ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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アインクラッド編∕序章
プロローグ


「よし、データの最終確認完了」

 

 パソコンのキーボードを叩く音が響くオフィスのような空間でそう呟いた少年は座っている椅子の背もたれに力を抜きながら倒れて休憩を始めた。

 

 パソコンの画面には『Sword Art Online(ソードアート・オンライン)』の文字が表示されている。

 

「お疲れ、あとは僕達に任せて休んでいいよ」

 

「そうさせて貰います、白澤(しらさわ)先輩」

 

 白澤という男に言われた通り働き詰めだった体を椅子に倒れさせて力を抜いた。

 

 

 

 

 

 時は2022年某日。

 世間にVRの進歩が発表された。

 不安要素や心配事などで度々取り上げられていたVRに五感全てを送り込み、まるで自分がその世界に入って生活をしているような実感が出来る、そんな機械とソフトがとある企業から発売されることになった。

 それが《ナーヴギア》そして人類初の《VRMMORPG》となる《SwordArtOnline》だ。

 そんな近未来的な機械を開発したのが《アーガス》、今、俺と白澤先輩の2人がいるこの会社だ。

 

 

「ふぅ……疲れたな」

 

 椅子に座ってそう呟いた俺は如月 春揮(きさらぎ はるき)、ちょっとした出来事で高校中退でこのアーガスに正社員として入ることになってしまった。

 そして俺の横にいるのが俺より少し前にアーガスに入った白澤 直木(しらさわ なおき)(平社員)、一応頼れる先輩……のはず。

 

 

「そうだ、休憩がてら()()()()行こうよ」

 

「こんな時間にですか……さすがに寝たいです」

 

 白澤先輩は俺ともう1人の先輩の3人でいつも行くとある場所に行こうと誘って来たけど、さすがに本サービス開始前日の夜中まで約2週間ほぼ徹夜でサーバー管理なんて続けていたら疲れる、というか疲れた。

 

「食べ物ぐらい食べないと後に響くよ、とりあえず行こうか……あ、木田先輩は置いてく」

 

 最後になにか聞こえた気がするけど聞き流して仕方なく俺は先輩と一緒にいつもの場所に向かった。

 

 

 

 俺と白澤先輩が向かった場所はアーガス本社から徒歩5分圏内にあるちっぽけなラーメン屋、東京都内では存在が浮くぐらいわかりにくい場所にあるこのラーメン屋はなぜかいつも大繁盛、行列ができるほど人気がある。

 俺が入ってすぐに白澤先輩達に捕まり、半強制的に行ってみたらハマってしまいしばらくの間通いつめている。

 

 

「やぁ、君たちも来たのか」

 

 真夜中なのに営業してることも不思議だけど、そんな中、社員を置いて1人、席に座って醤油ラーメンを食べる一人の男性、俺達アーガスの社長的存在の《茅場晶彦》さんだった。

 隣に座ってくれたまえ、という意味合いの込めた手招きに応じて俺と白澤先輩は茅場さんと同じテーブルに座ってそれぞれラーメンを注文して茅場さんと会話を始めた。

 

「それで、君が作ろうとしていたシークレットスペース、あれはどういうものだったのかね?」

 

 会話の途中で茅場さんが俺の作ろうとした隠し要素的なものについて聞いてきた。

 シークレットスペース、またの名を《緊急モンスター(ゲリラ)討伐エリア》、特定の条件を満たしたプレイヤーがこれまた特定のエリアに行くと発生する特別な空間で、そこに現れるモンスターを倒すことで報酬を手に入れることが出来る、というもの。

 欠点なども見つかってどうしようか迷っているともの凄く鋭い勘を働かせた木田という先輩に見つかって結局消す羽目になった。

 

 

「なるほど、消されてしまったのか」

 

「さすがに消しますよ、如月が何をしでかすかなんて俺達にはわからないですし余計なやつは容量を殺しに来ます」

 

 何気ない一言で傷つきながらラーメンを食べ終えた俺達は1度アーガスに戻った。

 

 

 

 アーガスに戻ると同時に白澤先輩の提案で俺は家に帰ることになり、荷物をまとめていると白澤先輩からとあるダンボールを渡された。

 

「家に帰ったら開けてみてよ、疲れた体を癒すことが出来ると思うよ」

 

「先輩は帰らないんですか?」

 

「僕は茅場先輩や木田先輩と一緒にこのゲームのシステムを守り続ける、学生の君に全てを任せる訳には行かない」

 

 無駄にかっこいい白澤先輩の発言を聞いたあと言葉に甘えて俺はアーガスをあとにした。

 

 

 ……この時の俺にはアーガスが大事件を起こすことなど知る由もなかった。

 

 

 

 

 東京都内某所

 2022年 11月6日午前2時

 

 家に帰った俺はとりあえず風呂に入って着替えた後、白澤先輩に渡された謎のダンボールを開封した。

 中に入っていたのはなんと《ナーヴギア》と《ソードアート・オンライン》のソフトだった、開発に携わったとはいえナーヴギアもソフトも持ってなかったからちょうど良かった。

 ダンボールから2つを取り出した俺はそのまま近くの棚に置いてしばらく働き続けた体を休めるために睡眠をとった。

 

 

 数時間後

 午前6時過ぎ

 

「はぁ……」

 

 たった4時間という短すぎる睡眠を経た俺は自分のショートスリーパーに呆れてパソコンを操作しながらソードアート・オンライン、もといSAOのサービス開始前のプレイヤー達の反応を確認していた。

 高2という年齢で何故かSAOのPR代表に選ばれた俺は自分が作ったとは思いたくない文章を公開して後悔しつつその反応の1つを読んだ。

 

如月さん

 私は自分に自信がありません、こんな私でもVRなら、SAOなら楽しくやれるでしょうか?

PN 桜花

 

 なんだこれ、読んだ直後はその感想しか出てこなかった、いつから俺は悩み相談役になったんだか。

 だけど何故かこのコメントだけは無視しては行けない、そう思って返信を打っていた、この桜花(おうか)という人が俺に似ているからかもしれない……

 

「まぁ、こんなことはどうでもいい──訳では無いけどとりあえず他のやつも見てみるか」

 

 などと呟いてしばらくしているうちに俺は寝てしまっていた。

 

 

 

同時刻

某所

 

「はー、また夜更かし?」

 

「ん、おはよう」

 

 幼い容姿の少女がパソコンを操作していると同室にいる姉と思われる女性が眠そうな声でその少女を呼んだ。

 少女が見ている画面には自分が送ったメッセージに返信が届いたという通知が来た。

 少女はそれを開いてしばらくの間停止した。

 

 

 桜花様

 あなたがどんな悩みを抱えているのか俺にはわかりません、ですがSAO……ソードアート・オンラインならあなたの望むような()()を得られるかもしれません

 返信 SAOPR代表、如月

 

「私が……自由……」

 

 少女はそう呟くと自分の布団に仰向けに倒れてまだ見ぬ《SAO》の世界への憧れを抱いていた──

 

 

 

 

さらに数時間後

東京某所

 

 俺、春揮はサービス開始の少し前からログインが出来ないかと少し悩んだ後、その悩みを吹き飛ばしてナーヴギアを頭に装着し、布団に横たわって自分が作成に貢献した世界に期待を持って意識を集中させた。

 

「リンク・スタート!」

 

 こうして俺はVRの世界へと意識を送り込んだ。

 そしてここから俺の、俺達の出会いと別れの()()()が始まるのだった──




リメイク版、ついに投稿です
プロローグも見比べると違いがあると思う、説明とかそこら辺変わってない気がする



──────
以下、キャラ説明

如月春揮
誕生日5/18
年齢:17
髪色:黒
目:薄く赤が見える黒

高校を中退した直後、ひょんなことからアーガスに入社してしまった挙句
文章力があるという理由だけでSAOPR代表に任命されてしまう
高校前半から()()()()()()()()()ため、料理に関しては少しだけ知識がある
機械に弱い

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