ソードアート・オンライン ~紅き双剣士と蒼の少女~   作:桜花 如月

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79:開戦前夜

数日後

ギルドイベント前日。

 

 

「……あのさぁ」

「……何」

「いや、だからさ……」

 

参加ギルドのひとつである夕立の霧雨、そのギルドハウスにてやけに重苦しい空気が広がっていた。

というのも数分前──

 

星屑の流星がこのギルドハウスに来てすぐ、初めてまともに夕立の霧雨と顔合わせしたサキがライムに対してこんなことを口にしたのだ。

 

()()()()()()()()いるなんて聞いてないんだけど、と。

 

「お前それは禁句だぞ」

「ラギクンがフォローしてくれない!?」

 

フォローするも何も、ライムの過去を知ってる以上その発言に何をフォローすればいいのか。

それに、俺は別件で今来たところでこの惨状だ、尚更俺が入ることは無理だろう。

 

「あんたら来て早々なにしてんの、話進まないじゃん」

「そうだよサキ姉!」

「うっ……ステラ初期メンが厳しい……」

 

サキは救いをとユミ達に視線を向けるが全く進行しない顔合わせに呆れた様子で一切フォローする気がない。

もっとも付き合いの長い二人から助け舟が出ないためにサキは改めて俺の方を向いてくる。

 

「本人に謝れよとりあえず」

「謝ったよ!?謝ったけど……」

「許さないって言っといた」

「この通りなんだよ〜」

 

泣きついてくるサキにライムが怒りではなく呆れた様子を見せている。

この通り、と言われてもこれはサキが悪い。

 

「ま、そっちは後でどうにかしてくれ。とりあえず今は作戦会議だ」

「だね、それに気になるメンツもいるし」

 

長方形に伸びた机──よく会議等で使われてるアレ──の空席に腰をかけて仕切り直す。

話を戻してすぐ賛同したのはユミ、彼女は俺の左右に座るプレイヤーに視線を向けていた。

 

「お、やっぱり気になっちゃうカ」

「そりゃあの鼠が来てればね……それで、その人も今回の参加者なの?」

「いや、こいつは関係者にはなるが参加はしない」

 

まず口を開いたのはアルゴ、ハヅキ捜索と同時にあることを頼んでいたのだが、それが此度のイベントに関係するとのことなので来てもらった。

それにしてもさすがは有名な情報屋、()()()とか言われてる。

 

「ならそっちの子は、初めて見る子だけど」

「私はルナ、いつもは別件でソロになってるけど一応夕立の霧雨のメンバーです!」

 

ルナは隣に座るシズクと何か話していたがすぐ切り替えてユミ他初対面に自己紹介をした。

俺と同じく一度抜けたが彼女もちゃんと夕立の霧雨の一員と理解しているようだ。

 

「ルナ……ってもしかして、()()()?」

「そこに関して、オイラとルナで説明するヨ」

「……そっちはとりあえず後で、先にイベントの概要からにしよう」

 

ルナという名前に反応したユミから出た()()()()()に本人は暗く、アルゴは真剣な表情を見せた。

だが、その名前の由来となる一件の対策を組むためにも一旦ギルドイベントの概要を再度確認する必要がある。

 

「そうだナ、そんでルー坊、なんだあの概要」

「俺が聞きてぇよ」

 

アルゴの文句に近い発言に反応しながらメッセージウィンドウを開く。

内容は痛い文章を含むため割愛するが、今回のイベントは──

 

 

『モンスターを狩る、一定間隔で出るボスを倒すなど簡単なもの。

なお、競走ではなくあくまでギルドの強化イベント』

 

と、つい数日前に突然送られてきたのだ。

ギルド別でポイントを競う形式では無いというのはギルドイベント開催が告知された時点で判明していたからこそ大きなギルドは参加しなかった。

というよりは詳細が無さすぎて誰も興味を持たなかったのだ。

 

 

「……何やってんだ白澤先輩」

「ん?」

 

ついポロッと関わってそうな人物の名を口にしたが上手く濁し話を戻す。

 

「いや、なんでも。

……こんなイベントでも複数のギルドが参加するみたいなんだよな」

 

メッセージとは別のウィンドウを開く。

中にはプレイヤー名が5つ、《yamada》、《pig》、《mike》、そしてライムとアキ。

ギルドイベントは本来ならギルド名で登録されるはず(ミコト談)らしいのだが、何故かプレイヤー名が表示されている。

だが表示されているプレイヤー名の考察はできる。

というのもライムとアキがそれぞれ今回のギルドイベントに申し込んだのだ。

つまり、《参加する各ギルド》の中でイベントに申し込んだプレイヤー名が表示される──はずだ。

 

「ルー坊の考え的にはライムとアキが別で表示されてるからほかの3人も別のギルド、だよナ?」

「だといいけど、全員が善良とも限らない」

「どういうこと?」

「ラフィンコフィンのメンバーが別でギルドを結成して存在を濁してるってことだよね?」

 

もちろん、無ければそれだけの話だがこのゲームはギルドの参加や結成に回数などの縛りは無い。

それを把握していてなおかつ一切怪しまれずにプレイヤーを狙うなら()()()()としてでは無く名も知れない小さいギルドとなるのが一番いいだろう。

 

「その危険性がある以上、お前ら全員に危険が及ぶことになる」

「……あんた、今更それ気にしてるの?」

「そうだよ、()()()()()()()のは全員理解してる」

 

リーダーとして登録されているライムとアキはもちろん、今回参加するメンバー全員が狙われ、襲われる可能性がある。

各個が強いのはわかっているがやはりそれは危惧してしまう。

そんなことを呟くと呆れたようにユミとライムがそれぞれ口に出す。

 

「……心配しすぎか」

 

保護者みたいな目で見てくるミコトとヤヨイ

呆れたままのライムとユミ

俺の左右で頷いてるアルゴとルナ

カエデと彼女が連れてる妖猫と戯れてるアキとシズクとサキとヨシノ

そして一人、気まずそうにしてるコハル

 

ギルドとして、それぞれ個人として今回のイベントに参加するにあたり覚悟を決めている。

それは表情や反応からも伝わってくる。

 

「そーだぜラギ君」

「なんでお前は武器背負ってんだ」

「いやぁ、仕舞うのめんどいから」

 

妖猫と戯れるのを辞めたサキは俺の肩に手をおきそんなことを口にした。

そんな彼女は背中にメイン武器の弓を背負ったままだ。

俺たちの会話に気づいたヨシノが立ち上がり理由を説明した。

 

「サキ姉、ハル兄に武器見せるんだーってずっと言ってたんだよ?」

「あっヨシノ何で言うの!?」

「ソワソワしてたから……」

「……そーだよ、ラギクンに自慢しようと思って」

「自慢、ねぇ……」

 

サキが背負っている弓をちゃんと見ると緑をメインとした本体の色に星のような模様が所々に散りばめられている。

一見普通な弓だが、わざわざ自慢するということは何かあるのだろう。

 

「聞いて驚け!これはね……」

「それならあたしのお手製よ」

 

ふふん、と自慢げに説明しようとしたサキの後ろから疲れた様子のリズことリズベットが顔を覗かせた。

 

「えっ、リズさん?」

「言っとくけど私は参加しないわよ」

「全員分の武器のメンテを頼んでたんだ」

「お陰様で徹夜よ」

 

数日前、ユミとデュエルした時にガタが来た武器を直して貰いに行った時に念の為に参加するメンバーの武器メンテを頼んだのだ。

さすがに全員とは行かなかったのと、コハルとシズクは新武器に変えて間もないため一部のメンバーにはこのことは伝えてなかった。

 

「それで、サキには新武器作ってあげたわけ」

「前のも良かったけど骨董品って扱いでちょっと弱くて、ついつい新武器欲しくなっちゃった」

「あとは耐久値直して終わりだけどね、ほらここ置くわよ」

 

サキに呆れながらもリズは自身のストレージから預かった武器を取りだし机に並べた。

数こそ少ないものの、片手直剣以外の武器も何本か取り出されている。

鎌は一人しかいないが気になるのは両手剣二本、これの使用者は……

 

「何、私じゃ文句ある?」

「……ごめん、私」

 

両手剣を片手で軽く持ち上げたユミと、まさかのヤヨイだった。

片方は使いそうだと思ったがヤヨイが、新田先輩が使うイメージは正直浮かばなかった。

彼女の見た目から突然振り下ろされる両手剣が《剣鬼》だの《死神》だのという二つ名をつけたのかもしれない。

 

「別に文句もないし謝らなくていいですよ、ちょっと意外だったもんで」

「意外とは失礼な、こう見えてあっちゃんは──」

「はいそこまで」

「えー、なんで止めるの」

 

俺の発言に異議を唱えようとしたミコトをヤヨイが止める。

この流れですら2人の仲の良さが見え隠れする。

 

「武器も来たし、何より本題はそっちじゃないでしょ?」

「む、確かに……てことで後輩君任せた」

「はいはい……」

 

至極真っ当なことを言われたミコトは反論せずに俺に進行を投げた。

使用している武器、スキル、二つ名の理由諸々気になるが、それを聞くのは今じゃない。

 

今、すべきことを。

 

 

「ギルドイベントは、最初に言った通り競走とかじゃなく単なるギルド全体の強化のためのイベント、という体だ。

開始と同時に会場の《迷いの森》はイベント参加プレイヤーしか入れないようになる。

言ってしまえば()()()()()()()()()()()()()になる」

 

ただでさえ小規模のギルドは通常の攻略やレベリング中に襲われたり嵌められたりしている。

それが()()()()()()()にいれば格好の狙い所だ。

そしてそれは、俺とルナそれぞれの件を終わらせるにもいいルールといえる。

 

「制限時間は3時間、それを過ぎればエリアは解除されて通常の1フィールドになる。

そうなればハヅキも、そしてルナの件も手をつけられなくなる」

 

そもそもハヅキが確定でここに来るというわけじゃないのはわかってる、でもあいつはきっと──

 

「要領はわかった、それでルナの件もそろそろ聞きたいんだけど」

「そうだね、さすがに話さないと作戦も立てられないよね」

 

ルナは待ってましたと言わんばかりに立ち上がり全員から見える位置、つまるところ俺の横に立った。

彼女は1度小さく深呼吸をして──

 

「まずは……みんなに言いたいことがある」

「なに?」

「……私の知り合いが、()()みんなに迷惑かけてごめんなさい」

 

そういうとルナは深く頭を下げた。

事情を聞いてる俺とアルゴ以外は皆突然のことに困惑している。

 

「つまり、《黒い月》はルナちゃんのお姉さんが関係してるってこと?」

「……うん、どうしてあんなことをし始めたのかは分からないけど、噂になってる黒い月は私のお姉ちゃんのこと」

 

ルナの姉、名は確か《ソラ》。

彼女は第10層が攻略される頃まではずっと第一層のとある教会に身を寄せていた。

ルナがしばらくの間留守にしていたのもこの教会が関連するのだが、それは今度に話すとしよう。

 

話を戻してそんな教会に身を寄せていたソラは突然攻略に参加すると決意して教会を飛び出していった。

その後音沙汰がなくなっていたが、つい数週間前に彼女は事件を起こした。

 

 

「攻略パーティの壊滅、それは紛れもなく人の手によるものだった」

「それがそのパーティの生き残りだった一人、つまり──」

「ルナの姉、ソラがやった事だ」

 

事を知っていたアキとライムが続けて事件について口にした。

それに対し俺は小さく頷いてルナを見る。

ルナは酷く悲しそうな顔を浮かべていて、今すぐにでも泣き出しそうな雰囲気を出していた。

 

 

「一パーティの壊滅は信じたくないけどよくある事だ。

みんなそれで納得して慰めるプレイヤーもいた、でも──」

「張本人が口にすれば誰もが疑いを捨てるヨ」

 

俺の言葉にアルゴが続く。

誰もが実力に見合わないとこへ行き壊滅したと思っていた、だが唯一帰ってきたソラがこう口にしたのだ。

 

 

──あのパーティを殺したのは自分だ、と。

 

 

 

「そんな発言したら、行き場無くなるでしょ」

「あぁ、実際ソラは住処に戻ることも出来ずに行方をくらました」

「なら、ギルドイベントに参加するってのは──あ。」

「殺人を犯したプレイヤーが何食わぬ顔で参加出来るギルドがある、つまり──」

「ラフコフ、もしくはラフコフが使役してる小規模のギルドにそのソラって奴がいるかもしれない、そしてギルドイベントに現れるかも……ってこと?」

 

ライムの疑問は誰もがそう考えるだろう事だ。

人を殺した、つまりはオレンジプレイヤー……もしくはレッドまで行けば街に入るなんて不可能だ。

どこか小さな村にでも、と考えるプレイヤーもいたらしいがそもそも『安全圏』と設定された場所に踏み入ること自体が無理に等しいため本当に行き場がない。

それ故にラフコフが拠点を置いている場所も特定出来てないのだが……

 

少なくとも元々ギルド未所属かつほぼ初心者であるプレイヤーが街や村に入るのが困難になったとすれば野垂れ死ぬか()()()()()()()()()()()()()に入るしかない。

 

「あのイベントにいる可能性は高いだろうな」

「だよね……」

 

何があって殺人に手を出したのか、ルナのためにも探る必要がある。

ハヅキを助ける方が優先だが、ソラの件も決して無視できるものじゃない、なら──

 

「──ラギクンどっちも解決しようとしてない?」

「えっ?」

「仕方ないだろ、ハヅキはもちろんのことソラも無関係じゃないんだから」

「……あんたバカ?」

「なんだよ急に」

 

突然サキに指摘されたと思えばユミと二人で立ち上がる。

二人はアイコンタクトを取ったのか無言で頷いた。

 

「これだけの人数いて、相手の数が未知数とはいえ二件をラギクンに任せるのは違うでしょ。

二手に分かれてことを進める方がいいって思わない?」

「私もサキに賛成、そのソラって奴はあんた以外で相手すればいい」

「それはそうかもだが……」

 

ハヅキを助けようとすれば当然襲ってくるであろう障害ですら未知数であり、ソラも初心者だったとはいえパーティを壊滅させただけの力はあるはず。

もし、ソラがこっちよりも戦力を持っていた場合、最悪の可能性もある。

そんなことを考えていると大きなため息が聞こえた。

 

「危惧してることはわかるけど、後輩くんは私たちを甘く見すぎだぜ?」

「うん、元引きこもりな殺人鬼ごときに負けるほど私たちは弱くないよ」

「そ、だからそっちは私とあっちゃんに任せな」

「でも……」

 

ため息を吐いたのは北沢先輩……ミコトだ。

余裕そうな、それでいてどこか怒りが見え隠れしながらも発言をし、それにヤヨイが続いた。

 

「ハル兄!ボク達だって力になりたいんだよ!」

「ヨシノ……」

 

せっかく集まってもらったのに、危険な目に遭わせてしまうことに恐れていた。

でも、全員がそれ覚悟でここにいるってことが改めて表情から、言葉から伝わった。

 

「……そうだよな」

「やっと気づいた」

「ほら、理解したならさっさと作戦決めてよ」

「そうですよ先輩」

「あぁ──」

 

いつの間にか俺の左右には夕立の霧雨が立っていた。

彼女たちもそれぞれが成長し、ここにいる。

そして、俺も()()()()()()()()だ。

 

「改めて、ソラの件を踏まえて作戦を立てる。

もちろんその場の状況次第にはなるけど、まず───」

 

 

通用するかすらわからない作戦をメンバーに伝える。

それぞれがどう動くかはその場次第なところがあるがそれでもきっとこのメンバーなら大丈夫、そう思える。

 

 

「──こんなところか」

「私たちはいいけど、あんたたちは?」

「こっちも問題は無いよ」

「だ、そうだよ」

 

全て伝え終えるとユミ、シズクの順に各ギルドの賛成を得られた。

 

「じゃあ、この作戦通りに頼んだ」

「ん、了解」

 

拳を突き出してきたライムにそう答え拳をぶつけるとユミが少し驚いた様子を見せた。

それを横目にライムは俺の肩を叩き……

 

「ほら、リーダーなんだから士気高めて」

「いきなり無茶言うなよ……」

 

突然の無茶振りだったがとりあえずと思い全員を再度見る。

ここにいる全員が無事、()()()()()()()()に戻ってくる、それが何よりも大切なことだ。

 

「ハヅキを助け、ソラを止める。

3時間しかないしかなり危険かもしれないけどみんな───生きて帰ろう」

 

『おー!』

 

俺の言葉に各々が色んな反応を見せながらも声を上げた。

 

 

 

 

 


 

それから小一時間後。

解散となり星屑の流星は自分たちのギルドハウスへ帰っていった。

シズク達は1階で紅茶のような飲み物を飲んでいる。

そして俺は──

 

「……この景色がまた見れればいいけど」

 

一人、屋根の上で空を見ていた。

第十層の夜空──正確には空では無い──は星空が広がっている。

第一層と違い騒がしくないためこうやって星空を見ると気持ちが落ち着く、気がする。

なんて思っていると足音が近づいてくる。

 

「なに黄昏てんの」

「そういうお前は何しに来たんだ?」

「せっかくの前夜にメンバーと一緒にお茶もしないやつを探しに」

「悪かったな……それで、本当は?」

 

足音の正体はライム、彼女は俺の横まで来るとそのまま腰を下ろした。

小さく息を吐くと彼女も空を見上げて話を始めた。

 

「星、綺麗だよね」

「……あぁ」

「ここがゲームの、デスゲームの中ってことすら忘れそうになるぐらい綺麗」

 

彼女の言うとおり、ここはゲームの中だ。

それでも、目の前に広がる星空は美しく、綺麗だ。

もちろん、あの星空がどう作られてるかを知らなければ、だが。

 

「ま、星空って言っても上の層の床なんだけどな」

「ロマンの欠けらも無いこと言わないでよ、()()()()()()()()んだから」

「……何を言いたい」

 

星空を見る彼女の横顔は少し寂しそうで、そんな彼女は突然横になってる俺の腹に頭を置いてきた。

 

「……死ぬ気なんでしょ、今回のイベントで」

「誰から聞いた」

「雰囲気でわかるよ」

「雰囲気、か……」

 

決して表に出してたつもりは無いが、それでもライムには──他のメンバーにも気づかれていたらしい。

 

「他のみんなはわからないけどさ、私は……()()()に今のラギみたいな顔してたから」

「だから、気づいたってことか」

「……ラギ、ほんとに死ぬ気なの?」

「自殺はしねぇよ、ただ……」

 

もちろん、自ら身を投げ捨てて死ぬようなことは()()()やらない。

それでも、この戦いで死ぬ覚悟が出来ているのは単純だ。

 

「犠牲無しでハッピーエンドなんてそう簡単には行かないだろ」

「それであんたが死ぬって?」

「俺以外を、死なせたくないんだよ」

「……あんたはそれでいいの?」

「悲しむ奴らはいる、それでもそれは()()()()で悲しむわけじゃない。

お前らには生きて欲しいんだよ」

「答えになってない……でも、ラギが思ってるほど私たち薄情じゃないんだよ」

 

ライムは俺の腹の上に頭を乗せたままこっちに顔を向けてきた。

その顔は寂しそうでありながら優しい。

 

「絶対、死なせないし私たちは死なない」

 

そう言うと彼女は立ち上がり気にする必要は無いはずなのに服を払う仕草をして続いて背伸びをした。

そのまま俺の方を見ずに何かを考えたあと、屋根の端にあるはしごに向かい歩き出し、手前で止まり……

 

「ラギがさっき立てた作戦だけど、悪いけど私は──」

 

振り向くと彼女はとあることを伝えてきた。

その後、「じゃ、おやすみ」と言い残し屋内に入っていった。

 

 

 

 

 

「……ほんとに俺は、自分のことすら理解してないな」

 

そんな俺の言葉は静かに闇へ消えていった。

 

 

 

 

 

翌日。

戦い(殺し合い)の狼煙が上がった。




あけましておめでとうございます
お久しぶりです、今年初の投稿です

色々忙しくて疾走手前まで行ってました
少しずつ落ち着いてきたのでこれから投稿していきます


それはさておき紅蒼の総話が100話になりました
そして今話で新章──紅炎の英雄編の準備編が終わります
次回からついにギルドイベントという名のアインクラッド編最大の物語が始まります
と言っても次回は少し時間が遡ります
お楽しみに。
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