infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来   作:伊勢村誠三

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??「前回までのinfinite DRAGON KNIGHT in明日未来、突如鳳鈴音とセシリア・オルコットを強襲するラウラ・ボーデヴィッヒ。
なんとかレン・アキヤマは2人を救出する事に成功しかし網島ケイタからの救援要請により向かった先でシャルル・デュノアと山田真耶の正体を知る事となりました。ここまで間違いありませんか?」

ケイタ「いや、うん。あってるけど君は誰?智乃ちゃん知り合い?」
智乃「いえ。全くの初対面です。」

??「私とした事が失礼しました私は民間軍事請負会社グリフィン&クルーガーの特殊部隊の一つ、404小隊の技術顧問で竜崎ルエといいます。」

智乃「竜崎、ああ。作者さんがこの前書いた短編の主人公の?」

竜崎「ご存知でしたか。今回は告知の為にお邪魔させていただきました。」

ケイタ「そうだったんだ。あれ?でも作品のタイトル『L change in the Paradise Lost 2061』だよ?Lって何?」

竜崎「それは読んでのお楽しみですそれよりまずはこのssをどうぞ。」


Fake number Four その6

1

全ての授業も終わり生徒達は解散した。

帰路に着くもの、部活に向かうもの、

またここIS学園に限らずだが友人のお見舞いに向かう一団があった。

ケイタ、一夏、心愛、海之、千夜、そして学園の外で合流した紗路の6人だ。

 

「私まで一緒でいいのか?」

 

「平気だよこれを機に仲良くなればいいし。」

 

「そーそー!海之ちゃんなら理世ちゃんと出会って3秒で友達だよ!」

 

「それは心愛ちゃんのモットーでしょ?」

 

1人だけ突っ走る訳にはいかないケイタは愛車のスズキ

カタナを手で押しながら突っ込んだ。

 

「つーか理世さん家って俺ら初めて行くけど皆は行った事あんの?」

 

「一度も」

 

「無いよ。」

 

「初めて」

 

「そもそもまだ会ってすらない。」

 

「じ、実は私も………。」

 

「………………皆道知ってる?」

 

黙り込む一同。

どうやら全員が誰かが知っていると思ってたらしい。

 

「セブン、蓮に掛けてくれ。」

 

呼び出し音が鳴り程なく蓮がでた。

 

『悪いケイタいま忙しい手短に出来ないなら後で頼む!』

 

相当焦っているのか蓮はまくし立てる様に早口だ。

 

「いや理世さん家の行き方が分からないだけで。」

 

『今どこいる?』

 

「8番通りの小物屋の前」

 

『真っ直ぐ30フィート先を左に真っ直ぐだ!』

 

言い切る前に乱暴に電話が切れた。

その後いくら掛け直しても出ない

 

「マジで勘弁だぞ蓮?」

 

「道分かったのか?」

 

「分かったっちゃ分かったけど、

30フィートが何メートルか分かる人いる?」

 

「だいたい9メートルだよ。」

 

さらっとなんて事もない様に心愛が答えた。

 

「え?………心愛ちゃん、19×43は?」

 

「817だよ。」

 

ほぼ即答で答えた心愛はさあ行こう!

と先頭に立って歩き出し

 

「俺、下手したらラビットハウスで一番頭悪いかも。」

 

「私も………。」

 

密かに危機感を抱く2人だった。

 

 

 

2

家の前にイカツイ門番?みたいな方がいたが見かけによらず紳士的でケイタのバイクまで預かってくれた。

案内されて理世の部屋まで行く一同。

 

「広い部屋だな。」

 

「いかにも理世さんの部屋って感じだな。」

 

壁にかけられた大量のモデルガンを見上げながらケイタは独言た。

ガンマニアなのは蓮経由で知っていたがこのレベルはミリオタって言った方が正しいだろう。

 

「にしても、穏やかな寝顔だな。」

 

丸一日帰ってこず、路地で倒れているのが見つかりすぐに病院に運ばれたが、

検査しても外傷もなく何かに感染したり薬を盛られたりしたわけでもなくただ眠っているだけだというのだ。

 

(なんかデジャブ、

最近そんな話をどこかで聞いた様な気がするけどどこだったかな?)

 

「? どうしたのケイタ?なんか難しい顔しちゃって。」

 

「え?いや、なんでもない。」

 

「嘘でしょ?ケイタ嘘ついた後下唇噛む癖がある。」

 

「マジ!?」

 

「嘘。けど今ので本当にケイタが嘘ついてるって分かった。」

 

「一夏お前………。はぁ、じゃあ言うぞ?」

 

一夏の耳に顔を近づけ小声で呟く。

 

「え?け、ケイタ?」

 

「理世さんが目覚めないの多分なんか怪人関連。」

 

「え?」

 

「あくまで多分だけど、なんか分かったら話すよ。」

 

「う、うん。」

 

ケイタは一夏の頰が少し赤いのに気付いた。

風邪だろうか?

それともまさか……前に蓮が邪推していた様に自分に惚れてるとかだろうか?

 

(いや有り得ない。

有り得たとしてもきっと恋に恋するお年頃って奴だろ。

たまたま一番近くに居た男が俺だったってだけ。

そうじゃなきゃ一夏みたいな家事万能でしっかりしてて頑張り屋で、甘えたがりの癖に人一倍になっちゃう娘が俺に惚れる訳、大体俺と一夏は)

 

「網島?」

 

「うわ!手塚さん。

心臓に悪いないきなり話しかけないでよ。」

 

「もう三回は話しかけてたが?」

 

「………………ああ。ごめん。」

 

「しっかりしろ?もうそろそろ帰るぞ。

天々座さんが目覚める気配はない。」

 

「そっか。」

 

もう一度理世の寝顔を見る。

少し照れ臭そうに笑いながらうずくまる姿は普通に寝てる様にしか思えない。

やっぱり思い過ごしだろうか?

 

「あ、ちょっと待って。トイレ行ってきていい?」

 

と一夏。

 

「場所分かる?」

 

「さっき見たから。」

 

そう言って一夏1人が部屋を出た。

 

 

 

2

「へえ、結構いいとこ住んでるね。

誰だか知らないけど。」

 

鏡から飛び出しながらシャルルは呟いた。

多少人は多いが、オルタナティブの力を使えば簡単に片付けられる、

否肉片に変えて散らかせる数だ。

 

「どっちにしろあの2人には死んでもらうけど。」

 

怠そうにため息を吐きながらシャルルはポケットからアドベントデッキを取り出す。

 

「さて、皆はどっちかな?」

 

ブラブラと廊下を歩いていると右の方から誰かが走る音がする。

すぐ先に曲がると一夏がナイトメアドーパントに追いかけられていた。

 

「!?」

 

こちらと目が合う。面倒だし怪人ごと倒そう。

そう思ったシャルルはIS、ラファール・リヴァイブカスタムⅡを部分展開し、

切り札の一つ盾殺し(シルド・スピアー)の異名を持つパイルバンカーグレースケールを放つ。

発射された弾丸はまず一夏の頭に向かって飛んだが、

何かに押されたかの様にガク!と一夏の頭が下がり、

背後のドーパントにのみ当たった。

大きく吹っ飛ばされ動かなくなるドーパント。

化物だしすぐ回復するだろう。

 

「たく、面倒だなー。」

 

目をパチクリさせ、倒れたまま自分を見上げる一夏に歩み寄る。

 

「逃げないでね?なるべく痛くして殺すから。」

 

グレースケールを構え直し、照準を覗いく。

何かが銃身に乗って、、否立っている。

 

(足の生えたケータイ?)

 

脚だけでなく手も生えている黒いガラケーは手につけたチェーンソーの様な刃を銃身に突き立てると回転させ真っ直ぐに進んできた。

ジャンプしながら一回転して目を斬り付けようとする。

とっさに身を引いて回避した。

鼻先にピリッとした痛みが走る。

そのまま前転気味に回転したケータイ、ゼロワンはシャルルの顔をジャンプ台に一夏の下まで見事なウルトラCを決めた。

 

「ゼ、ゼロワン?」

 

『逃げるぞ一夏。

シャルル・デュノアは明確に我々に殺意を抱いている。』

 

「そんなこと言ったって!」

 

背後にはダメージが有るとは言え怪人が正面にはISで武装した相手が。

どう考えても前門の虎、後門の狼というやつだ。

 

『そこに窓が有る、ベンタラに行け!』

 

ケイタから渡されたシールのカードをかざし、

鏡面が水面の様に歪むとその中に飛び込んだ。

振り返るとブラウン管のテレビの中にシャルルか写っている。

 

「念のためもうちょっと逃げよっか。」

 

『その間に網島ケイタ達に連絡しておく。ただ。』

 

「? どったの?具合でも悪いの?」

 

『午後の授業、俺はそばに居なかったよな?』

 

「う、うん。それが何?」

 

『実はあの時新型の支援メカのテストをしていてその時にエネルギーを使い過ぎて今そこまで充電がある訳じゃない。』

 

「嘘でしょこのタイミングで!?連絡は?」

 

『もうメールで送った。

一応平気だとは思うがもし戦闘になったら俺をあてにする事だけはしないでくれ。いいな?』

 

「わかった。じゃあさっさと」

 

戻ろうか。と言いかけた時だった。

背後からトプン。

と地球側から何かがベンタラに入って来た様な音が聞こえた。

恐る恐る振り向く。

そこには想像通りラファール・リヴァイブカスタムⅡを鎧ったシャルルがいた。

 

「い、一体どおやって!」

 

世界最強(ブリュンヒルデ)の妹は腕っ節もお頭も似てないね。

これ意外に無いでしょ、理由なんて。」

 

ポケットからアドベントデッキを取り出すシャルル。

最悪だ。最悪の万が一が今だ。

 

変身。シャルルが心の中で念じた瞬間、

写真のネガの様な色の残像が三つ重なりコオロギの様な仮面の異形に姿を変えた。

 

「仮面、ライダー?」

 

「の紛い物だよ。

織斑千冬の劣化コピーを消すにはおあつらえのね!」

 

アサルトライフルのヴェントを連射するオルタナティブ。

なんとか寸前でゼロワンがクラックシークエンスで射撃制御のプログラムを乗っ取ったらしい。

一夏の足元で模擬専用とは言え対IS用弾が炸裂するぶっ飛ばさるがすぐ立ち上がり砂煙をカムフラージュに森の奥に逃げた。

 

「はあ、はあ、はあ!まさかデュノア君もゼイビアックスの手下だったなんて!」

 

『状況は限りなく最悪だな。』

 

「本当に今日厄日だよ!私なんかしたっけ!」

 

『落ち着け一夏。叫んでると居場所がバレるぞ?』

 

「落ち着け?

後何秒後に蜂の巣にされるかもわかんないのに!?」

 

『大丈夫だ一夏。(バディ)がついてる。』

 

「!……信頼してるよ。

でもどうする?ケイタが来るまで逃げ回らなきゃだし逃げすぎてもケイタが見逃しちゃうよ?」

 

『成る程。しかしISで攻撃してくるなら俺がずらして対応できる。

アタックベントで挟み撃ちにされた場合は一夏が頑張るしか無い。

しかし逃げすぎてもケイタ達の到着が遅れる。

ならばどうする?』

 

「敵を何かに釘付けにしておく?

………!いいこと考えた。」

 

悪戯っ子の様な笑みを浮かべると一夏はポケットからある物達を取り出した。

 

 

 

3

「もーいーかーい!」

 

オルタナティブはだらしない足取りでヴェントを弄びながらゆっくりと森の中を見渡した。

ハイパーセンサーがあれば一発で見つけられる筈だがどうも今調子が悪い。

さっき撃った時もあの変形ガラケーが手をかざした瞬間弾の起動制御がおかしくなっていた。

 

「ねーねー。ISコアネットワークを通じてのハッキングなんてどうやってるのー?私にも教えてよ。」

 

多分あのケータイがやってるんだろうけど。

心の中で付け足しどんどん奥に入って行く。

しかし困った。センサーが使えないなら探すのは全部手探りだ。

アタックベントで頭数を増やそうかと思った時だった。

がさっ!と背後の茂みから音がした。

振り返る。直ぐに頭上の木がガサガサと音を立てる。

上を見上げる。

何かが背中に当たり跳ね返って茂みの中に隠れる。

茂みを向いた所でシャルルは気付いた。

なんのつもりか知らないがこれは時間稼ぎだ。

織斑一夏は何かを企んでる。

ここから離れた方がいい。

そう思って動こうとした時だった。

 

「!?『download complete』?まさか!」

 

いきなりISが解除された。

何かウイルスプログラムをダウンロードされたらしい。

 

「やってくれるじゃんケータイの分際で!」

 

デッキから一枚のカードを引き抜き右手のカードリーダー型のバイザー、

サイコバイザーに読み込ませる。

蒼い炎に包まれたカードを横にシュッ!と振る。

炎が晴れるとそれは黒いトゲの付いた大剣、

スラッシュダガーに変わっていた。

 

「害虫は駆除する。」

 

スラッシュダガーの先端から蒼い火炎を放ち周囲を焼く。

茂みや木の枝から小さなメカが飛び出てくる。

ブーストフォンハイシーカー、オブザーバー、デモリッションだ。

逃げて行く方向は三台とも一緒だ。

 

「みーつけた。」

 

ほんの十数メートル先の木の影、

少し屈んだ一夏がブーストフォン達を抱っこしている。

焼き尽くしてやる。剣先を一夏に向ける。

剣から炎が一夏に向かって放たれる。

一夏に触れる寸前。その炎はフッと消えた。

剣が異様に重く感じる。

そして視界一杯に『お前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だお前は圏外だ』視界だけでなく聴覚まで乗っ取られたらしい。最悪だ。もしここで増援が来たりしたら

 

「一夏!」

 

遠くからケイタと海之の声が聞こえてくる。

シャルルはデッキを外し強制的に変身を解除した。

 

『不味いな、シャットダウンでウイルスを消された。』

 

一夏の肩に乗る黒いガラケーが、ゼロワンが呟く。

よく見ると着身していたブーストフォンがデモリッションからアナライザーに変わっている。

時間稼ぎの間にウイルスを製作していた様だ。

 

「本当にイライラさせてくれるね織斑一夏!

望み通りその玩具共と一緒に仲良くスクラップにしてあげるよ!」

 

再びオルタナティブに変身し、スラッシュダガーを構える。

マズっ。と呟くと一夏は森の中を脱兎の如く駆け出した。

 

「待て!」

直ぐにその後を炎を放ち追いかけるオルタナティブ。

 

『一夏!フードが燃えてる!』

 

「嘘!最悪!もう今日厄日!今日以上の日は無いよ!無い無い!」

 

半泣きになりながら上着を脱ぎ走り続ける一夏に炎を投げ続けるオルタナティブ。

走り続ける2人は車道に出た。隠れる物が無い今なら。

そう思い加速するオルタナティブ。しかし失策だった。

体の右側から全体に衝撃が走り地面に転がされた。

 

見ると赤いバイク、スズキカタナをアドベントデッキの力で変身させたドラゴンサイクルに乗ったドラゴンナイトと契約ビーストのエビルダイバーに乗ったスティングがいた。

 

「いつ、いつこんな打ち合わせを!?」

 

『走りながらさ。

俺は普通のケータイと違ってキーボードを打たれ無くてもメールを送れる。』

 

いつの間に再びデモリッションを着身したゼロワンが一夏のパーカーの燃えてる部分を斬り取る。

 

「さて、こっからは俺達が相手だ!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーとスラッシュダガーが火花を散らす。

こっからは鬼ごっこでなく同じ土俵での戦いだ。

スペック、場数では勝るオルタナティブだがケイタの対人センスは中々の物だ。

 

かつて走り屋だった頃、喧嘩もよくしたケイタは相手の一挙一動から先の動きを見る事に慣れていた。

剣などの動きはIS学園に入ってから始めてみたが、ライダーとして戦ううちに()()()()()

故にケイタは、ドラゴンナイトは剣を読んで戦える。

一手先を読み二手先を行き三手目で詰ませる。

 

その上スラッシュダガーより小ぶりなドラグセイバーはウイングナイトのウイングランサーなどの様に受けながら戦うより受け流して戦うのに向いている。

 

スラッシュダガーはその自重を生かしたパワーでゴリ押すタイプなので守りをスティングに一任したドラゴンナイトに自由に飛び回られては防戦一方だ。

 

一夏を狙えばスティングがエビルバイザーで守り、

その間にドラゴンナイトに斬りつけられ、

ドラゴンナイトを狙えば間を縫ってスティングの左ストレートを顔面にくらい、

スティングを狙えば刃が振るわれるより早く剣を持った手をドラゴンナイトに蹴られ体勢が崩れた所を攻撃された。

 

「舐め腐ってくれんじゃん!」

 

<ATTACK VENT>

 

サイコローグを召喚し頭数を増やす。

ドラゴンナイトとスティングは契約ビーストが大きく人とかけ離れた姿をしている為、この戦法は使えない。

何故なら仲間や自分も巻き込んで攻撃させるしか無いからだ。

 

「一夏、キー挿しっぱだからあれで逃げろ。必要になったら呼ぶ。」

 

ドラゴンサイクルを指し、自分はサイコローグを迎え撃った。

サイコローグの拳を掻い潜りながらドラゴンサイクルのエンジン音が遠ざかって行くのを耳にする。

一夏は大丈夫だろう。

ドラゴンナイトは目の前の敵に集中した。

 

 

 

4

先ずは筋力の無いこいつからだ。

そう思ったオルタナティブはサイコローグをドラゴンナイトに向かわせ、スティングに剣を振るった。

 

首をかがめ避けて、

飛び上がる勢いに乗せて放たれた蹴りがオルタナティブのバックルに当たる。

バチバチと一瞬蒼い電気が走った。

おかしい。スティングは訝しんだ。

 

(普通のライダーのデッキは今の蹴りぐらいじゃなんとも無い筈。

ライダーの中でも筋力の低い部類に入る私の攻撃なんか特にだ。

その証拠に繰り返し攻撃し続けてた筈の鎧はあまりダメージを受けていない。

じゃあ何でデッキはこんな簡単にダメージが入ったんだ?)

 

<SWING VENT>

 

エビルウィップを召喚して剣の柄を絡め取り動きを封じる。

これでカードは切らせない。戦いながら海之は考えた。

 

(確か秋山はライダーは全部で14人いると言っていた。

その言葉通り数々のライダーが現れ、

時に共闘し、時に対峙した。

どのライダーも十人十色の見た目、武器だったが、

こいつは違う。違いすぎる。

ほんの少しづつだがライダー同士にあった共通点がこいつには殆ど無い。

もしかしてだがこいつ。)

 

今までのライダーと違ってデッキが弱点なのか?

 

それに気付いたスティングはエビルウィップを引っ張り、

剣を盗られまいと引っ張り返す力を利用して急接近。

 

得意の左ストレートで怯ませることに成功すると握力の緩んだ手からスラッシュダガーを引っ張り盗った。左にエビルウィップを持ち替え、空いた右手でキャッチする。

 

コピーベントを使えば良いと思うかもしれないがそれだと同じ土俵に立つだけで自分だけが敵にダメージを与えられるのが理想だからだ。

 

「そんなに私の剣が欲しかったの?

とんだ強欲の魔物だね恵まれてるくせに。」

 

「? 恵まれてる?」

 

「そうだよ。君達みたいな最初から恵まれてる強い人間は今ある幸福を守らないといけない。

逆に恵まれてない人間は是が非でも幸福を手に入れなきゃいけない。

ここまで言えば分かるよね?」

 

「………ふ、ふふふ。アハ、アッハッハッハッハ!」

 

「!? 何がおかしい!」

 

「いや、あまりに腹が立ったものでな。

私が最初から強い人間だと?

私が今までどれ程大切な物を取りこぼしたと思っている!」

 

エビルウィップで首を締め上げ、スラッシュダガーで滅多斬りにする。

 

「むしろ私はお前のその幸せな思考回路が羨ましい!

結局お前は自分は運が悪かったって理由に逃げて自分は悪くないって思いたいだけだろ。

お前はゼイビアックスの言いなりになっていい、

何も考えない理由が欲しいだけだろ!」

 

剣幕に押されるオルタナティブ。

しかし反撃の余力はあったらしい。

エビルウィップを力ずくで取り外し、

新たにカードをきる。

 

<WHEEL VENT>

 

スティングの背後から駆けつけたサイコローグがバイクモードに変形する。

オルタナティブは大きく跳躍しそれに飛び乗った。

 

「逃すか!エビルダイバー!」

 

空に向かって叫ぶ。

親友の仇にして信頼する相棒は直ぐに来てくれた。

オルタナティブがやった様にスティングもエビルダイバーの背中に飛び乗る。空から探せばすぐに見つかった。

ライダー擬の癖に路上の王(ロードキング)気取りとは。

 

「(ここは網島に譲ってやりたい所だが、

あいつは一夏を乗せてくるだろうし。)

僭越ながら私がお相手しよう。」

 

エビルダイバーを地面スレスレに飛ばし追跡する。

オルタナティブがミラー越しにこちらを見た。

スピードを上げるオルタナティブ。

 

同じくスティングもエビルダイバーのスピードを上げさせる。

向こうはスズキ RMX250に酷似したバイク。

こちらの乗り物はモロクリーチャーの形、

バイクでは考えられない動きも出来る。

 

初めからこのレースはこちらが有利だ。

ただ一つ問題は

 

(毎度毎度最高のタイミングだよ畜生!)

 

激しい偏頭痛と共に遠近感覚が狂い始める。

バイクを駆るオルタナティブが遥か遠くにいる様にも手を伸ばせば届く様にも感じる。

 

それだけならまだ良いのだが揺れるせいで胃の中のものが逆流してきそうだ。

合わせて気分もものすごく悪い。

今すぐにでも休みたい。

しかし今追跡を止める訳にはいかない。

 

「エビル、、ダイバー、、、スピードを上げろ。

最大戦速!」

 

エビルウィップを放り捨て、スラッシュダガーを左手に逆手で持つ。

バイザーのカバーを開けて、震える手を必死に沈めながらカードを入れた。

 

<FINAL VENT>

 

エビルダイバーの両ヒレに雷撃エネルギーが加わり、

スピードがどんどん上がって行く。

さっきまで開いていた距離が縮んでいきいくらスピードをあげても維持すら出来ない。

焦りに焦ったオルタナティブが思わず振り向いた時、

スティング必殺のハイドロベノムが炸裂した。

 

 

 

5

前方から火の手が上がる。

それと同時に爆音が鳴り響き、

やや遅れて火のついたタイヤとサイコローグの残骸が転がってきた。

 

「手塚さん!」

 

ドラゴンナイトと一夏はバイクを降りて炎の中に消えた仲間と今の今まで追跡していた襲撃者を探した。

幸い風があまり拭いていなかった為、

火の勢いはそれ程でも無い。

 

………居た。炎の中、揺らめく炎の向こうに2人が戦う姿が見える。

流石にファイナルベントは聞いたらしい左足を引きずったオルタナティブとまるで遠近感覚が無いかのように無茶苦茶に剣を振るうスティング。

 

こうなったら技術や矜恃なんて役に立たない。

勝つのは倒すという決意が強い方だ。

 

何度目かは分からないがたまたまスティングが放ったスラッシュダガーの一閃がオルタナティブを高速道路の下へ落とした。

 

「あ!」

 

「まずい!」

 

「何処に逃げたァ!待てえ!」

 

遮二無二スラッシュダガーを振り回しながらスティングもその後を追い下界にダイブする。

 

「手塚さん!デュノア君!」

 

「マジかよ。頼むぞドラグレッター!」

 

<ATTACK VENT>

 

飛来したドラグレッターが鼻面ボールの容量で落下する2人を柔らかい土の上に川沿いの原っぱに落とす。

ブンブンと頭を振りながら立ち上がるスティング。

どうやら発作は治ったらしい。

 

「デュノア、、立て。」

 

「何怒ってんの?君なんかが私をわかったつもり!」

 

最後だけ吐き出す様に叫ぶとオルタナティブは殴りかかった。

避けるフリをして油断させた所を体当たりで体勢を崩させスラッシュダガーで切り上げる。

土手の上まで吹っ飛ばした。

 

「どうした!立て!

幸せな奴らに逆恨みできる元気があるなら!

人を殺せる様な元気があるならその程度のダメージで立てなくなる訳ないだろう!」

 

叫び出しながらもスラッシュダガーを振るい続けるスティング。

もたつきながら逃げるオルタナティブ。

 

市街に入り何度も曲がりながらも追いかけっこは続いた。

遠くからバイクの音が聞こえる。

もうじきドラゴンナイトとも合流出来るだろう。

 

「はぁ!」

 

たまたま放った一閃がオルタナティブの背中を斬りつけた。

つんのめるオルタナティブ、前から来た何かとぶつかって倒れた。

 

オルタナティブとぶつかったのは前にドラゴンナイトと共に戦ったナイトメアドーパントだった。

 

その先にはウイングスラッシャーを構えた仮面ライダーセイレーンがいた。

予想以上にめんどくさいのとバッティングしてしまったらしい。

向こうも同じ事を思った様で予断なく構えた。

 

どうするべきかスティングが迷っている内に次に起こった出来事がセイレーンの身体を動かした。

ダメージのせいかオルタナティブの変身が解除され、

シャルル・デュノアの姿に戻る。

 

「デュノア君!」

 

ウイングスラッシャーを上段に構えながらセイレーンはドーパントに走った。

振り下ろされたウイングスラッシャーはドーパントの背中を切り裂いた。

 

「逃げてください!」

 

叫びながら一閃、二閃と剣戟を繰り出す。

それはドーパントを攻撃しながらも確かにスティング達を牽制していた。

このままでは近づけない。

 

スティング達は攻めあぐねたが突如として壁を砕きながら現れたウイングナイトにより戦場は混沌を極めた。

 

ドーパントとセイレーンを轢きながら着地したウイングナイトは体操選手の様にバイクを台にして揃えた両足を一回転させ、

セイレーン とドーパントを下がらせるとダークバイザーを引き抜きセイレーンに迫った。

 

「またあなたですか!大事な生徒はやらせません!」

 

「? 生徒?まさかその声は!」

 

何かに気付いたウイングナイトはダークバイザーを収納すると太刀取りでウイングスラッシャーを奪い捨て、

逮捕術の様な動きでセイレーンを取り押さえた。

 

「誰でもいい!こいつのデッキを外せ!」

 

「あ、あぁ!」

 

素早く駆け寄ったスティングがベルトからデッキを外す。

変身が解除されセイレーン は山田真耶に戻った。

 

「「「山田先生!?」」」

 

「馬鹿な、山田教諭がセイレーンだと?」

 

ドラゴンナイト、スティング、ウイングナイトも変身を解除し、

白い服の少女もヘルメットを脱いだ。

 

「網島君にアキヤマ君に織斑さんに手塚さん?」

 

「1、2、、5人か。世間ってやつは本当に狭いな。」

 

独りごちながら蓮は逃げない様シャルルにスタームルガーを構えながらコオロギのデッキを拾い上げる。

 

『予想以上に込み入った話になってしまったな。』

 

一夏のパーカーのフードからゼロワンが、

ケイタの腰のホルダーからセブンが、

蓮のブレザーのポケットからサードが現れる。

 

「!?デビルKにエンジェルK!」

 

意外と都市伝説とか知ってたらしい真耶が素っ頓狂な声を上げる。

 

『知っているなら話は早い。

まずは理世の家に戻るぞ。話はそれからだ。』

 

ライダー達の夜は長い。

それぞれが混乱や憔悴の色を見せる中、

シャルルの瞳だけは相変わらず濁っていた。




ケイタ「さて、結構久しぶりでしたがいかがだったでしょうか?」

竜崎「一つだけ質問が。オルタナティブの変身、あれはディケイドに出演した時のような感じなんですか?」

智乃「はい。確か作者さんが初めてオルタナティブを見たのはリアルタイムで見ていた仮面ライダーディケイドのネガの世界のエピソードだったからだそうです。」

竜崎「成る程納得しました。そして狙いすましたようにそろそろ時間のようです。」

(ED ダニー・カリフォルニア DEATH NOTE)

智乃「次回、Fake number Four その7!」

竜崎「見せて差し上げますよ正義は必ず勝つという事を。」

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