあってなんだよ?訳わかんねえ。」
いちゃついてくるハリエットを引き剥がそうとするアンドリューを見送りながらポリーはパソコンに二人が逃亡しようとした研究者が持っていたデータを見る。
「嘘でしょ……こんな悍ましい代物を量産しようとしていたの?
こんなもんが世界に出た日には第三次大戦よ!?
しかもこの計画の名前……。」
ポリーは絶句した。が、直ぐにいつもの不敵な笑みを取り戻した。
「……いえ、何も悲観する必要はないか。
これは間違いなく織斑千冬のアキレス腱。
なら後は専用の矢をこしらえるだけね。」
楽しみだわあなたの断末魔。
デスクに置いた織斑千冬の写真に新たな傷を入れながら不敵に笑い続けた。
10
「はぁ……。」
ウィンドウ越しに綺麗な白いサマードレスを見ながら彼女、天々座理世は溜息をついた。
(いや、何考えてる理世。こんな可愛いの私に似合う訳ないだろ。)
この前マグカップ専門店で秋山に会った時に見た智乃の友達の髪の長い子なら兎も角。
そう思って振りかぶると洋服屋の前を通り過ぎた。
時刻は3時前、何処かでお茶でもして帰るかな?
そう思ってふと近くの店に視線をやる。
(? あの眼鏡の男何処かで………網島?)
声をかけようと近づいたが、誰かと一緒に居る。
黒い長い髪の子だ。確か智乃の友達の一夏といったか。
(あ、食べさせ合いっこしてる…………いいな。
僕もやりたいな。って!何を考えてる!
ふ、封印してた一人称が!駄目だ駄目だ。
ここに居ては余計なことばかり考えてしまう。)
思い切り首を振ってから一目の無いところに移動した。
「分かってるだろう、キャラじゃ無いし、柄じゃ無い。」
鏡に映った自分に言い聞かせる。
二年前蓮に言われた言葉が頭を過ぎった。
「黙ってろ男女。あんたにどうこう言われる筋合いないんだよ。
俺の母親、いや父親のつもりか?
同性だからっていつまでも風呂一緒に入る訳じゃないんだよしつこい。」
突き放すように冷たく言い放たれた言霊は今も理世の胸に巣食っていた。
「父親じゃないよ。僕だって女の子だよ?」
「そうだね。ならそうあればいいさ。」
突然後ろから首をホールドされる。
(な!何処から!?後ろは開かない窓しかないのに!?)
「君はストイックだね。気張らないで肩の力を抜くといい。」
理世のスカートのポケットにシールのアドベントカードを忍ばせると自分のポケットから一本のガイアメモリを取り出す。
<NIGHTMARE>
響き渡るガイアウィスパー。
首に異様に熱い何かが入り込むのを感じながら理世の体は糸が切れた人形のように崩れ落ちた。
そしてそれに代わるように網のような顔の横に仮面のような顔を付けた左右非対称な、兎に角不気味な白い怪人、ナイトメアドーパントが現れた。
「う、うぅーうう、ううううう?」
何かを唸りながらベンタラに消えていくナイトメアドーパント。
「ナイトメア、悪夢。万人にとってはそうでも、
彼女にとってはどうかな?網島君、秋山君、織斑ちゃん。」
ことを起こした張本人。
間明蔵人は相変わらず笑みを貼り付けたままその場を離れた。
ケイタ「さて、相変わらずギャグ寄りシリアスだった今回ですが多分次回も相変わらずです!」
蓮「次回、infinite DRAGON KNIGHT!」
ケイタ「四人目の男子?」
シャルル「シャルル・デュノアです。」
ラウラ「私は認めん。貴様などが教官の妹などと!」
蓮「何様だ?」
一夏「新しいライダー?」
海之「ああ、こいつは荒れるな。」
心愛「理世ちゃんが目覚めないよ!」
ナイトメアドーパント「みんな、どこ?」
楯無「生徒会に入らない?」
虚「妹がご迷惑を」
ケイタ「あんたのせいじゃないよ。」
間明「君は裏切り者だよ、ドリュー君。」
ドリュー「ハメやがったな!」
簪「私は前に進むだけ。」
蓮「次回、Fake number Four.」
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」