infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来   作:伊勢村誠三

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ケイタ「…………」
一夏(全身大火傷)「」
ネクスト『セブン先輩……』
セブン『ああ、我々がやるしかないな。』
ネクスト『っすね。前回は一夏師匠が撃墜されてああなったってとこまでっすよね?』
セブン『あくまでそう聞いているだけだ。詳しくは今回語られるだろう。』
ネクスト『そうっすか…それでは、どうぞ。』


the Heat その5

1

身体中包帯だらけの少女が寝かされてる。

一夏だ。

作戦はうまく行くはずだった。

 

どれだけ箒が浮かれていようと、三春が独断先行しようと

セシリアが射撃をミスしようと一夏の思い切りが悪かろうと、

ミスした1人以外の誰かがそのミスをカバー出来るだけの布陣だった。

 

ただ一つだけ、4人以外の穴があった。

戦闘領域内を密漁船が通ったのだ。

 

「La………♪」

 

敵は狡猾だった。

一夏とセシリアが密漁船を気にしてると察するとすぐに攻撃対象を密漁船に変えた。

 

2人は必死に密漁船を守ろうとした。しかし三春は

 

「あんな犯罪者共守る必要ねぇよ!」

 

そう言って一夏の首根っこを引っ張って福音に向かわせようとした。

 

「三春兄離して!確かにあの人達は悪い事してるけど殺される程の事じゃないよ!」

 

「何を言う一夏。まずは福音だ。

あんなの欲を出した奴らの自業自得だろ!」

 

「何を言うはこっちの台詞だよ!

昔の箒と違うとかそんな話じゃなくてさ!

力が手に入って嬉しいのは分かるけど、

そこで自分の為だけに好き勝手したら白騎士事件(マッチポンプ)を起こしてISの力を証明した束さんとなんも変わんないよ!」

 

「なぁ!?……変わらない?

私が、あの人と?家族と、私を引き裂いた、

皆と私を引き裂いた、あの人と?」

 

よっぽどショックだったらしいく、

ワナワナと震えたまま動かなくなる箒。

 

「La……♪」

 

その隙を敵は見逃さなかった。

 

無数の光弾が箒を襲った。

茫然自失の箒は避ける素振りすら見せない。

 

「箒!」

 

無数の光弾が、一夏に炸裂した。

 

(嘘…私……突き飛ばそうとして間に合わなかったって身体ごと盾になっちゃダメじゃん。ちゃんと……帰るって…約束………)

 

一夏は意識を手放した。

 

「え、あ…一夏っ!一夏ぁああああ!」

 

真っ赤な炎に包まれながら真っ逆さまに堕ちていく一夏。

箒は夢中で追いかけた。

 

「チッ!役に立ずが!セシリア!

援護しろ!奴はここで必ず殺す!」

 

堕ちていく2人に吐き捨てながら三春は黒法を駆った。

繰り出される光弾を零落白夜で切り裂きながら突き進んで行く。

 

しかし先程まで機械的だった福音の射撃がだんだんと正確になって来る。

 

(くそう!近づけない!あいつを!

あいつを斬ってみんなを守らなきゃなのに!」)

 

「全く、仕方ありませんわね!」

 

新しく本国から送られて来た高速戦用型スターライトで最低限の光弾を叩き落とし、三春と合流すると

 

「黒法、機体をロック!」

 

事前に千冬から預かっていたプログラムを起動した。

 

黒法がまるで金縛りにあったようにピクリとも動かなくなる。

 

「なんだこれ!ふざけんな!まだ、まだ終わってないぞ!」

 

喚き散らす三春を無視してセシリアは戦闘空域から離脱した。

 

 

 

2

「……そうか。それで一夏と篠ノ之(バカ)織斑兄(あんぽんたん)はどこだ?」

 

「一夏さんと箒さんはケイタさんと医務室に。

織斑三春は織斑先生とミーティングルームに居ますわ。」

 

「わかった。オルコット 、ボーデヴィッヒと更識とケイタと篠ノ之を呼んできてくれ。」

 

そう言って蓮はミーティングルームに向かった。

 

『レン様、一体何をなさるおつもりで?』

 

「サード、俺が合図したら例のデータを織斑千冬の端末に送信しろ。」

 

『!?  思い切った事をしますね。』

 

「それぐらいじゃなきゃあの鉄の女は動かんさ。」

 

黒い絹の手袋をはめながら、

セキュリティシックスを取り出す。

ミーティングルームの前まで来た。

 

「なんでだよ千冬姉!もう一度行けば確実に倒せる!」

 

「駄目だ織斑、お前には任せられない。」

 

「なんでだよ!

俺以外に零落白夜が使える奴は居ないだろ!」

 

「だとしても迎撃任務で敵の殺害を実行しようとし

仲間を軽視したお前に任せる事は出来ない!

お前はISパイロット以前に人として歪んでいる!

お前にISに乗る資格など、力を持つ資格など無い!」

 

「! ふ、ふ、ふざけんなぁ!」

 

恐らく三春が飛びかかろうとしたタイミングでドアを開き

6発全弾叩き込む。なるべく足だけを狙った。

 

「うぎゃあああああああ!

何、しやがる…この、ドチクショウが!」

 

「ドチクショウはお前だ。」

 

弾をリロードして、セキュリティシックスをしまい、

三春の顔面を蹴り付け気絶させる。

 

「アキヤマ貴様何を!」

 

千冬があっけに取られたまま叫ぶ。

 

そのタイミングで銃声を聞きつけたセシリア達が入って来た。

 

「これよりあなた達は

日米貿易協定IS特記事項第二十八条基づき、

現地の自衛官、または米国軍人の中で最も位の高いもの、

つまり特別少佐の俺の指揮下になって貰う。」

 

「特記事項第二十八条!? まさか……」

 

ラウラが何やら驚いた顔をする。

 

「そのまさかだ。ラウラ・ボーデヴィッヒ准尉。

貴官に対IS用特別交戦規定レベル3を発令する。

対象は銀の福音。機体認証コードをデリートしておけ。」

 

対IS用特別交戦規定。

それは米軍のISが暴走、またはスパイなどにより奪取された際に機体認証コードをデリートして攻撃可能にする為の交戦規定だ。

 

中でもレベル3は最も重い『機体パイロットとISコアの無事を度外視した攻撃を許可する』ものだ。

 

「し、しかしいくら何でもレベル3は!」

 

「これは命令だ。従わない場合、

最悪IS剥奪もあり得ると思え。」

 

「本気、なんですね。」

 

「無論だ。」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒ准尉、了解しました。

貴官に従います。」

 

「待て、待て!待て待て待て待て!

アキヤマ何を勝手に話を進めている!

私は言ったはずだ。次の指令があるまで待機と!」

 

「IS学園一年学年主任はアメリカ海兵隊IS師団の指揮系統に存在しない。」

 

パチンと蓮が指を鳴らすと千冬のケータイに何かが送られて来た。

 

蓮の方を警戒しながらメールを見る千冬。

 

「!? き、貴様一体どこからこのデータを?」

 

「いいのかな?余計な質問して俺の機嫌を損ねても。」

 

「脅迫か?」

 

「強制だ。俺に不都合な事を何もするな。」

 

最後通告だ。と言うように蓮は言い切った。

 

千冬は悔しそうとも、

歯痒そうとも見えるなんとも言えない表情のままその場を後にした。

 

「よし、網島ケイタパイロット、更識簪パイロット、篠ノ「皆まで言うな。」

 

ピシッとケイタが蓮の台詞を遮る。

 

「建前はいい俺もいく。て言うか行かせてくれ。

三春奴を先にボコしたのは許さないけど、一夏の仇を討たせてくれ。」

 

「私も。御膳立てありがとう。私たちじゃ無理だった。」

 

「それからレンさん。あなたがわたくしに皆さんを呼んで来させたのはオペレーターが必要だからでしょうけど。」

 

背後を指すセシリア。

そこには鈴音、ロラン、シャルロットに心愛、千夜、海之の姿があった。

 

「皆…なんで?」

 

「なんでも何も今度はこっちの番ってだけよ。」

 

「私はレディに手をあげた奴にはその百億倍の目に合わせる主義なんだ。」

 

「僕はまだ全然一夏にいろんなものを返せてないからね。」

 

「本当にいいのかお前ら。オルコットは兎も角お前らは」

 

「一夏の友達。だから関係者。」

 

「……言いなりだった人形娘が言うようになったな、コンスタン。」

 

「お陰様でね。」

 

そして最後に箒に視線が集まった時

 

「やあ、お通夜かな?」

 

キーン、キーンと耳鳴りの様な音と共に一番近くの窓にあの男の姿が写る。

 

「間明!」

 

「これから仮面ライダートルクの処刑式を始めるんだ。

よかったら織斑一夏の葬儀の二次会に是非来てくれた前。」

 

そう言って間明はポケットからストライクのデッキを取り出す。

 

「まさかあいつが!」

 

「仮面ライダー。」

 

間明はストライクに変身し、鏡の奥に消えた。

 

「いいぜ、丁度暴れたかった所だ……ッ!」

 

ドラゴンのデッキを握りしめ、飛び込んで行くケイタ。

 

「こ、これは?」

 

「一体何が……。」

 

この中でライダーの正体を知らないセシリアと鈴音は面食らう。

 

「追々話すさ。コンスタン。こいつらは頼んだ。」

 

「わかった。」

 

「KAMEN-RIDER!」

 

「仮面ライダー!」

 

蓮と海之もそれぞれウイングナイトとスティングに変身して跡を追う。

 

「篠ノ之、私たちも…あれ?皆篠ノ之を知らない?」

 

「あら?さっきまでわたくしの後ろにいたはず…。」

 

「たく、ほんっと悲劇のヒロインぶって腹立つわね!

皆先にISの準備始めてて!アタシ探して来る。」

 

「待って鈴、あなたじゃ無理。」

 

「はあ?簪何言って」

 

アックスのデッキを見せる簪。

 

「……アイツも持ってるって訳?」

 

「うん、だから私が行く。

けど安心して。気持ちは一緒。」

 

「悪いわね。私らの代わりに1発ガツンとぶちかまして来て!」

 

「了解。」

 

ガシっ!と拳を交わすと簪は走り出して行った。

 

 

 

3

ベンタラがわからアドベントビーストの気配を感じた真耶はセイレーンに変身してベンタラに飛び込んだ。

 

「あれ?この辺りに居るように感じたんですが……」

 

迷っちゃったですかね?

そう言って首を傾げた時、

斬撃音と共に何が真耶にぶつかって来た。

 

「痛い!誰ですか!?ってビースト?」

 

吹っ飛んで来たのはかつてスピアーと契約していたのと同じギガゼールだった。

 

「███▅▅▅▃▄▅▅▅!!」

 

「うわっと! そっちがその気なら、

容赦しません!」

 

<SWORD VENT>

 

ウイングスラッシャーで得意の連続攻撃を与えて、爆散させる。

 

「やりました!けど、このタイプのビーストって確か蜂型やピラニア型みたいに群れてたような気が?」

 

そう思い、さっきギガゼールが飛んで来た方に向かってみると

 

「ヒッ!」

 

大量のレイヨウ型ビーストの残骸の中心に血みどろで立つケイタとビーストの残骸を美味そうにパクつくドラグレッターの姿があった。

 

「…………」

 

「あ、あの網島君?」

 

「!? 山田先生。あなたも間明を、

ストライクを追って?」

 

「え?」

 

「居た!ドラゴンナイト!

セイレーンも一緒か。」

 

「あ、アキヤマ君に手塚さん。」

 

「セイレーン。変身してる時はライダーの名前で呼べ。

身バレは余計な人間を巻き込む。」

 

「は、はい……。」

 

「それより結局ストライクはどこに?」

 

仮に見つけても1人で向かって行っては良いようにやられるだけだろう。

 

「なら二手に分かれましょう。

カードの相性的には、私とあみ…ドラゴンナイトさんで、

ウイングナイトさんとスティングさんですね。」

 

「決まりだ。生きて会おう。」

 

そう言って4人が分かれて走っていたのを見送って出て来た者がいた。

トルクだ。

 

「な、なんだったんだよあの暴れっぷりは……」

 

トルクはドラゴンナイトとレイヨウ型ビーストの群れの戦いを見ていたのだ。

ドラゴンナイトは、ケイタは一夏を傷つけられた事に対する怒りを、

三春の歪みを知っていながら今まで指摘しなかった半端さに対する怒りを全て拳と叫びに乗せた。

その結果、雲霞の如きビースト群は蹴散らされた。

 

ドラゴンナイトが拳を突き出せばビーストの身体が宙を舞い、

蹴りを放てばビーストがドミノ倒しに吹き飛んだ。

 

「あんな、あんな化け物俺にどうしろってんだよ!」

 

他のライダーを味方につけるか?駄目だ。

自分は今IS学園の陣営にもゼイビアックス陣営にも信用されてない。

なら一人で立ち向かうか?

 

無理だ。トルクのカードは強力だが隙が大きい。

エンドオブワールドを発動しようとしたタイミングでマグナギガごと貫かれるとかあり得てしまう。

 

「やだ、やだ!死にたく無い!

くそう…なんでこんな事に?」

 

「へぇ〜。死にたく無いの。

ならベントならいいか。」

 

「ヒィ!ま、間明……。」

 

「やあ、今日は君の、断末魔を聴きに来た。」

 

「あ、ああ…ああああああああああああ!」

 

トルクは狙いが定まらない震える手でマグナバイザーを撃った。

しかしストライクに体を開いて避けられる。

そしてストライクは引いた右足で回し蹴りを腹部に与える。

 

(動きがガタガタ。怯え切ってる。

ちょいちょいビーストをけしかけてたのが効いてるね。)

 

しかしそれでもトルクの生存本能は凄まじかった。

ガムシャラにストライクの腰にしがみつき、

鯖折りの要領で背骨を締め上げて来る。

 

「窮鼠猫を噛むか。

じゃあネズミらしく無様に消えろ!」

 

トルクのアーマーの一番脆い部分に当たりをつけてベノバイザーを振り下ろした。

何度目かの打撃でアーマーが割れた。

ストライクはバイザーを逆手に持ち直してドリューの身体をバイザーで貫いた。

 

「が、ああ!」

 

力が緩む。

ストライクはバイザーを抜いて脱出し、

トルクを蹴り飛ばした。

その身体からは粒子が上がっている。

 

「う、嘘だ!いやだ、嫌だ嫌だ死にたく無い!

なんでも、なんでもするよ!

金ならいくらでも稼いでやる!

だからお願い!助けて!たすけてくれよぉ!」

 

「駄目だ。」

 

絶叫と共にトルクは砕けて消えた。

デッキだけが柔らかい草の上に音もなく落ちる。

 

「あばよ、ペテン師君。うわっ!」

 

デッキを回収しようとした時、

ウイングスラッシャーがブーメランのように飛んで来た。

 

「ああ、断末魔を聞いて戻って来たのか。」

 

セイレーンとドラゴンナイトだ。

 

「間明、お前またライダーを!」

 

「何故、何故こんなことを!」

 

「もう用済みだからだよ。

履き潰した靴はちゃんと決まったゴミの日に出すのと同じ。

エチケットさ。」

 

「あなたは、あなたは狂っています!」

 

「ふふ、そう来なくちゃ。」

 

<ATTACK VENT>

 

メタルゲラスを召喚してドラゴンナイトの相手をさせ、

向かって来るセイレーンのウイングスラッシャーを掴んで止めた。

 

「な!」

 

「まだまだ!」

 

奪い取ったウイングスラッシャーを膝で叩き折り、

二本の短剣としてセイレーンに振るう。

 

「うわぁああああ!」

 

「はは、下ごしらえはこんなもんか。

それじゃあ、いただくとしよう。」

 

痛めつけられ転がったセイレーンに覆いかぶさるとストライクはクラッシャーを展開して背中の翼を喰らい千切った。

真耶の喉から出たとは思えない絶叫が響く。

 

「山田先生!こんの退けえ!」

 

メタルゲラスをドロップキックで吹っ飛ばすとドラゴンナイトはカードをベントインしながらストライクに突っ込んだ。

 

<GUARD VENT>

 

得意のドラグシールドインファイト戦法だ。

 

「良いおもちゃだね。僕にも貸してよ!」

 

<STEAL VENT>

 

逆に使おうとするストライク!

 

「させるかぁ!」

 

<SWORD VENT>

 

ドラグセイバーを飛来させながら召喚してドラグシールドを吹っ飛ばす。

 

「なんだと!?がっ!」

 

ドラグセイバーの一閃がストライクを転がす。

 

「先生大丈夫ですか!?めっちゃ血出てますよ?」

 

「だ、大丈夫です、それより来ます!」

 

<SWORD VENT>

 

ベノサーベルを構えたストライクが雄叫びを上げて突っ込んで来た。

ドラゴンナイトも受けて立つ。

 

刃と刃が火花を散らす。

幾度めかの打ち合いでドラグセイバーがドラゴンナイトの腕からすっぽ抜けて飛んで行く。

 

「貰った!」

 

しかしドラゴンナイトはすぐさま頭上の枝を掴み、

逆上がりでベノサーベルをかち上げ、

ガラ空きになった胴に飛び蹴りを浴びせた。

 

「ならこれだ!」

 

<STRIKE VENT>

 

「やってやろうじゃねえか!」

 

<STRIKE VENT>

 

ストライクがメタルホーンをドラゴンナイトはドラグクローを構える。

 

《まずいぞケイタ!向こうの方が早い!》

 

このままでは火球を繰り出すより先に腕ごとドラグクローを潰される。

 

「ならこれだ!」

 

メタルホーンの角が入り込んで来るタイミングで炎を発射、

そしてドラグクローを無理やり閉じる!

 

「馬鹿な!あっつ!」

 

「どりゃあ!」

 

堪らずストライクが腕を抜いたタイミングで左ストレートを浴びせる!

 

「これは滝本さんの分!」

 

崩れかけのドラグクローを脳天に叩きつける!

 

「これはカラフルボマーの分!」

 

続いて顔、胴、肩に満遍なくラッシュを叩き込む!

 

「これはのほほんさんと罪のない警備員さん達の分!」

 

そして最後に切り札を切った。

 

「これがスピアーとトラストとトルクの分だ!」

 

<FINAL VENT>

 

ドラグレッダーと共に天に舞い上がる!

 

「は、知るかそんなコトォ!」

 

<FINAL VENT>

 

2人のライダーキックが炸裂し、

隔絶された地球にも届かんばかりの爆音を轟かせた。

 

 

 

4

あらかた館内を探し終わった簪はビーチに向かった。

見ると箒はISを部分展開して、近接ブレードを

自身の首元に当てていた。

 

「駄目!」

 

「来るな!」

 

刃を首に当てたまま叫ぶ箒。

 

「私は、私は責任を取るだけだ!

一夏を傷つけ、姉と同じテツを踏んだ自分に当然の罰を与えるだけだ!」

 

「違う。」

 

「、、、は?」

 

「あなたはただ考えることから逃げてるだけ。

普段は嫌ってる姉から貰った力に浮かれて

使えもしないまま使って失敗して

他人に迷惑かけて最もらしいこと言って責任から逃げてるだけ。」

 

「黙れ!、お前なんかに、

お前らなんかに何が分かる!一夏と三春は強いんだ!

お前も網島も秋山も目じゃないくらいに強いんだ!

それなのにお前らは一夏を毒して弱くした!

三春を貶め冤罪にした!

そんなお前らに何が分かるって言うんだ!」

 

しゅ!箒はブレードのアドベントデッキを取り出し構えを取り

 

「仮面ライダァ!」

 

ブレードに変身。

左手のガルドバイザーで殴りかかってくる。

 

しかし簪もまた仮面ライダー。

ポケットからデッキを取り出し更識の暗殺術で素早く背後に回り込み変身の構えを取る。

 

「カメンライダー、、、!」

 

アックスに変身してデストバイザーで突っ込んで来た所を左下から斬り飛ばす。

 

「このっ!」

 

<SWORD VENT>

 

吹っ飛ばされながらカードをベントイン。

ガルドセイバーを召喚し斬りかかる。

 

「ツヴァイへンダー?人斬りの癖に!」

 

二、三度切り結ぶ。

極めて冷静なアックスに対して激情に任せて剣をぶん回すだけのブレード。

 

どうしても大振りになるツヴァイへンダーに

小回りの効くやや小さめの戦斧。

 

勝負は火を見るより明らかだった。

あっと言う間に弾き飛ばされ這い蹲るブレード。

 

二人の距離は約5メートル。

アックスのファイナルベントの有効射程内だ。

この距離ならベント出来る。

 

「これで投了。諦めてデッキを渡して。」

 

「ふざける、、なぁ!

、、貴様程度にやられる程弱くない!

弱くないんだぁ!」

 

デッキからカードを引き抜く。

勝負を焦ってるから引いたのは間違いなくあのカード。

 

<FINAL VENT>

 

「読んでた。」

 

迷わず二枚のカードを引き抜き、

うち一枚をベントイン。

 

<FREEZE VENT>

 

「な!」

 

ブレードから驚愕の声が上がる。

自分の背後に呼び出されていた契約ビーストが凍結したのを見たのだろう。

 

「こんどこそ。」

 

<FINAL VENT>

 

ブレードの背後から現れたデストワイルダーはブレードをアックスから更に遠ざけるように吹っ飛ばすとすぐさまブレードの契約ビースト、ガルドサンダーを背後からうつ伏せになるように倒し引きずりながらアックスの元まで引きずって行く。

 

自動で召喚されたデストクローを構えて待つアックス。

その右爪に溢れんばかりの凍結エネルギーが満ちて

 

「投了。」

 

摩擦熱であり得ないほど高温になったガルドサンダーを右爪で指しながら頭上まで持ち上げる。

 

その瞬間一気に冷却されたガルドサンダーはまるで夏場に外に晒されていた氷のように砕け散った。

 

「クリスタルブレイク。」

 

吹っ飛ばされて仰向けのま動けなかったブレードの鎧が灰色になって強制解除される。

 

契約ビーストは倒されてから24時間で復活する。

逆に言えばビーストが倒されてデッキのカードが失効した場合24時間の間ブランクモードと同じ力しか出せない。

逆立ちしたって契約ビーストが無事なライダーに敵うはずが無い。

 

「、、、。」

 

「星が綺麗?」

 

アーマーを解除しながら箒の横に立つ。

 

「、、分かってた。

二人とも理由は別々だけど私の手が届かない所に行ってしまったってことくらい。」

 

「でも嫌だった。」

 

「あぁ。姉は知っての通りで、

両親とは要人保護プログラムのせいでもう何年も会ってない。」

 

寂しかったんだよ。

10年前から段々と自分を迎えてくれる人が消えていくのが。

語りながら涙を浮かべ始めた。

溜め込んでいた何かが決定的な敗北に押し出されて吐き出されていく。

 

「やっとまた一夏と出会えたと思ったら、

一夏は私にない全部を持っていた。威厳に満ちた姉も

2人だけの秘密を共有できる姉弟同然の幼馴染を。

いざって時に頼れる親友を。

目を離してられない友人を。

お前みたいな手の掛かる後輩みたいな奴も。

みんな持ってたんだ。」

 

あの三春の手段の選ばなささえ私にとっては別の強さだった。

涙も語りも一切止まらずまくし立てる。

 

「いっそ一夏に嫉妬でもした方が楽だったのかもしれない!

けどそれはプライドが許さなかった!

変わる前の一夏のイメージを押し付けて、

網島を!秋山を!保登を!お前たちを憎んだ!

一夏がもう私より強いことを安っぽいプライドが許さなかった!」

 

告解から絶叫へ、絶叫から嗚咽へ。

 

自分ももし一夏たちに出会ってなかったらこんな感じだったかもしれない。

自業自得で最悪の状態に陥ってそこからなんとか這い上がろうとして2度と出れない所に突き落とされる。

まさに仮面ライダーみたいじゃないか。

 

そう思うと他人事じゃない気がして来た。

自分も初めは気分が高揚した。

しかし勝てなくなり始めてから、

殺し合いを実感してから恐ろしくなった。

 

まともに戦えるようになっても、

ふとした時に辞められない戦いである事を思い出し、

安心が吹っ飛んだ。

そしてそれはさながら呪いなんだと理解するしかなかった。

 

「でも逃げていい理由にならない。逆境なんて、

誰だって経験すること。」

 

なんの慰めにもならないだろうけど、

言わずにはいられなかった。

 

背を向けて歩く。

後は彼女が立つか、立たないかだ。

 

「ま、待って!………すまない簪。

今だけ、今だけお前を姉さんと勘違いしてもいいだろうか?」

 

「……いいよ。文句ぐらい聞いてあげる。」

 

簪がそう言った瞬間。箒は泣きながら簪の背中に抱きついていた。

静かに、だが確かに泣いていた。

 

(私、一応妹なんだけどな。)

 

だがああ言った手前仕方ないか。

見ているものと言えば、

星座になった神か英雄達ぐらいだしと思い、

簪はしばらくそのままでいた。

 

 

 

5

「おいしっかりしろスティング!

ここの道はさっき通った!」

 

「うるさい分かってる!」

 

2人は度重なる悲鳴や衝撃音を聞いて急いで引き返していた。

 

「やっと着いた!」

 

「あれは…山田教諭!」

 

血溜まりの中にセイレーンが倒れている。

 

「おい!しっかりしろ!」

 

「ストライクですね!奴がここに来たんですね!」

 

「わ、私はいいです…それより網島君を!」

 

2人は破壊跡を辿り、森の奥まった所にうつ伏せに倒れるドラゴンナイトを見つけた。

その反対側にはストライクが大の字に倒れている。

どうやらファイナルベントの撃ち合いで相討ちになったらしい。

 

「は、はは。流石網島くん。けどここまでだ!」

 

<FINAL VENT>

 

起き上がるとストライクはもう一枚の、

トラストのファイナルベントを発動した。

ストライクの右手にメタルホーンが、

背後にメタルゲラスが現れる。

 

「まずい!」

 

自分もファイナルベントを!

と思ったウイングナイトだったが、

今ここでしかファイナルベントを撃っても敵にまだアタックベントが有ればやられるのはこちらだ。

 

「使うしか、ないか!」

 

デッキから黄金の右翼の書かれたカードを、

サバイブカードを引き抜く。

 

バイザーに入れようと構えた瞬間、

横っ面をスティングに殴られ、カードを奪われた。

 

「て、手塚お前何を?」

 

「秋山、君はまだだ。私が、運命を変える!」

 

(BGM Revolution 仮面ライダー龍騎)

 

青い疾風が吹き荒れ、スティングの飛召盾エビルバイザーが弓型のエビルバイザーツヴァイに変形し、通常のカード用とは別のカードスロットが現れる。

 

「変身!」

 

<SURVIVE MODE>

 

カードをベントインし、バイザーを振り上げる。

装甲に黄金が追加され、スティングはサバイブモードに変身した。

 

<SHOOT VENT>

 

バイザーに青い光の弦と矢が現れ、

背後にイトマキエイ型のエクソダイバーが現れる。

 

「ハァ!」

 

放たれた一閃はストライクを吹き飛ばし、

背後のメタルゲラスを爆散させた。




セブン『まさか手塚がサバイブモードになるとは。』
ネクスト『しかもあんだけライダーバトルでボロボロになって福音戦大丈夫なんすかね?』
セブン『信じるしかなかろう。次回、the Heat その6!』
ネクスト『これが、明日のリアル!』

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