infinite DRAGON KNIGHT in 明日未来   作:伊勢村誠三

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ケイタ「えー、前回のinfinite DRAGON KNIGHTは、貴重なバイト風景をお送りしましたが、今回は夏っぽくホラーな話をお送りしたいと思います。」
一夏「ホラーな話?」
サード『今は一月ですが?』
ケイタ「いや現実の時間(リアルタイム)の話じゃなくて劇中の話ね?」
一夏「なんだかんだ50話近くやってようやく原作4巻入ったとこなんだ…」
サード『原作は一巻につき約4、5話ぐらいで終わらせてましたが』
ケイタ「原作は原作!二次創作は二次創作!さーさっさと行くぞ!」
一夏「さてさてどうなる?」


大江達郎の事件簿 No.15 白い本

1

大江達郎という少年は実に幸運だ。

100万人に1人100年に一度、神様に特別に愛されたラッキーボーイ。

ただし、命の危機に関してだけ。

 

それを言うならつい最近仮面ライダー同士が殺し合う様な事態に巻き込まれたばっかりだが、あれは彼の友人五反田弾が仮面ライダー黒影に変身するという必然の運命の元、必ず助かると定められていた事象だ。

 

上にあげた様な例外を除き、大江達郎は数多くの事件、事故をスレスレで回避している。

例えば何となくベンチに腰掛けた瞬間、

さっきまで立っていたところを弾丸が通り過ぎて行った。

 

自分より一回りも大きい乱暴な大人に因縁をつけられたが、

あの悪名高き鏖殺網島が居合わせて助かった。

 

と言った具合に本人が自覚してる事は少ないが、

一年に一回はそう言った危機を回避出来ている。

今回語るのは、そんな話の一つ…。

 

 

 

2

友人達としばらくLINEで会話していた達郎だがケイタが『じゃ、これからバイトだから』と会話を抜けたのを気に解散となってケータイから顔を上げて荷物をまとめると図書館に向かった。

 

早めに渡された夏休みの宿題を片付ける為である。

 

(あのオカメ女!アホみたいな量出しやがって!)

 

恐らく学校一嫌われてるだろう教師の顔を思い浮かべながら心中で呪詛を吐きつつ図書館に入った。

風都市立すずかぜ図書館。

この前虚と弾が初めて会った日、弾と達郎が待ち合わせをしていたすずかぜ公園から徒歩10分程の距離にある。

 

一階は図鑑や学習漫画など児童向けの本が並ぶ。

奥では今日もおっとりした雰囲気のお姉さんがボランティアで読み聞かせをしている。

 

達郎が使うのは二階だ。

雑誌や英字新聞等に文庫本が並ぶこの階には自習室もあるのだ。

 

(まだ空いてるな。)

 

席に着き、早速宿題に取り掛かる。

怒りを原動力にしているおかげか中々サクサクと進む。

 

(さて、ノルマはこんなもんか。時間は…まあまあ余ったな。)

 

昼食は家で食べるつもりなので、

 

今から帰るには少し時間が早い。

(折角図書館に居るし、本でも読もうかな?)

 

そう思って翻訳小説の並ぶあたりをウロウロしているとおかしなものを見つけた。

 

翻訳小説が並ぶ棚とは反対側の歴史書が並ぶ本棚、

丁度達郎の目の高さの所に白い横に長い絵本が飛び出ているのだ。

 

図書館員が間違えて入れたとも思えないし、

子供の悪戯にしては本の位置が高すぎる。

 

不思議に思い手に取ると、おかしなものはきみが悪いものに変わった。

背表紙も裏表紙も見事に真っ白。

図書館のバーコードさえ無い。

 

(ただの悪戯にわざわざこんな本を作るか?)

 

好奇心に負けてページを開いてみる。

 

真っ白なページに手書きの文字があった。

 

全て

 

『風都署前 200X年12月29日 午後4時半』

 

と言った具合に場所の名前に日付と時間。

 

筆跡はいくらか共通の物もあったがバラバラでペンの色や種類も様々だ(色は黒が多かったが)。

 

ついでに日付も200X年のすぐ後ろに1987年があったりと前後無茶苦茶だ。

 

それがますます謎だ。

誰かのメモ用の本とか言うなら酔狂な奴もいるなで済むが、

あまりに多くの人間が寄せ書きの様に場所と時間を書いている。

 

(変なの)

 

しかしそこで規則性とかを見つけたくなるのが人のサガだ。

パラパラとページを巡っていく。

 

ページを増すごとに書き込みは増えていく。

そして全体の半分ほどの所だろうか?その右ページ端におかしな書き込みを見つける。

 

(助けて)

 

そこからだった。そこから先はどの書き込みも

 

かもめビリヤード 201X年5月19日

と言った具合に走り書きの様な乱雑な物が増えてくる。

それはだんだんと文字の体をなしてないものまで混じり出ししまいには引っ掻き傷のような殴り書きが大半になっていく。

 

(ヤベェよこの本…)

 

そう思うのとは裏腹にページをめくる手は一向に止まらず

 

「きゃあ!」

 

「え?」

 

どん!と下半身に誰かがぶつかった。

倒れなかったが本を落とす。

 

「こら凛!ごめんなさい大丈夫でしたか?」

 

達郎にぶつかって来た女の子のお母さんらしき人が来た。

並んでみると目尻の辺りがそっくりだ。

 

「ごめんなさい……。」

 

「平気。怪我とか無かった?」

 

「うん……。」

 

なら良かった。と言って笑顔を見せると向こうもバツが悪そうにはにかんだ。

何度も謝る母親に大丈夫だと言って階段を降りる。

 

(何となく持って来ちゃったけど、ヤバいよな、この本。)

 

改めて白い表紙を眺める達郎。

図書館の外まで持って来てしまったが、間違いなく不吉な物だ。

 

大江達郎はこの手のモノとは結構縁がある。

誤解しないで頂きたいのが彼は危機を回避出来るだけであって、

危機に出会わないわけでは無いのだ。

 

故に命に関わる程と理解出来ないだけであって明らかに"不味い何か"自体にはまあまあ会っている。

 

そして本型というのは始めてだが、

こう言ったモノの形をした悪意に出会ったことが無い訳じゃない。

 

故にこういった悪魔に類するモノの対処法も昔ネットで調べたり、

教会の聖職者に教わったりして知っていた。

 

白い本をゴミ箱に放るとそれに向かって額、胸、左肩、右肩の順に手を動かす。いわゆる十字を描く、十字を切るというやつだ。

 

「こいつで良し、と。ん?」

 

顔を上げると1人、自分よりは幾らか年上ぐらいの男がじっとこちらを見ている。これがまた妙な男でこの暑い日に黒に赤いラインが入ったハーネスを着用している。

 

「なんだよツンツン頭。俺になんか用か?」

 

「お前に用はない。用があるのは仮面ライダードラゴンナイトだ。」

 

「!?」

 

仮面ライダー。この風都に住んでいれば名前ぐらいは必ず知っているこの街の守りし者。

しかしドラゴンナイトという名前のライダーは風都には居ない。

 

「こいつをドラゴンナイトに渡しておけ。」

 

左腕に付けていた奇妙なホルダーから黒い懐中時計の様なデバイスを取り出す。

 

「なんだよこれ?」

 

「ドラゴンナイトに伝えておけ。明日未来を手放すなとな。」

 

そう言って男は黒い時計を達郎に渡すと砂時計を模したデバイスを取り出す。

 

<ゲイツリバイブ 疾風!>

 

スイッチを押すと男の姿は風に包まれ、消えた。

 

「………なんだったんだよ今の?」

 

大江達郎の幸運はこの時目の前で黒い時計=ブランクライドウォッチを託して去った少年、後にシャルロット・コンスタン経由で明光院ゲイツという名だと知る事になる、に気を取られて白い本の事などすっかり忘れていたこと。

 

そして最大の失態は、白い本の危険性を理解しながら命に関わるレベルでは無いと判断し、人目につく場所に放置した事である。

 

 

 

2

その後、鳴海探偵事務所に1人の女性が駆け込んで来た。

 

名前は黒野祥子。

21歳の大学生でコンビニのアルバイト店員をしている。

 

「本当に現実味に欠ける話なんですけど……。」

 

「大丈夫ですよウチは超常犯罪の駆け込み寺ですから!」

 

そう言って極めて明るく振る舞う所長の照井亜希子に彼女はすべてを話した。

 

始まりは1週間ほど前、

近所の図書館の近くのゴミ箱に捨てられていた本を拾ったことだった。

 

それは表紙から中身、背表紙に至るまで真っ白。

中には場所と日付に時間が手書きで羅列されたいた。

 

「きみ悪く思ってその場に捨てたはずなんですけど、

どこに行っても着いてくるんです。」

 

本はふと気付いた時に本棚に立っていた。

電車の棚に置かれていた。

本屋の新刊コーナーに置かれていた。

そのくらいなら気のせい、見間違いで片付けられなくも無いが、

いよいよここに頼ろうと思ったのが昨日のこと。

 

夜遅くバイトを終えて帰って夕飯の準備をしていた時だった。

いつもの様に夕飯の準備をしようと鞄を置いてエプロンを着ける。

そして振り返ると

 

「鞄に本が入っていたと?」

 

「はい。ほんの数秒目を離した間に入ってたんです。」

 

もしそれが本当なら人が目を離した数秒の間に誰かが音も無く鍵も開けずに立ち去った事になる。

 

とてもじゃないが、人間技ではない。

まさに人外の、ドーパントの仕業だ。

 

「お願いします!

警察はまともに取り合ってくれないし、

ここだけが頼りなんです!」

 

 

 

3

鳴海探偵事務所は早速調査を開始した。

まずはいつも情報を提供してくれる風都の表にも裏にも通じる仲間達、通称風都イレギュラーズから当たった。

 

「白い本?」

 

「ああ、どんな些細な事でもいいんだ。」

 

しかし結果は芳しく無かった。

傲りでも何でもなく鳴海探偵事務所には風都内の凡ゆる噂が集まると言っても過言ではない。

 

そこに全く話が来ないという時点で難事件になると予想していたが、誰もこれ程とは予測していなかった。

 

「まいったぜ、ここまで手こずったのは裏風都の時ぐらいだぞ。」

 

余りの手応えの無さに思わず左翔太郎は吐露した。

 

戦いこそないが、得体の知れなさで言えばかつて裏風都と呼ばれる異空間を作った万灯雪侍(ばんどうゆきじ)=オーロラドーパントに匹敵する。

 

(もう当たる所なんてここしか無いぞ?)

 

翔太郎は今黒野祥子のマンションに来ていた。

賃貸でまあまあの広さ。

1人で住むには少し広いが、

2人で住むにはまあまあ狭いぐらいだろう。

 

「しかし白い本ね…」

 

フィリップの検索にもヒットしなかった。

正確には『日付のメモ』と『白い表紙』だけではキーワードが少な過ぎて絞れないのだ。

 

(せめて内容を覚えていたらもう少し絞れたんだが…)

 

そう思って依頼主のドアを叩こうとした時だった。

突然ドアが開き、黒野祥子が裸足のまま飛び出してきた。

 

「いや!いや!来ないで!やめて!」

 

まるで怪人から逃げてるかの様に必死だった。

そのまま吸い込まれる様に走って行く。

慌てて追ったが彼女はまるで煙の様に消えてしまった。

 

 

 

4

黒野祥子は晴々とした気分でいた。

鳴海探偵事務所に相談してからあの白い本は現れなくなった。

 

いかに悪質なドーパントと言えど天下の鳴海探偵事務所が相手では部が悪いと諦めたのか、或いは初めから白い本なんて無くて彼女が見ていた幻なのか、恐らくは後者だろう。

 

「疲れてたのかな?」

 

今年に入ってから彼氏と別れたり、

危うく騙されそうになったり、

ドーパントに襲われたりとあまり良いことが無かったし、

疲れた私が見ていた幻覚かも知れない。

そう思うと心は軽くなった。こんな日はショッピングにでも行こう。

 

そう思ってクローゼットを開けた瞬間、ボン!と板を地面に落とした様な音がした。恐る恐る振り返る。やはりあの本があった。

 

「なんでよ……」

 

思わず声に出しながらその場から立ち去る。

部屋の外に飛び出してなお走る。

しかし行先全てに、視線の先全てに必ず本がある。

全部形も大きさも寸分違わない。

 

「こんな、こんなはずは!」

 

しかし前と違うところが一つだけある。

 

初めから表紙が開いており嫌でも目に付く様に大きな字で

 

『すずかぜ図書館前ゴミ箱 2019年7月24日 23時9分』

 

()()()()()()()()()()()()()書かれているのだ。

 

思わず手に取ってページをめくる。

あれだけあった様々なメモは消えて全てが祥子のものになっている。

 

そして彼女の不安や焦りを象徴する様にメモは段々と走り書きになって行き

 

「何よこれ?」

 

最後にはまるで断末魔の様な殴り書きしか無くなった。

そして彼女は最後のページをめくる。

それは黒だった。まごうことなき純黒だった。

手を伸ばせばトプリ、とその中に沈む。

 

(あ、ここなら白はやって来ない。)

 

ようやく問題が解けた様な笑顔で祥子は黒に潜った。

 

 

 

5

(結局この時計といい、あの本といい、わかんない事だらけだな。)

 

ブランクライドウォッチを弄びながら達郎は1人青空を見上げた。

結局あの少年は誰だったのか。

あの本と関係があったのか。

もはや神のみぞ知る、だ。

 

(ただ、まだあれはどこかにある様な気がする。)

 

しかしぼんやりとした確信だけがあった。

あの本は自分と縁を切っただけで何処かにある。

この日本という土地は、穢れが残り易い土地だ。

 

しっかりと弔うなり清めるなりすれば綺麗に何も残らないが、

僅かでも残ってしまえばしつこく残って現世に留まり続ける。

日本神話でも穢れは神でも太刀打ち出来ないモノとされているぐらいだ。

 

(けど、俺の友達に害が及ぶなら容赦しない。)

 

ウォッチを強く握りしめる。

達郎にはガイアメモリに手を出す様な思い切りも無ければベルトや特別な力も無い。

 

けどだからこそ己にしか出来ない事だけは投げ出さない。

もしかしたら鳳鈴音が惚れ込んだのは彼のそんなとこなのかも知れない。

 

「まずはドラゴンのライダーさんを探しますか。」

 

今日はベイエリアの方に行こう。

運が良ければ数馬が何か知ってるかも知れない。

達郎は急いだ。




ケイタ「いかがだったでしょうか?」
一夏「ブランクライドウォッチ渡したかっただけの回だよね?」
サード『それだけじゃ味気ないから白い本を付けたんですか?』
ケイタ「ま、まあそんなとこ。」
サード『そこは否定してくださいよ。』
一夏「次回、infinite DRAGON KNIGHT!夏休み編その3 更識楯無の尾行三重奏!」
ケイタ「戦わなければ生き残れない!」
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